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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2014/08/22
 東大受験生御用達の物理問題集として有名な一冊『難問題の系統とその解き方』――通称“難系”。問題集にも拘らず『物理教室』のような参考書と肩を並べるくらいの分厚さの内には、その看板に偽りなく東大・京大・東工大・東北大といった国公立大学の重厚な入試問題を中心に、かなり応用的な問題からあまり見慣れない設定の問題までがめいっぱい詰め込まれています。出典元の私立大学として早大が目立つのもさすがと言ったところ。
 例題・演習問題は合計でおよそ300問ほど収録。各セクションの冒頭には「要項」として重要事項・公式がまとめられていますが、書いてあるのは最低限の知識整理程度。問題集だからこれは当然なのですが、本書の場合問題の解説も決して丁寧というほどではありません(むしろ、殆ど略解しかない演習問題はやる意味がないと言われることもあるレベル)。加えて、この淡々と入試問題が並べられているだけの古めかしいレイアウト――大学生向けの演習書の風格すら感じるこの一冊は、優しく丁寧な解説に慣れきった勉強嫌いの高校生にとって大変敷居の高いものとなり得るでしょう。好奇心旺盛な努力家がこの険しい一冊を全て解きほぐして入試本番に臨むなら、そりゃあ自信をもって合格を勝ち取ることもできようというもの。
 収録されている問題についてですが、東大の前期試験の問題は2000年代前半のものが多く、むしろ〔東大〕と書いてあっても後期試験の問題だったりで、東大受験の設計上困ることは殆ど無いでしょう。そもそも東大の後期試験の重厚で面白い問題がそんなに収録されていること自体が問題集として異例であり、本書がいかに他より学力も好奇心も高い層をメインターゲットとして想定しているかが分かります。具体的に内容を見ると、難関大では割と出題されるのに一般的な問題集には収録されないことの多い単スリットによる干渉の問題がキチンと入っていることに、細かいですがまず特徴を感じます。レンズの公式の幾何光学的証明やソレノイドコイル中の磁場のビオ・サバールの法則を用いた導出もさすがハイレベル向け。題材が珍しいものとして、例えばエーテルの話や電場と磁場のローレンツ変換、位相速度と群速度など、入試頻出では決してないけれどトピックス的に興味深い問題がいくつもちりばめられていますし、偏光やトランジスタを知識としてではなく真正面から取り扱った問題も他で見たことがありません。

 高3に入ってから本格的な理科の学習を始める高校生が多い現状を鑑みると、使う問題集のグレードを一歩一歩段階的に上げていくタイプの学習をしている人が本書に到達するのは、時間の余裕的にあまり現実的でないかもしれません。かといって教科書~『物理のエッセンス』程度の軽い内容からすぐ本書に立ち向かうのは、多くの高校生にとってかなりの挫折リスクを伴う……はずなのですが、どうやら現役東大生の中にはそういう人達も少なくないようで、器量と根気に覚えがある人――つまり、一だけを知った状態で十を浴びせられ続けてもそれを最終的にマスターしてしまう自信のある人は、挑戦を検討してみるのも悪くないでしょう。高2からしっかり物理の勉強をしていて高3の早い段階で『名問の森』レベルで飽き足らなくなってしまった人や、物理は得意だけれど他が足を引っ張ってしまった高卒生になら、安心して25ヵ年等での過去問演習との二択とすることができます。

 どういう形で学習していくにせよ、本書の問題を解けることが東大合格のための必要条件とは思いません。しかし、自分のレベルを正しく分析できず見栄を張り不適切な参考書を使い続けることが不合格のための十分条件だと思います。難しめの参考書の紹介ではいつも言っておきたいことです。



2014/08/22 石橋雄毅

2014/08/15


 今回は2007年度入試第2問の(B)です。天下の東大の入試問題とは思えないような可愛らしいイラストが印象的です。イラストの状況説明をさせる問題形式は2005年度第2問(A)と今回扱う2007年度入試で出題されただけですが、2013年度、2014年度では写真が提示され、その状況での会話を創作させる、今回と似た形式で出題されています。

 「下の絵に描かれた状況を自由に解釈し、40~50語の英語で説明せよ」との指示ですが、『自由に』とは言うものの、現実的にはこのイラストにはごく限られた解釈方法しか無いように思えます。「男の子がUFOの本を読んでいるときに本物のUFOが現れて…」といった内容に少し肉付けするだけで語数制限は十分クリアーできるでしょう。

