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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2013/11/04
こんにちは。武井です。

世界史参考書紹介、二回目の今日は、いよいよ第一問、第二問へ向けた論述対策の参考書を紹介していきます。




■まずは第二問から固めよう■
第一問で流れを記述するにも、まずは史実を正確に覚えていないと書けませんし、1/3から半分くらいの配点があることを考えても、第二問での失点はなるべく防ぎたい所です。そのため、論述を制するためにはまずは第二問から対策を始めるとよいでしょう。

対策としては、英作や和訳と同様にまずは実際に書いてみることです。書くべきことがなにも思いつかない、なにを書いたらいいかわからない、設問で聞かれている用語自体がわからない……という人は、そもそも知識不足である可能性が高いので、第三問の対策に戻って問題集をやりこみましょう。
知識が入っている前提で「文章をうまく書くためのコツ」とか「いくつかポイントがあるが、その中からどれに絞って書くべきか」ということを学ぶための参考書として以下の2冊を紹介します。


「世界史論述練習帳new」中谷臣
第一問対策としても使える本書ですが、その中に基本60字という章があります。これが第二問対策として非常に有効に使えます。60字ということで二行以内にまとめる力も身につく上、話題としても出てきやすいところが載っているのでおすすめです。

「大学入試 世界史B論述問題が面白いほど解ける本」平尾雅規
初級者向けに書いてあるということで、書き方からポイントまで解説されています。演習問題として60字前後の問題が多数載っていますので、こちらもおすすめです。
ただしこちらは多くても字数が400字程度なので、第一問対策としては物足りないかもしれません。第二問対策として、あるいは勉強があまり進んでない人向けになります。

実際に書く練習をする上では以上のような演習系問題集は非常に重要ですが、書く材料を得るという点では「用語集」が必要不可欠になります。僕は主に山川の世界史用語集を使っていました。(初めの1冊は使っているうちに分裂してしまったので、買い換えました。)ぜひ文字通りぼろぼろになるくらい用語集を読み込み、使い込んでください。


■そして第一問へ■
そして最後に第一問、最大600字程度の大論述ですね。あるテーマについて、そのテーマから逸れずに原稿用紙1.5枚分書かなければいけないわけですから、「題意をくみ取る力」「用語を適切に用いつつ、文章を組み立てる力」ともに練習していかなければなりません。
書き方としてはメモを初めに作るなどいくつか方法があると思いますが、ここではとにかく書いて練習するという目的で、参考書を紹介していきたいと思います。

<まずは多くの問題に触れて、実際に書いてみましょう>
「世界史論述練習帳new」中谷臣
上述した参考書になります。基本60字以外の章は、字数が多い問題がたくさんあるのでいい練習になると思います。解答例も含め書き方も載っているので、おすすめです。

「詳説世界史論述問題集」茨木智志
山川出版社から出ています。各時代ごとにテーマを設定して問題が作られています。問題数も多いので、時間がある人はぜひ使ってみたらいかがでしょうか。

以上が一般的な問題集となります。
これらである程度練習できたら、あとは実戦経験を積むのみなので、
「東京大学への地理歴史」駿台文庫
「入試攻略問題集 東京大学地理・歴史」河合出版
「東大入試プレ問題集 地歴」代々木ゼミナール
などを使用して模試の過去問を解いてみましょう。

ただ、最終的には過去問を解くのが一番効果的ですので、こちらも忘れずに。
「東大の世界史 25ヵ年」
「東京大学 文科 前期日程(青本)」駿台文庫
やはり25ヵ年は手放せませんね。青本は駿台世界史講師陣が力を入れて解説を作っており勉強になるので、あえて紹介させていただきました。

<流れをつかみたい人へ>
「詳説世界史B」山川出版社
「世界史B」東京書籍
「単発的な知識はOK!だけどつながり、流れの理解がイマイチ」という人はまずは教科書を読みこむことをおすすめします。教科書執筆者が東大の講師ということもありますし、因果関係も含め簡潔に書いてあります。通しでなくてもよいので、一通り読んでおくことが望ましいです。教科書は学校で使われているものでよいと思いますが、個人的には詳しさや読みやすさの点で、東京書籍の方がおすすめです。僕も現役時代にわざわざ教科書取扱店まで買いにいきました。

