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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2016/03/31
 新たにまた東大過去問参考書が発売されたということで、今回もその特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価


の3つの観点から、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介していきます!


◆角川学芸出版『鉄緑会 東大物理問題集』 物理
 遂に鉄緑会から物理問題集が発刊。基本的なスタイルは既刊の数学・古典・化学と変わらず、『資料・問題篇』と『解答篇』の2分冊。項目立て・クオリティも基本的には今まで通りで、安心して頼りにできます。

 「資料篇」は“東大入試物理の分析”“解答にあたっての注意点”から成ります。わずか見開き計3ページですが、特に後者では私自身も生徒指導で強くこだわる「1点でも多く取りに行くための手の動かし方」がかなり具体的に述べられており、受験生にとって侮れない内容に違いないでしょう。前者は割とどんな東大過去問参考書にも書いてあるような内容を少し詳しめにといった感じでした。

 続く「問題篇」は直近10年分の過去問に加え、もっと過去のもので演習するに相応しいセットを5回分も掲載。『東大化学問題集』同様、実際の問題冊子に似せたレイアウトが採用されていて演習の際の臨場感はタップリ。

 本書はさらにその後のオマケの「巻末付録」がとても充実していて、“テーマ講義”として「入試問題を解く上で知っていると有利になるものの,多くの参考書,問題集で取り上げられていない事柄14」(“本篇の構成”より引用)が144ページにもわたって解説されており(「問題篇」は141ページ!)、これだけでも相当の参考書であると言えます。ちなみに、その14個のテーマは次の通り。

微分方程式/仕事とエネルギー/円運動・惑星運動/重心運動と相対運動/気体分子運動論/熱力学第一法則/ドップラー効果/単スリット/コヒーレンス/静電場の性質/ガウスの法則とコンデンサー/コンデンサー・コイルを含む直流回路/電磁誘導/荷電粒子の運動

見る人が見れば、先の文句も納得の濃ゆい項目立てとなっていますが、一部単元はかなりハイレベルであり、人によっては深入りし過ぎぬよう注意が必要です。また、このテーマ講義でも随所に“確認問題”として「問題篇」未収録の東大の古い過去問や他大の問題が用意されていて、いよいよ単なる東大過去問参考書の域を超えてきたように思われます。最後に、化学に続き物理にも“解答用紙サンプル”が収録。(一応、解答用紙はここにもありますよ、という宣伝はさせてくださいね……?笑)

 「解答篇」には「問題篇」の15回分の問題に対する解答・解説が掲載。各セットのトビラページにその年度の“出題テーマと難易度”“目標得点”が書いてありますが、この物理問題集ではⅠ・Ⅱ類とⅢ類のそれぞれに大問ごとにまで目標点数が用意されています。この点数は、合格する上で必要な点数としては妥当でしょう。

 各問の解答・解説は“解答例”“配点”“採点基準”“指針”“解説”から構成されています。解説は詳細かつ丁寧、図も豊富で、誰にとっても理解できるように書かれていると感じますし、一方で“参考”といった形で付された踏み込んだ内容が知的好奇心を刺激してくれることもしばしば。圧巻なのは豊富に用意された“参考問題”。解説されている問題の類題としてまた別の東大の過去問が引用されたり、解説されている問題をより深く理解するために、その問題設定を活かして作ったオリジナル問題が置かれたりしています。この問題群は、直前期に物理を鍛え抜こうと思った時役に立つであろう良問ばかりだと思います(レイアウトの都合上少し扱いづらいのが玉に瑕)。

 難易度評価については、トビラページでの大問ごとの目標得点に加え、解説ページの“配点”で、小問ごとに☆~☆☆☆の3段階で実施されています。絶対評価というよりは、その問題の小問の中での相対評価で決められているようなので、どの設問が壁になるか・どこまで解けていれば及第点なのかは一目で分かります。

 総じて、鉄緑会から出た他の科目の本同様、東大物理に対し他の追随を許さない圧倒的情報量を提供してくれていると言えます(収録されている東大の過去問なんて、参考問題を含めたら3問×15セットどころではない!)。一方で他の科目にあった冗長な印象もなく、値段の高さにさえ目をつぶれば、東大合格に向けあと一歩というところ以上の物理の学力を持つ人になら誰にでも(東大志望でなくても)薦められる一冊であると思いました。



2016/03/31 石橋雄毅

2016/03/17
 去る2月25日、26日に、東大の2次試験が行われました。そして、3月10日に合否結果がでました。合格した方、おめでとうございます!春から晴れて東大生ですね。今までとは全く異なった環境で学んでいくことになります。ぜひ、積極的に学問の世界に飛び込んでください!

