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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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追加・更新記事リスト

202件中  5件表示  <1115>
2017/01/09

慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

慶應義塾大学

 90分で大問6題の構成。大問1~4はマークシート方式で、大問5,6は単語の記述が要求されます。

 大問1,2は600~700語程度の長文読解です。語彙は少し難しめですが、文は短めで要旨も明快であるため、それほど読みにくいという印象は受けません。東大はもちろん、後述する早稲田理工の長文よりも解きやすいでしょう。
 その後ろには大問3に会話文、大問4に文法・語彙問題、大問5に派生語記述、大問6に和訳に合わせた単語の記述が続きます。全ての問題に共通することは、とびぬけて難しい知識は必要ないが、市販の単語帳や参考書に書かれている知識は隅々まで暗記していなければならない、ということです。

 例としてサンプル問題を見てみましょう。
 大問1 [1](3)の適語挿入ではconservation,innovation,renovation,reservationが選択肢となっていますがこれらの意味を混同せずに正確に答えることが要求されます。また大問5(3)ではtheoryの副詞形が問題となっています。いずれも単語帳には間違いなく載っていますが、しっかり読み込まなければ即答しづらい知識です。
 上記のように、単語帳や参考書のレベルは逸脱しないが、その詳細を問う問題が全大問を通して出題されます。対策が面倒なように思われますが、単語帳、参考書を読みこんで語彙のニュアンスまで把握することは読解力の向上にもつながります。例えば第一義が同じ「思う」という単語でもthink,assume,believe,consider,suspectの違いが何なのか分かれば、どのような確度の「思う」なのかが分かり、和訳も行いやすくなります。
 慶應対策として単語帳、参考書を読みこむのは単なる暗記以上の効果が期待できるでしょう。

サンプル問題① ~2016年 大問1~

サンプル問題② ~2013年 大問5~

形式:★★☆☆☆(一部記述だが、単語のみ)
傾向:★★★☆☆(問題文よりも選択肢の判別が難しい)
分量:★★★★☆(東大より若干少なめ)
知識:★★★★★(オーソドックスな知識の深化が求められる)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

早稲田大学

 慶應同様、制限時間は90分で大問は5題。全てマークシート方式です。

 大問1は1000語オーバーの本格的な長文問題です。厄介なことに主に科学に関する専門用語が多く出てくるため、それらの意味を推測しながら読み進める必要があります。加えて、内容一致問題の選択肢が文全体の内容を含んでおり、どこにどのような内容が記述されていたかを瞬時に思い出す力が必要です。

 大問2は難易度の高い並び替え、大問3は適誤挿入と段落整序問題です。段落整序問題は東大の大問2(b)とかなり近い形式であるため、いい練習となるでしょう。段落整序問題は他の大学では出題例が少ないので早稲田理工の受験予定がない人もこの問題だけは2(b)対策として解いてみてはいかがでしょうか。

 大問4は300語程度の長文読解問題が2つ出題されます。簡単な計算問題が出るのが特徴ですが、東大対策にはこれといって役に立つわけではないでしょう。
 大問5は単語の穴埋め問題になっています。これも東大とは無縁な問題ですが、出題形式が初見殺し(※サンプル画像参照)なので、受験する際は注意してくださいね。

サンプル問題① ~2016年 大問3~

サンプル問題② ~2016年 大問5~

形式:★★★☆☆(すべてマーク式だが、段落整序あり)
傾向:★★☆☆☆(語彙と長さがしんどい系)
分量:★★★★★(東大に近い厳しさ)
知識:★★★☆☆(年度により語彙がかなり難しい)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

理工学部 英語対決 結果

形式 傾向 分量 知識
KEIO 2 3 4 5 14
WASEDA 3 2 5 3 13
戦評

 慶應が僅差で最終戦を制した

 慶應が僅差で勝利です!全体として慶應は基本に忠実。早稲田は難易度こそ高いが、難しさの質が東大と異なる、というイメージです。慶應対策は東大だけでなく全ての受験英語の基礎につながるので、無駄になることはないでしょう。