「ナビゲーター世界史B」鈴木敏彦
「NEW青木世界史B講義の実況中継」青木裕司
「教科書だとどうしてもつまらない」「非受験生でおおまかに流れをつかみたい」という人には上の2冊がおすすめです。教科書よりも冊数は多くなりますが、説明も口語調である上、図なども多く載っていますので、堅苦しさに耐えられない人はこちらを代用してもいいかもしれません。
※実況中継は、全範囲は網羅されていないので注意です。
高1,2のうちに一通り目を通しておくととても強みになります。

<さらに詳しい因果関係、歴史的な意味づけを知りたい人へ>
「詳説世界史研究」山川出版社
僕が直前期に一番愛読した参考書はこれかもしれません。教科書も一通り読み終え、問題演習も数多くこなし、それでも物足りない。50点を目指したい人は、ぜひ購入してください。内容としては教科書をさらに深掘りして、因果関係や人名などが詳しく書かれています。これだけやってもまだ目からウロコといったことも多々あります。読んでみてください。

<流れなども一通りおさえ、あとは書く技術、テクニックを学びたい人へ>
「合格への世界史―東大文Ⅰ生が教える日本語力で解く論述テクニック」山下厚
解説は一部極端かもしれないというところもありますが、東大第一問のテクニックを学びたいという人におすすめです。試験前日の付け焼刃でもよいので、読んでみてはいかがでしょうか。

<資料集、地図帳など>
「最新世界史図説タペストリー」帝国書院
「新詳高等地図」帝国書院
大きな流れを理解する上で、横のつながりや国家の位置関係を把握しておくことは非常に重要です。教材自体はなんでもかまわないと思いますが、資料集と地図帳は必携アイテムとして有効に使ってください。今回は自分の使っていた2冊を紹介しました。


■最後に ―本質的な勉強をしよう―■
世界史の勉強は暗記につきます。自分でノートに流れをまとめてみるのもいいでしょう。参考書に負けないくらいのきれいなオリジナルノートを作ってもいいでしょう。多くの参考書に手を出すのもいいでしょう。でも、結局は覚えていないと使えないのです。試験で使えるものは自分の頭の中に入っているものだけ。試験で使えるような知識を身につけるということを念頭において、勉強が参考書を眺めたり、ノートを作ったりといった“作業”には絶対ならないようにしてくださいね。

今回は数多くの教材を扱ってきました。実際に書店に行ってもらえればわかると思いますが、世界史という1科目だけでもここで紹介したものは氷山の一角にすぎません。東大合格者がすべての参考書を買っているはずがないので、やはり自分で選んだものが最良の参考書ということになってくると思いますが、少しでも役に立ってもらえれば幸いです。






次回は根本先生から地理の参考書について紹介予定です。ご期待ください。

武井靖弥
2013/11/04
 皆さん、こんにちは!
 今回はArianna Huffingtonという女性ジャーナリストのプレゼンテーションを扱います。そのメインテーマはタイトルの通り“睡眠”です。皆さんは普段どのくらい睡眠を取っていますか?受験生の皆さんにとって睡眠の量は非常に重要な問題ではないでしょうか。たくさん睡眠を取って短期集中型で勉強する人もいれば深夜遅くまで勉強している人もいるのではないでしょうか。  筆者の意見はタイトルの通り“Get more sleep”である訳ですが、その理由を含め聞いてみましょう!



⇒問題はこちら
2013/10/28
みなさん、こんにちは!以前英語の参考書を紹介させていただいた武井靖弥です。

世界史・地理選択であったこともあり、今回は世界史の参考書について紹介していきたいと思います。よろしくお願いします!




■問題構成について■
まずは東大世界史の問題構成から、説明します。(すでに実際の問題を見たこと、解いたことがある人は読み飛ばしてくれても構いません。)

第一問:大論述
例年17~20行(つまり510~600字)以内の論述問題が課されます。基本的には、歴史の大きな流れを説明させる問題となり、具体的な事項というよりは抽象的な説明と流れの描写を求められます。

第二問:小論述
2~3行(つまり60~90字)以内の論述問題が6題前後出題されます。この問題は抽象的な説明というよりは、用語や出来事を詳述することが求められます。

