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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2015/01/09


2007年の問題形式は少し特殊で、指示された3つのポイントに触れながら2人の会話を要約せよ、というもの。他の年の過去問を見てみるとイラストの場面を想像させたり、とある命題に対する意見を述べさせたりと、”自由” 英作文の色が強いのが東大の英作文ですが、今回の問題はどちらかといえば和文英訳に近いテイストを感じます。前年の2006年の英作文では(A)で2人の会話を要約する問題、(B)で指示された3つのポイントに触れながら自分の意見を述べる問題が出題されており、本年はそれらをミックスしたような形式と言えます。

先に述べたように答案に盛り込むべきポイントは指示されており、「何を書けばいいか」で迷う人はほとんどいないはず。与えられた日本語を「どうやって書くか」が重要になりますが、東大の自由英作文ばかり練習している人にとって、こういったタイプの問題は意外と慣れていないものなのかもしれません。とはいえ二人の会話に難しいところはなく、文字数も多くないのでそれほど時間がかかる問題では無いはず。むしろ如何に60字以内にポイント3つを盛り込むかがキーになるかもしれません。

盛り込むべき内容は以下の3つ。

・生徒がどのような悩みを持っているか
・生徒の英語学習のどこが間違っていたのか
・教師はどのようなアドバイスをしたか


これに対する答えを見つけるのは簡単です。それぞれ該当する発言を抜き出してみましょう。

・生徒がどのような悩みを持っているか
いくら練習しても英語の聞き取りがうまくできるようにならないんです。

・生徒の英語学習のどこが間違っていたのか
そんなに難しい英語を聴いても分からないでしょう。
ある程度中身が理解できるくらいの教材を選ばないと。

・教師はどのようなアドバイスをしたか
毎日易しい英文の聞き取りをやって、それと同時に内容的に関連する読み物を辞書を引きながら丁寧に読んでごらん。

あとはこれらを英語に直していけば良い訳ですが、全ての要素を完璧に盛り込もうとすると文字数が足りなくなってしまい兼ねません。
例えば2つ目のポイントの「ある程度中身が理解できるくらいの教材」なんてのも丁寧に訳そうとすれば、
materials which he can understand to some extent.
のように書けると思いますが、言ってしまえば
easy materials
でも大まかな意味は通る訳です。和文英訳では、確かに関係詞を使うことで与えられた和文の意味そっくりの英文を作ることはできます。それは決して悪いことではなく、むしろ受験英語という観点からは強力な武器になり得ます。ですが制限字数と相談しながら、 ”シンプルに書けるところはシンプルに書く” ことの練習もしておくと良いかもしれません。同じ制限字数でも一文が短ければ短いほど多くの要素を答案に盛り込むことができますからね。

例えば生徒指導をしていると、何かの命題に対する賛否を問われるタイプの問題に対して、

・私は〜に対して賛成です。
・その理由は…だからです。
・こういう訳で私は〜に賛成です。

ぐらいの構成で答案を作る生徒をよく目にします。2文目の理由に関する文がものすごく長くて文字数を稼いでる感じですね。もちろん論理的・文法的におかしくなければそれで十分点数は入るとは思いますが、もっと一つ一つの要素をシンプルに、コンパクトに書けることができれば、より多くの要素が入った充実した答案が書けるかもしれません。自分の意見の具体例を入れてみたり、反対意見も盛り込んで譲歩構文で書いてみたり…なんてこともできるでしょう。 もしそれで字数が余ってしまえば関係詞を使って丁寧に書き換えてあげれば良い訳ですからね。 ”シンプルに書けるところはシンプルに書く” これが大問1の要約にも通ずるものがあるかもしれません。


さて今回の問題からは少し脱線してしまいましたが、この問題に対する現役東大生の答案を見てみましょう!!今回は工学部4年生のO君に答案を考えてもらいました!



■ O君の答案


含めなければならないポイントにしっかりと触れてあり、内容的にはほぼ問題ない答案であると言えそうです。「上手くできるようにならない」を have difficulty improving… で表現するのもピッタリです。一点指摘するのであれば、3文目の what he is listening という部分は現在進行形にしない方が良さそうです。今まさに英語を聞いている訳ではありませんからね。

先に述べた ”シンプルに書く”という観点から言えば、例えばこの答案に書いてある
read some books which is related to what he listens...

read related books...
ぐらいで書いてしまうこともできるでしょうし、「辞書を引きながら」は “with a dictionary” だけでも大丈夫かと思います。(もちろんこの答案のままでも全く問題ありません。)

以上を踏まえてO君の答案をブラッシュアップしてみました!

