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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2014/12/12
 点が取れるときとそうでない時の差が激しい教科の筆頭・数学。受かるかどうかは数学次第と嘆く受験生も例年多く見受けられます。


■出題内容■
 形式はずっと大問6題・試験時間150分・120点満点で、おそらく今後も変わることは無いでしょう。第何問にどの単元の問題が出る、といった傾向は無く、難易度も含め概ね問題番号にこだわりは無いようなので、配点は単純に1問当たり20点で間違いないと思われます。
 “概ね”と言ったのは、例えば解答用紙を見てもらうと分かるのですが、第3問・第6問の解答スペースはそれ以外の問題の2倍になっており、それゆえかここに計算量が多いなどちょっと重めの問題が配置されることが比較的多かったり、一方で第1問は気持ちの良いスタートを切ってもらおうとの配慮なのか気持ち軽めの問題であることが多かったりするからです。しかしその例に漏れる年もあるので、盲信は禁物です。
 各大問は0~3の小問に分かれており(2014年度には(4)まである問題が出題されましたが、これはかなり珍しい)、それを単純計算で1問当たり25分ずつで解いていくことになるわけですが、この25分という時間は重めの問題を解くにはかなり短く、試験時間をどう使っていくか戦略を練ることは東大入試突破のための重要な要素になっています。

 前述の通り東大数学では大問ごとの出題内容が決まっていないのですが、東大が好んで出題する単元というものは存在していて、ここではその東大頻出の単元について簡単に紹介しておきたいと思います。

場合の数・確率
 毎年まず間違いなく出題されます。数え上げや確率の積の法則を使うことになる問題も勿論出題されますが、東大数学というと確率漸化式の印象が強いですね。着手したら解き始めの早い段階で、どの解法を選ぶのが最適なのかを見極められる眼を養っておきたいです。また、偶奇などの場合分けに気付くことが必須・もしくは気付けるととても簡単になる問題も少なくなく、普段の演習から「どうしてこの解法だと間違いになるのか」と考えるなど、分析する力を軽んじない姿勢が大事になると言えます。
 問題によっては、わかりづらい文章が長ったらしく書いてある場合もあります。世の中の文書とは得てしてそんなもので、“わかりやすさ”と“正確さ”は必ずしも共存しないのです。その正確な問題文に対しては、自分の言葉でイメージをつけて分かりやすく状況を把握して、答えを導くに至れる力強い読解力が求められます。何にせよ、“場数を踏む”というのは最良の対策になるでしょう。

整数
 こちらもかなりの高頻度で出題されています。2000年代は“定石”を正しく運用した上で、さらにひとつまみの発想力・着眼がポイントになって完答できるような問題が多かったのですが、最近は割と本格的な難しい問題が増えてきたように感じます。問題の性質上パターンだけではどうしようもないものでもあるので、基本的な処理さえ施したら、あとは試験時間のかけ方を間違えないよう気を付けることが肝要です。

図形と方程式
 東大数学では軌跡や領域といった形での出題が印象的ですが、微分・積分や三角関数等、他の範囲との融合が出題の殆どを占めます。つまり、解析的な処理を最後には求めるけれど、その題材として図形と方程式を使うことが多い、ということです。正確な計算力がものをいうところですが、時にはベクトルの導入や幾何的考察が功を奏することもあり、人によって向き合い方が違う単元かもしれません。しかしまずは、愚直な計算でも正しい答えが出せるようになるということを姿勢として最優先してください。

空間図形
 とりわけ目立つのはやはり体積を求める問題です。積分を使って求めることが殆どですが、断面の把握が難しかったり計算量が膨大だったりして、東大形式のセットに含まれているとどうしても背筋が伸びてしまいます。高校数学全般に渡って大事なことが凝縮している範囲でもあり、この単元に安定感を持てるということは数学全体への安定感に繋がると言っても過言ではないかもしれません。一般の問題集だけでなく、過去問や東大模試の問題なども積極的に使って、存分に感覚を養ってほしい範囲になります。

極限・微分・積分
 様々な単元の設定からある関数・グラフを導いて、その最大・最小を議論させたり極限値や面積を求めさせたり……と問題のトリを飾ることの多い単元です。ただし勿論、始めから微分や積分の問題としての出題もしっかりあります。前者では、関数を導くところまでが大変であれば後の値を求めるのはオマケであることも多いですが、そうでなければ結局後者と大差ありません。その場合、最後に正しい値を得るために必要なのは言うまでもなく確固たる計算力です。試験問題から察するに、東大はこの点もたいそう大きく評価しているようです。「方針だけ確認できたからオッケ~」といった普段の学習態度はとても褒められたものではありません。