 そして、東大の2次試験は、次の受験生にとっても大きなイベントだったと思います。「自分たちの東大受験まで、1年をきった」ということですからね。これから、気合をいれて勉強していきましょう! 第9回となる今回は、そんな受験生へ向けて「東大合格への生物の勉強法」について書いていこうと思います。
 ちなみに今から述べる勉強法は、多くの難関大学に対応でき、特に東大の対策には必須の勉強法であると考えています。ぜひ、一読していただきたいと思います。
 
①初級編

 生物の勉強を始めようとして、まずなにをやるかといえば、「単語を暗記する」ことですよね。生物用語を覚えていなければ、何も始まりません。東大生物を解くにはなおさらです。
 ということで、まずは単語を覚えましょう。教科書の重要な単語をマーカーで隠すなど、自分に合った暗記法を見つけることも大切ですね。
 どうしても覚えにくい単語がある場合は、「覚えにくいものをまとめるノート」を作り、このノートを毎日見返して強制的に頭に叩き込んでしまいましょう。(私も、覚えにくいものはこの方法で覚えました)

 ここでみなさんに知ってほしいのは、「生物において、単語を暗記する勉強は基礎中の基礎であり、これがすべてではない!」ということです。このあと順に話していきますが、決して単語の暗記だけで満足して終わることがないように!

②中級編

 初級編で、単語を覚えましたね。その次にやることは、「単語を説明できるようにする」ということです。
 例えば、「体液性免疫」という単語を覚えたとします(初級編)。今度は、「体液性免疫とはなにか?」を説明できるようにする、ということです。
 中級編のオススメ勉強法をお教えします。
 まず、ノートのページの左端に、単語を書きます。その横に、少しスペースを空けて、その単語の説明を書きます。これをいろいろな単語について実施して、「中級編ノート」を作りましょう。
 ノートの一例を載せますので、参考にしてみてください。
 



 ノートを作ったら、単語の説明の部分を隠し、単語だけを見てその説明をしてみて、正解を確認する、ということを繰り返します。
 これが、中級編でやってほしい勉強法です。

 この、「ノートを作る」というのが重要ですね。というのは、ノートを必死に作っている段階で、かなり覚えられるからです。ノートを作るのは正直とても大変ですが、作り終わった段階ですでに多くの知識が頭に入った状態になっているでしょう。

③上級編

 さて、初級編で単語を覚え、中級編でその説明ができるようになりました。上級編でやってほしいことは、「流れ・仕組みを説明できるようにする」ということです。たとえば、「病原性細菌などの抗原が体内に侵入してから体液性免疫が成立するまでの流れ」を完璧に説明できるようにする、ということです。「体液性免疫」という言葉を覚えるのが初級編、「体液性免疫とはなにか」を説明できるようにするのが中級編なので、これが上級編であることが納得できると思います。

 ここで大事なのは、「絵を描きながら説明できるようにする」ということです。ただ流れを説明できるようにするだけなら、教科書の丸暗記でもできてしまいます。しかし、それでは実力がついたとは言えず、考察問題にも応用できるような状態にはなれません。「生命現象を頭の中でイメージでき、それを表現できる」ようになって初めて、「生物を本当に理解できた」ことになります。

 ここで、「病原性細菌などの抗原が体内に侵入してから体液性免疫が成立するまでの流れ」を、図を用いて説明する例を挙げてみます。



 これをなにも見ずにできるようになれば、体液性免疫に関してどんな問題が出ても対応できるようになるでしょう。
 以下に、流れ・仕組みを説明できるようにしてほしい事項の例をいくつか紹介します。これらを完璧に説明できるようになることが、この勉強法の最終目標です。

