センター試験という、普段とは全く違うイレギュラーな環境に対応できなかった受験生に牙を剥く科目の代表格――それが数学。一度手が止まると逸る気持ちが抑えられず、焦れば焦るほど先が見えなくなる……センター形式の数学を解いたことがある人には、この絶望感は広く共感してもらえるものと思います。ただ、東大数学がある程度安定して得点できる人間ならそれほどこのパニックに巻き込まれることは多くなく、9割以上の目標点を積極的に立てていっても多くの場合は上手くいくイメージです。
■出題内容■
では、出題内容を確認していきましょう。数学はⅠAとⅡBの2科目、どちらも試験時間は60分で各100点満点。それぞれに大問が4つずつ設定されており、出題分野・配点は次表のようになっています。
番号 |
数学Ⅰ・数学A |
数学Ⅱ・数学B |
出題内容 |
配点 |
出題内容 |
配点 |
第1問 |
方程式と不等式、論理と集合 |
20点 |
図形と方程式、三角関数、指数関数と対数関数 |
30点 |
第2問 |
2次関数 |
25点 |
微分法と積分法 |
30点 |
第3問 |
図形と計量、平面図形 |
30点 |
数列 |
20点 |
第4問 |
場合の数と確率 |
25点 |
平面上のベクトル、空間のベクトル |
20点 |
第5問 |
―― |
―― |
統計とコンピュータ |
20点 |
第6問 |
―― |
―― |
数値計算とコンピュータ |
20点 |
※ⅡBは第3問~第6問のうち、2題選択
<数学Ⅰ・数学A>
第1問は[1]と[2]の2つの中問に分かれており、前者は簡単な計算、後者は“必要条件・十分条件”がメイン。数学に自信のある人ほど、センター数学は第1問後半次第だ、となるくらいにはややこしかったりします。ちょっとした条件の読み落としが命取りになるので、試験開始直後は落ち着いて。
第2問の2次関数は大体典型的な出題。東大受験生ならまず落とせません。
東大受験生にとってセンター数学の山場とも言うべきなのがIA
第3問。図形問題は出題者の意図する誘導の流れが掴みづらく、ページ半ばで方向性を見失うと多くの場合その後一切手がつかなくなり、ここで頭が真っ白になる人も多数。このような事態に陥った時にどう軌道を修正するかがカギとなります。ヤバそうだな、と思った時は一度第4問に向かって頭をクールダウンするというのが一つの常套手段にはなっていますね。それと細かいことにはなりますが、経験上“方べきの定理”が盲点となって手が止まっていることが多いです。行き詰まった時の参考にしてみてください。
第4問は場合の数・確率。内容は標準的ですが、試験終盤で焦っていると設定を正確に把握できなくなることも。逆に、この単元は普段だと答えに自信を持つことが非常に難しい所なのですが、センターでは全問が解答欄にピッタリ合うと自信が持てるという側面があります。うまく計算で求めようとするより、数え上げてしまった方が早いこともしばしばあるので注意しましょう。
<数学Ⅱ・数学B>
こちらも
第1問は2つに分かれています。2012年度以前は三角関数、指数・対数で固定でしたが、2013年度は三角関数が外れて図形と方程式になりました。ただ、いずれにせよ東大を目指すなら例年キチンと沈めたいレベル。ここがいきなり難しくて出鼻を挫かれる年もあるにはありましたが……。
第2問は微分・積分。計算に手こずることもしばしばですが、ここをどれだけ手早く片付けられるかで後々の精神的余裕が大きく変わってきます。
第3問~第6問は選択問題ですが、多くの受験生が第3問・第4問を選択します。これは東大の2次試験の出題範囲に対応するのが第3問・第4問なので、これを選ぶのが妥当だし対策する手間もいらないだろうということからでしょう。本記事ではあくまで一般的な話をするのがメインであるので、ここでは第3問・第4問の紹介のみとさせていただきますが、別に統計やプログラミングが得意だという人はそちらを選んでも構いません。第5問はともかく、第6問なら慣れている人はすぐ解けてしまうこともあるでしょうしね。
さて、
第3問は数列。出題テーマは割とバリエーションに富んでいますが、それでも東大受験生なら学科面で特別に対策を必要とすることは無いでしょう。答えの形が決まっているので、実は具体的なnを代入して係数を逆に求めてしまうという裏技も。
そして
第4問・ベクトル。本試験では空間ベクトル・追試験では平面ベクトル、という構成が長らく続いていましたが、2013年度は本試験で平面ベクトルが出題されました。そんな些末な事には気を取られないで欲しいのですが、何よりのネックは試験時間。数ⅡBは例年時間がギリギリですから、ここに辿り着く頃にはいっぱいいっぱいということも少なくないはず。焦っていると図形的考察も鈍くなるし単純計算もミスしがちになるしでてんやわんやしますので、試験時間の上手なやりくりを心がけてください。
■参考得点■
・総合9割目指すなら……185~200点
・苦手でもここまでは……170点
・本番で大失敗……150点
一通り見てきましたが、一般的な受験生の感覚として一番注意しておきたい単元はやはりⅠA第3問・図形と計量と言えるでしょうか。これは別にⅡBを侮って良いという訳では決してなく、ⅡBは全体的に時間がかかるというだけです。他にも各人で注意すべき部分がそれぞれ出てくるでしょうが、大事なのはそういったポイントを洗い出し、それに対していざというときどう対処するのかを事前に整理しておくことです。戦略さえ万全で、本番にキチンと遂行できさえすれば、センター数学も大分安定してくるはず。以上を踏まえ、参考得点を上のように設定しました。これをもとに、皆さんにも自分の目標を微調整してもらえればと思います。
次回12/20(金)は、1題当たりの配点の大きい語学系科目のひとつ・センター英語を、大澤先生に担当していただきます。ご期待ください!
2013/12/19 石橋雄毅
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