新課程について
 新課程になり動向が気になるのが、“複素数平面”の単元です。旧旧課程での出題も決して数が多い方ではありませんでしたが、東大の好きな“図形と方程式”的要素を多分に含むところです。『東大の理系数学25ヵ年』などを使って、ある程度古い過去問まで遡って見ておけると安心でしょう。
 “データの分析”も一応新しく追加された範囲ですが、これが東大入試に組み込まれる様子はなかなかイメージしづらい所です。どのように出題されるかは未知数と言わざるを得ません。

 最後に、単元という“縦割り”のことだけでなく、“横割り”のことにも目を向けておいてほしいということも伝えておきます。例えば上にも少し書きましたが、図形問題を見たら、座標の導入・ベクトルの活用・幾何的性質の利用のうちどれが使えそうかを考える癖はついているでしょうか。問題文が座標で書いてあるからといって、いつも方程式を使って解くことが最善とは限らないのです。他にも、最大・最小の議論なんかは解法のデパートですよね。一通りの教科書的学習を終えたら、問題に応じて解法を選べるだけの“引き出し”を作ることを心がけてください。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……100点
・標準的な目標……(理Ⅰ・理Ⅱ)60点/(理Ⅲ)80点
・苦手でもここまでは……(理Ⅰ・理Ⅱ)40~50点/(理Ⅲ)60~70点
・本番で大失敗……10~30点

(理Ⅰ・理Ⅱ)
 東大入試において、数学は最も安定しにくい教科であるのと同時に最も差のつきやすい教科になっています。出来る人は100点近くの高得点を平然と叩き出してくる一方で、苦手な人は40点行けばいい方……しかしながら、実はこの点数差に惑わされないことが理Ⅰ・理Ⅱ合格のためには超重要です。なぜならば、数学で100点取る人が他教科でも合格者の標準的な点数を取るならば、その人は合格ラインすれすれのボーダー争いに参加することなく余裕で合格するから――逆に言えば、数学が40点しか取れなくても他がキッチリと標準レベルまで出来ているならば、十分合格争いに加わることができるからです。この辺りの話は最終回の総括で改めて考えますが、とにかく数学40~50点くらいまでなら一般的に他教科で何とかカバーし切れます。100点取れる人もいる中で自分が40点しか取れないという事実は焦るかもしれませんが、だからと言って無闇に数学ばかり勉強するのではなく、冷静に自分の全科目のターゲット得点を確認することです。
 数学が取り立てて苦手というわけでは無い人は、とりあえず“2完(2問完答)”を目指してみてください。2完できていれば、他の大問の部分点も合計して大体60点くらいになってくるはずですが、この点数を安定して取ることができるようなら、十分な数学の力がついていると言えるでしょう。

(理Ⅲ)
 理Ⅲ志望となると事情は大きく変わってきて、数学60点でも他教科でカバーし切れるかどうかは例年ギリギリの戦いになるでしょう。東大数学60点は、人によっては並の努力をしても難しい点数となりますが、理Ⅲを目指すというからにはそこで甘えてはいられません。並以上の努力でその壁を突破してください。

2014/12/12 石橋雄毅

二次得点の常識

理系国語理系数学物理化学生物
文系国語文系数学日本史世界史地理
英語
総括


2014/12/10
 文系も理系も、東大入試はまず国語から始まります。点数の乱高下の起きにくい科目ゆえ、ここで入試の雰囲気に身を馴染ませ、できるなら後続の科目に向けて勢い付けていきたいところですね。


■出題内容■
 試験時間150分・120点満点は長らく変更なし。150分は受験生にとっては丁度良いくらいの時間なのではないでしょうか(むしろ、国語の先生などの方がもっと時間が欲しくなる)。出題形式は2000年以降、次のような形になっています。

番号

出題内容

配点(推定)