2016/01/09 宮本 拓


ここまでの対戦結果

理工
数 学

英 語
理工
物 理

世界史
理工
化 学

日本史
理工
生 物

国 語
理工
英 語
KEIO 3 6 0
WASEDA 6 3 0

次回予告

1月12日(木) 閉会式 総括

入試問題早慶戦
<開会式>
<法学部>英語世界史日本史国語
<理工学部>数学物理化学生物英語
<閉会式>総括


2017/01/05

慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

慶應義塾大学

 前回の生物に引き続き、慶應の法学部には「国語」という試験科目はありません(それどころか、慶應のどの学部にも「国語」の試験は存在しません)。代わりに、そのポジションに位置するのが「論述力」と名付けられたこの試験。一般的な名称でいうところの小論文なのですが、毎年表紙に記されている文言がこの試験の特徴をほぼ全て表しているので、以下に全文を掲載します。

法学部の論述力試験について

 この試験では,広い意味での社会科学・人文科学の領域から読解資料が与えられ,問いに対して論述形式の解答が求められる。試験時間は90分,字数は1,000字以内とする。その目的は受験生の理解,構成,発想,表現などの能力を評価することにある。そこでは,読解資料をどの程度理解しているか(理解力),理解に基づく自己の所見をどのように論理的に構成するか(構成力),論述の中にどのように個性的・独創的発想が盛り込まれているか(発想力),表現がどの程度正確かつ豊かであるか(表現力)が評価の対象となる。

 肝心の問いですが、3000~4000字程度の課題文を何らかの指示に沿ってまとめ、その上で自分の意見を述べるのが標準的な形式となっています。

 上で見たように、「発想力」が評価の対象となっていますが、提示された課題文に関連する内容について、ある程度の知識を事前に頭に入れておかないと独創的な意見を書くことは到底できません。4つの力の内では、他に「構成力」で問われる内容も、東大対策を進める中で養える力だとはあまり言えないでしょうから、本気で高得点を狙おうと思った場合、慶應法学部向けの準備に相応の時間をかけることは必至。東大対策という観点からは、大分離れてしまうと言わざるを得ません。

形式:★☆☆☆☆
傾向:★☆☆☆☆
分量:★☆☆☆☆
知識:★☆☆☆☆


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

早稲田大学

 試験時間は90分で、東大同様古文・漢文・評論文が出題されます。2015年までは、古文・漢文がサンプル画像のような形で強引に同じ大問にまとめられ、総大問数は3題となっていたのですが、2016年にはそれが分割され4題となりました。よって、処理量はそれまでとあまり変化なく、適切な分量と言えるでしょう。ちなみに、漢文は漢詩の出題が多いです。

 解答形式は基本的にマークシート方式ですが、一部、漢字の書き取りや該当箇所の抜き出し、知識事項等、答えを自分で記述させる設問もあります。中でも特筆すべきは例年最後の設問となっている、評論文の記述問題。本文終盤に引かれた傍線に関して、本文全体の主旨を踏まえた上で100~130字で説明させる(字数・細かい指示は年度による)というもので、ほぼ東大の第1問(五)そのものです。かなり東大を意識しているのかと思いきや、今年は字数が120~180字となり、若干東大から離れてしまいました。その真意は…?

 マークシート形式ということもあり、課題文の難易度は例年結構高めです。特に評論は東大に比べてもかなり抽象度の高い文章が多いので、問いの選択肢も参考にしながら一歩一歩前に進んでいくというスタイルが標準的な受験生の戦い方と言えます。

 必要な知識量について。東大受験生が手薄な文学史に関する設問は殆ど無い一方で、古文単語・文法への正確な理解を要求する問題が出題されますが、東大対策が地に足のついた学習となっていれば十分カバーできるレベルです。

サンプル問題① ~2015年 大問一~

形式:★★☆☆☆(基本的にマークだが、最後の記述は東大感MAX)
傾向:★★★☆☆(出題分野は東大同様、文章の難易度は東大以上)
分量:★★★★★(多すぎず少なすぎず)
知識:★★★★★(特別な対策は殆ど不要)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

法学部 国語対決 結果

形式 傾向 分量 知識
KEIO 1 1 1 1 4
WASEDA 2 3 5 5 15
戦評

 慶應は「国語」ではなく「論述力」のため低評価となり、分量・知識で満点を記録した早稲田が圧勝した

 慶應法学部を併願する方の参考になればと思って書きましたが、実質不戦勝のようなものです(笑) 早稲田の点数が高めですが、「分量」「知識」の項目が点数を引き上げているだけであり、東大対策という観点では、実際はマーク主体のこの試験はやはり適さないでしょう……。ただ、受験直前でなければ、難しい文章を読む訓練には使えるかもしれません。

