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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2014/02/07
第14回 出典:東京大学前期 2007年 理系数学 第2問

 皆さん、こんにちは。殆どの理系の東大受験生は、入試当日を迎えるまでに「今年の物理第3問は去年波だったから熱になるんじゃないか」とかいった話を友達とするんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。当然のことですが、どっちかにヤマを張るなんてことのないように。波の次は熱なんてルール、誰も決めてないんですからね。A級紙だって、数学の次が化学だなんて一言も言ってません。そういう訳で(?)、今回は前回に続き数学でお送りします。笑

 前回は直交座標での弧長の公式を紹介しましたが、今回は極座標表示されたグラフの弧長について考えます。公式は次の通り。

 極方程式

   


で与えられる曲線の長さ s は、


と表せる.

 どうしてこうなるのかについては、前回と同様に考えてみましょう。


 曲線上の2点を結ぶ、図の赤線部の長さ Δs は、三平方の定理から

  


 ここで Δθ → 0 の極限を取れば赤線の長さは微小となり、ほぼ2点間を結ぶ曲線の長さに等しいと見なせるようになるから、θ=α から θ=β まで θ を連続的に変化させて Δs を足し合わせたものが s であると考えれば、上の公式を得る.
(※まあ、前回の公式で θ をパラメータとし x=r cosθ , y=r sinθ として計算しても同じなんですけどね.)

 こういった公式のお陰で様々なグラフの長さを求めることができるようになる訳ですが、逆にこれが無ければ曲線の長さは求められないのかというと、勿論そういう訳ではありません。特にグラフが何か特徴的な図形的性質を持っているとき、その性質を上手く利用することで公式を用いずとも曲線の長さを求められる場合があります。このことを体現した問題が東大理系数学2007年第2問。これもまた表面的には計算問題なのですが、中身をよく見てみれば実に上手いこと曲線の長さを求めています。計算練習のつもりで次の問題を解き、これを実感してみてください。

⇒問題(PDF)

⇒略解


 せっかくの機会なので、上の問題では極座標における動径の掃過面積の公式まで確かめてみました。

 極方程式

   


において動径が掃過する部分の面積 S は、


と表せる.


 図で色を付けた半径 r(θ) の扇形の面積 ΔS は、


 ここで Δθ → 0 の極限を取れば赤線の長さは微小となり、ほぼ動径が曲線上の2点間を動くときに掃過する領域の面積に等しいと見なせるようになるから、θ=α から θ=β までθを連続的に変化させて ΔS を足し合わせたものが S であると考えれば、上の公式を得る.
(※もう少し厳密には、大きい扇形と小さい扇形で ΔS を評価してハサミウチの原理を使えばok.)

 計算方法も一通り確認できたところで、今回の図形を見てみましょう。極方程式で


と表される曲線の一部が、n→∞ で現れる曲線 C だというのは問題で見た通り。このように の形で表される曲線を“等角螺旋”と言って、これまた大学入試で別段重要な曲線という訳じゃないんですが、概形はこんな感じ。

▲等角螺旋

※ a=1.0、b=1/π として作図


 どうでしょう、前回の双曲螺旋よりも、皆さんの思い描く“螺旋”のイメージに近くありませんか? 実は、多くの貝殻に現れる模様がこの等角螺旋であることが知られています。

   

▲見比べてみよう


 貝殻の他にも、ツメやツノ、キバなど、放っておくとどんどん伸びていくような動物の硬い部位に、この等角螺旋はしょっちゅう現れます。これがなぜなのか、ざっくり考えてみましょう。

 今回の問題で、相似な三角形が一辺を共有して連なっていくその極限として等角螺旋が現れることを確認しました。三角形にできることは、一般の多角形――もっと言えば一般の図形でもできるはずです(等角螺旋を作っている三角形を、螺旋に関わる部分だけ残るように分割すると考えれば良い)。すなわち、相似な図形がその一部で接しながら連続していく過程に等角螺旋が現れるわけです。ここで、例えばツノがどのように伸びていくのか考えてみると、勿論根元から少しずつ生えてくるのでしょうが、その様子は「連続的」で、生えてきたばかりの微小部分に着目すればその形状はおそらくいつも同じはず、すなわち「相似」なはずです。この微小部分が一部を共有しながら――「接しながら」、連なって成長していくわけで、この流れはツノ以外でも多分同じ。どうでしょう、等角螺旋が現れるのに、動物の成長には十分な条件が揃っていると言えるのではないでしょうか。