第一問

現代文

40点

第二問

古文                  

30点

第三問

漢文

30点

第四問

現代文

20点

※1999年以前は形式が大きく違うので、演習の際は注意してください。

第一問
 抽象的で硬めなイメージの強い東大入試国語第一問の現代文。設問は6つで、例年問題の体裁はほぼ決まり切っています。まず(一)~(四)がそれぞれ本文中の傍線部について「どういうことか」もしくは「なぜか」、解答用紙2行(一般に60~70字程度)で説明させる問題。問の立てられ方は非常に教育的で、傍線が引かれるのは概ね本文の要所ばかり。受験生は嫌でもこれを説明しようと本文の部分的理解を深めていくことになりますが、要所の理解を一つ一つ積み重ねれば最終的には本文全体が理解できてしまう、という寸です。このように作問のコンセプトが素直なので、ある問の解答要素が他の問の解答の要素と全く被っているとか、解答の根拠が前後の傍線部より遠くにあるとかいったことは稀なのですが、これを単にテクニックと思ってしまうと多分良い事がありません。これは本文を読み進めていくうちに“そうあるべき構成の問題になっている”と思い至れる人にこそ、意識するポイントの候補として効果を示すものです(そういう人には既に言うまでもないことなのだと思いますが)。

 (五)は傍線の引かれた、本文のクライマックスを飾る一文について「本文全体の論旨を踏まえた上で」100字以上120字以内で説明させる問題。それまでに部分的理解を助ける誘導が4問もあったわけですが、それらを踏まえて最後にどっしりと本文全体をまとめようということです。年度によっては、問題文に「本文全体の論旨を踏まえた上で」と陽には書かれていないこともあるのですが、その場合でも本文全体を踏まえてほしいことは設問内容から明らかです。

 最後の(六)は漢字の書き取り。例年4問か5問で、二字熟語が基本です。東大国語で毎年出る唯一の知識問題ということになりましょうが、漢字の程度は至って日常的なレベル――私の入試の後日、夕方くらいのニュースで“今年の東大入試の問題”のようなのが紹介されることがあって、フリップボードに書かれた“今年の東大の漢字”を見たキャスターに「東大なのに意外と簡単なんですね」と言われてしまうようなレベルです(笑) だからこそ、絶対落とせない問題だと思ってください。

 本文として選ばれるジャンルの傾向として哲学や文化論、文明論など、いくつか“東大国語に出てきそうなもの”というものは挙げられるのですが、国語の場合はそれを気にすることこそテクニックのようなものだと私は思っています。勿論、受験生でない高2以下の時点で普段からそういった文章に慣れておくことは良い事だと思いますが、受験生には演習で目の前にする文章一つ一つに対し真摯に向き合うことを大切にしてほしいです。

 設問ごとの予想配点は各予備校でもバラバラで、漢字が1個1点なのか2点なのかすら意見が割れていますが、いずれにせよ20/40は安定して取れるようになっておきたいですね。


第二問
 第二問は古文。センター古文よりはちょっと短いかなというくらいの課題文に対し、設問が5つ程度用意されています。例年(一)は古典文法や古文単語を覚えているか見ることをメインにした現代語訳が2、3問といったところで、以降はもう少し文章そのものへの理解が求められる現代語訳や内容説明の問題が並びます。

 課題文に用いられるのは、ベーシックには物語か説話。しかし最近では歌論や史書、浮世草子が出題されて、バリエーション豊かになってきました。文章は基本的に文理共通なので、難し過ぎて中身が一切わからないというようなことは(あまり本質的ではありませんが)文系の皆さんには確率的に低いと言えるでしょう。設問も一部文理共通ですが、厄介なのはそうでない、文系用に追加された設問の方で、ここはさすがに本文を深く解釈できる力が必要になってきます。無論、試験中にどの問題がそれに当たるのかを知ることはできないので、実質的に役立つ情報ではないのですが、そういった形で文系学生としての読解力・表現力が見られているということを知っておいてください。

 注は十分に付されていて、物語ではリード文に文章の背景が詳しく説明されているので、古典知識の有無で点差がつくようなことはまずありません。古典常識もあるに越したことはないのですが、実効的な東大対策としてはまず単語や文法を正しく運用し本文を読解する力・設問に対し必要な要素をわかりやすくはっきりと表現する力を養っていくことが第一です。その過程の中で周辺知識もある程度は入ってくるでしょうし、それだけで十分な点数には到達するでしょうから、特別古文が好きでない限り、単語と文法以外のことを嫌々暗記する必要はありません。まずは半分を、欲を言えば20/30を安定して取れるようになっていると心強いでしょう。


第三問
 東大漢文における課題文はセンター試験のものよりもう少しボリューミーですが、難易度的には似たようなもの。まあ選択式でなく記述式であるというのが大きなネックではあるのですが、東大古典で求められるものは総じて標準的なのです。