The student says he has difficulty improving his ability of listening to English no matter how hard he practices. The teacher tells him that he listens to too difficult English for him. So the teacher advised him to listen to easier one and read related passages with a dictionary.

・have difficulty (in) 〜ing … 〜するのに苦労する
・no matter how 〜 … 〜どんなに〜しても
・consult a dictionary = look up a word in a dictionary … 辞書を引く

その他の解答例

The student can’t get better at listening to English however hard he tries. The teacher points that he is always listening to the English which is too difficult for him. So the teacher recommends him to listen to the one he can understand and read related passages while looking up words in a dictionary.

2015/1/9 大澤英輝

2014/12/31
 約一ヶ月に渡ってお送りしてきた本企画ですが、いかがだったでしょうか。各科目の得点について大体妥当なイメージを作れたところで、最終回となる今回は、それを踏まえどのように自分のターゲット得点を各自設定していくかを考えていきたいと思います。


 まずは、第0回にも載せた各科目の参考得点一覧を改めて見てみましょう。

教科 参考得点A 参考得点B 参考得点C 参考得点D

理系

理系国語

55

40

35

30

理系数学

100

理Ⅰ・理Ⅱ:60
理Ⅲ:80

理Ⅰ・理Ⅱ:40~50
理Ⅲ:60~70

10~30

物理

54

42

36

24

化学

50

40

30

20

生物

48

36

30

25

英語

100

84

72

50

文系

文系国語

70

60

55

50

文系数学

70

56

40

20

日本史

48

40

38

30

世界史

52

42

36

30

地理

50

45

35

30

英語

100

84

72

50


※参考得点A…得意なら目指してみよう  参考得点B…標準的な目標
 参考得点C…苦手でもここまでは    参考得点D…本番で大失敗
 詳しくは「二次得点の常識 第0回:序」をどうぞ


 この点数は、東大入試ドットコムのメンバーが持つ共通見解としてのイメージを各科目それぞれ別々に反映させていった結果のものなのですが、面白いことに合計点として見てみても意味のある値になっています。一例として、例えば“理系国語・理系数学・物理・化学・英語”というオーソドックスな理Ⅰ受験者の科目の合計点を計算し、センターが約9割できるとして100/110を足してみると、

全部参考得点A(得意)の場合:359/440 + 100/110 = 459/550(≒例年の理Ⅰ合格者最高点)
全部参考得点B(標準)の場合:262/440 + 100/110 = 362/550(≒例年の理Ⅰ合格者平均点+α)
全部参考得点C(苦手)の場合:213/440 + 100/110 = 313/550(≒例年の理Ⅰ合格者最低点)

となり、この得点感覚が概ね間違っていないことの裏付けと言えるでしょう(合格者の点数についてはこちら)。“合格者平均点+α”となっているのは、おそらく標準的な理系合格者にもひとつくらい苦手科目があるということを表しているのだと考えられます。


 また“文系国語・文系数学・世界史・地理・英語”という文系セットでは

全部参考得点A(得意)の場合:342/440 + 100/110 = 442/550(≒例年の文系合格者最高点)
全部参考得点B(標準)の場合:282/440 + 100/110 = 382/550(≒例年の文系合格者平均点+α)
全部参考得点C(苦手)の場合:238/440 + 100/110 = 338/550(≒例年の文系合格者最低点-α)

となりますが、参考得点Cが最低点に少し届かないのには、よく言われる“文系で社会があまり稼ぎにならないのなら英語は少し頑張る必要がある”が反映されているのでしょう。


 とにかく、ここで参考にした各科目の得点の合計は、大雑把には総合点の出来としてよく現れてくることが分かりました。つまり、この通りに“東大受験生なら普通に目指したい点数”を全科目で取ったら、合計は“東大合格者として平均的な点数”になるということです。これを踏まえて自分の実力と相談しながら、本番では失敗し得ることにも注意して、自分のターゲット得点を組み立てていけば良いのです。
※ただし理Ⅲはやはり簡単にはいかず、全科目参考得点Bでやっと合格者最低点に乗る計算になります。数学で参考得点Cならば、その分は他で取り返さねばならないので、注意して下さい。


 具体的な事例について考えてみます。例えば、先と同様“理系国語・理系数学・物理・化学・英語”を受験する、やや文系科目に自信の無い理Ⅰ受験生S君の場合。参考得点をもとにすれば、ターゲット得点は

理系国語

理系数学

物理

化学

英語

センター

合計

35

60

42

40

72

100

349/550


となり、このままの点数が予定通り取れれば安泰です。しかしこの目標点の高さに油断し、この点数をただ目標にするだけで過去問を解き、本番に臨んでしまうと、緊張感漂う空気に飲まれて数学で大失敗――参考得点Dの通り30点台なんか叩き出してしまったら

理系国語

理系数学

物理

化学

英語

センター

合計

35

30

42

40

72

100

319/550


となって、もしさらに理科が低くなってしまった場合一気に合格が際どくなってきます。

 そういった不測の事態にも対応できるよう、ターゲット得点を設定する上でとても大事なことをひとつ付け加えます。それが、昨年の企画でも述べた事ですが、

ターゲット得点は1人につき2つ想定せよ!!


