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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2017/09/30
 前期教養学部の生ぬるい一年半を終えた東大生は、進学振り分けを迎え、9月以降さまざまな学部・学科に分かれ全く異なる学生生活を送ることになります。
 今回の記事では、それぞれの学部ごとにどんな生活を送っているか、ざっくりお伝えしていきたいと思います。



経済学部
 文Ⅱ生の大半や、勉強への情熱を失った理系生が進学する経済学部は、定員の多さも相まってしばしばヒマな学部の代表例のように言われます。基本どの授業も出席する必要はなく、単位認定も緩いので授業の負担は駒場時代よりも軽いです。
 ただ経済学部生は大半が大学院に進学せず4年で卒業していくため、多くが3年の夏ごろには就活を始めることになります。なので就活熱心な学生の一部はその辺の理系学生よりも忙しい日々を送っています。
 ただ、就活さえ終わってしまえば生活を縛るものはほぼなくなってしまうので、4年夏以降の経済学部生は最後の学生生活を今まで以上に全力でエンジョイします。


法学部
 主に文Ⅰ生が進学する法学部、官僚や法律界に進むエリートを育成する学部というイメージが強いかと思いますが、民間企業に就職する人も数多くいます。経済学部と同様に授業の出席はないのですが、テストの重みが全く異なります。法律に関する授業は試験範囲が膨大で、どれほどシケプリ※1を集められるかによって単位の取りやすさも大きく変わってくるようです。人脈が問われる学科と言えるでしょう。


文学部
 文Ⅲ生や経済学部に進学できなかった文Ⅱ生などが集まる文学部。基本的に拘束はゆるく楽な学科と言えます。心理学科のような一部実験がある学科はやや負担があるようですが理系学科に比べれば大したものではないようです。


工学部
 筆者も所属している工学部。合計約800人の定員を持ち、学科の数も非常に多い大規模な学部です。理Ⅰ生が大半を占めますが、生物系の学科には理Ⅱ生も一定数いて、学科によっては文系生もちらほら見られます。
 理系全般に言えることでもありますが、多くの学科で実験が多く拘束時間が長いです。特に化学系・電気系・建築系の学科は負担が重く、中には夜通し作業する人もいます。ただし、マテリアル工学科とシステム創成学科の2つは例外で実験も少なく、あくまで比較的ですが自由に過ごすことができます。
 大多数の学生が院に進学し、研究室ライフを少なくとも3年間エンジョイします。


理学部
 工学部に比べ、実用性よりも学問そのものに重点を置く学科で、その性格に合った勉強・研究が好きな学生が多いです。ただその度合いは学科ごとにばらつきがあり、数学科・物理学科など生半可な「好き」ではとてもやっていけないような学科もあれば、平均的な理系学部と変わらない雰囲気の学科もあります。
 あまりにもやっていることの幅が広く、全体の忙しさをまとめることは難しいですが、工学部と同じように実験が多い化学系・生物系学科は拘束時間が長いです。この点も工学部と同様ですが、大多数が大学院に進学し、博士課程に進学する人も少なくありません。


農学部
 理Ⅱ生が多くを占める農学部、本郷キャンパスからは道路一つだけ挟んだ弥生キャンパスというところにあります。理系の中では総じて単位認定が緩いため、工学部などから楽単※2狙いの生徒がドーバー海峡※3を渡って押し寄せます。基本的に理系の中では緩い部類に入りますが、生物系の研究が主になるため、配属される研究室によっては実験による拘束時間がかなり長くなります。


薬学部
 理Ⅱ生の割合が高いですが、理Ⅰ生も一定数進学します。なかなか高い点数が要求される学科ですが、研究室に配属されるまでは拘束時間は短く工学部などに比べ比較的自由に過ごせるようです。
 研究室に配属されてからは、特に生物を扱うものを中心になかなか忙しくなるようです。


医学部(医学科)
 入試トップ層の理Ⅲ生がほぼ全員そのまま持ち上がり、他学科からは90点級の点数を誇る超優秀層しか入れない医学部医学科ですが、そこでの生活は超優秀な学生にとっても楽ではないようです。
 解剖や実習などで拘束時間が多い上にテストの量も質も厳しく、どの点から見てもヒマだとは言えませんが、全く遊べないというほどではないようです。




語注
1シケプリ … 有志によって作られる、テスト対策のためのポイントをまとめたノートやファイルのこと。
        全学に伝わっているものから個人でやりとりされるものまで、共有される範囲はさまざま。
2楽単 … 楽に単位が取れる授業のこと。学期に1、2個レポートを出せば単位が来るものであったり、
      代返可能な上に出席状況だけで成績をつけるものなど。
3ドーバー海峡 … 弥生キャンパスと本郷キャンパスを結ぶ歩道橋の俗称。渡るのはそんなに苦ではない。