第三問:用語問題
説明文を読んで、それに対応する用語を答える問題(10題程度)となります。

イメージをつかみたい人は、過去問を挙げておきましたので、参照してください。

配点は公表されていませんが、大体の認識としては
第一問:25~30点
第二問:20~25点
第三問:10点前後
といったところでしょうか。


■目玉は大論述。しかし…■
東大世界史の最大の特徴は、間違いなく第1問の大論述でしょう。500字を超える長い論述問題は、他の大学に類を見ません。(例えば京都大学は300字、一橋大学は400字です。)僕も高1で初めて問題を目にしたとき、絶望を覚えたことはよく覚えています。配点も半分弱あるので、対策にも時間を取られます。「配点の多くを占める第一問は、歴史上の大きな流れを捉えることが重要だから、東大世界史の対策は歴史の流れだけを把握しておけばよい」と言われることがありますが、それだけに目がいってしまうとうまく点が取れません。実際に書いてみるとわかりますが、大きな流れを記述するとはいえ、具体的な因果関係や年代を知っていないとごまかしながらでしか書けないのです。

■まずは第三問から■
そのため、東大世界史攻略のためには第二問、第三問も見据えた「知識の暗記」が伴ってきます。「知識の暗記」といってもマニアになる必要はありません。量とレベルで言えば、センター試験で満点をとれれば十分でしょう。二次、センターともに世界史を選択する人は、満点をとれるように対策しておきましょう。(結果として95~98点に落ち着けば大丈夫です。)
そこで今回は「知識の暗記」に焦点を当てて、参考書を紹介していきます。知識の暗記は問題演習でアウトプットをすることで効率よくできるので、問題集を中心に紹介していきます。

<基礎から固めたい人へ>
「詳説世界史スタンダードテスト」山川出版社
山川の世界史教科書である詳説世界史の問題集です。これが9割以上できるようになれば、世界史の基本的な知識は押さえられることになります。まだ知識が固まっていない人は2~3か月かけて3周解くことをおすすめします。まだインプットができていない人は、1回目実施→丸つけ→教科書の該当範囲を読む、用語集で調べるなど→2回目実施を1セットとしてやると良いです。

「よくでる世界史B一問一答重要用語問題集」山川出版社
上記山川の教科書の一問一答形式の問題集です。用語暗記や反射スピードに焦点を当てたい人、非受験生など勉強があまり進んでいない人におすすめです。

以上が世界史の基本的な問題集になります。まだ勉強が進んでいない人、基礎が抜けている人はこれらを使って進めていきましょう。
時に細かい知識が要求される私大入試の世界史でも、7割は基礎知識、1割が誰も知らないような難解な知識、2割が勝負を決める少し細かい知識、で構成されると言われています。私大を受けるうえでも重要な基本知識は早めに固めておきましょう。

<私大まで見据えた知識を入れたい人へ>
以下で紹介するのは残りの3割(少し細かい知識と難解な知識)を固めるための参考書です。

「実力をつける世界史100題」Z会出版
難解な知識も含め、空欄補充形式でチェックできる問題集です。これが9割マスターできれば私大入試にも十分対応できます。東大志望者は難解な知識にこだわりすぎず、流れを意識しながら解いていくとよいです。

「世界史のそのまま出るパターン一問一答」佐藤幸夫
一問一答形式問題集となります。収録されている知識は細かいものもありますが、その中でも試験によくでてくる知識が扱われていますので、山川の一問一答で物足りなくなってきたら、早めにこちらに転換することをおすすめします。

東大の第三問で点を取りきるためには以上の参考書をマスターしておくとよいでしょう。

<年代や文化史を鍛えたい人へ>
「元祖 世界史の年代暗記法」小豆畑和之
年代暗記の参考書です。この本はゴロ合わせで年代が覚えやすくなっているだけでなく、右ページに関連事項や経緯などが書かれているので、横のつながりや、歴史の流れを捉える必要のある東大受験生にはおすすめの本です。

「佐藤の世界文化史一問一答」佐藤幸夫
覚えにくく手薄になりがちな文化史をゴロなどで覚えやすくまとめてあります。隙間の時間を使って学習できます。

分野別の問題集は書店で自分に合いそうなものを見るのがベストですが、参考にしてみてください。




次回は第一問、第二問の論述対策向け参考書を紹介予定です。ご期待ください。

2013/10/28 武井靖弥
2013/10/25
第6回 出典:東京大学前期 2002年 物理 第1問

 皆さん、こんにちは。秋の模試のシーズンが近づいてきました。焦りもあるかもしれませんが、やることはいつも通り勉強するだけですよね。


 物理を勉強していると、沢山の“定数”に出くわします。万有引力定数 G 、ボルツマン定数 k 、気体定数 R 、電気素量 e 、真空誘電率 μ0 、……高校物理の範囲でもかなり多くの定数が出てきますね。東大も含め物理の入学試験で数値計算をあまりさせない大学が多いので、こうした数値の有難みは忘れられがちなのですが、これらが定数として与えられるからこそ様々な結果を数値として予測することができるのです。
 勿論、こうした定数の値は空から降ってくるわけではありません。確かに中には値を定義された定数もありますが、基本的には人間が自力で測定して初めて判明するものであり、そこには当然多少の誤差が含まれます。物理を、ひいては現代社会を支える諸公式がこれらの物理定数によって彩られていることを考えれば、“その値を正確に求める”ということがどれほどの意味を持っているかはお分かりでしょう。この測定のために先人達から様々な知恵と技術が連綿と受け継がれてきましたし、それらに改良が重ねられることで定数の精度はどんどん高くなってきています。