ということです。すなわち、“目指すべき点数”という意味での「目標点」と、“どんなにしくじってもこの点数は割らない”と言う意味での「目標点」を設定しなさいということなんです。試験ですから、そりゃあ点は取れるだけ取るに越したことはありませんが、上ばかり見ていたけれど蓋を開けてみたら全然だった、なんてことも実はありがち。「この点数を目指してやろう」という野心を持つと同時に、「この科目で最低限ここさえ割らなければ大変なことにはならないな」ということも把握しておいて、盤石の態勢を敷く人ほど点数が安定するものだと思ってください。本稿でも便宜上、前者の目標点を“目標ライン”、後者を“最低ライン”と呼ぶことにします。


 これを踏まえ、S君は次のようにターゲット得点を設定しました。

理系国語

理系数学

物理

化学

英語

センター

合計

目標ライン

40

60

42

40

80

100

362/550

最低ライン

35

45

36

30

72

100

318/550


この点数を頭に入れて受験勉強に取り組むことで、例えば数学の過去問を解く際中に“45点を割らない戦略”に切り替える(具体的には、完答狙いから部分点稼ぎ狙いに変えるなど)ことを目的とした練習ができるでしょうし、頑張れば80点狙えるかもしれない英語を不必要に過小評価したまま勉強し続けるようなこともなくなります。入試当日だって、数学で失敗してしまったとしても、物理や化学でどれだけそれをリカバーできるのかが計算しやすくなります。


 参考までに、数学のできない文Ⅲ志望のLさんなら例えばこんなターゲット得点が考えられます。

文系国語

文系数学

世界史

地理

英語

センター

合計

目標ライン

60

45

45

45

90

100

385/550

最低ライン

55

40

40

40

80

100

355/550


数学にあまり期待はできないけれど何があっても確実に40点は取る、その上で、社会が少し稼げたら御の字、稼げなくとも絶対に足は引っ張らない――というこの戦略なら、想定の範囲のミスなら何とかリカバーできそうですよね。


 ターゲット得点は、合格できるかどうかのライン上にいる人にほど有効な概念です。「学力がギリギリなんだから、そんなもの考えている時間があったら勉強した方が良いじゃん」と言う人ほど、自分の勉強時間を最適化できず、痛い目を見ることになるでしょう。そうならないよう、過去問を解き、採点をしたら、その度に自分のターゲット得点を調整する癖を是非つけてください。科目ごとに、もっと点を伸ばすための勉強をしなければならないのか、それともその点数を安定させることを考えなければならないのかは、自分のターゲット得点を正確に立てられてさえいればそこからすぐ判断できるからです。正確なターゲット得点を自力で立てるために必要な判断材料は、この企画を通して概ね全て伝えてきたつもりです。皆様の入試当日までの全力の勉強が、少しでも合理的で効果的なものになりますよう。

2014/12/31 石橋雄毅

二次得点の常識

理系国語理系数学物理化学生物
文系国語文系数学日本史世界史地理
英語
総括


2014/12/29
 英語は二次試験の中で唯一理系と文系の出題内容が同じであり、文理問わず東大受験で非常に重要な科目です。天下の東大だからといって超難解なことを聞いてくるわけではなく、むしろ国語的な読解力を問うことに重きを置いている印象です。


■出題内容■
 大まかな出題形式と配点は以下の通り。制限時間120分で120点満点です。リーディング、リスニング、ライティングの三要素が満遍なく問われますが、特にリーディング分野では、英語を読んで解釈できることを前提とし、それを日本語でまとめさせたり説明させたりと表現力が必要な問題が多い印象です。

大問

出題内容

配点(推定)

1-(A)

要約

8〜12点

1-(B)

パラグラフ読解・整序                

12点

2-(A)

自由英作文

8〜12点

2-(B)

自由英作文

8〜12点

3

リスニング

30点

4-(A)

文法

5〜10点

4-(B)

英文和訳

12〜15点

5

長文読解

20〜30点


 それにしても、120分という時間の中でこれだけの問題数を満足いくまで解ききるのはなかなか大変。だから、時間配分や解答順序を戦略的に考えておく必要があります。そのために、まずは各大問の出題内容を見ていきましょう。