 設問は古文と同じく5問程度で、お馴染みの現代語訳や内容説明に加え、平仮名のみでの書き下しや本文中の空欄に当てはまる漢字を推測して埋めることが要求されるときもあります。近年では課題文が文理共通なので、難易度の特徴としては古文で述べたのと概ね同じことが言えます。漢文は古文よりも“省略する”要素が強いですが、文系に追加される設問には、特に「わかりやすく」だとか「具体的に」などと添えられた説明問題が目立ちます。それだけ、文脈をしっかり追って省かれている部分まで読みこなすことが文系の人間には求められているということでしょう。

 また漢文の設問全体でも、“漢文を読むことができる”以上の能力が求められているようには思いません。それさえ身に着けてしまえば、古文も漢文も間違いなく高得点を安定して狙える領域になってくるということです。漠然と「国語が苦手だ……」という人は、まず古典にのびしろが無いかを考えてみてください。ただ+αで付け加えると、東大の漢文では「“高校で学ぶ漢文”の知識としては知らないけれど、この文脈でこの漢字が使われたらそれはおそらくこういう意味だろう」と推測する必要のある場面が比較的よくあるように感じます。センター漢文にも似た設問がありますが、こればかりはなかなか専用の対策を立てるのが難しく、それこそ高2までにどれだけ豊かな言語的活動を営んでいたかが影響してくるところであると言えるでしょう。受験直前期はこういった設問が取れないのを嘆く前に、もっと他に重要な文法事項が抜けていたことによる失点が無いかを点検することをお薦めします。こちらも、15~20/30を目指してみてください。


第四問
 今では唯一の文系国語専用問題の第四問。これも現代文ですが、論理面が強く硬い第一問に対してこちらは感性の部分が色濃く出た軟らかい文章になっていることが多いです。その分だけこちら側で解釈してやる必要のある部分が増してくるので、読解に当たって求められるものは文系専用問題としてさすがに高くなっていると言えるでしょう。

 例年は4つの設問から構成されていて、それぞれ2行ずつで解答するところはさながら第1問の前半そのまま。聞き方も似たような形ではあるのですが、本文中の比喩的な表現がここではどういう意味で使われているのかを説明させる問題が多く、それが決して簡単ではないことが殆どです。これも努力だけではなかなかカバーするのが難しい所ですから、他で着々と成績を伸ばしているのに第四問だけが出来るようにならないと嘆く受験生は多いです。自分としては、受験生がこの得点の壁にぶち当たった時にまずできることは、読解力よりも先に表現力の方を鍛える事かなと考えています。第四問独特の“読み”を鍛えるのは第四問でしかできませんが、模範解答を書くほどの解釈の力がなくてもある程度得点になりそうな解答を書くのに必要な力は第一問にも通じます。ゼロからの努力で挽回しようという人にとっては、第一問を通して培われた力を第四問でも如何なく発揮してやろうと意識すること自体が、第四問攻略のための最初の取っ掛かりになるかなと思っているのです。努力型の人間なら、10/20以上を常にキープできるようになったら上出来です。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……70点
・標準的な目標……60点
・苦手でもここまでは……55点
・本番で大失敗……50点

 近年の傾向としては、問題文自体はどんどん易しくなっているものの、採点が少しずつ厳しくなってきているという印象です。想像以上に点数は出にくいと思っていた方が無難ですし、“今までの常識”のこの参考得点も最近ではもう少し低くすべきものかもしれません。ただ普段からの目標としては、一般的な受験生にとって60点前後を取れさえすれば国語が足を引っ張るということはまずないと思いますから、まずはこれを目安としてみることをお薦めします。例えば、大問順に20-15-15-5と取れればそれで55点に到達できます。全体的にもう少し上を目指すことは不可能ではないでしょうから、それで60点台が狙えるとなればかなり現実的な得点としてイメージできるのではないでしょうか。一般的な東大受験生の目標も大体こんなところになっています。

2014/12/10 石橋雄毅

二次得点の常識

理系国語理系数学物理化学生物
文系国語文系数学日本史世界史地理
英語
総括


2014/12/08
 点が取れるときとそうでない時の差が激しい教科の筆頭・数学。受かるかどうかは数学次第と嘆く受験生も例年多く見受けられます。


■出題内容■
 形式はずっと大問4題・試験時間100分・80点満点で、おそらく今後も変わることは無いでしょう。第何問にどの単元の問題が出る、といった傾向は無く、難易度も含め概ね問題番号にこだわりは無いようなので、配点は単純に1問当たり20点で間違いないと思われます。
 各大問は0~3の小問に分かれており、それを単純計算で1問当たり25分ずつで解いていくことになるわけですが、この25分という時間は重めの問題を解くには短めで、試験時間をどう使っていくか戦略を練ることは東大入試突破のための重要な要素になっています。

