今回は現役東大生の I 君が入試の時に書いた答案を再現してもらったものを見ていきたいと思います!2011年度入試と言えば出題傾向が変化し、大問1に(C)が追加された年です。問題数が増え、時間配分も課題となったこの問題に I 君はどんな答案を書いたのでしょうか?
「他人の痛みを理解することは出来ない。」という意見に対して自分の思うところを書け、とのことですが、賛成・反対ともに色々な意見がありそうですね。
本問のキーポイントは「ただし understand と pain は, それぞれ一回しか用いてはならない。」というこの但し書きです。この条件に適う答案を作るためには、
1. 「理解」と「痛み」というフレーズを避けた構成にする。
2. understand と pain を別の表現で言い換える。
という二つの方法が考えられます。今まで指導してきた経験では、なんとかして「痛み」を pain 以外のフレーズで言い換えようとしている生徒が多いように感じます。つまり本問では「如何に言い換えるか」が重要になりそうです。
では実際にそれぞれの立場からどんな意見が書けるのか考えてみましょう。
◎賛成派
・自分は自分、他人は他人。他人の感情なんてそもそも分かるはずが無いじゃないか!
・同じ出来事に対しても人によって感じ方は違う。感性は人それぞれだ!
◎反対派
・過去の似たような経験から他人の痛みも想像出来るんじゃない?
・失恋映画を見たら悲しくなる。心の痛みは共感できる!
こんな感じでしょうか。どんな内容であれ、単に意見を主張するだけでは説得力に欠けます。こんな時、私は「他人の痛みは理解できる!なぜなら僕は昔、〜という経験をしたことがあるからだ!」といった感じで、自分自身の経験(作り話の時も多いですが)を具体例として書いていました。
この「自分の経験談をする」というテクニック、覚えておくと便利かと思います。
■ I 君の答案
I 君はこの意見の反対の立場に立っている訳ですが、その主張をしている第一文の表現が気になります。true という単語は「(事実・現実と合致している意味で)真実の、本当の」という意味であり、本問のような自分の意見が問われている場面で使うのは適切ではありません。また「他人の痛みは理解出来ない」という一つの意見を指すのですから、 word ではなく idea や view といった単語を使った方が良さそうですね。
「賛成・反対」の主張は以下のようなシンプルな定型表現で十分かと思います。 無理に凝った英文を書くよりも、シンプルで減点されない方が重要です。
賛成・・・I agree with this idea.
反対・・・I don’t agree (disagree) with this idea.
二文目は「確かに〜ではあるが、・・・だ。」という譲歩構文を使って上手く書けています。ただ、その後の三文目との繋がりが無く、内容的にも無理があるように感じます。「他人の痛みが理解出来ないのであれば、秩序も協力も小売店もあるはずないだろ!!」...うーん 少し理論が飛躍している感は否めないと思います。
せっかくですから二文目の内容を活かしたいところ。こんな時こそ先ほどの “自分の体験談” を書いちゃいましょう。「子供の頃に骨折したことがあるから、骨折している人を見るとその人の痛みを共感出来る」ぐらいの体験談を書ければ十分でしょう!
最後に一点。最終文が間接疑問の語順になっていません!こういった単純なミスは非常にもったいない!
以上を踏まえて I 君の答案を次のように改変してみました。
I don’t agree with this idea. Although it is true that no one can tell how others feel exactly, we can imagine that based on our own experiences. I always sympathize when I see someone who break his leg because I also have broke my leg twice. That is why I think people can understand other people’s pain.
・That is why 〜 … そういう訳で〜だ。
・pain の言い換え表現 … suffering, one's feeling, how one feel ...
・understand の言い換え表現… know, imagine, sympathize ...
その他の解答例
I agree with this idea. I think it is true that you can imagine how others are suffering based on your past similar experiences. However, it is one thing to imagine others’ pains, and quite another to understand them. Since every person has his own way of feeling, different people feel differently about the same thing.
・It is one thing to 〜 and quite another to 〜 … 〜することと〜することは全く別物だ。
2014/9/26 大澤英輝