 そんな物理定数のひとつ、重力加速度 g ――物理を学んで一番初めに出会った物理定数だという方も多いのではないかと思いますが、「この g の値を正確に測定せよ」と言われたら皆さんはどうしますか?
 まず初めに考えるであろう一番素朴な方法は、物体を落としてその落下距離と落下時間の関係をプロットし計算するという方法です。実際これでもある程度はうまくいくでしょう。ただ、落下距離・時間を両方とも、専門的な測定器を使わず正確に測ろうと思うとなかなか上手い方法が必要そうで、だったらそもそも他にもっと良い手段が無いかと考えてみたい所です。
 これを踏まえ高校の力学で学習した内容を思い返していくと、“振り子を利用する”という手段に行きつきます。長さ l の振り子の運動は振幅が微小であれば単振動であり、その周期 T は

                    (1)


と表せると学習したはずですから、l と T を測定すれば確かに g を逆算することができますし、それらの測定は上の方法より簡単そうです。
 というわけでピアノ線か何かに重りを取り付け、振り子とすることで重力加速度を測定……としてもいいのですが、今回はこのような方法でそこからさらに精度を上げる方法を考えます。まず単振り子の運動を妨げ誤差を生じさせる主な要因となり得るものを考えてみると、空気抵抗や周囲の環境がもたらす振動などが挙げられるでしょう。これらの影響を小さくするなら、例えば重りの質量を重くするという方法は単純で手っ取り早いでしょうが、重りが重くなると今度は振り子に使う糸の伸びなども気になってきます。それならいっそのこと金属の棒などの、伸びが糸より小さく殆ど無視しても構わないような剛体を振り子として使えばよいのではないかという考えが浮かびます。
 剛体の振り子運動を考えるとなると、第6回で紹介した慣性モーメントと回転の運動方程式が登場せざるを得なくなりますが、その運動方程式の形は次のように、高校の単振り子の運動方程式のものと大差ありません。

                (2)


 ここで、棒の質量を M 、回転軸周りの慣性モーメントを I 、回転軸から重心までの距離を l 、鉛直線からの傾きを θ としました。振幅が小さく θ が微小であれば sin θ ≒ θ と近似できるので、普通の単振り子のときと同じようにこの運動方程式は単振動を表し、その周期 T を

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と求めることができます。また、I は重心を通り回転軸に平行な軸の周りの慣性モーメント IG を用いて

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と表せるので(導出は ⇒こちら)、 これを(3)式に代入して

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 さて、ここまで議論を進めるところまではよかったのですが、問題はこの測定をどうするかということです。上の式の中で特に厄介なのが I と l 。これらの測定を精密に行うのはそう簡単なことではありません。ただし、l を求めるために必要な重心の位置を決定する方法として有名なものがあり、それが東大入試の物理2002年第1問Ⅰで扱われています。授業中、シャーペンなどの重心をこの方法で特定して遊んだ(?)人も多いのではないでしょうか。このような身近で面白い現象を、数式を通して実感できる部分は自分にとって物理の最大の魅力ですね。しかし、このままではやはり I を正確に求めることはできません。

 この問題の解決法のひとつは、1817年にイギリスのヘンリー・ケーターに提示されました。全長が L で重心の位置の分からない、十分細くて丈夫な棒の両端をそれぞれA、Bとします。ただし、2つの重りを様々な位置に取り付けられるようにすることで回転軸から重心までの距離を自由に変えられるようにしておきます。まずA端を始点として振り子とし、単振動させた時の周期 TA を測定すると、A端から重心までの距離を l とすれば(5)式より

                (6)


となります。今度はB端が始点となるよう棒をひっくり返し、同様に単振動させその時の周期 TB を測定します。B端から重心までの距離が L-l であることに注意すれば、

              (7)


が成り立ちますが、重りの位置を調節しながらこの測定を繰り返し、TA = TB となるような重りの位置を探します。そのときの周期を T0 とすると、(6)式と(7)式を連立することで