要約、パラグラフ読解
 問題冊子をめくると最初に目に入るのが英文要約です。「本文中で挙げられた例に触れながら…」といった感じで何らかの指示が入ることがまれにありますが、与えられた英文を60字〜120字程度の語数で要約させる形式は毎年ほぼ同一です。要約にかけられる時間は大体10~13分ぐらい、長くとも15分ぐらいまででしょうか。
 英文の内容は様々ですが、要約のパターンとしては「要点一つをビシッと抜き出す」パターンと「英文の流れを追ってまとめる」の2パターンに大別される印象です。どちらかといえば前者を目にすることが多く、その場合は英文中の “However” や “The point is~”、”It is true ~, but …” といったキーフレーズ、キーセンテンスを外さないことが重要です。生徒指導をしていて感じるのは「なんとなく正解っぽいことが書いてあるんだけど、結局何を言いたいのか分からないor結論がズレてる」答案が多いこと。キーセンテンスを見つけるまでは良いものの、それらを上手く組み合わせられず、点数が取れない答案をよく目にします。問われていることはあくまでも要約です。作った答案を自分で今一度読み返してみて、日本語としてちゃんと理解できますか?論理的つながりを意識して、採点者に伝わる答案作りを心がけましょう。

 第1問(B)はパラグラフ整序。文脈や指示代名詞等々に気をつけながら解いていく、落ち着いてやればパズルのようで楽しい問題ですが、実際の試験場の雰囲気と刻一刻とすぎる試験時間の中ではそんな悠長なことは言っていられません。解答は記号選択式であることもあり、ここを最後に余った時間で解くようにしている人も多いです。確かに英文の分量も多く、かけた時間に対して得られる見返りはそれほど高くないかもしれません。試験終了1分前に適当に書いた記号が当たっている、そんなことを期待して初めから捨て問にするのはどうかと思いますが、ここに時間を割かずに他でじっくり点数を取る、それも一つの戦略です。
 高得点を狙っていく人は、◯×がはっきりするこの問題は落とせません。問題数をこなして出題形式に慣れるとともに、速読力を鍛えたいところです。


自由英作文
 大問2は自由英作文。(A)、(B)の二題に分かれています。2009年度、2010年度の入試では(B)が与えられた英単語を英文中で適した形に変形させたり、2~5語程度の空欄補充問題になったりといった出題形式になりましたが、それ以外では基本的に(A)、(B)ともに自由英作文が課されています。
 ただしその出題内容は特定の形に決まっている訳ではなく、ある命題に対する賛成・反対を問うもの、自分の考えを述べるもの、会話の流れに合うように人物の発言を考えるもの、イラストを英語で説明するもの、といった感じで多種多用です。指定語数も毎年変動しますが、だいたい50~60語程度のものが多いです。2013年、2014年は写真に写る二人の人物の会話を創作せよ、といった形式でしたが、これが今後も続くかどうかは未知数。多くの過去問に触れ、どんな出題形式になっても動じない心構えでいたいところです。
 「どれだけ内容・表現にこだわるべきなのか」は多くの受験生が気になるポイントかと思います。これは英作文の採点でどれだけ内容に着目されるのか、と言い換えられるかもしれません。もちろん英文の内容、表現が素晴らしいものであればあるほど良いのでしょうが、内容の構想に時間をかけすぎてしまったり、気の利いた言い回しをしようとして減点を食らったりしてしまえば本末転倒です。
 実際の東大の英作文の採点方法に関しては、内容点と文法点で分かれているのか、あるいは減点法なのか、推測に基づく多くの議論がありますが、本当のところは東大の教授にしかわかりません。しかし、実際に試験を受けてみると、”思ったよりも点数が良かった”という人も多く、あくまでも感覚的にですが、英作文の採点はそれほど厳しくない印象です。いずれにせよ、確実に減点されるであろう文法のミスを減らすために「書ける内容を書ける英文で書く」ことを心がけるのは大切なことです。

 英作文については東大英作でも扱っています。東大に合格した人たちがどんな英作文を書いていたのか、そのリアルな答案を紹介していますので見てみて下さいね!