 前述の通り東大数学では大問ごとの出題内容が決まっていないのですが、東大が好んで出題する単元というものは存在していて、ここではその東大頻出の単元について簡単に紹介しておきたいと思います。

場合の数・確率
 毎年まず間違いなく出題されます。数え上げや確率の積の法則を使うことになる問題も勿論出題されますが、東大数学というと確率漸化式の印象が強いですね。着手したら解き始めの早い段階で、どの解法を選ぶのが最適なのかを見極められる眼を養っておきたいです。また、偶奇などの場合分けに気付くことが必須・もしくは気付けるととても簡単になる問題も少なくなく、普段の演習から「どうしてこの解法だと間違いになるのか」と考えるなど、分析する力を軽んじない姿勢が大事になると言えます。
 問題によっては、わかりづらい文章が長ったらしく書いてある場合もあります。世の中の文書とは得てしてそんなもので、“わかりやすさ”と“正確さ”は必ずしも共存しないのです。その正確な問題文に対しては、自分の言葉でイメージをつけて分かりやすく状況を把握して、答えを導くに至れる力強い読解力が求められます。何にせよ、“場数を踏む”というのは最良の対策になるでしょう。

整数
 こちらもかなりの高頻度で出題されています。2000年代は“定石”を正しく運用した上で、さらにひとつまみの発想力・着眼がポイントになって完答できるような問題が多かったのですが、最近は割と本格的な難しい問題が増えてきたように感じます。問題の性質上パターンだけではどうしようもないものでもあるので、基本的な処理さえ施したら、あとは試験時間のかけ方を間違えないよう気を付けることが肝要です。

図形と方程式
 東大数学では軌跡や領域といった形での出題が印象的ですが、出題は座標平面上の図形に関する標準的な求値問題と半々くらいでしょうか。軌跡・領域の問題は理系の問題と共通のことも多く、人によっては難しく感じられる人もいるかと思います。共通でないものとして、かつては線形計画法の問題をよく目にしました。
 後者の求値問題の場合は正確な計算力がものをいうところです。文系の問題の場合、内容が一本道で素直に計算を進めていくことだけが問われているようなものも多いですから、正しい答えが出せるようになるということを姿勢として最優先してください。

微分・積分
 この単元がメインに出題された場合、基本的には単純な計算問題となります。大した発想力を必要としないということは、途中の小さな計算ミスも大幅減点を免れないでしょう。「方針だけ確認できたからオッケ~」といった普段の学習態度はとても褒められたものではありません。ちなみに一時期は定積分が人気でしたが、ここ数年は微分の問題が目立ちます。まあ結局、どちらも十分できるようにして本番に臨まねばならないのですが。

 最後に、単元という“縦割り”のことだけでなく、“横割り”のことにも目を向けておいてほしいということも伝えておきます。例えば上にも少し書きましたが、図形問題を見たら、座標の導入・ベクトルの活用・幾何的性質の利用のうちどれが使えそうかを考える癖はついているでしょうか。問題文が座標で書いてあるからといって、いつも方程式を使って解くことが最善とは限らないのです。他にも、最大・最小の議論なんかは解法のデパートですよね。一通りの教科書的学習を終えたら、問題に応じて解法を選べるだけの“引き出し”を作ることを心がけてください。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……70点
・標準的な目標……56点
・苦手でもここまでは……40点
・本番で大失敗……20点