2017/09/30 K.H

2017/08/31
 第15回となりました。今回は、ABCモデルを題材とした考察問題を扱ってみます。

 現課程を学習しているみなさんなら、花器官の形成における遺伝子の働き方を説明したABCモデルはご存知だと思いますが、実はABCモデルは旧課程では教科書に載っていませんでした。今回扱う問題は旧課程の時期のものですので、東大生物においては「知らないものが出てきたときにいかにそれを速く理解し、対処できるか」という力が試されているといえるかもしれません。

 今回は、「ABCモデルを知らない人がこの問題を解くならどのように考えるか」という視点で進めていきたいと思います。みなさんはABCモデルに関して知識がありますので、問題文は理解しやすいでしょう。考察が苦手な人も取り組みやすい問題ですので、実験結果から論理的に解答を導く訓練として効果的だと思います。ぜひ一緒に考えてみてください!

 なお、今回は考察問題に焦点を絞るため、知識問題は除いてあります。








E
 まずは表2-1を見てみましょう。A突然変異体では領域1および2に異常が見られるようです。同様にB突然変異体では領域2と3に、C突然変異体では領域3と4にそれぞれ異常が見られます。

 本文中に「調節遺伝子A、B、Cは花器官形成において、それぞれはたらく領域が決まっており、その組み合わせによってどの器官が形成されるかが決まる」とあります。このことから、遺伝子Aは領域1および2で、遺伝子Bは領域2および3で、遺伝子Cは領域3および4でそれぞれ機能し、遺伝子Aのみが働くとがくが、遺伝子AとBの組み合わせで花弁が、遺伝子BとCの組み合わせでおしべが、遺伝子Cのみでめしべが形成されることが推測できます。

 さて、問題文に移ると「A突然変異体では、領域1から領域4にかけて、めしべ、おしべ、おしべ、めしべの順に花器官が形成された」とあります。

 これは、遺伝子Aが働かなくなったことによって領域1と2に異常が起き、領域1ではめしべ、領域2ではおしべが形成されたということを意味します。めしべは遺伝子Cのみが働くことによって形成されるはずですので、A突然変異体では領域1で遺伝子Cが働いていると考えられます。同様に、領域2では遺伝子BとCが働いているでしょう。

 ここで、「領域3と4で働いているはずの遺伝子Cが、なぜ領域1と2でも働いているのだろう?」という疑問が出てきます。この異常は、A突然変異体、つまり遺伝子Aが働いていない個体だから起こったものと考えられます。

 つまり、遺伝子Aが働いていないと、領域1と2でも遺伝子Cが働くようになるのです。これは、本来遺伝子Cは領域1から4の全てで働くはずだったが、遺伝子Aが遺伝子Cの機能を阻害するため、突然変異の起きていない正常な個体では領域1と2では遺伝子Cが働いていない、と考えれば説明がつきます。

 以上のことから、選択肢(2)が正解と考えられます。

(解答)
(2)

F
 ランカドニアの領域1から4ではそれぞれ、がく、がく、めしべ、おしべが形成されます。Eで考察したように、がくは遺伝子Aの機能、めしべは遺伝子Cの機能、おしべは遺伝子BとC両者の機能によって形成されます。Eでしっかり考察できていれば、すぐに答えは出てきますね。

(解答)
調節遺伝子A:領域1、2
調節遺伝子B:領域4
調節遺伝子C:領域3、4

G
 シロイヌナズナですべての領域で遺伝子Bが発現すると、領域1と2では遺伝子AとBの機能により花弁が形成され、領域3と4では遺伝子BとCの機能によりおしべが形成されます。

 遺伝子Bを強制的に発現させた後、遺伝子AとCの機能を変化させるとすべての領域でおしべが形成される場合、これは全ての領域で遺伝子BとCが働いていることを意味します。つまり、遺伝子Aは機能を失い、遺伝子Cは機能が維持されているということになります。

 ここで注意すべきは、遺伝子Cの機能は「すべての領域で強制的に発現されている」のではなく「維持されている」ことです。Eでの考察で、本来遺伝子Cは全ての領域で働いているが、遺伝子Aの機能により領域1と2では遺伝子Cの機能が阻害されている、とわかっています。つまり、遺伝子Cはもともとすべての領域で働こうとしているわけです。なので、遺伝子Aの機能を失えば遺伝子Cは自動的にすべての領域で働くようになるのです。

(解答例)
領域1:花弁
領域2:花弁
領域3:おしべ
領域4:おしべ

調節遺伝子Aの機能を欠損し、調節遺伝子Cの機能を維持する。





 いかがでしたでしょうか?ABCモデルについて持っている知識をいったん脇において、考察問題として論理的に考えることができましたか?