       または      (8)


と求まるので、重心が棒の中点でない場合さえ見つけられればこれを(6)式に代入して解き

                       (9)


と求めることができます。この場合、測定する必要がある物理量は棒の全長 L と振り子の周期 T0 だけであり、この2つであれば身近な装置だけでも十分な精度を持って測定することが可能でしょう。

 このような方法で重力加速度を求める振り子は、開発者の名前を取って“ケーターの可逆振り子”と呼ばれたりします。結果である(9)式は高校で扱う普通の単振り子(ボルダの振り子)において求める式と全く同じなのですが、このような方法で求める重力加速度の方が実際に精度が高いと言われています。
 この実験は、実は東大の2学期・3学期に行われる学生実験で皆さんもやることになるものです(2013年現在)。2002年の物理第1問Ⅱは操作が違いますが、重りが2箇所どこかにあったりなど、そこはかとなくこの実験が元になったのではないかと個人的には感じる部分があります。そういう意味で、前回に続いて東大前期教養課程の実験で行われる内容を扱いました。この実験に登場する内容の物理の問題はまだ他の年度にもありますが、それはまた別の機会に。

 少し話が逸れましたが、このようにとても初歩的な物理定数に思われる重力加速度も、正確な数値を求めようと思うとなかなかの苦労が必要になります。物理の諸法則が様々な公式として判明したとしても、その数値を実際に求められるようになるまでの道のりはそれほど短くないんですね。“誤差”というものについては高校の段階だとまだあまり意識することが多くないことでしょうが、東大物理2012年第3問Ⅲをはじめ難関校の入試では時折顔を覗かせるテーマとなっています。折に触れてこういったことについてまで思いを巡らせられるようになってくると、物理に対する理解がまた深まるかもしれませんね。それではまた次回。

2013/10/25 石橋雄毅

2013/10/21
こんにちは、根本です。
いよいよ今回は、前回紹介した日本史学習の流れに沿って、役立つ参考書を紹介していきます。
ご紹介するのは全部で10冊。さあ、行ってみましょう!





■流れを理解するための参考書
①山川出版社『詳説日本史B』 をはじめとする教科書

えっ…と思われる方もいるかもしれませんが、敢えて教科書を入れています。
その理由は執筆者。奥付を見ていただければ分かるのですが、東大の教授陣がズラリ。
つまり、東大入試の出題者が教科書を書いているわけです。
(高校日本史の教科書は、教科書会社ごとに複数ありますが、東大日本史対策をするならば、東大の教授が執筆者に加わっているものをお勧めします。)
※可能であれば最新版を用意しておきましょう。教科書の改訂では新しく発見されたことや通説が変わったものなどが反映されますが、その改訂事項を入試で聞いてくるケースも複数見受けられます。

もちろん教科書の記述・レイアウトは取っ付きやすいものではないため「これだけを読めば」という訳にはいかないのですが、学習の際に用意しておくことは必須です。
他の参考書を読んだり、問題を解いたりした後に教科書の該当記述に立ち返るといった使い方をしながら、「教科書の記述の意味が段々見えてくる」ようになることを目指して、学習を進めて行くと良いでしょう。


②『NEW石川日本史B講義の実況中継』シリーズ(春秋学習社)

教科書で扱われている内容を、分かりやすくつかみやすく説明した参考書です。
著者は有名予備校で日本史を教えている先生で、講義でのノウハウ等も活かした「読んでいると授業を受けているような気分で読める」参考書になっています。
構成は全5分冊。本編の他に各巻にサブノート、CD付きとかなりボリューミーですが、まずは本編のみを読み物のようにざっと流して読むことをオススメします。
サブノートは細部事項の暗記用、CDは年代暗記用となっているので、センター対策等必要に応じて使うと良いでしょう。


③安達達朗『日本史講義2 時代の特徴と展開』(駿台文庫)

こちらも教科書で扱われている内容を説明した参考書です。
出版社名からも分かる通り、著者は駿台で日本史を講義していた先生。既に亡くなられているため、今後改訂されることは無いでしょう。
②が比較的読みやすく書かれているのに対し、こちらはキッチリした文章になっています。量は全部で1冊と、コンパクト(?)にまとまっているのです※1が、内容はその分凝縮されており教科書の内容がある程度頭に入っていないと難しく感じるかもしれません。
教科書を一通り読んで内容が何となく見えてきた後に流れを整理するために読む、といった使い方をすると良いでしょう。
※1 実は本シリーズは全5冊なのですが、残り4冊は絶版になってしまっており、この第2部が残るのみになってしまっています。