 東大入試において、数学は最も安定しにくい教科であるのと同時に最も差のつきやすい教科になっています。出来る人は70点近くの高得点を平然と叩き出してくる一方で、苦手な人は40点行けばいい方……しかしながら、実はこの点数差に惑わされないことが合格のためには超重要です。なぜならば、数学で70点取る人が他教科でも合格者の標準的な点数を取るならば、その人は合格ラインすれすれのボーダー争いに参加することなく余裕で合格するから――逆に言えば、数学が40点しか取れなくても他がキッチリと標準レベルまで出来ているならば、十分合格争いに加わることができるからです。この辺りの話は最終回の総括で改めて考えますが、とにかく数学40点くらいまでなら一般的にギリギリ他教科でカバーし切れます。40点は、“1完(1問完答)”とほぼ完答のもう1問(最後をちょっと間違えるくらい)、加えて他で少しばかり部分点を稼いでいれば取れます。1完2半(1問完答2問半答)でも良いでしょう。70点取れる人もいる中で自分が40点しか取れないという事実は焦るかもしれませんが、だからと言って無闇に数学ばかり勉強するのではなく、冷静に自分の全科目のターゲット得点を確認することです。
 数学が取り立てて苦手というわけでは無い人は、とりあえず“2完(2問完答)”を目指してみてください。2完できていれば、他の大問の部分点も合計して大体50~60点くらいになってくるはずですが、この点数を安定して取ることができるようなら、十分な数学の力がついていると言えるでしょう。

2014/12/8 石橋雄毅

二次得点の常識

理系国語理系数学物理化学生物
文系国語文系数学日本史世界史地理
英語
総括


2014/12/05
 文系も理系も、東大入試はまず国語から始まります。点数の乱高下の起きにくい科目ゆえ、ここで入試の雰囲気に身を馴染ませ、できるなら後続の科目に向けて勢い付けていきたいところですね。


■出題内容■
 試験時間100分・80点満点は長らく変更なし。100分は受験生にとっては丁度良いくらいの時間なのではないでしょうか(むしろ、国語の先生などの方がもっと時間が欲しくなる)。出題形式は2000年以降、次のような形になっています。

番号

出題内容

配点(推定)

第一問

現代文

40点~45点

第二問

古文                  

20点

第三問

漢文

15点~20点

※1999年以前は形式が大きく違うので、演習の際は注意してください。

第1問
 抽象的で硬めなイメージの強い東大入試国語第一問の現代文。設問は6つで、例年問題の体裁はほぼ決まり切っています。まず(一)~(四)がそれぞれ本文中の傍線部について「どういうことか」もしくは「なぜか」、解答用紙2行(一般に60~70字程度)で説明させる問題。問の立てられ方は非常に教育的で、傍線が引かれるのは概ね本文の要所ばかり。受験生は嫌でもこれを説明しようと本文の部分的理解を深めていくことになりますが、要所の理解を一つ一つ積み重ねれば最終的には本文全体が理解できてしまう、という寸です。このように作問のコンセプトが素直なので、ある問の解答要素が他の問の解答の要素と全く被っているとか、解答の根拠が前後の傍線部より遠くにあるとかいったことは稀なのですが、これを単にテクニックと思ってしまうと多分良い事がありません。これは本文を読み進めていくうちに“そうあるべき構成の問題になっている”と思い至れる人にこそ、意識するポイントの候補の一つとして効果を示すものです(そういう人には既に言うまでもないことなのだと思いますが)。

 (五)は傍線の引かれた、本文のクライマックスを飾る一文について「本文全体の論旨を踏まえた上で」100字以上120字以内で説明させる問題。それまでに部分的理解を助ける誘導が4問もあったわけですが、それらを踏まえて最後にどっしりと本文全体をまとめようということです。年度によっては、問題文に「本文全体の論旨を踏まえた上で」と陽には書かれていないこともあるのですが、その場合でも本文全体を踏まえてほしいことは設問内容から明らかです。

 最後の(六)は漢字の書き取り。例年4問か5問で、二字熟語が基本です。東大国語で毎年出る唯一の知識問題ということになりましょうが、漢字の程度は至って日常的なレベル――私の入試の後日、夕方くらいのニュースで“今年の東大入試の問題”のようなのが紹介されることがあって、フリップボードに書かれた“今年の東大の漢字”を見たキャスターに「東大なのに意外と簡単なんですね」と言われてしまうようなレベルです(笑) だからこそ、絶対落とせない問題だと思ってください。

 本文として選ばれるジャンルの傾向として哲学や文化論、文明論など、いくつか“東大国語に出てきそうなもの”というものは挙げられるのですが、国語の場合はそれを気にすることこそテクニックのようなものだと私は思っています。勿論、受験生でない高2以下の時点で普段からそういった文章に慣れておくことは良い事だと思いますが、受験生には演習で目の前にする文章一つ一つに対し真摯に向き合うことを大切にしてほしいです。

 設問ごとの予想配点は各予備校でもバラバラで、漢字が1個1点なのか2点なのかすら意見が割れていますが、いずれにせよ20/40は安定して取れるようになっておきたいですね。