 今後も、このように「本来知らないはずの現象について実験結果から考察させる問題」は必ず出題されます。夏ももう終わり、過去問に触れる機会が多くなってくると思うので、それらの問題を通して考察力を鍛えていってほしいと思います!

解答例まとめ
E (2)
F 調節遺伝子A:領域1、2
調節遺伝子B:領域4
調節遺伝子C:領域3、4
G 領域1:花弁
領域2:花弁
領域3:おしべ
領域4:おしべ
調節遺伝子Aの機能を欠損し、調節遺伝子Cの機能を維持する。


2017/8/31 宮崎悠介

2017/07/27

 巷では大学生活のことを「人生の夏休み」なんて呼んだりします。実際、髪を金色に染めて居酒屋でバカ騒ぎしていたり、平日の昼間から繁華街で遊び歩いていたりする姿を見ると、それもあながち間違いじゃない気がしてしまいます。
 それでは、東大生はどうなのでしょう?世間の大学生のイメージ通り人生の夏休みを謳歌しているのでしょうか、それとも、そんなイメージとかけ離れた勤勉でストイックな生活をしているのでしょうか…
 第二回のテーマは、「東大生ってヒマ?(前編)」です。


 結論から言うと、当然と言えば当然ですが東大生の忙しさは学部・学年・目標によってさまざまです。社会人並みに余裕のない生活を強いられている学生もいれば、朝から晩まで遊びまくっている学生もいます。
 そこで、どの時期のどんな東大生が、どのくらい忙しい生活を送っているのか、二回にわたってざっと紹介していきたいと思います。今回は、入学~進振りまで編、次回は進振り以降編です。



一年夏学期(4月~7月) 

 入学直後、高い理想とモチベーションを持って入学した東大生を待ち構えているのは、「暇過ぎはしないが、高校よりは断然余裕あり」といったくらいの生温い日々です。105分の授業を15コマ程取るのが主流で、授業の総時間自体は高校と大差ありませんが、断然高校よりラクです。その理由をいくつか挙げると…

① 時間割を自分の好きなように組めるので、朝が苦手な人は授業を午後に寄せたり、逆に夕方の予定を空けたい人は朝に寄せたりできて融通が利く
② 一部の授業しか出席を取らない上に、代返(※1)ができるものもあるので、受ける必要がないと思った授業は切る(※2)ことができる(推奨はしません)
③ 大人数で受ける授業が多いため、内職・居眠り等カンタンにできてしまう(推奨はしません)

などがあります。①と②の点を生かして出席する必要がない授業ばかりを選択して取れば、実質週5コマ程度にすることもできます。

 以上の通り、拘束時間という点だけで見れば高校よりも断然負担は軽いのですが、全員が高校より楽な生活を送っているわけではありません。部活に入ったり、いわゆる意識の高いバイトやボランティア活動をしたりすれば当然余裕はなくなりますし、何よりこの時期の学生の負担というのは進振りでどの学科を狙うかによっても左右されます。
 例えば、理Ⅱからの医学部進学を狙うのであれば進振り点は90点程度(東大生全体の上位数パーセント)が必要になりますし、それだけの点数を狙うには周りと同じだけの努力をするだけでは不十分です。医進は極端な例としても、進振りで大抵の学科に行ける水準を維持するためには授業時間外の努力は不可欠です。
 くれぐれも、進振りの時期になってやっぱりもっと勉強しておけばよかった…と後悔しないようにしましょう。



一年夏休み(8~9月) 

 初めて訪れる大学生活の夏休み、まさに人生の夏休みの夏休みで、何もタスクがない日々を過ごすことができます。バイトやサークルに打ち込むもよし、地元に長期間帰省するもよし、免許や資格を取るのもよしの本当に自由な時間です。
 しかも高校までと異なり、夏休みはほぼ2ヶ月あります。大学生慣れしていないこの時期の学生にとっては遊んでも遊んでも遊び足りないくらい長く感じるでしょう。



一年冬学期(9~1月) 

 長い長い夏休みを終え迎える冬学期、夏学期に比べそんなに大きな違いはありません。理系生は実験が始まりやや負担が増えますが、午後に週一回あるだけなので生活が大きく変化することはないでしょう。
 ただ、冬学期の学生は夏休みを経験しています。同じくらいの忙しさでも、夏休みにダレにダレた学生にとっては何倍もつらく感じられるでしょう。気温が下がっていくにつれて布団から出るのがどんどん難しくなっていくため、この期間に一気にダレる学生も多いです。注意してください!