 等角螺旋には、

・接線がその接点で動径と為す角度は一定である(だから“等角”螺旋と呼ぶ)
・原点を中心として回転移動する操作は、原点を基準として拡大する操作と等価である
・原点付近で無限回渦巻くが、原点までの弧長の極限は有限の値を持つ


など、興味深い性質がまだまだ秘められていますが(これらについては難しくないので是非考えてみてください)、今回はその中で“動物の体に現れる”というただそれだけの、しかし視覚的にとてもvividなことを純粋に楽しんでみました。“貝の渦巻き”なんてどこから手をつけたらいいかわからないようなものに対しても、図形的に何らかの説明が出来てしまうとは驚きですね。

 また、今回の記事の前半では高校程度を超える積分公式の代用として、図形的な考え方が生きることも見てもらったと思います。定性的にも定量的にも、図形の観点は大活躍ですね。図形的要素が絡む問題に対し、必要に応じて必要な図形的性質を持ってくることは多くの場合効果的ですし、これは入試問題にも言えること。とりわけ東京大学の数学には、2004年文理共通第1問や2010年理系第4問など“計算だけでゴリ押すには大変だけれど図形的な性質を上手く使えればスマートに解ける良問”がしばしば登場していて、なおかつその問題が当該のセットで明暗を分ける構成になっていることも少なくありません。

 大事なのは、いつも図形で考えろというのではなく、然るべき時に然るべき図形的観点に立てるようになっておけということです。そのセンスを磨くために、普段から図形というものに慣れ親しんでおきたいところですね。題材は身のまわりにもまだまだ結構ありますから、それこそ勉強帰り、夜道に自転車を走らせるときにでも探してみてはいかがでしょう。灯台下暗しかもしれませんよ。それではまた次回。

2014/02/07 石橋雄毅

2014/01/27
 皆さんこんにちは!
 センター試験お疲れ様でした。想定以上の結果を残せた人、そうでなかった人、結果は人それぞれだと思います。ただ二次試験までおよそ一ヶ月、残された時間は皆同じです。気持ちを切り替えて二次試験対策に集中しましょう。  

 さて今回のプレゼンテーションは"walking meeting"にまつわるものです。その名の通り歩きながら行われる会議がどんな効果をもたらすのか、聞いてみましょう!




⇒問題はこちら
2014/01/24
第13回 出典:東京大学前期 2011年 理系数学 第3問

 皆さん、こんにちは。特に受験生の方はセンター試験お疲れ様でした! 2次試験が目前に見えてきていよいよという感じでしょうが、受験生にとってのここからの成長って本当に大きいんです。最後まで気を抜かずに頑張ってください!


 2015年度入試から始まる新課程では、新たに“曲線の長さ”が数学Ⅲの範囲になります。これまでの課程で次の“曲線の長さ(弧長)を求める公式”を明確に入試の出題範囲としている大学は京都大学くらいのものでしたが、数学が得意だったり進学校に通っていたりする人の中には知っている方も少なくないでしょう。

 媒介変数 t について微分可能な2つの関数 x(t),y(t) によって

   


とパラメータ表示される曲線の長さ s は、


と表せる.

 どうしてこうなるのかについて、A級紙第4回から散々取り扱ってきた積分の考え方がしっくりきている人には、次のイメージが十分伝わるかと思います。


 媒介変数 t → t+Δt に対応する曲線上の2点を結ぶ、図の赤線部の長さ Δs は、三平方の定理から

  


 ここで Δt → 0 の極限を取れば赤線の長さは微小となり、ほぼ2点間を結ぶ曲線の長さに等しいと見なせるようになるから、t=a から t=b まで t を連続的に変化させて Δs を足し合わせたものが s であると考えれば、上の公式を得る.