・体細胞分裂と減数分裂での細胞内の様子を説明(前期、中期、後期、終期でそれぞれなにが起こるか、染色体の動きも含めて)
・体内のチロキシン濃度が低くなったとき、および高くなった時のフィードバック調節
・グルコースが呼吸によって代謝され、ATPが産生されるまで
・DNAが転写、翻訳されてタンパク質ができるまで
・シナプスでの興奮の伝達の仕組み
・音が耳に届いてから聴覚が成立するまで

 さて、いかがでしょうか。これは、ほんの一部です。他にも説明できるようになってほしい事項はいくらでもあります。それを、教科書を読んで自分で探し、自分で説明文を作って、中級編と同じくノートに書いてみてほしいと思います。




 以上が、私のオススメの生物勉強法です。上級編までしっかりやれば、ほとんどの知識問題や実験考察問題に対応できるだけの力がつきます。この勉強法が完璧にできれば、東大生物に立ち向かえるような実力を養うことができます。もちろん最終的には過去問演習をしていく必要はありますが、東大を受験するのであれば、この勉強法で培われる力は大きな味方になるはずです。

 生物の勉強法で困っている人や、これから本格的に生物の勉強を始めようとしている人は、ぜひ参考にしてみてください!

2016/3/17 宮崎悠介

2016/01/21
 センター試験を終え、ついに大学入試が本格化してきます。第8回となる今回は、東大受験までの残り1ヶ月の過ごし方や、過去問を解く際に意識してほしいことについてお伝えしていきたいと思います。是非参考にしていただき、東大合格を勝ち取ってください!

 まず、東大の過去問を解いたことのあるみなさんならいやというほど分かっていると思いますが、センターと東大では出題傾向、出題方式がまるで違います。しかし、センター向けの勉強が東大対策になっている部分もあることを認識しておいてください。それは、センターの知識問題対策です。

 東大でも、知識問題を毎年必ず出題していることはご存知だと思います。以前の記事でも触れましたが、知識問題は60点中20点ほど出題されます。1科目35点取れれば十分合格を狙える(つまり理科が合計で70点)教科において、20点を確実に取れるとしたらどうでしょう?・・・相当有利なのは間違いないですね。

 しかも、実験考察問題と違って、知識問題は教科書に必ず答えが書いてあるんです。つまり、教科書を丸覚えしてしまえば、知識問題を完答し、20点をもぎ取ることも容易いということです。これは極端な話で、知識問題を完答するのは至難の業だと思いますが、教科書という限られた範囲から20点も出題されると分かっていて、対策しない手はないです。よって、まずみなさんがやるべきことは、知識の定着です。センター対策で「生物」の範囲はあらかたやっているでしょうから、「生物基礎」の範囲を重点的にやるのがいいかもしれませんね。もちろん、生物の範囲も怠らずに。

 さて、その上で欠かせないのが、やはり東大の過去問です。過去問をやる上で意識してほしいこと(習得してほしいこと)は、「長い問題文を一字一句読み飛ばさずに熟読し」「複雑な実験の設定(なにをしている実験なのか)を理解し」「問題文から読み取った情報とあわせて、実験結果を解釈する(どういった生命現象が起きているのかを理解する)」ということです。

 東大生物は問題文がとても長いですし、制限時間もシビアなのでついつい読み飛ばしてしまいがちですが、解答するのに必要不可欠な情報が問題文に隠れていることも珍しくありません。読み飛ばしたくなる気持ちをぐっとこらえて、全文を熟読し大切な情報を読み取る訓練をしましょう。

 また、問題文に書かれている実験は設定が複雑なことが多いです。これを理解できなければ、問題を解くことはできません。しかし、ここで注意してほしいのは、「必ずしも実験設定や結果を理解してから問題を解く必要はない」ということです。問題文を読んでいるときに分からなくても、とりあえず「ふーん、なるほどね」と思って問題に取り掛かりましょう。そうすると、例えばAやBの問題がヒントになって初めてCが解ける、ということもあります。怖いのは、実験の設定や結果を理解しようとして固まってしまい、問題を解かずに時間を浪費してしまうことです。東大の理科は本当に時間との勝負なので、「そういうことをやった実験なのか、よく分からないけどあとで考えよう」という意識で問題に臨んでほしいと思います。

 以上、①知識の定着を怠らず、②上述したことを意識しながら過去問演習をする、の2点を残りの1ヶ月で必ず実施してほしいです。
しかし、一番大事なのは、「絶対に受かるんだ」という前向きな強い気持ちです。みなさんが東大に無事合格することを、心から願っております!