リスニング
 試験開始45分後から始まるのがリスニング。120分の試験時間のうちの30分を占めるリスニングは配点も30点と高く、英語の試験の中でも非常に高いウェイトを占めています。
 択一式の小問が15問という出題形式もあり、リスニングは英語の試験の中で最も“出来る人”と“出来ない人”の差が顕著に現れる大問かもしれません。そのリスニングで高得点を取るためにはもちろん英語を正しく聞き取る力は不可欠ですが、それ以前に「如何にリスニング向けて準備ができるか」が重要になってきます。というのもリスニングでは(2011年度入試(B)のように例外はありますが)問題冊子に問題文とそれに対する選択肢が書かれており、「何が問われているか」はリスニングを聞く前から分かる形になっています。

 「何が問われているか」が分かっていれば、その答えを言っていそうな箇所を集中的に聞けば良い訳ですから負担は一気に軽減されます。が、問題は如何にその準備のための時間を取るかです。リスニングの準備のために5分ほど時間を割き、試験開始40分ごろからリスニングの問題文を読み始める人が多いようですが、5分という時間は全ての問題文と選択肢に目を通すのには決して十分な時間ではないと思います。しかしそれ以上時間を取ってしまうのと他の大問にしわ寄せが来てしまうのも事実です。どうしても時間が足りない場合はまずは問題文に目を通し、その中の人名や年代、固有名詞等のキーフレーズをピックアップしておくと良いでしょう。最悪選択肢は読めなかったとしても、「何が問われているのか」は最低限把握した上で放送開始時間を迎えられるように準備しておくべきです。

 余談になりますが、実際に試験を受けた者の感想としてリスニングは試験会場に当たり外れがあるように思います。私の試験教室は法文一号館25教室という2階もある大教室だったのですが、放送機材があまりよくないのか、広い教室で音が反響してしまうのか、それまでに受けたあらゆる模試のリスニングよりも聞き取りづらかった思い出があります。(単に当日の緊張からそのように感じてしまっただけかもしれませんが(笑))。とは言え東大の放送機材にはそれほど期待しない方が当日焦らずにすむかもしれません。


文法、英文和訳
 第4問の(A)は文法問題です。ここ最近は整序か誤文訂正のどちらかの問題が出題されています。整序はイディオムと絡めて出題されることが多く、そのイディオムを知っていればサクッと解けてしまうことも。ただし否定の副詞による倒置のような引っ掛けには要注意です。

 誤文訂正は「文法上あるいは文脈上、取り除かれなければならない語が一語ずつある」というリード文で出題されること多く、文脈を把握するために下線部以外も読まなければなりません。とは言え“文脈上”取り除かれなければならない語は never, not, hardly といった否定語であることがほとんどですので、そこに注意する意識を持っておくと良いでしょう。特に hardly「ほとんど〜ない」 なんて単語は、hard との混同の引っ掛けを狙う意図もあるのか、文中に含まれている場合はこれが答えになる場合がほとんどです。

 このように誤文訂正の問題は“よく出るパターン”がいくつかあり、たくさん問題を解いていると自然に“怪しそうな箇所”が分かるようになってくるはずです。代表的な例としては先述した否定語、it, that のような指示代名詞、to や of のような前置詞等でしょうか。あくまでも「取り除かれなければならない語」であり、「何かと交換しなければいけない語」ではないため、動詞や固有名詞のようなそれ自体が大きな意味を持つ単語が答えになることは滅多にありません。
 第4問(A)は他の問題と比べて一題にかかる時間が少ないため、私はリスニングで一回目の放送で解き終わって2回目を聞く必要がないときなんかに解いたりしていました。ここはじっくり考え過ぎてしまうと時間がもったいない問題です。

 第4問(B)は英文和訳問題。長文の中の3箇所に下線が引いてあり、そこを訳させる形式がほとんどです。it や that 等の指示代名詞の意味を明らかにして訳せ、と指示がつく場合もありますが、その場合に限らず文脈を理解しないと上手く訳せないケースが多々あり、時間短縮のために下線部だけを見て訳出するのは危険です。
 他の大問と同様単語レベルは決して高くありませんが、下線部内に知らない単語があったら要注意です。「知らない単語だから無理だ!」と諦めてはいけません。東大も何十年も入試問題を作ってきているわけで、普通の受験生が知っている単語と知らない単語の区別はできています。それでもなお知らない単語を敢えて下線部に入れているぐらいですから、「この単語の意味を想像できますか?」と問うている訳ですね。その単語の派生語が下線部の前後に使われていることもあり、地の文にヒントが散りばめられていることも多いです。

 英文和訳問題でもう一つ注意したいのが「逐語訳」をすることです。古文の現代語訳の問題にも通ずるものがあると思いますが、下線部中の一語一語を忠実に訳出しなければ減点されてしまうでしょう。so や almost のような副詞や比較級等の意味が抜けることなく日本語訳に反映されているか必ず確認しましょう。