 もちろん「実は女の子はエイリアンの化身で男の子をUFOへ連れて行こうとして...」だったり、「女の子が男の子を驚かすために窓にUFOのシールを張っていて…」といった突飛な発想をしても良いのでしょうが、それらのストーリーを50字に納めるのが大変な気がします。(それ以前に私には東大入試本番でそんなに攻めた答案を作る勇気がありません(笑))

 今回のような問題形式のときに、生徒からしばしば「時制はどうすればいいの?」といった質問を受けます。結論から言えば現在形、過去形のどちらでも構いませんが、答案中で複数の時制が混在しないよう、必ず時制を統一しておきましょう。



■O君の答案


 今回も前回同様、私の友人のO君にまたまた答案を作ってもらいました。
 内容としてはオーソドックスなもので問題なさそうですが、語法にいくつか気になるポイントがあります。一つ目は "book of UFOs" の表現です。誤りではありませんが、「〜についての本」は "book on economics" のように前置詞に on を伴うことがあります。of や about は馴染みがありますが on は見落としがちなので注意しましょう。

 "UFO out of the window" は減点されてしまいそう。今回は out of ではなく、outside が適当です。"He got out of the car." のように、out of は「(〜の中から)外へ」といった意味を持っています。into の対義語と言えばイメージしやすいでしょうか。

 "he didn't trust her" という表現も引っかかります。確かに trust は辞書で引いてみると「信じる」といった意味が掲載されていますが、「(人の人間性、誠実さを)信頼する」といった文脈で使われるのが一般的です。今回は trust ではなく believe、あるいは単に listen to を使うだけでも十分にニュアンスは伝わるかと思います。

 trust の例からも分かるように、英語と日本語は必ずしも全てが一対一対応している訳ではありません。単に英単語とその和訳を覚えるのではなく、例文や用例まで目を通して「どんな文脈で使われる語なのか」、「どんなニュアンスを持つ語なのか」を大雑把でも構わないので理解しておきましょう。物語の読解でも役に立つはずです。  

O君の答案を少し弄ると以下のような答案が書けそうです。

A young boy was really interested in the UFOs. When he was reading the book about UFOs, his girlfriend noticed that there was an actual UFO outside the window. Though she excitedly tried to tell him that, he didn't listen to her and failed to see it.


その他の解答例

A young boy was really absorbed in reading a book on UFOs when his girlfriend noticed that there was an UFO in the sky. Although she trying to make him notice that, he didn't believe her and pay no attention to the outside.

・be absorbed in A・・・「Aに没頭している」
・make O do・・・「Oに〜させる」
・pay attention to A・・・「Aに注意を払う」


2014/8/15 大澤英輝

2014/08/08
 今回は『大学への数学』(以下、大数)の東京出版から2001年に刊行され、今もなお受験生達に現役で使われ続けている名著『数学を決める論証力』をご紹介。
 大数関連の書籍は『マスター・オブ・整数』『マスター・オブ・場合の数』などをはじめ、なかなか他では見ないような切り口で高校数学を語った参考書に定評がありますが、本書もタイトルの通り“論証力”をテーマとした一冊。実際、「記述式の試験で論証力が大事なのはわかるけど、それ用の対策ってどうしたらいいかわからない……」という需要を満たす参考書はこれ以外になかなか無いのが現状です。
 基本的に数ⅡBまでの文理共通範囲の話題を取り扱っているので、文系受験生はもちろんのこと数ⅠA程度を学んでいる高2生でも半分近くは読めます。

 本書は大きく分けて3部構成。「インフラアップ」と題された第1部では、“命題”や“背理法”、“数学的帰納法”といった教科書的な基本事項を学びます(「本書の利用法」によれば、“バレーボールの試合でプレーすることが最終目標だとすれば,第1部はバレーボールという競技のルールを知るという程度でしかありません”)。この部の中でさらに「論理用語の確認」「いろいろな論法」という2つのセクションに分かれていて、それぞれ末尾に関連した問題を1ページ分(約10問)収録。実際は教科書的と言いながら、各項目に対する説明は並の学校の授業以上に深いマインドが込められた有用なものが多いので、出来る人でも一通り説明を読むことは全然損にならないと思います。収録されている問題も、この時点で教科書の章末問題なんかより十分歯応えがありタメになるでしょうから、むしろ“出来るから飛ばして良い”というような性質のものではないと言えます。