2016/1/21 宮崎悠介

2016/01/14
 さて、第7回になりました。今回は、第6回で扱った大問の続きです。第6回は2011年度第1問の「文1」というセクションでしたが、今回は同じ大問の「文2」というセクションを扱います。

 それでは、問題を見ていきましょう。









A
 マウスの精子の運動活性が低い実験条件では、AMP濃度が最も高くなる理由を答える問題です。
 まず、そもそもAMPはどのようにしてできるのでしょうか?問題文によれば、

2ADP → ATP + AMP …①


という反応によって産生されるようです。また、AMPが消費されるような反応は無いようです(少なくとも問題文には書いてありません)。ということは、①の反応が繰り返し行われて、AMP濃度が高くなったと考えられます。

 では、なぜ①の反応が繰り返し行われる必要があるのでしょうか?問題文によれば、①の反応はATPを再生し、さらに消費するために行われるようです。
 では、なぜATPをわざわざ再生する必要があるのでしょうか?呼吸によってATPを産生するのではだめなのでしょうか?精子の運動活性が低い実験条件を見ると、阻害剤を加えられているか、基質を加えられていないようです。ということは、呼吸によって正常にATPを産生することができなかった可能性がありますね。

 以上のことを逆算してまとめると、

呼吸によるATP生産が正常に行われない→ATPが足りない→ATPを消費してできたADPを利用してATPを再生するしかない→結果としてAMPだけがどんどん産生されていく

 ということになりそうですね。これを文章にまとめて、解答とします。

(解答例)
呼吸によるATP生産が正常に行われずATPが不足したため、生じたADPを消費してATPを再生する反応が促進された結果、AMPのみが消費されず蓄積したから。(67字)


B
 実験結果から推測できることとして誤っているものをすべてえらぶ問題です。これは、選択肢をひとつずつ見ながら、消去法で判断していきましょう。

(1)精子の運動にはグルコースが気質として使われているので、実際の受精環境にはグルコースが存在している可能性がある。
 実験①を見てみると、グルコースを基質として加えて、阻害剤はなにも加えていません。この条件だと、精子の運動活性は高いようです。ということは、グルコースが基質として使われて、ATP産生が行われ、精子の運動活性が高く保たれていると考えられますね。よって(1)は正しいです。

(2)精子の運動活性が低い条件ではATPを産生する必要がないので、ATP濃度は30分後でも低い。
 「精子の運動活性が低いからATPを産生しない」のではなく、「ATPを産生できないから精子の運動活性が低い」のです。因果関係がおかしい文です。よってこの選択肢は誤りです。
 この選択肢が誤っていることは、Aの考察からもわかります。ATPを産生する必要があったから、ATPの再生反応が促進されて、結果AMPが多量に蓄積していたのでした。ということは、ATPを産生する必要がない、というのはおかしいですね。

(3)精子の運動活性が高い場合でも精子の運動に使われるATPの量は非常に少ないので、ATP濃度は30分後でも維持されている。
 「使われるATPの量が少ないからATP濃度が維持されている」のではなく、「使われるATPの量は非常に多いので、ATP産生が活発に行われる結果、ATP濃度が高く維持されている」んですね。使われるATPの量が少なくて済むのなら、なぜ精子の運動活性が低い実験条件ではATPの再生反応が促進されるのでしょうか?これも、Aで考察したことと矛盾しますね。よって誤りです。