 12月の末から1月の頭にかけては二週間程度の休みがあります。高校までの冬休みと同じくらいの長さですが、大学生は休むことに慣れ切ってしまっているためその有難みは薄いでしょう。



春休み(2月~3月) 

 2ヶ月にも及ぶ春休み、実に高校までの4倍ほどの長さです。夏休みと同じく、特に大学から何かを課せられることはありません。皆休みの過ごし方にも慣れてきて、サークルやバイト以外にもウインタースポーツや海外旅行、免許合宿等思い思いの方法で時間をつぶします。



二年夏学期

 まともに単位を取っていれば、この期間が4年間の学期中で最もヒマな時期になるでしょう。今までより必修の授業がぐっと減り、選択科目も少し取るだけで済みます。もうあまりにも暇なので、一年の春休みから二年の夏休みまでのほぼ半年間をまとまった一つの休みと思えてきます。ただ、一部の学科では要望科目(※3)が設けられていて、それなりに時間を取られるようです。
 ただ、進振りで選ぶ学科によっては、(長期休暇を除けば)学生らしい生活を送れる最後の時期になります



次回、進振り以降編に続く…





語注
1 代返…「代」わりに「返」事すること。出席している友達に自分の代わりに出席の処理(出席表に名前を書く、自分の名前の欄に〇を付けるなど)を行ってもらうこと。完全な不正行為です。
2 切る…授業を意図的に休むこと。「今日は眠すぎたから一限切った」等と用いる。
3 要望科目…進振り後の二年冬学期以降の授業を滞りなく進めるために、各学科が進学予定者向けに受講を勧めている科目。

2017/07/27 K.H

2017/06/08

 私は地方のあまりレベルの高くない学校の出身で、東大生や東大OBの知り合いから直接話を聞く機会がなく、東大に対して幻想とも言えるほどの良いイメージを描き、受験勉強に励んでいました。
「東大へ行けば、日本一の教授陣のエキサイティングな授業をやる気溢れるクラスメートと共に受けられ、いくつもの面白そうな学部の中で揺れて、進振り(※1)を迎えるんだろうなあ…」といった具合です。
私ほど大きな期待を持った受験生はあまりいないかも知れませんが、同じようなイメージを持っている受験生は決して少なくないと思います。

 結果的に、私は幸運にも東大の門を叩くことはできたのですが、入学後に目の当たりにした東大の姿は、当初のイメージとはいくらか異なるものでした。

その中でも最も印象的だったのが、「授業が面白くなかった」ということです。



東大の授業は面白くない?

 面白いか面白くないか、という判断は完全に主観ですし、あなたがそう感じただけじゃないかと責めたくなる人は大勢いるでしょうが、それでも私は「東大の授業は面白くない」と言い切ってしまいたいです。

 私は東大に入学してから、多くのコミュニティで様々な人たちと知り合いました。彼らの中には一日中自分の好きな勉強をしている、いわゆるイカ東(※2)もいれば、都会の遊びやお酒に溺れ、留年を重ねてしまう人もいました。しかしその中の誰一人として、東大の授業は概して面白いと言っていた者はいません。
「授業を受けるくらいなら、自分の好きな勉強を進めたほうが良い」「可能な限り授業は受けずに、サークルや遊びに没頭したい」などと答えるでしょう。

 ではなぜ日本の最高学府と言われ、最も勉強にささげた時間が多かった人が集まっているはずの東京大学の授業がここまで酷評されてしまうのでしょうか。

 東大の教授陣は間違いなく研究者として才能あふれる方々ですが、だからと言って講師・話し手として優れているかというと必ずしもそうではなく、授業への熱意も話術も人それぞれです。そして特に駒場の二年間の授業では、普段教授の方々がされている研究よりかなりレベルの低い講義をしているためか、モチベーションが低い先生が多いように感じます。これが東大の授業がつまらなく感じてしまう大きな原因かと思います。




じゃあ、東大の授業は受けない方が良い?