第二問
 第二問は古文。センター古文よりはちょっと短いかなというくらいの課題文に対し、設問が3つ程度用意されています。例年(一)は古典文法や古文単語を覚えているか見ることをメインにした現代語訳が2、3問といったところで、以降はもう少し文章そのものへの理解が求められる現代語訳や内容説明の問題が並びます。

 課題文に用いられるのは、ベーシックには物語か説話。しかし最近では歌論や史書、浮世草子が出題されて、バリエーション豊かになってきました。文章は基本的に文理共通、設問も一部文理共通ですが、文系には文系用に設問が追加されていて、そういうものが大体難しかったりするので、全体として理系の標準的なレベルの問題になっています。

 注は十分に付されていて、物語ではリード文に文章の背景が詳しく説明されているので、古典知識の有無で点差がつくようなことはまずありません。古典常識もあるに越したことはないのですが、実効的な東大対策としてはまず単語や文法を正しく運用し本文を読解する力・設問に対し必要な要素をわかりやすくはっきりと表現する力を養っていくことが第一です。その過程の中で周辺知識もある程度は入ってくるでしょうし、それだけで十分な点数には到達するでしょうから、特別古文が好きでない限り、単語と文法以外のことを嫌々暗記する必要はありません(“教授達は理系学生に古典の読解力なぞ全く期待していない”という話があるくらいですからね笑)。まずは半分を、欲を言えば15/20近くまで安定して取れるようになっていると心強いでしょう。


第三問
 東大漢文における課題文はセンター試験のものよりもう少しボリューミーですが、難易度的には似たようなもの。まあ選択式でなく記述式であるというのが大きなネックではあるのですが、東大古典で求められるものは総じて標準的なのです。

 設問は4問程度で、お馴染みの現代語訳や内容説明に加え、平仮名のみでの書き下しや本文中の空欄に当てはまる漢字を推測して埋めることが要求されるときもあります。近年では課題文が文理共通なので、難易度の特徴としては古文で述べたのと概ね同じことが言えます。

 また漢文の設問全体でも、“漢文を読むことができる”以上の能力が求められているようには思いません。それさえ身に着けてしまえば、古文も漢文も間違いなく高得点を安定して狙える領域になってくるということです。漠然と「国語が苦手だ……」という人は、まず古典にのびしろが無いかを考えてみてください。ただ+αで付け加えると、東大の漢文では「“高校で学ぶ漢文”の知識としては知らないけれど、この文脈でこの漢字が使われたらそれはおそらくこういう意味だろう」と推測する必要のある場面が比較的よくあるように感じます。センター漢文にも似た設問がありますが、こればかりはなかなか専用の対策を立てるのが難しく、それこそ高2までにどれだけ豊かな言語的活動を営んでいたかが影響してくるところであると言えるでしょう。受験直前期はこういった設問が取れないのを嘆く前に、もっと他に重要な文法事項が抜けていたことによる失点が無いかを点検することをお薦めします。こちらも、10~15/20(配点については諸説ありますが)を目指してみてください。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……55点
・標準的な目標……40~45点
・苦手でもここまでは……35点
・本番で大失敗……30点

 近年の傾向としては、問題文自体はどんどん易しくなっているものの、採点が少しずつ厳しくなってきているという印象です。想像以上に点数は出にくいと思っていた方が無難ですし、“今までの常識”のこの参考得点も最近ではもう少し低くすべきものかもしれません。ただ普段からの目標としては、一般的な受験生にとって45点弱を取れさえすれば国語が足を引っ張るということはまずないと思いますから、まずはこれを目安としてみることをお薦めします。例えば、大問順に15-10-10と取れればそれで35点に到達できます。とりわけ国語が苦手だというわけでさえなければ、全体的にもう少し上を目指すことは可能でしょうから、それで40点台が狙えるとなればかなり現実的な得点としてイメージできるのではないでしょうか。一般的な東大受験生の目標も大体こんなところになっています。

2014/12/5 石橋雄毅

二次得点の常識

理系国語理系数学物理化学生物
文系国語文系数学日本史世界史地理
英語
総括


2014/12/01
ターゲット得点二次得点の常識 第0回:序
 受験生の意識の中の“入試本番”も大分その存在感を増してくるこの時期、自転車通学の石橋君が学校からの帰り道で自転車に乗って考えていたことと言えば、専ら二次試験での現実的な得点構成でした。直近の過去問演習や最近の様子を考慮に入れて、各科目について良くてこのくらい・悪くてもこのくらい取れそうだという点数を出し、合計点を合格点と比較して、どこが崩れると危ないか・そこはもう少し安定させられないか・そこを他で補うとしたらどこか……などなど考えること沢山。それはそれは毎日2ケタの足し算の暗算練習でした。