(4)ミトコンドリアの代謝がはたらかなくても、解糖系のみで充分、精子の運動活性が維持される。
 実験②を見ると、グルコースと阻害剤Xを加えたときは精子の運動活性が高いことがわかります。阻害剤Xはミトコンドリアでの代謝を阻害する阻害剤です。この阻害剤Xを加えたにも関わらず、精子の運動活性が高く維持されているということは、ミトコンドリアでの代謝は精子の運動活性にあまり影響しないことになります。
 では精子の運動活性の維持に重要なのはなんでしょうか?実験②では、解糖系の阻害剤は加えておらず、精子の運動活性は高いです。逆に、実験②と同じくグルコースを基質に加えていて、かつ解答系の阻害剤である阻害剤Yを加えている実験③では、精子の運動活性が低くなっています。ということは、精子の運動活性の維持に必要なのは解糖系であり、ミトコンドリアでの代謝が阻害されていても解糖系が働いていればそれで充分である、と言えます。よって(4)は正しいです。

(5)ピルビン酸が与えられても、解糖系がはたらいていないと、精子の運動活性は低いので、精子の運動には解糖系が大きく寄与している。
 実験⑤を見てみます。ピルビン酸と阻害剤Yが与えられています。ピルビン酸はミトコンドリアでの代謝の基質であり、また阻害剤Yは解糖系を阻害するものなので、この実験条件ではミトコンドリアでの代謝は正常に行われているはずです。にも関わらず精子の運動活性が低いのは、解糖系が阻害されているから、と考えられますね。つまり、選択肢の通り、解糖系が精子の運動に大きく寄与していると推測できます。よって正しいです。

(解答)
(2)、(3)


C
 実験4で、阻害剤Xを加えると精子の運動活性が低下する、とあります。ということは、ウニの精子において、運動活性にはミトコンドリアでの代謝が関わっていることがわかります。まず、グルコースはミトコンドリアでの代謝の基質ではないので、(1)は間違いです。また、グルコースと同じ単糖類であるフルクトースも間違いです。さらに、窒素を含む老廃物の量は増加していなかったことから、タンパク質やアミノ酸が代謝されたわけではないことがわかります。(タンパク質やアミノ酸は窒素を含むため、これらが代謝されると窒素を含む老廃物がでますね)
 よって、残った選択肢である(5)脂質が正解です。

(解答)
(5)


D
 Bの選択肢(1)で、哺乳類においては、グルコースが精子の運動に使われること、受精環境にはグルコースが存在している可能性があることがわかります。また、問題文には「鞭毛内の細胞質基質に存在する解糖系で生産されるATPが主に用いられる場合には、解糖系の基質が、精子の細胞外から鞭毛全体に十分に供給される仕組みが必要となる」とあります。このことから、哺乳類においては、受精環境にグルコースが存在していて、それが精子の外から鞭毛全体に供給されて解糖系で代謝され、産生されたATPが精子の運動に使われる、と考えられます。

 一方、ウニはどうでしょうか。Cで実験4に関する考察を行いました。ウニの精子では、運動活性はミトコンドリアでの代謝が関わっていること、代謝の基質に脂質を使っていることが分かりました(成分Zが減少していた、ということは、Zを使って精子が運動していたことになりますよね)。また、問題文には「ミトコンドリアにおける代謝(クエン酸回路と電子伝達系)により生産されるATPが主に用いられる場合には、ATPを鞭毛の先端まで十分量供給する仕組みが必要となる」とあります。つまり、細胞中の脂質がミトコンドリアで代謝され、産生されたATPが鞭毛全体に供給されて精子の運動に使われる、と考えられます。

 では、なぜ哺乳類とウニでは精子の運動活性に関する機構が異なるのでしょうか?それは、受精方法の違いによります。哺乳類は、体内受精をしますよね。つまり、受精環境は雌の体内ということになります。グルコースがあってもおかしくないですね。解糖系の基質が細胞外から供給されるのです。一方、ウニは体外受精です。つまり、受精環境は海水中ということになります。海水は、様々な無機塩類が溶けていますが、要するにただの塩水です。ということは、細胞外から代謝基質が供給されることは期待できませんね。よって、細胞内の成分を代謝に用いらざるを得ない、ということになります。

