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教学社『東大の○○ 25ヵ年』

 東大入試の過去問を1科目につき25年分ずつ集めた、これまた有名な25ヵ年シリーズ。2016年現在、「英語」「英語リスニング」「理系数学」「文系数学」「現代文」「古典」と、地学を除いた理科・社会各教科の全12種類がラインナップされています。章立ては科目によって異なっていますが、文系科目ほど問題…
 東大入試の過去問を1科目につき25年分ずつ集めた、これまた有名な25ヵ年シリーズ。2016年現在、「英語」「英語リスニング」「理系数学」「文系数学」「現代文」「古典」と、地学を除いた理科・社会各教科の全12種類がラインナップされています。


 章立ては科目によって異なっていますが、文系科目ほど問題・解答以外の項目、例えば「本書の活用法」だとか分析だとか言った部分が充実しています。社会各教科は特に凝っていますね。逆に数学は文理共に1ページの「本書の構成」があるだけとかなり淡白ですが、唯一各問題について難易度評価をしています。

 問題の掲載の仕方は国語を除いた各教科とも、過去問を大問ごとに単元別に配列するというスタイルを取っていて、基本的に索引を見れば一応どのようなセットとして出題されたのかを俯瞰することができるようになってはいますが、“1セットを時間を計って解く”という演習の仕方は本書では明らかに想定されていません。25ヵ年シリーズは“実際の入試を使って普段の問題演習をする”ためのものだと思ってください。そのため直前期に過去問を時間を計って解こうと思っている人が本書を使う際には直近の問題に触れないよう注意する必要がありますし、むしろ東大を受験しない人にこそ積極的に使ってほしい問題集であるとすら個人的には思っています。また25年前まで遡ると問題の傾向や形式も国語や英語をはじめとして大きく変わっており、そんなに昔の問題を解いても仕方がないのでは? と思っている人もいるようですが、このように演習問題として扱うのであれば解く価値はあるのではないでしょうか。さらにこのような構成は他大学の25ヵ年シリーズにも踏襲されていますから、余力があってもっと問題演習をしたいのならそちらに手を出してみるのも悪くないかと思います(普通それほどの余力は無いでしょうが)。

 数学のみ問題編と解答編が章として分けられていますが、それ以外の科目は問題とその解答を交互に並べて掲載。この形式、特に英語に関しては問題の全訳がその問題文自体と改ページさえされず載っていたりするほどで、解いている最中に答えが目に入るのが嫌な人は嫌かもしれません。ちなみに、理科・社会には実際の解答用紙の第1問の解答欄の縮小コピーが掲載されています。


 解答・解説に関して。数学や理科は、赤本に掲載されていたものの再構成であることが殆どですが(あまり昔のものは自分にも確認できていませんが、少なくとも2000年代のものは概ねそうなっています)唯一生物に関してはその限りではなく、解答・解説の最後に当該問題についてさらに詳しい情報を述べた“研究”の欄が充実していたり、問題の末尾=解答の前にその問題を解くに当たってのヒントとなり得る“ポイント”欄が設けられていたりと日常的な演習用の問題集としての色をより濃くしているように感じられます。逆に英語を含むその他の文系科目を見ると赤本の文章を殆ど流用していない事が多いです。赤本では解説を、“その年度のその科目の問題単体”を解く上でどう考えていくか? ということで書かざるを得ないところを、25ヵ年ではその科目の問題だけを何問も解説するので、執筆者が一冊を通して独自の考え方・解答の書き方を一貫させて書くことができ、また書こうとしているようなのです。この傾向も問題演習の書としては妥当でしょう。


 先にも述べた通り、難易度評価は数学にのみ施されています。A(易)からD(難)までの4段階評価で、やや厳しめ(AかBばかりつく)。繰り返しになりますが本書は問題演習のための本なので難易度評価もそれを基準にしており、入試本番に本書のBレベルの問題で解けないものがあったとしても理Ⅲでなければ一般的には大きな問題にはならないでしょう。



石橋雄毅

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