2016/01/05 石橋雄毅


ここまでの対戦結果

理工
数 学

英 語
理工
物 理

世界史
理工
化 学

日本史
理工
生 物

国 語
理工
英 語
KEIO 2 6 0
WASEDA 6 2 0

次回予告

1月9日(月) 9回戦(最終戦) 理工学部 英語対決

入試問題早慶戦
<開会式>
<法学部>英語世界史日本史国語
<理工学部>数学物理化学生物英語
<閉会式>総括


2017/01/02

慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

慶應義塾大学

 実は、慶應の理工学部は生物での受験ができません。なんということでしょう・・・。
 慶應の理工学部を受験する予定のみなさん、気を付けてくださいね。

形式:☆☆☆☆☆
傾向:☆☆☆☆☆
分量:☆☆☆☆☆
知識:☆☆☆☆☆


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

早稲田大学

 理科2科目で120分。2013年までは大問3問構成で、第1問が小問集合、第2問と第3問が記述式でしたが、2014年以降は大問4~5問構成で、すべて記述式となりました。2014年度以降では、それ以前と比べて小問数は大差ありませんが、小問集合が無くなりすべて記述式となったことで難易度は上がっています。試験時間を考えると分量はかなり多いです。

 小問集合の問題は、穴埋め問題や記号選択問題、計算問題、簡易的な実験考察問題など様々な形式で出題されます。難易度は標準的で、マニアックな問題はほぼ出題されません。一般的な生物の問題集を解いたことのある受験生であれば、十分取り組めるレベルの問題と言えます。

 記述式の大問は全て実験考察問題です。あるひとつのテーマに対して複数の実験を行い、その実験結果からわかることを考察する、というスタイルです。これは東大生物にも共通する特徴です。難易度は標準~やや難、といったところです。東大生物の対策としてはかなりの良材と言えるでしょう。

 東大生物と違う特徴としては、まず「記述問題に字数や行数指定がないこと」が挙げられます。東大生物では「2行程度で説明せよ」などの指定がありますが、早稲田生物では全く指定がありません。また、他の違いとして「長いリード文がない」ことが挙げられます。東大生物ではあるテーマについて長々とした説明文がついていますが、早稲田生物ではリード文はそれほど長くなく、簡単な説明のあとすぐに実験結果が続くという構成です。

サンプル問題① ~2011年 大問Ⅰ~

サンプル問題② ~2016年 大問Ⅰ~

形式:★★★★☆(記述式だが字数や行数指定なし)
傾向:★★★★☆(方向性は似ているが長いリード文なし) ※2014年以降
   ★★★☆☆(小問集合あり) ※2013年以前
分量:★★★★★(東大より多い)
知識:★★★★★(東大同様、基礎的な知識で十分)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

理工学部 生物対決 結果

形式 傾向 分量 知識
KEIO 0 0 0 0 0
WASEDA 4 4※ 5 5 18
※早稲田の2013年以前は現在と傾向が大きく異なり、「3」。
戦評

 慶應理工に生物が設定されていないため、早稲田の不戦勝となった

 今回はこのような結果となりましたが、以上の紹介の通り、早稲田生物は客観的に見て東大対策に向いていると言えます。東大志望で早稲田の受験も考えている場合、生物の過去問は時間をガッツリ演習する価値はあると思われます。

 ただし、早稲田の冒頭で紹介した通り、2013年度以前は小問集合の大問が含まれており、これは東大生物にはないものですので、演習の際は注意が必要になります。あくまで東大対策に重点を置くのであれば、2013年度以前は小問集合の大問は飛ばしてしまうというのもひとつの手かもしれません。まずは問題を実際に見て、みなさんの目で判断してみてください。

2016/01/02 宮崎悠介


ここまでの対戦結果

理工
数 学

英 語
理工
物 理

世界史
理工
化 学

日本史
理工
生 物

国 語
理工
英 語
KEIO 2 5 0
WASEDA 5 2 0

次回予告

1月5日(木) 8回戦 法学部 国語対決

入試問題早慶戦
<開会式>
<法学部>英語世界史日本史国語
<理工学部>数学物理化学生物英語
<閉会式>総括


2016/12/29

慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

慶應義塾大学

 試験時間60分100点満点。大問4題、小問50問で構成され全問マーク式です。歴史事項に関する説明文や史料が示され、その穴埋めと関連した問題に答えます。世界史と同じく近現代史に重点が置かれ、第二次世界大戦後史もよく出題されます。時代ごとの出題に加えて複数時代をまたいだテーマ史も出題されます。