(解答例)
哺乳類は体内受精を行うため、母体から代謝基質を受給できる一方、ウニは海水中で体外受精を行うため、細胞外から代謝基質を受給できないから。(67字)


E
 骨格筋におけるATP供給の仕組みを思い出してみましょう。通常、骨格筋ではグルコースを代謝してATPを産生していますが、エネルギー消費量の大きい骨格筋において、呼吸だけではATP産生が間に合わないことがあります。その場合、クレアチンリン酸と呼ばれる物質からADPにリン酸が転移し、ATPが合成されるという機構によって、ATPが補給されます。これを知っていれば、この問題の答えはクレアチンリン酸であるとわかりますね。

(解答)
クレアチンリン酸






いかがでしたでしょうか?ここでも、やはり問題文に書かれていることと実験結果の両方を考慮に入れて考えることの必要性を感じてもらえたのではないでしょうか。哺乳類とウニの精子が、それぞれどのようにして運動に必要なATPを得ているのか、なんて知識は、受験生の誰も知らないですよね。「問題文の情報と実験結果を合わせて答えを導くなんてパズルみたいだ!」「教科書には載っていない知識を知ることができて楽しい!」と感じられるようになったら、東大生物マスターと呼べるかもしれませんね(笑)

(解答例まとめ)
A 呼吸によるATP生産が正常に行われずATPが不足したため、生じたADPを消費してATPを再生する反応が促進された結果、AMPのみが消費されず蓄積したから。(67字)
B (2)、(3)
C (5)
D 哺乳類は体内受精を行うため、母体から代謝基質を受給できる一方、ウニは海水中で体外受精を行うため、細胞外から代謝基質を受給できないから。(67字)
E クレアチンリン酸


2015/1/14 宮崎悠介

2016/01/04

東大数学における満点がいくらなのか,および満点を取ることについて考えてみます。



東大数学の満点

〜理系〜
2次試験の数学の満点は(1問20点×6問で)120点です。 2次試験の配点440点のうち約27%を占めています。


〜文系〜
2次試験の数学の満点は(1問20点×4問で)80点です。 2次試験の配点440点のうち約18%を占めています。



満点を取ることの難易度

東大の2次試験なので当然ですが,120点満点(or80点満点)を取るのは非常に難しいです。満点を取れば一生自慢できるでしょう(入試の点数を後々自慢する人はイヤな感じですが,東大入試満点なら多くの場合許されそう,むしろ盛り上がりそう)。


ただ,数学なので国語や英語に比べて「ちょっとした減点」が少ない(そのぶん0点も多いが)ので各大問について完答することについてはそこまでハードルは高くありません。実際,本番で(理系で)120点満点をたたき出す猛者もいます(筆者の知人に1人います)。


また,満点の難易度は年度によって大きく異なります。完答が相当難しい問題が出題された年に満点を取るのは絶望的です。



満点を狙う戦略

一般的には満点を狙うのではなくて取れる問題を確実に取ろう,という風潮がある気がします。しかし,ここではあえて満点を目指すことについて考えてみます。


〜満点を狙えるレベルの猛者におすすめの戦略〜


1.序盤はハイスピードで満点を狙いに行く,正確さよりもスピード重視。


2.試験時間の半分くらいが終了したときに
・もし本当に満点が狙えそうな場合
そのまま正確さよりもスピード重視で全問題完答を目指す。最後に(少しでもよいので)時間が許す限り検算。
・満点が厳しそうな場合(ほとんどの場合こちらになる)
潔く満点は諦める。解けた部分で失点しないように丁寧に解答を書く,検算する。



余談:プチ入試体験記

余談ですが,筆者の場合を紹介します。


今から5年以上前のことになりますが,筆者は満点を狙うという強い気持ちを持って試験に臨みました。最初の1時間ほどで大問が4つ解けウキウキしていたのですが,そこから30分以上全く進まずかなり焦りました。そこで,満点を目指すという少々無謀な目標を諦め,解けていた4問を確実に完答することを目指しました。この方針転換のもと30分以上検算に費やしました。その結果,実際4問は満点で,残り2問は0点で合計80点でした。


結論:得点できるところは確実に取ろう。

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