 以上、散々東大の授業のネガキャンにも見える記事を淡々と綴ってきましたが、私は決して「東大の授業なんてつまらないから受けなくても問題ない」と主張したいわけではありません。ただ、「東大の授業に過度な期待をするな」ひいては「東大に入る前に、自分のやりたいことを探しておこう」と言いたいのです。

 授業に期待しないこととやりたいことを探しておくこと、一見あまり関係がないように見えますが、私含め少なくない東大生はこの二つの繋がりを実感しているはずです。

 東大にはご存じの通り進学振り分けというとても珍しい、一見素晴らしい制度があります。二年生までは教養学部生として同じような授業を選択でき、三年生に上がる時に改めて専攻を選びなおせるという制度です。
この制度、様々な専門の教授の講義を受けてから学科を選択できるという点で非常に学生に有益なものなのですが、その代償として「とりあえず東大生」が毎年大量に生まれてしまうという欠点があります。

 「とりあえず東大生」とは、「特にやりたいことがあるわけじゃないけど、成績もいいしもし入れたらかっこいいから、とりあえず東大を目指そう」のようなノリで東大に入学してくる学生のことです。(※一般的に使われている呼称ではありません)
このとりあえず東大生、えてして東大の授業に過剰な期待をしている者が多いです。「これだけ学科があれば、適当な授業を受けているだけでやりたいことが一つは見つかるだろうなあ」、なんて考えを持ってしまいがちです。
しかし、とりあえず東大生たちが本当にやりたいことを見つけられる可能性は低いでしょう。東大の授業は、ただ教室に座って話を聞いているだけの学生を引き付けられるような面白さは持ち合わせていないのですから

 ただ東大の授業は、能動的な興味を持って聞けば必ずしもつまらないというわけではありません。予備校の人気講師の授業のようなわかりやすい面白さはないかも知れませんが、授業で扱っている内容自体はしっかりしており、「この授業から気づきを得よう」と積極的な姿勢で授業を受ければ、面白いと感じられるものもきっとあるはずです。逆に言えば、漫然と授業をうけているだけでは面白いと思えるものに巡り合うことはとても難しいでしょう。

 ただ、授業に対する積極的な姿勢を維持するのは簡単なことではありません。大学生活は高校までより遥かに多くの自由と誘惑にあふれており、そのせいで毎年多くの真面目な学生がダレてしまい、いわゆる「東大までの人(※3)」になってしまいます。

 そうならないためにも、受験生の皆さんは自分がやりたいことをしっかり考えて東大に入学してきてください。それが大学の授業を能動的に受け、楽しみ続けるための第一条件です。決して進振りの存在を免罪符にしてはいけません

 必ずしも一つ、これがやりたいと決めておく必要はありません。ただ、自分は何に興味があって、何なら楽しめて勉強できるのか等の自己分析を怠ってはいけません。そこを欠いてしまうと、漫然とつまらない授業を受け続けることになり、結局本当にやりたいことを見つけられずに終わってしまうでしょう。




最後に… 

 確かに、進振りは良い制度です、東大の一二年生に文転や理転も含めた多くの可能性を与え、毎年多くの学生が真にやりたい学問を見つけるのに一役買っています。
ただ、自由というのは常にリスクと隣り合わせです。進振りという自由に甘え、自分と向き合うことを怠ってしまうと、実りのない駒場生活を送ってしまうことになります。

 そうならないためにも…受験生の皆さん、勉強でお忙しい中だとは思いますが、自分のやりたいことをしっかり考えて東大に入学してください。きっと活力に満ちた、良い大学生活が送れると思います。




語注
1 進振り…進学振り分け制度の略。
2 イカ東…「いかにも東大生」の略。昨今、良くテレビ番組でネタにされるオタク系東大生を漠然と指すことが多い。
3 東大までの人…東大に入学するまでは良いものの、そこから伸び悩んでしまう人。「東大からの人」と対比して用いられる。

2017/06/08 K.H

2017/06/01
 今回は大分古い問題を。現行課程でギリギリ数Ⅱ積分の発展くらいの内容ですが、実質数Ⅲの範囲の問題です。東大理系用の問題とするには軽すぎですが、数Ⅲの積分を習いたてのこの時期の高3生には丁度良い練習問題?

<問題PDF>

 半径 1cm の半球形の器が水平から角 $θ$ だけ傾けて固定されている。ただし $0< \theta <\frac{\pi}{2}$ とする。この器に毎秒 $\frac{\pi}{18}$ ㎤ の割合で水を入れるとき,入れはじめてから $3+\cos^2{\theta}$ 秒後に器から水が流れ出した。このときの $\theta$ の値を求めよ。
<略解PDF>
<略解>

2017/06/01 石橋雄毅

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