 特徴的なのは文章量と選択肢数です。大問1題につきA4用紙1ページ文程度の文章を読み、解答は50〜80個の選択肢から選びます。選択肢は人名や地名、歴史用語の種類関係なく五十音順に並べられているので、文章や選択肢の読み込み方に工夫が必要です。文章の読み込み方は東大日本史に通ずるものがあります。

 問題で問われるのは人名や資料名といった固有名詞がほとんど。センター試験、東大二次試験で問われる歴史の流れとは大きく異なります。東大二次試験がセンターレベル知識+日本史の大局観を求めるとすれば、慶應日本史はセンターレベル知識+史料などプラスアルファの細部知識を求めていると言えます。東大と併願する場合には日本史はほどほどに得点し、小論文と英語で稼ぐ方が良いでしょう。

 問われる事項や傾向(特に戦後史が出題されるのはネック)が異なるため、東大二次試験とは別の対策が必要です。ただ、サンプルとして挙げた問題のように説明文・史料は読んでいて勉強になるものが多いです。解き終わった後に説明文や史料を熟読すると良い勉強になりそうです。

サンプル問題 ~2015年 大問Ⅱ~

形式:★★☆☆☆(すべて語句回答、史料の読み込み方は似ている)
傾向:★☆☆☆☆(テーマ史と戦後史が出る)
分量:★★★☆☆(読む量は東大より多い)
知識:★★☆☆☆(東大以上の知識が必要)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

早稲田大学

 試験時間60分70点満点。大問4題、小問40問で構成されマークと記述(語句を答える)で解答します。歴史事項に関する説明文が示され、関連する問題に答えます。古代〜近現代までまんべんなく扱われますが近現代がやや多め(基本、大問4問中2問が近現代史です)で第二次世界大戦後史も出題されます。

 問題形式は慶應のような特異さはありません。大問1題につき文章量はA4半分〜2/3程度で、選択肢は設問ごとに用意されます。特徴的なのは用語を漢字で解答させる問題があることくらいで、文章の読み込み方や解き方はセンター試験と似ていると良いでしょう。センター試験と異なる点としては、史料読み込み問題(特に近現代の未習史料が出る)ことが挙げられます。

 早稲田の問題は一見そこまで難しくないように思われます。実際7割程度の得点であればセンター試験の勉強内容でほぼカバーできるでしょう。しかしそれ以上を狙うとなると途端にハードルが上がります。サンプルで挙げた問題の問7の解答は「安部磯雄」なのですが、通常の日本史学習ではまず頭に残っていないでしょう(実は早稲田大学と縁の深い人物で、東伏見キャンパスには安部磯雄記念野球場があります)。日本史で高得点を狙うには、早稲田関係者なども含めた早稲田対策の知識が必要です。

 センター日本史の対策にきちんと取り組むのであればある程度の得点は見込めるでしょう。慶應と同じく高得点を狙うには負荷の高い問題です。また、慶應と同じく文章を熟読することは東大二次に向けて良いトレーニングとなるでしょう。

サンプル問題 ~2016年 大問Ⅲ~

形式:★★★☆☆(東大というよりセンターと似ている)
傾向:★★☆☆☆(戦後史が出る)
分量:★★☆☆☆(やや少ない程度)
知識:★★☆☆☆(東大以上の知識が必要)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

法学部 日本史対決 結果

形式 傾向 分量 知識
KEIO 2 1 3 2 8
WASEDA 3 2 2 2 9
戦評

 共に東大よりもセンターに似ておりロースコアとなった戦いを早稲田が制した

 東大日本史が特殊すぎるせいか、早稲田慶應とも東大二次との親和性は高くありません。むしろ比較対象となるのはセンター試験。センター日本史対策をする方であれば早稲田日本史の方が解きやすいと言えるでしょう。