長文読解
 東大の長文読解では私大の入試問題で目にするようなアカデミックでガチガチな英文が出題されることは少なく、むしろ小説やエッセイの柔らかい英文が出題されることが多いです。出題内容も本文に書かれている情報を細かく処理させるのではなく、大雑把な文脈を理解した上で登場人物の発言の意図を想像させるといった、小説的な読解力が問われます。意図的に何かが隠された上で話が進み、最後でネタばらし…といった展開の小説が出題されることもあり、英語が得意な人にとっては楽しい英文でも、苦手な人は全然理解できず、迫る制限時間も相まってパニックに…なんてこともあります。

 長文読解は英語の得意・不得意により所要時間がかなり違ってきます。他の大問に時間をかけすぎて長文が壊滅してしまったり、逆に先に長文を解こうとするも気づいたらリスニングが始まる直前になってしまったりしないためにも、自分が長文にどれだけ時間を使うのかを予め決めておき、普段からその時間内で解ききる訓練をしておくべきです。一般的には20~25分程度、どんなに長くても30分で長文は切り上げないと他がツラくなってくるでしょう。


■解答順と時間配分■
 繰り返しになりますが東大英語は時間との闘いの色が濃く、戦略的に解答順序を考えるのが重要であると言えます。参考までに私は以下のような順番で解くことにしていました。

1-(A)要約(12分) → 2 自由英作文(20分) → 4-(B) 英文和訳(15分)→3 リスニング(30分)→
4-(A) 文法(5分) → 5 長文(25分)→ 1-(B) パラグラフ読解・整序(15分)

 時間配分は大まかなもので、リスニング開始5分前になったら和訳が途中でもリスニングの準備をしたり、リスニングで聞かなくてもよい部分は聞き流しながら文法に目を通したりといった感じでした。

 私は要約や英作文といった解答量が多いものを最後に残して焦りたくなかったので、それらを先に片付けて1-(B)は時間が残っていれば解く、最悪当てずっぽうになっても仕方ないぐらいの気持ちでした。もちろんこの解答順が全員にとってベストではなく、演習を通じて自分にとってベストの解答順を考えてみてください。時間配分に関しても一題一題に厳密に時間配分を決めてもよいですし、少なくとも「リスニング開始5分前までにここまで解き終わっておく」という目安ぐらいは決めておいた方が本番で大コケしないで済むでしょう。
 ただしいくら事前に時間配分の戦略を立てていたとしても出題形式が変わる場合はあります。奇しくも私が受験した2011年度入試では大問2に(C)が新たに出現した年でした。1-(C)の出現により英文が一つ増えている問題を見た私は焦ってしまい、結果解き終えることができず1-(B), (C)はともに壊滅状態になってしまいました。その経験から言えることとしては、傾向が変わっていた場合は焦らず冷静に戦略を立て直すべきです。「問題が一個増えているから普段よりとにかく英語を速く読まなきゃ!」なんてことをしてしまえば更に焦ってしまいかねません。傾向変化によってどれだけ読む量・書く量が増えたのか、それによってプラスでどのくらい時間が必要になるのか、その時間は他のどの問題で相殺できるのか(おそらく英作文、和訳あたりに割く時間を普段より短縮すべきでしょう)を考えた上で落ち着いて問題に取り組んで欲しいと思います。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……100点
・標準的な目標……84点
・苦手でもここまでは……72点
・本番で大失敗……50点

 東大英語は数学のように、問題に全く手がつけられず壊滅...といったことはまずありませんが、時間配分を間違えてしまうと壊滅寸前の状態になってしまう可能性もありません。特に入試本番は模試とは比べものにならない緊張感に包まれています。時間には普段以上に気をつけて解き進めてくださいね。
 東大英語では100点近い点数を取ってくる人(帰国子女を含む)は決して少なくありません。そこまで目指すのは難しいとしても、まず80点台あれば十分英語がアドバンテージになりますし、一方でこれは誰にでも十分到達可能な目標です。では、その80点に達する人とそうではない人の違いは何なのでしょうか。経験上、それはリスニングであることが多いです。30点の配点があるリスニングでは、満点近く取ってくる人と半分しか取れない人の間には大きな差が生まれます。リスニングで24~26点ぐらいを安定して取れるようになれば80点台がグッと近づいてくるはずです。リスニングの上達には英語を聞く量を増やすことが一番です。TEDリスニング等も活用し、とにかく英語に触れる量を増やして欲しいと思います。

 文理問わず重要科目である英語。大学に入ってからも英語の論文を読んだり書いたり、英語に触れる機会はたくさんあります。大学院まで進めば日本語よりも英語に触れる機会が多いコミュニティーに入るなんてことも多々あります。今の英語の勉強が大学入学後にも役立つものだと信じて頑張ってください!

