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三省堂『化学の新標準演習』

『センター試験で8割に遠く及ばない』『学校の傍用問題集の問題は解けるけど、応用問題にはなかなか歯が立たない』という人におすすめの参考書、『化学の新標準演習』を紹介します。
 『化学が苦手で、いつも他の科目の足を引っ張ってしまう』…そんな悩みを抱えた東大受験生も少なくないと思います。ひとくちに化学が苦手といっても、大きく2タイプに分けられるでしょう。1つは『センター試験で8割に遠く及ばない』というタイプ。もう一つは、『センター試験は8割以上とれるけど、東大の問題になると20点くらいしか取れない』というタイプ。今回は『センター試験で8割に遠く及ばない』という前者のタイプの人におすすめの参考書、『化学の新標準演習』を紹介します。

 また、後者の『センター試験は8割以上とれるけど、東大の問題になると20点くらいしか取れない』というタイプの人には、『化学の新演習』『重要問題集』などのより実戦的な問題集をおすすめしますが、『セミナー化学などの学校傍用問題集の問題は解けるけど、化学の新演習や重要問題集のような応用問題にはなかなか歯が立たない』という方にも本書は役に立ちますので、この記事を読んでいただければと思います。


 『センター試験も8割にとどかない』という人は、結局のところ『基礎基本ができていない』場合が多いです。その場合は、焦って過去問や難しい問題集を解いてみても、なかなか歯が立ちません。それではますます自信を無くすばかりです。また、解説を読むと分かったような気持ちにもなるかもしれませんが、基本が身についていないので数週間も立てばまた元通り...。それではあまり効率のいい勉強とは言えませんよね。

 そういう時は、思い切って、基礎基本から固めていくことが一番の近道になります。そして、その際にお勧めしたいのが、『化学の新標準演習』です。
 著者は、『化学の新研究』『化学の新演習』でおなじみの卜部吉庸。問題数は、例題が153問に練習問題が560問とかなりボリュームがあります。問題のレベルは、教科書に載っているような基礎的な内容から、入試問題にとりあげられそうなやや発展的な内容まで幅広く含まれています。すなわち、この1冊で、学校の傍用問題集のレベルから発展的な問題集のレベルまで完成させられるというのが、この本の最大のセールスポイントになると思います。


 それでは、『化学の新標準演習』の特徴と、おすすめの使い方を紹介していきます。

 構成としては、化学の単元ごとに、『要点のまとめ』『確認&チェック』『例題』『練習問題』『センターチャレンジ』に分けられています。また、別冊に解答解説がついています。

 『要点のまとめ』『確認&チェック』は、学校で学んだことをもう一度思い出し、ポイントを確認するうえで役立てていくといいでしょう。『セミナー化学』などの学校の傍用問題集での使い方と同じイメージです。もし、学校で学んだ内容もかなり抜けてしまっている…ということであれば、まずは『要点のまとめ』を自分でノートにまとめ、分からない所は教科書や『化学の新研究』で調べるといいでしょう。

 『例題』については、入試頻出の標準問題とその解説が、単元ごとに5問程度取り上げられています。例題に載っている解法を一つ一つおさえていくことで、その単元の問題を解くうえでのポイントが身につくように工夫されています。ポイントを確認した後は、この『例題』を丁寧に解き、解法をまとめていきましょう。
 例題を一通り解き終わった後の練習用として設けられている問題編は、二次試験を念頭に置いた記述中心の問題『練習問題』と、センター試験を念頭に置いた記号選択問題『センターチャレンジ』に分けられています。
 『まずは二次試験よりもセンター試験で高得点を取れるようになりたい』という方も、できれば『練習問題』『センターチャレンジ』の全問題に目を通すことをお勧めします。というのも、『センターチャレンジ』のみでは問題数が少なく、演習量が不足してしまうからです。時間が足りない人はむしろ、『センターチャレンジ』は後回しにして、まずは『練習問題』をしっかり固めるというやり方でも、センター試験で高得点を取るのに必要な力が十分につくはずです。

 また、問題の解説はかなり丁寧に、詳しく書かれています。嬉しいのは、問題を解くうえでのポイントが太字で書かれていて、分かりやすい点。
 特に化学に苦手意識を持っている人は、はじめは本書の問題でも解けない問題がたくさんあるでしょう。そういう人は、間違えた問題の解説を読むときに、太字になっているポイントをチェックし、必要に応じてまとめていきましょう。そして時間を置いてもう一度問題を解いてみる、という勉強法を行っていけば、着実に解法が身についていくと思います。

 玉に瑕なのは、理論化学の演習問題で、問題で与えられている有効数字と解答の有効数字が異なっている個所がある点。自身で丸付けする際には、気を付けてみてください。


 最後に、学習計画を立てる上でアドバイスをさせてください。冒頭でも紹介しましたように、この問題集はかなり問題数が多くなっています。上記のようなやり方でこの問題集をすべて完成させるとなると、やはり半年~1年ほどの期間を見ておくことが必要になります。もちろん、特に苦手な分野があるという場合には、その分野だけをこの問題集で演習することもできます。模試や定期試験の結果から、苦手な分野を洗い出し、この問題集を用いて演習をするという使い方もいいでしょう。どのような使い方にせよ、基礎を固めるには時間が必要ですから、早め早めの学習計画を立てることが肝心です。

 この問題集の問題を一通り解けるようになっていれば、センター試験は90点以上、東大化学は30点前後を狙う力がついています。さらに東大化学で安定的に高得点を稼ぎたいという方は、『化学の新演習』『重要問題集』などで、リード文の長い問題や、やや高度な思考を要する問題にチャレンジすることをお勧めします。



2016/11/10 川瀬響

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