 第2部は「論理の運用」。本書一番の骨になるところです。大数の雑誌に連載された記事をもとに作られた20講からなるこの章には、高校数学の論理の本質に関わる問題と解説がめいっぱいに凝縮されています(“バレーボールでいえば,サーブ,守備,攻撃というゲームでの一連のチームプレーにおいて論理がいわばセッターの役割をはたすことを実感してもらいます”)。東大数学を意識するなら、トピックスだけを見れば「方程式と言いかえ」「逆手流と存在」「2変数関数」「場合分けと論理」辺りは真に理解できているかどうかで大きく差のつき得るところになるでしょうし、他も一つでもよく分からないところを残しておくと、数学を得点源にするのはなかなか厳しくなってくると思います。

 締めの第3部「論証力が試される入試問題」では、第2部までより“本質”からは外れるものの、大学入試を考える上では身に着けると強力な武器になる“技”についてまとめられています(“バレーボールでいえば,ジャンピングサーブ,クイック攻撃などの特殊な技術を身につけてもらうための第3部です”)。ここもまた講義編:「論証問題のための手筋集」と演習編:「技をみがくための演習題」の2つのセクションに分かれており、講義編で学ぶ8つの“手筋”「背理法のコツ」「条件の調節」「極端な場合を考えよ」「条件を視覚化せよ」「部屋割り論法」「中間値の定理」「不変量で区別せよ」「推理,ゲーム」を後半の演習題で実際に使ってみる、という流れになっています。ここまで来ると、どちらかと言えば京大でたまに出てくる論証題対策向きの色が濃いように感じますが、部屋割り論法や不変量への着目などは比較的最近の東大数学にも効いてくるところです。第2部まででも十分力になるので、余力があるなら手を伸ばしてみるくらいのつもりで良いでしょう。ただ何より、数学好きなら純粋に解いていて楽しい所ですよね。

 本書の有用な点を他に一つ挙げておくと、さすが論証をテーマに据えた本だけあって、実際の入試で答案に書いたら減点必至の“危ない”記述について他書よりもしっかり書いてある所でしょう。「よくわからないけど闇雲に式変形をしていたら答えが出ちゃった」「スッキリしないけど何とかうまく誤魔化したつもり」といった答案の穴は、採点者には「数学のこと、あんまりちゃんと分かってないんだなあ」とアッサリ見抜かれてしまうものです。本書に示された思考の過程や誤答例をもとに、同値な議論の何たるか、何が危なくて何が安全なのかということについて、より理解を深めることが本書を使う上での大きな目標となります。

 大数系列の本である宿命でもあるのですが、詳細な議論・検討や詰まり気味の体裁、一方で簡潔かつスマートな展開に、少々うんざりしてしまう人も少なからずいる事でしょう。数学が苦手なだけなら十分何とかなりますが、数学嫌いとなると敷居は格段に上がります。
 また、本書のコンセプト自体が“かゆいところに手が届く”的なものなので、特に時間の足りない、基本もまだ全然固まっていない受験生には、論証力云々の前にやることが他に無いか一度胸に手を当てて考えてみてから手を伸ばしてほしいところです。標準的な問題集がある程度十分板についてきたくらいの人になら、無難に薦めることができるでしょうか。それよりむしろ、最初にも述べた通り高2生にも半分程度読める本なので、受験生になる前のもっと早い段階から触れておく分には、その後の数学の授業がより豊かなものになるであろう一冊だと考えます。



2014/08/08 石橋雄毅

2014/08/01


 初回である今回は現在東大4年生のO君が受験生時代に作った2008年度第2問(B)の答案を引っ張りだし、再現してもらいました。

 「これから50年の間に起こるであろう交通手段の変化」とのことで、わりかし身近な話題ですね。書く内容の方針は簡単に定まりそうですが、注意したいのがその変化が人々の生活に与える影響にまで触れておかなければならない点。この要素が欠けてしまうと大きく減点されてしまいそうです。
 私が今まで指導してきた中で、この問題への解答は大きく分けて以下のような3パターンでした。

①すごく速い(快適な)交通手段が開発されて生活が便利になる!
②環境に優しい交通手段が開発される!
③自転車や徒歩に人気が出て健康的に!