2014/12/29 大澤英輝

二次得点の常識

理系国語理系数学物理化学生物
文系国語文系数学日本史世界史地理
英語
総括


2014/12/26
東大地理は、独特と言われる東大地歴の中では最もスタンダード(?)な問題形式です。日本史のように国語のような論述問題でも無ければ、世界史のように大論述もありません。
以下の出題形式や過去問を見ていただければ分かるように、他大学や問題集にもありそうな問題形式です。

しかし、内容については流石というか、東大らしさが随所に見られます。
特徴は大きく分けて2つ。1つは、問題量です。一つ一つの記述量が少ない分、問題数は結構なもの。比較的ハイスピードで問題を解いて行く必要があります。
もう1つは、その内容です。 パッと見ると、図表であったり地図であったりと暗記問題のように見える問題ですが、実はきちんと正解にたどり着くためには知識を元にした推論が求められます。以下、出題形式と共に見て行きましょう。


■出題内容■
 大問数は3問、それぞれの各大問が設問A〜B(C)に分かれています。

番号

出題内容

配点(推定)

第1問

系統地理(自然地理、第一次〜第三次産業)
系統地理(トピック別)、地誌(1地域)
小論述(30〜90行)、語句、記号選択形式

20点

第2問

20点

第3問

20点


過去には第3問に地誌など、大問番号ごとに出題内容がある程度決まっていましたが、近年はそこにあまり関連は見られなくなっています。
日本史のように大問ごとに…ということは出来ませんが、出題のされ方と問題構成について扱いたいと思います。


出題テーマについて
いずれの年も、系統地理(自然地理、第一次〜第三次産業)・系統地理(トピック別)・地誌の3テーマがバランス良く出題されます。後述しますが、センターレベルで85〜90%取れるだけの知識量があれば十分でしょう。

系統地理(自然地理、第一次〜第三次産業)は、農林水産業・工業・サービス業のいずれもが毎年ほぼ全て、バランス良く出題されます。トウモロコシの生産国としてアメリカを答えさせるなど、基本的な知識を問う問題もあるので、問題集に載っている基本的な地名・産業・グラフ等は押さえておく必要があります。
系統地理(トピック別)では各産業を取り巻く問題やトピックごとの問題が出題されます。例えば2012年度は論述でフェアトレードが出題され、2011年度は第1問設問Aで真正面から災害の問題が取り上げられました。
地誌では、特定の地域や国が取り上げられて出題されます。アメリカやEUは出題回数が多い傾向にありますが、ラテンアメリカやアフリカもそれなりの頻度で出題されており、まんべんなく学習しておく必要があります。


出題形式・解答形式・レベルについて
各大問、設問内に出題形式・解答形式・出題レベルともに様々な問題が混ざった形で問題が構成されています。

出題形式…一問一答形式はほとんどなく、グラフ・表・地図・統計資料を読み取って答える問題がほとんどです(設問ごとに最低1つの資料が載せられています)。近年は地形図を読み取って答えさせる出題が度々出ています。
解答形式…記号選択、短答、論述の大きく分けて3つがあります。基本的には各設問の最初の方の小問が単答、後ろの方が論述です。全問論述、という設問もあります。
出題レベル…知識として知っていることを答えさせる問題、知っている知識を元に図表や資料を読み取りながら解く問題があります。単答形式の問題にも後者が混じっていることがあるのが厄介です。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……50点
・一般的な得点……40点
・苦手でもここまでは……35点
・本番で大失敗……30点

東大地理の難しさは、まず上記に挙げたようなテーマ・出題方式がごっちゃにされていることにあります。日本史世界史のように問題構成がはっきりとは決まっておらず、年ごとに小問構成が異なります。事前に解く順番などの戦略を立てにくく、その場で臨機応変に戦略を立てる必要があります。
加えて受験生を悩ませるのは問題数の多さです。小問数はおおよそ18〜25問程度で、うち少なくない割合を論述が占めます。使える時間に直すと、論述含めて1問4分程度。じっくり時間をかけて考える力というよりは短い時間内に適切な判断をどんどん下していく力を鍛える必要があります。

とは言っても、「論述の多い問題を先に解く」「4分考えて答えが出なかったら飛ばして先に回す」といった自分なりの戦略を持っておくことは可能です。他の2科目以上に、時間を測ってフルセットで行う過去問演習が大事だと言えるでしょう。 一方で、苦手でも大崩れしたり、全く手が出なかったりということが無いのは逆に利点かもしれません。他の科目の学習状況とのバランスを取りながら対策を進めてみてください。