④石川 晶康『日本史の考え方 河合塾イシカワの東大合格講座!』(講談社現代新書)

こちらは新書。②の内容を更に厳選し、読み物として面白く書いた本です。
日本史の流れが大まかにつかめるのはもちろん、扱われているトピックも荘園制や参勤交代など、東大日本史対策をする上でぜひとも押さえておきたいモノが選ばれています。
日本史入門、そして東大日本史入門としてオススメの1冊。
新書なので、受験勉強を本格的に始める前にも、また受験勉強中の息抜きとして読むことをお勧めします。


⑤野島博之『謎とき日本近現代史』(講談社現代新書)

こちらも新書。以前は講談社文庫から出版されていたものが新書としてリニューアルされました。
タイトルからも分かる通り、明治時代以降の近現代史を扱った本です。
東大日本史の第4問は必ず近現代史が出題されるのですが、そこで問われるテーマがかなり取り上げられており、教科書と並行して読んでおくと良いでしょう。
ただ、扱われている用語に少し難解なモノがあります(実際入試までには使いこなせるようになっておいて欲しい用語です)。③と同じく、教科書の理解がある程度進んだタイミングで読んでみると知識が整理されていくでしょう。


■用語・事項を覚える、押さえる
⑥石川 晶康『書いてまとめる日本史―日本史短文論述練習帳 (河合塾シリーズ 得点おまかせ vol. 2)』(河合出版)

東大日本史で求められるのは語句の暗記よりも語句を説明できる力。
実際の入試問題も引用しながら、各時代で重要な事項の説明力を鍛えるのに適した参考書です。
論述をする際の考え方が解説された後、問題→解説の順で構成されています。
解説が詳しいのも使う側にとってはうれしいところ。実際に自分で書いてみて、その後解答や解説を読みなら抜けていた・忘れていた事項を補うように使うと効果が高いでしょう。


■アウトプットする訓練を積む
⑦野島 博之, 井之上 勇『東大日本史問題演習 (東進ブックス 究極の東大対策シリーズ) 』(ナガセ)

入試問題・予想問題を元に作られた4問1セット(本番と同じ形式)が4回分収録されています。
構成としては問題、解答・解説・採点基準、トピック解説が掲載されています。
問題文の読み取りや、それを元にどう答案を構成するか、答案作成の際に押さえておくべき事項はどんなものかといった部分が記述されており、アウトプットの練習ができるとともに流れ・事項の確認にも役立ちます。
4問×4回と数は少ないですが、東大日本史論述の解き方を知るのに役立つ一冊です。
この問題集を利用した後に過去問演習を行うと効果が上がるでしょう。


⑧石川 晶康、桑山 弘、溝田 正弘、 神原 一郎 『“考える”日本史論述―「覚える」から「理解する」へ (河合塾SERIES)』(河合出版)

こちらは東大限定ではなく、一橋大学をはじめとする国公立大日本史も視野に入れた問題集です。
本番形式ではなく、時代・テーマごとに過去問を中心に論述問題が掲載されており、問題、解答・解説、トピック解説で構成されています。
東大入試問題も掲載されており、東大日本史対策としても役に立つ部分はありますが特化はしていません。⑥の延長、発展のような位置づけです。国公立大の志望校が東大のみに絞りきれていない際には本書が役立つかもしれません。


⑨相澤 理『歴史が面白くなる 東大のディープな日本史』(中経出版)
⑩佐々木 哲『東大入試で遊ぶ教養 日本史編』(長崎出版)


④⑤のように、一般向けの書籍です。
こちらは、東大入試問題を題材に、歴史の見方を興味深く書いています。
⑨の著者は(恒例になりつつありますが)大手予備校で日本史を講義している先生。
また、⑩の著者は東大日本史のwebサイトを長年運営されて来た方です。

読み物として楽しみながら、ライトな形で東大日本史で求められる考え方に触れることができます。
過去問が数多く使われているので、ネタバレが嫌な人は過去問を一通り解くまでは触れない方が良いかもしれません。
センター試験直近など、2次試験地歴対策から一度離れなければならない時期に読む人もいるようです。



いかがだったでしょうか?
東大日本史の性格を踏まえた上で、ぜひ参考書を有効活用してみてください。



次回は武井先生に世界史の参考書を紹介していただきます。お楽しみに!
202件中  5件表示  <166170>

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