 さて、これを踏まえて東大理系2011年第3問(2)を見れば、計算すべき積分値 f(a) が何らかの弧長を表していることは一目瞭然。とすれば、(3)で計算する極限に何らかの視覚的意味を見出したくなるのは人の性(?)ですね。

 題意の点Q が媒介変数 t を変化させたときに描く軌跡を“双曲螺旋”と言って、このグラフ自体は普通極座標で


などと表されます(点Qの軌跡では θ → L/t、b=L とすればよい)。大学入試で別段重要な曲線という訳でもありませんが、概形はこんな感じ。

▲双曲螺旋

※b=1.0、θ>0として作図


 ちなみに受験直前期ならこの軌跡の無限遠での様子を計算できてほしいところですが、いかがです?

⇒答え


 話を戻して、(3)の について考えましょう。落ち着いて条件を整理すると、f(a) は『 t を a≦t≦1 の範囲で動かした時の点Qの軌跡(双曲螺旋の一部)の弧長』のことでした。 t=1 に対応するのはどこかの点であって、t →+0 とすると点Qは原点に限りなく近づくことになるのが分かりますから、上図を見ればQが原点の周りをぐるぐる回って弧長 f(a) がどんどん長くなっていくのは明らか。対する log a は -∞ に発散しますから、題意の極限が何らかの負の定数値に収束してもおかしくなさそうです。

 結局感覚的な理解はここまでで、答えを知るにはやっぱり計算するしかないのですが、何らかの図形的解釈ができる計算に対し状況をイメージすることは基本的には大切にしたい精神です。勿論試験中にここまでやることは要求しませんが、解き終わった後の問題についてぼーっと理解を深めるのもまた良い勉強。実際、サイクロイドが円を転がした時に出てくる軌跡だというのはいろんな参考書に書いてありますが、軌跡としての双曲螺旋が図形的に本問のようにして描かれるというのはなかなかお目にかからない事実でしょう。
 高校数学の『いろいろな曲線』では、教科書にオマケ程度の扱いでも様々な曲線が紹介されていますよね。東大受験に際してこれらの曲線の名前とその性質を覚えておく必要は殆ど無いでしょうが、せめて出てきたときくらいは、特殊な図形的性質を持つ曲線が比較的シンプルな式で表されてしまう面白さを感じることのできる、“とりあえず見てみよう”というその気持ち、無垢な心を忘れたくないものです。だって東大が本問を本当にただの計算問題として出題したかったのなら、回りくどい問題設定も(1)も必要なかったはずなんですから。それではまた次回。

2014/01/24 石橋雄毅

2014/01/13
 皆さん、あけましておめでとうございます。
 今回のプレゼンテーションの話題は大規模食料生産です。なんと今回のプレゼンターは11歳の少年ですが、11歳とは思えぬほど堂々と遺伝子組み替え食品や農薬等の食料生産に関する問題点を指摘しています。
 近頃巷で話題になっているTPP(Trans-Pacific Partnership)にも関連し、今や食料需給問題は我々日本人にとっても重要な問題となっています。
 11歳の少年の口から一体どんなことが語られるのか、聞いてみましょう!




⇒問題はこちら
2013/12/21
 これまでの10回を振り返って、いかがだったでしょうか。各科目、“センター試験で9割取る人は一般的にこんな感じ”みたいな感覚を、少しでも掴み取っていただけたのではないでしょうか。とは言え、10回に渡って言われてきたことを全部うまくやるだなんて、そんなことが簡単にできるのなら誰も苦労しません。現役の東大生で9割を越えていたという人だって、皆が皆全科目で<総合9割目指すなら>の点数を達成できている訳ではないのです。大事なことは、入試は総合点勝負だということ。誰しもが得意・不得意を持っているものです。最後の最後で要となるのは、個性に合わせて自分に適した全体としての戦略を立てられるか、ターゲット得点を設定できるかどうか――これに尽きます。「センター9割への道」ラストとなる今回は、具体的に810/900が取れた場合の得点配分としてありがちと思えるものを見てもらい、“センター試験で総合9割を取る”ということがどういうことなのかをイメージできるようになってもらおうと思います。


■と、その前に■
 ここに来てですが、まずはターゲット得点の設定の仕方について、大事なことをひとつ付け加えておきます。それは、

ターゲット得点は1人につき2つ想定せよ!!