 ①の方向性で答案を書いてくる生徒が最も多いです。新幹線の発達やリニアモーターカーの展開といった現実的な話題から瞬間移動装置の発明というロマン溢れる答案まで見受けられました。最近話題のLCC(格安航空会社)の台頭なんてテーマでも書けるかもしれませんね。①のテーマではその変化が与える影響がイメージしやすいのもポイントです。
 ②は環境問題の観点から燃料電池車や電気自動車の普及について述べる生徒が多い。環境問題は英作文やそれ以外の問題でも度々目にする話題なのでこちらも書きやすそう。③は原始的な交通手段が逆に人気になるという面白い観点です。



■O君の答案


 答案の方向性としては前述した②に沿っており、問題無いでしょう。ただ、「人々の生活に与える影響」として、"we’ll be able to live in a better world." とザックリ書かれているだけなのがもったいない。問題文で「具体的に記せ。」と指示されている通り、もっと身近で具体的に影響を書かなければなりません。とは言え、確かに今回のような内容で具体的な影響まで落とし込むのは案外難しいかもしれません。prevent global warming や stop deforestation のように具体的な環境問題を挙げるぐらいが落としどころでしょうか。

 細かいところですが、最初の2文だけで ”car” という単語が3回繰り返されているのが気になります。前提として英語は同じ単語の繰り返しを嫌うのはもちろんですが、2011年入試で「understand と pain はそれぞれ一回しか用いてはならない」と但し書きが付けられたこともあるので、普段から極力単語の繰り返しを避ける意識を持つに越したことはないでしょう。今回の car であれば、vehicle, automobile で書き換えられますね。

 O君の答案からは少し逸れますが、環境問題を論じるときに便利な単語として sustainable があります。「持続可能な」という日本語訳が充てられているこの単語は、地球環境を保全しつつ経済・産業も発展し続けるような...といった意味を含んでおり、環境問題を扱うときに度々使われます。英作文でも使える表現なので覚えておいて損は無いはずです。

以上よりO君の答案を元に以下のような答案を作ってみました。

In next 50 years, electric vehicles will be developed and today’s gasoline cars will be no longer used. You’ll save a lot of money because you don’t have to pay for fossil fuels.
In addition, as these cars won’t emit any carbon dioxide, the problem of global warming may be solved and you’ll lead a sustainable life.

・no longer・・・「もはや〜ない」
・save money・・・「お金を省く、貯金する」
 cf. save time・・・「時間を省く」
・lead a life・・・「生活をおくる」

その他の解答例

I think some engineers will develop a new train which travel much faster than today's Shinkansen. People will be able to commute to Tokyo from remote place by using it. As a result, they will have much more choices where they live. I think a lot of people will be likely to choose to live in countryside and enjoy its nature in holidays.


2014/8/1 大澤英輝

2014/07/11
過去問演習を始めるに当たってぜひ取り組みたい1冊。

日本史の論述対策の参考書は数あれど、東大日本史に特化した参考書・問題集はなかなか無いのが現状。本書は、そんな「なかなか無い」うちの1冊です。

大まかな構成は、問題編+解説・解答編となっており、問題演習をしながら学習を進めて行くスタイルになっています。
収録されているのは東大日本史の過去問20問+予想問題(!)16問の計36問。これまで数回にわたり扱われてきたテーマ(例えば律令制の変遷・鎌倉時代の武士社会・大名のあり方・条約改正、他にも色々…)を中心に、押さえておきたい問題が収録されています。

それぞれの構成を簡単にご紹介します。

問題編。過去問研究編(過去問)と予想問題実践編(予想問題)の2パートに分かれています。過去問は各大問につき5問×4問で20問、予想問題は各大問につき4問×4問で16問。問題編の後部には「思考のためのヒント」というヒント集がつけられており、とっつきにくい問題の着眼点をどこに置き、どのように論述をまとめていくのかが1問につき3〜4行程度で書かれています。

解説・解答編。本書において特筆すべきはこの部分の分厚さでしょうか。『考える日本史論述』が、解答の作り方・道筋に関する解説がメインであったのに対し、本書の解説は歴史的知識(特に視点)がほとんどを占めます。例えば、中世の問題の解説には『蒙古襲来絵巻』の絵が登場し、そこに描かれている戦法を中世の武士社会に結びつけて整理したり、江戸時代の経済圏について6ページを割いて解説がされていたりします。日本史論述をどのように考え・書けば良いのかという点(これは「思考のためのヒント」である程度触れられています)に加え、教科書を理解し直し自身の持つ知識を改めて整理するのにも役立つと言えるでしょう。

通史学習は大体OK、論述にも少し慣れて来た、さあ過去問をやろう。
そんな時に一番はじめに取り組むと良い1冊と言えそうです。



2014/07/11 根本紘志


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