2014/12/26 根本紘志

二次得点の常識

理系国語理系数学物理化学生物
文系国語文系数学日本史世界史地理
英語
総括


2014/12/24
理科二類志望者を除いて選択者数が少ない生物。東大理科と聞くと物理化学選択が多いのですが(理科三類受験生も!)、生物を選択しなかった受験生の声を聞くと多く聞かれるのが「問題が重い」「高得点が安定して狙いにくい」という声。
一方、大学入学後の学生からは大学の講義を受けてみて「生物受験にしておけば良かった」という声も聞かれます。

実際に問題を見てみると、研究論文など大学での生物学習内容を題材にした問題が出題されていて興味深いのですが、それをじっくり読み込んでしまうとあえなく時間切れに…
その辺りのバランスを取りテンポ良く解いていく必要があります。


■出題内容■
まずは出題内容から。形式として、やはり2科目150分・60点満点。大問数は3問、各大問内では文章が1〜3つ提示され、その後問題が続くという形になっています。

番号

出題内容

配点(推定)

第1問

遺伝子、動物(代謝・反応、生殖と発生)、植物(生物集団)

小論述(1〜4行程度)、語句、記号選択、計算

20点

第2問

20点

第3問

20点


頻出テーマはありますが、特定のテーマが出題され続けるということは無く、年ごとに様々なテーマが出題されます。


出題テーマについて
最頻出テーマとしては、「遺伝情報」「代謝」「反応と調節」。次に「生殖と発生」「生物の集団」「進化と系統」が続きます。

遺伝情報は例年ほぼ必ずと言ってよいほど1題は出題されます。遺伝分野とは言っても、発現調節に関するものから遺伝の法則まで、全体的に出題されている傾向にあります。
その他の分野も、教科書に載っている範囲からはほぼ広く出題されると考えて良いでしょう。弱点分野を残さないような対策が必要です。
旧教育課程履修者に注意しておいてほしいのは、生物Ⅱ分野の扱いです。生物Ⅱの選択分野「生物の集団」「進化と系統」は「知識を問うだけの出題はしない」との記述がありますが、実際はこれまでその分野の知識を問う出題も見られました。経過措置があるからと侮らず、この分野に関しても穴を残さない学習をしておいてください。

東大生物は教科書に載っていないような実験を出題されることで知られていますが、近年は教科書の範囲を大きく逸脱した学習範囲から(時事ネタなど)の出題が見られなくなっています。その意味でも、教科書の着実な理解が最優先と言えます。


出題形式・解答形式・レベルについて
東大生物の大きな特徴としては、
 ①実験に関する文章を読み取って解く考察問題が多いこと
 ②論述量が一定数(合計20〜30行)あること
 ③単答・論述共に基本的な知識があれば即答できる問題が一定数(20〜25点程度分)あること

が挙げられます。

①文章は、先ほど挙げたように大問1つにつき1〜3つです。そして、ほとんどの場合1つの文章につき1つの実験・調査が扱われています。つまり、東大生物を1回解くごとに5〜9個程の実験・調査について理解・考察していくことになります。
②年によって差はあるものの、論述量の合計は700字〜1000字程度。文系受験生から「大論述がある」として恐れられる世界史の総論述量が1000字前後であることを考えても、かなりの論述量です。
③論述がクローズアップされがちな生物ですが、知識問題もかなりの割合を占めています。考察問題にじっくり時間を使うためにも、知識問題を早く確実に取りきる必要があります。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……48点
・一般的な得点……36点
・苦手でもここまでは……30点
・本番で大失敗……25点

大問ごとに時間配分の戦略を立てるのは難しいのですが、上記③のように東大生物は知識系の問題のみである程度の得点が見込まれます。各文章の最初の1〜2問目がそれに当たることがよくありますが、まずそこが崩れると合格が覚束なくなるでしょう。最終的には、それを取りきった上で如何に考察問題を取るかの勝負になります。
考察問題を解く際のフレームワークとして、「どんな操作・調査をした結果、どんなことが分かったか」「実験時にどんな差をつけたらどんな変化が起きたか」に気をつけてみると良いでしょう。大学生になって論文を読んで行く際に学習する考え方なのですが、このフレームワークが身に付くと文章を早く読めるようになります。
また、計算間違いにも注意。数学・化学(・物理)でさんざん鍛えられているとは思いますが、生物でも気は抜けません。
学習の進め方としては、(論文を色々読むなんていうのもありますが)過去問・模試等で東大型の問題に慣れるのが一番です。時間配分に気をつけながら演習を積んでいきましょう。

2014/12/24 根本紘志

二次得点の常識

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