ということです。すなわち、“目指すべき点数”という意味での「目標点」と、“どんなにしくじってもこの点数は割らない”と言う意味での「目標点」を設定しなさいということなんです。試験ですから、そりゃあ点は取れるだけ取るに越したことはありませんが、上ばかり見ていたけれど蓋を開けてみたら全然だった、なんてことも実はありがち。「この点数を目指してやろう」という野心を持つと同時に、「この科目で最低限ここさえ割らなければ大変なことにはならないな」ということも把握しておいて、盤石の態勢を敷く人ほど点数が安定するものだと思ってください。本稿では便宜上、前者の目標点を“目標ライン”、後者を“最低ライン”と呼ぶことにします。
 以下に上げる具体例は、このことを踏まえた上で参考にしてもらいたいと思います。


<例1>

倫理・政経

国語

英語

物理

化学

数学

合計

90

160

190

95

92

190

827/900


 安定的に9割を取るような理系の人の得点としてはかなりオーソドックスなタイプです。高得点を固めやすい理系科目を中心に点を引き上げておくことで、もし国語が本番で多少崩れたとしても9割に乗るような幅が出来ていますね。本番までにこのくらいが現実的だと思えるようになっていれば、センター試験は割と安心して見ていられます。

<例2>

世界史

地理

国語

英語

地学

数学

合計

95

90

170

194

95

181

825/900


 例1の文系版といったところでしょうか。国語で攻められればもう少し点が伸びますが、個人的にはそれなら数学でもう10点狙った方が、文系の人と言えど安定しそうな気がします。例1、例2ともに言えることですが、本番でこれくらい取れる人間は、目標ラインとして数学満点・英語は第1問で1ミス・理社も満点~1ミス・反対科目(理系の社会・文系の理科)で2ミス、くらいに心の中で思っていて、勿論本人も実際にそんなにうまくいくわけがないとは理解しているから最低ラインの確認にも余念がない――という域に達しているように感じます。


 では、「そんなの無理だよ!」という人にはセンター9割のチャンスは無いのか、というと勿論そんな訳はありません。もう少し“優等生ぶらない”得点配分を見ていきましょう。


<例3>

世界史

地理

国語

英語

生物

数学

合計

91

94

169

192

94

170

810/900


 数学にちょっと自信が無い文系の人。とても高い点数があるという訳ではありませんが、それでも9割には届いています。押さえるべき最低ラインをしっかり押さえる、ということを大事にした結果でしょう。

<例4>

倫理・政経

国語

英語

物理

化学

数学

合計

95

127

194

100

96

200

812/900


 逆に、極端に理数系が出来て国語ができないという理系。読解ができない分を暗記科目でカバーするガッツは必要ですが、激しく国語ができないという自覚があればこそ、9割取るためのライン設定・自分なりの対策ができるのです。

 この例3、例4に共通して言えるのは、自分がどの科目でどこまで点数を下げる可能性があって、それをリカバーするためにはどの科目でどこまで点数を上げる必要があるのか、ということを、自分でよくわかって試験に臨んでこそ初めて掴める結果だということです。


 以上、“もともとセンターがよく出来る人”・“センターの為に努力して結果を出す人”の両方について、“9割を取るなら”妥当だと言える点数配分を見てきました。このように“810点”というものをもっと詳しく見ることで、これから何をすべきか掴めたものもあるのではないでしょうか。特に後者を目指す人、まずは自分自身を徹底的に分析するところから始めてみてください。


 一通り見てきたところで、「センター9割、結局簡単じゃないじゃん……」という声も挙がりましょう。しかし残念ながら、これが受験指導に関わる人間として、東大入試ドットコムを運営するメンバーとして皆さんにお伝えできる、ひとつの“一般的な”現実なのです。

 今回の企画名は“センター9割への道”――我々が伝えたかったものは、かつてこの道を志した人間の多くが目にしたであろう風景です。「意外と大したことないね」と思った人、「相当険しいな……」と思った人、きっとどちらもいるのでしょう。我々はそのどちらの人にも役立つ情報として、“楽してセンター高得点”なんて薄っぺらなものではなくて、これからこの道を目指す上で必要な覚悟を示したかったのです。一通り読み、この風景に自分を重ねたいと思った人には、改めて今回の記事が進むべき方角を指し示してくれるでしょう。

2013/12/21 石橋雄毅

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