今回取り上げるのは2015年度の問題。試験を受けてきた方々、お疲れ様でした。後期試験の合格発表も3日後に迫り、いよいよ今年の東大入試も終わりですね。今年の東大英語と言えば、やはりマークシートが導入されたのが一つのニュースでしょうか。とは言えマークシートが導入されたところで受験生の負担はほとんど変わらないでしょうし、大した変化ではないというのが実感でしょうか。
英作文はどんな形式で出題されたかを見てみると、2-Aはイラストの状況説明でした。この形式は2007年度以来の出題です。毎年様々な形式で出題される東大英作文ですが、過去出題されたものと同じような形式が再び出題されたことになり、過去問演習の重要性を改めて感じます。一方、今回取り上げる2-Bは昨年度に引き続き、与えられた英語の格言について思うところを述べる形式でした。A, Bともに指示語数は60〜80語と比較的多めで、時間配分に苦労した受験生も多かったのではないでしょうか。
詳しく問題を見てみましょう。 “Look before you leap.” と “He who hesitates is lost.” という2つのことわざが与えられています。問題文で、
① 2つのことわざがどのように相反するか
② 自分にとってどちらが良い助言か
③ その理由
の3つを盛り込むように指示されています。指示どおりに書いていけば60語は悠に超えるでしょうし、文章の構成をあれこれ考える必要が無いのは嬉しいですね。
与えられたことわざの意味を考えてみましょう。勿論もともとことわざの意味を知っていれば楽でしょうが、知らなかったとしても直訳でも十分対応可能です。前者の訳は「跳ぶ前に良く見よ」、後者は「躊躇う人は失敗する」といったところでしょうか。また問題文に書かれている前提として2つは “相反する” 意味を持つこともヒントになります。日本語のことわざにはそれぞれ「転ばぬ先の杖(石橋を叩いて渡る)」、「善は急げ」に相当しそうですね。”行動を起こす前にじっくりと考えるかどうか"、という2つのことわざの意味の違いを丁寧に説明することができれば問題文の指示①はクリアー出来るでしょう。
指示②、③に関してはあくまでも「自分にとって」の話ですから、どんな内容であれ論理的に問題がなければバツにはなりません。このような「自分にとって」の答案を書く際にオススメしたいのが
“自分の体験談” を書くこと。自分の意見に対して抽象的な理由をあれこれ並べるよりも、具体的な体験談を書くことの方が英語としても書きやすいですし、強固な理由付けとなります。もちろん体験談は適当な作り話でも構いません。
では実際の東大生の答案を見てみましょう!今回は法学部のN君に答案を作ってもらいました!
■ N 君の答案
まず文法的面を見てみると、2行目の later は latter の誤りですね。later, latter ともに late の比較級ですが、later は "時間がより遅いこと” 、latter は "順番がより遅いこと” を意味します。「前者、後者」という意味で使う際には "the former”, “the latter” のように “the” を忘れずに。
5行目の "seem to be too busy” の箇所は、to be を省略可能です。seem C と seem to be C は、前者が「(主観的に見て)C のように見える」、後者が「(主観的事実に基づいて)C のように見える」という意味で使われる場合が多く、今回は前者の方がベターでしょう。
内容面を見ていきましょう。問題文に「内容の相反することわざ...」という文言があるので最初の “These two sayings are opposite.” の文は必ずしも必要でないかと思います。問題文の指示①については大きな問題は無いでしょう。ただ、指示③、つまり何故自分にとってそのことわざが適しているかの部分がもう少し改善出来そうです。
「いつも忙しくしているから多くのチャンスを逃している。だから十分な時間を持つことは重要だ」といった内容ですが、”行動を起こす前にあまり考えない” ことと “忙しい” ことには必ずしも因果関係が無いように思えます。同じような内容で書くのであれば、例えば以下のような流れはどうでしょうか?これにも ”自分の経験” を盛り込んでみました。
普段の自分は “He who hesitates is lost"
↓
友達から依頼された事は深く考えずに何でも引き受けてしまう。
↓
その結果多くのことを抱えて忙しくなり、終わらなくなってしまう。
↓
“Look before you leap.”に従い、引き受ける前に自分が出来るかどうかを熟考すべき。
以上の流れでN君の答案をブラッシュアップしてみました!
The first proverb recommends us to think carefully before we do something, while the second proverb tells us to act quickly, otherwise we’ll fail.
I think the first one is suitable for me.
When my friends ask me to do some tasks, I always undertake them without thinking carefully. As a result, I’m always busy in working. Sometimes I fail to complete them because of lack of time. So I should think carefully before I undertake somebody’s requests.
その他の解答例
The former saying recommends you to take time to think before you do something. The latter tells us that making a quick decision is much better idea.
For me, the second proverb is the better advice.
I often miss my opportunities because I take too much time. For example, when I was shopping at the clothing store I found a nice jacket. While thinking whether I should buy it or not, someone came and bought it! It was the last one and I failed to get it.
2015/3/20 大澤英輝