2016/12/29 根本紘志


ここまでの対戦結果

理工
数 学

英 語
理工
物 理

世界史
理工
化 学

日本史
理工
生 物

国 語
理工
英 語
KEIO 2 4 0
WASEDA 4 2 0

次回予告

1月2日(月) 7回戦 理工学部 生物対決

入試問題早慶戦
<開会式>
<法学部>英語世界史日本史国語
<理工学部>数学物理化学生物英語
<閉会式>総括


2016/12/26

慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

慶應義塾大学

 慶應理工学部の理科は2科目120分で、化学として大問は3題出題されます。各大問はさらに数個の節(基本的には2つまたは3つ)に分けられており、それぞれの節が関連する内容で出題されることもありますし、関係のない問題が出題されることもあります。空欄に入る語句、数値や化学式などを答えていく形式で、東大のような1問1答形式ではありません。

 出題傾向としては、おおまかに第1問と第2問が理論化学と無機物質から、第3問が有機化合物と高分子化合物からの出題になっています。東大との比較という観点からは、見慣れない反応や現象を読み解いて解答していく問題は少なく、題材としては問題集で見たことのあるような問題が多いです。ただ、要求される計算力や思考力の水準は高く、入試化学としての難易度は高くなっています。特に、計算問題は東大と比べても遜色ないくらい煩雑なものが多く、正確に素早く計算を行っていくことが重要になります。その点で慶應理工の問題は、東大入試に向けた十分な腕試しとなると思います。
 また思考力について東大と慶應理工の相違点をあげると、慶應理工は持っている知識をストレートに用いて合理的に考えていく力を試しているのに対し、東大はそれに加えて、持っている知識をリード文に与えられた情報もヒントに加えて類推していく力も重要視しているといえます。そのため、東大化学で高得点を目指すうえで慶應理工の問題はやや物足りない部分もありますが、それでも慶應理工で要求される思考力は確実に東大入試でも生きてきます。

 分量は、時間内に完答するのは厳しい量となっていますが、東大入試との比較という観点では少なくなっています。とはいえ、正解するべき問題を正解し、捨てるべき問題を捨てる判断は、東大・慶應理工に共通して重要になるので、演習の際にはそういった戦略も意識することが大事になります。

 知識については、東大入試よりも高水準のものが問われます。受験生の手がなかなか回りにくい高分子化合物の分野からは、チロシンやシステインなどのアミノ酸や、ガラクトースなどの糖類の構造を知識として問う問題が出題されたことがあります。また、アセタール化についてリード文に説明なく出題したこともありました。極端な例では、大学範囲の電子軌道の知識(s軌道、p軌道、d軌道…)を要求されたこともあります。
 十分に勉強したうえで、それでも知らない知識を問う問題が出題された場合もあるかもしれません。よく考えても分からない場合は、焦らずに、取れる問題を確実に得点していくことが重要になります。また、基本的な内容を含めて知識問題の分量は多めなので、センター試験後も知識の確認を行っていくことは忘れないようにしてください。

サンプル問題 ~2014年 大問3(1)~

形式:★★☆☆☆(空欄補充の記述式)
傾向:★★★★☆(計算が煩雑、思考力を問う)
分量:★★★★☆(東大よりやや少なめ)
知識:★★☆☆☆(コアな知識を問う問題あり)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

早稲田大学

 早稲田理工学部の入試理科は2科目120分で、化学からは大問3題の出題になっています。第1問がマークシート方式で、第2問と第3問が答えのみの記述解答方式です。2013年度や2014年度では実験に関する描画問題が出題されています。

 出題傾向を見ていくと、第1問からは10問出題されており、それぞれがさらに3つの小問からなっています。出題分野は化学全範囲で、知識・計算問題ともに含まれており、難易度は高くありませんが解答にはなかなか時間がかかる問題です。
 第2問は基本的に理論化学と無機物質からの出題になっています。第3問は有機化合物や高分子化合物からの出題です。第2問と第3問は、リード文が与えられてそれに関連する出題がある形式となっており、東大との類似点になるでしょう。また前述の描画問題では、慶應理工ではなかなか見られない、化学に関連する現象に関して本質的な理解ができているかを問う問題が出題され、受験生の思考力を試していました。過去には、見慣れない実験に関する問題を出題して実験操作の意図を説明させる問題もあり、東大との類似点を感じます。とはいえ、特に近年の出題内容は問題集で見たことのあるような問題が多く、見慣れない現象について問う問題の出題は少なくなっています。

 分量は、東大よりは少ないですが、やはり時間内の完答には厳しい分量です。第1問については後述しますが、特に問題の取捨選択を正しく行うことが重要で、あまり時間をかけすぎないように注意する必要があるでしょう。当たり前ですが、満点を取ることよりも合格点を取ることがまずは重要です。時間配分のミスはないように気を付けてください。