 合格最低点付近に沢山の受験生がひしめき合う東大入試では、普段の演習の時点での点数が余裕で合格点を超えていて、あとは本番で滑らないよう気を付けるだけ……という人は少数派(それでも毎年百人以上はいるのでしょうから、世界は広い……)。そうでない多くの人達にとって、戦略的に点数配分の計画を練って本番に臨むことは非常に重要な受験対策の一環です。

 石橋君にはたまたま近くにお世話になっている先生方のノウハウがあったので良かったのですが、もしも身の周りにそのような心強い情報源が無かったとしたら、本番で取る点数の計画なんて当てずっぽうも良い所。「国語は得意だから8割取ろう!」という目標を立てるだけなら誰でもできるけれど、それが常識的に考えてとても不可能な目標であるということを知らなかったら計画の意味が無いのです。皆それは分かっているから、そんな意味の無い計画を自分で立てることをためらい、とりあえず本に書いてある「合格点は6割」という言葉を盲信して6割目指してみる――果たしてそれは“意味がある”計画になっているのでしょうか?

 そう、多くの書籍には「大体このくらいが合格点」とは書いてあっても「東大受験生の得点帯がこれくらい」とは殆ど書いてありません。頑張って詳しい資料を調べれば出てこないことはないのですが、受験生に分かりやすくまとまっている所はそれほど多くありません。しかし、“意味がある”計画を立てる上ではこの部分の情報が一番大切なのではないでしょうか。この冬は東大入試ドットコムのメンバーが、“東大受験生が東大の二次試験で一般的に取る点数”の目安をお伝えします!

 今回の企画では、地学を除く東大入試11科目の参考得点と、ついでに各科目の特徴・傾向などを紹介していきます。ついでとは言うものの、参考得点はやはりそういった詳細に基づいた合理的な帰結として決まってくるものでもあるので、有意義な計画立案のために是非読んでみてください。
 参考得点として、今年は次の4通りのものを示していきます。

A:得意なら目指してみよう
東大受験生でも本当に凄いヤツが取りそうなものとして現実的にあり得る点数を表します。逆にこれ以上は運の要素も多分に絡んできて、どんなに得意でも“戦略的な目標点”としては妥当でないと思ってください。
B:標準的な目標
その科目に特に苦手意識が無いならば、合格のために普通に努力してこのくらいは一般的に目指せる、というような点数を表します。
C:苦手でもここまでは
その科目が苦手だったとしても、“一般的に”このくらいの点数までは頑張ることが可能だと思われる点数を表します。逆に、ここを下回ってくると他での挽回がなかなか厳しい……。
D:本番で大失敗
東大受験生でも、いざ試験となって調子を崩すとここまで点を落としてしまうことがある、と聞いて思い浮かぶ点数を表します。もしものときのこの点数を知っておくことで、他の得意な科目が現状でどれだけこの事態をカバーし得るかを計算することができます。



 公開日程は以下の通りとなっています。参考得点もお見せしましょう。

公開日 教科 参考得点A 参考得点B 参考得点C 参考得点D

12月5日(金)

理系国語

55

40

35

30

12月8日(月)

文系数学

70

56

40

20

12月10日(水)

文系国語

70

60

55

50

12月12日(金)

理系数学

100

理Ⅰ・理Ⅱ:60
理Ⅲ:80

理Ⅰ・理Ⅱ:40~50
理Ⅲ:60~70

10~30

12月15日(月)

物理

54

42

36

24

12月17日(水)

日本史

48

40

38

30

12月19日(金)

化学

50

40

30

20

12月22日(月)

世界史

52

42

36

30

12月24日(水)

生物

48

36

30

25

12月26日(金)

地理

50

40

35

30

12月29日(月)

英語

100

84

72

50

12月31日(水)

総括

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※あくまで“一般的な点数”ということなので、選択者が少なく比較対象の少ない地学については掲載しません。ご了承ください。

 是非この記事を参考に、東大入試突破への道筋を組み立ててみてください。

 初回となる12/5(金)は、理系国語について解説します。ご期待ください!

2014/12/1 石橋雄毅

二次得点の常識

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