さて、第6回となりました。今回は、卵形成と細胞分裂についての問題を扱います。では、早速問題を見てみましょう。
A
まずは空欄補充問題です。これは特に難しい問題ではないので、完答必須です。
「生殖腺は腎臓などと同様に(1)胚葉から分化し」とあります。腎臓は腎節と呼ばれる中胚葉由来の組織から分化するので、(1)は「中」が入ります。
「始原生殖細胞はそこに入っていき、(2)細胞となる」とあります。これは精原細胞のことを指していますので、(2)は「精原」が入ります。
「大きくなった一次卵母細胞は第一減数分裂の結果、二次卵母細胞と第一(3)になる」とあります。一次卵母細胞は第一減数分裂を経て二次卵母細胞と第一極体になるので、(3)は「極体」です。
(解答)
(1) 中
(2) 精原
(3) 極体
B
一般的な体細胞分裂と卵割の違いを答える問題です。これも知識問題ですね。よく聞かれるところなので、分からなかった人は教科書を要チェックです。
卵割が体細胞分裂と違うところを箇条書きします。
・細胞周期が短い。
・娘細胞(卵割の場合は割球という)が成長せずに分裂が進む。
・初期には分裂が同調している。
この3点です。
細胞周期が短いのでどんどん分裂が進みます。また、体細胞分裂の場合は分裂後にできた娘細胞が成長してから次の分裂が起きますが、卵割の場合は娘細胞(割球)の成長を待たずに次の分裂が開始されるので、全体としての大きさが変わりません。また、分裂が開始された直後は分裂が同調しています。「分裂が同調している」というのは、分裂するタイミングが同じ、ということです。「いっせーのーせ!」で分裂するんですね。普通の体細胞分裂は、開始のタイミングはバラバラです。
(解答例)
卵割は、細胞周期が短く、割球が成長せずに分裂が進み、また初期には分裂が同調している。(42字)
C
ヒトデの卵巣に生殖腺刺激ホルモンを与えて出てくる、均一で球形の大きな細胞の招待は何か、という問題です。
まず卵巣から出てくるので、この細胞は一次卵母細胞か二次卵母細胞であるという判断がつきます。また、「この細胞をすぐに顕微鏡で観察したところ、細胞内部に大きな核が観察されたが、やがてそれらの大きな核は見えなくなり」という記述があります。これは、体細胞分裂前期、および第一減数分裂前期に見られる現象です。一次卵母細胞と二次卵母細胞のうち、これから第一減数分裂を行うのは一次卵母細胞ですね。よってこの細胞は一次卵母細胞ですので、解答は(3)です。
ちなみに、配偶子形成の問題は東大に限らずよく出題されます。各細胞の名称や、各細胞がどういう分裂を行って次の細胞を生み出すのか、しっかりと整理しておきましょう。
動物の配偶子形成を、簡単にまとめてみました。知識の抜けが無いか、今チェックしてしまってください。
(解答)
(3)
D
Cで答えた細胞の内部に観察された大きな核が見えなくなった現象についての問題です。Cで考えたように、この現象は第一減数分裂前期に見られる現象です。よって、「前期から中期への変化」である(2)が適切でしょう。
ちなみに、第一減数分裂前期で見られる現象を他に4つ言えますか?
「核小体の消失」「相同染色体の対合」「棒状の染色体の出現」「紡錘体の形成開始」ですね。言えなかった人、今すぐ教科書をチェックです。
(解答)
(2)
E
「1-メチルアデニンを加えた後に生じる、極端な不等分裂」とは、一次卵母細胞から二次卵母細胞と第一極体ができる第一減数分裂のことですね(上の図を参照)。体細胞分裂なら同じ大きさの娘細胞ができますが、卵形成における減数分裂は不等分裂です。これは、紡錘体の形成される位置が体細胞分裂と違う事によります。
では、細胞のどの位置に紡錘体が形成されると、不等分裂になるのでしょうか?
細胞分裂終期に、紡錘体の赤道面の位置で細胞がくびれて分裂が完了します。つまり、紡錘体の赤道面が細胞の赤道面と重なっていれば均等な分裂になり、細胞の赤道面と違う位置に紡錘体の赤道面があると不均等な分裂になる、ということです。
ここで、選択肢(1)~(5)を見てみましょう。選択肢のような位置に紡錘体が形成されていると、赤の線で描いたように細胞が分裂するはずです。
このように考えれば、不等分裂が起きる際の紡錘体の位置として正しいのは、(4)だとわかりますね。
(解答)
(4)
F
細胞分裂終期に細胞にくびれが生じて、そこで細胞が2つに分裂し細胞分裂が完了します。このくびれの形成には収縮環と呼ばれる構造体が関与していて、これはくびれを生じる場所の細胞膜のすぐ内側にできることが知られています。この知識があれば、(1)が正解であることはすぐに見抜けます。
しかし、この知識を持ち合わせていなくても、実験結果から推察することはできます。
実験2で、紡錘体が完成された後に紡錘体を吸い取ると細胞にくびれが生じるとあることから、紡錘体はくびれの形成に関係ないことが分かります。よって(3)(4)は正解から外れます。また紡錘体を吸い取ることで、紡錘体の赤道面を含む平面の細胞質も吸い取ってしまうと考えられるので、(2)も誤りです。さらに、くびれは染色体が両極に移動してから生じるものなので、(5)も誤りであると考えられます。よって、消去法から(1)が正解です。
(解答)
(1)
いかがでしたでしょうか?
教科書的な知識と実験結果を組み合わせて考えるということを体験していただけたのではないでしょうか。今回の問題は若干知識重視だったかと思いますが、良いトレーニングになると思います。しかし、今回問われた知識は、重箱の隅をつつくような知識でしたか?・・・決してそうではないですね。東大といえど、聞いてくる知識は意外と普通なレベルのことです。だからこそ、基本中の基本である教科書をどれだけ大事にしてきたかが問われますね。
みなさんも、「東大対策だから」と力んで小難しい参考書や問題集に走らず、基本を大事にしていきましょうね。
(解答まとめ)
A (1)中 (2)精原 (3)極体
B 卵割は、細胞周期が短く、割球が成長せずに分裂が進み、また初期には分裂が同調している。(42字)
C (3)
D (2)
E (4)
F (1)
2015/12/10 宮崎悠介