 知識の要求水準は東大と同レベル程度になっています。特に早稲田理工に向けた対策は必要ないでしょう。ただし慶應同様、知識問題の出題数が東大より多いので、知識問題の失点を計算問題でカバーしようとするのは賢明ではありません。センター試験後も定期的に知識のメンテナンスを行うことが大切です。

 やや本題から外れますが、最後に早稲田理工で化学を受験するうえでの戦略について書き記しておこうと思います。それは、毎年受験生を不安にさせるもの ― 早稲田理工化学の第1問の配点についてです。
 大学から正式に公表されている情報では、化学の配点は60点(ただし、先進理工学部では学科によって重みづけがあり、この限りではありません)。そして大問数が3つ。順当に考えると、第1問の配点は20点となり、第1問を構成する10題の各問題の配点は2点となります。しかし、上述のように各問題は3つの小問からなっているわけですから、これでは部分点がつけられません。そのため、『各問題は完答しないと2点がつかない』というように言われているわけです。実際には配点は公表されていないため、確かなことは分かりません。ただ、事実である可能性がある限り、これは受験生にとっては大事になります。一方で、部分点がつく可能性も捨てることはできません。
 それでは、どのように早稲田理工の化学に立ち向かっていけばいいのでしょうか。第1問に関していえば、当たり前のことになってしまいますが、
 『可能な限り小問3つセットで確実に正解できるものを解答する』
 『小問3つセットで解答できないものも、分かる部分は解答してマークする』
 『分からない問題、時間が足りない問題は空欄にせず、勘でもいいのでマークする』
という戦法が、得点をより確実にする手段だと考えています。そして何より、時間をかけすぎないことが重要です。まずは第2問や第3問で確実に得点し、第1問は解ける問題だけ確実に解くというのが、最も安心できる戦法になるでしょう。このことを念頭において、ぜひ過去問を数年分は解いて、自分にとって最も得点効率の良い解答順序、解答時間を探してみてください。もちろん今後傾向が変わることもありえるので、問題を解き始める前には全体を見渡すことも忘れないようにしてください。

サンプル問題 ~2014年 大問Ⅱ~

形式:★☆☆☆☆(答えのみの記述式、一部マーク式)
傾向:★★☆☆☆(東大より素直な問題)
分量:★★★★☆(東大よりやや少なめ)
知識:★★★★☆(やや東大より知識問題が多め)


慶應義塾大学 早稲田大学 対戦結果

理工学部 化学対決 結果

形式 傾向 分量 知識
KEIO 2 4 4 2 12
WASEDA 1 2 4 4 11
戦評

 慶應が接戦を制して2勝目を挙げ、後半戦に望みをつないだ

 化学の入試問題については、慶應理工も早稲田理工も、形式や傾向の観点で東大との相違点が大きくなっています。東大では入試問題を通して論理的に他人に説明する力も重要視しており、記述形式の問題が多いというのが特徴です。また、長いリード文を読み込み、理解して、自分の持っている知識と組み合わせる力も重視されています。その点で慶應理工も早稲田理工も、東大よりは素直な問題が多いという結論になってしまうでしょう。

 一方で、慶應では思考力の問う問題を、早稲田では実験に関する問題を出題する傾向があり、いずれも表面的な学習だけでは得点の難しいものになっています。これらの問題に太刀打ちするためには、普段の学習から『なぜこのような現象が起こるのか』『この実験操作の意味は何だろう』と考え、調べていくことが重要になります。このような学習は、東大化学の問題で得点するうえでも非常に価値のあるものになるでしょう。今回の早慶戦は、東大入試との親和性という観点では低い得点争いになってしまいましたが、普段の勉強法という観点まで掘り下げて考えてみれば、本質的で重要なことを教えてくれる戦いになったかもしれません。

2016/12/26 川瀬 響


ここまでの対戦結果

理工
数 学

英 語
理工
物 理

世界史
理工
化 学

日本史
理工
生 物

国 語
理工
英 語
KEIO 2 3 0
WASEDA 3 2 0

次回予告

12月29日(木) 6回戦 法学部 日本史対決

入試問題早慶戦
<開会式>
<法学部>英語世界史日本史国語
<理工学部>数学物理化学生物英語
<閉会式>総括


202件中  5件表示  <1115>

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