特集ブログ

特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

編集メンバー

企画リスト


追加・更新記事リスト

202件中  5件表示  <176180>
2013/09/27
第7回 出典:東京大学前期 1999年 理系数学 第6問

 皆さん、こんにちは。夏に鍛えた基礎力が秋以降一気に開花するということは決して少なくありません。大事なのは、それまで正しい努力をし続けること。入試までまだまだファイトです!

 今回の題材は1999年東大理系数学第6問。解いてみた方はお分かりかと思いますが、この問題は結局 を評価するところが最難関。一般的な模範解答は このようなもの(※クリックすると略解が表示されるので注意) となっていますが、これを見てどうしてそんな方法を思いつくのか、と憤った人も少なくないかと思います。

 解答のように、直接的に出すのが難しい値を直線で上手く評価する方法を“一次近似”と言いますが、この方法自体は受験物理でもよく使いますよね。例えばヤングの実験などで目にすることの多い次のような近似です。

 のとき、

※“≃” は “≒” と同じ意味です。大学に入ると、“≒” に当たる記号は沢山出てくるのですが、ここでは表示上の都合からこの記号を用います。

 この原理をさらに掘り下げたものに、“テイラー展開”というものがあります。このテイラー展開は大学に入るとすぐ学ぶことになるでしょうし、大学入試でもよく扱われる題材ですが、今回はこれについて解説します。

 物理を学ぶ中でその片鱗は皆さんも見ているかと思いますが、世の中の様々なことが、様々な関数を用いて表せます。それは自然科学のみならず、例えば経済の分野にも数学は幅を利かせているでしょう。いろいろな関数がこの人間社会を支えています。
 ただそういった沢山の関数は、時に扱いが難しかったりもしますよね。三角関数や対数関数などはその代表例ですが、確かに関数 がどういった値をとってどういった振る舞いをするのかを解析するのは、無理とは言わないまでもなかなかに骨が折れることでしょう。その点では、皆さんにとっても長い付き合いのはずである多項式関数は正確な値もグラフの様子も比較的容易に求まり、おまけに積分も簡単で、とても扱いやすい関数だと言うことができます。すると当然、「関数がみんな多項式で表せたらラクなのになあ……」と考える人が出てくるわけです。
 そこで、例えば関数 sin x が x≒0 のとき

            ……(*)


と近似できたとします。この係数の数列を求めましょう。

 近似できたというからには、まずは x=0 のときの値が両辺で等しくなっていなければ話にならないでしょう。ということは、
また、近似できたのであれば x=0 のときからの変化の様子も両辺で等しくなっているべきところですが、それは x=0 での接線の傾きを比べればよいとも言えるでしょう。つまり(*)の両辺を1回微分して x=0 を代入し、
 さらに変化の様子をより精密に比較しようと思えばグラフの凹凸の曲がり具合を比べることになりますが、それは接線の傾きの変化の様子、すなわち2階微分を比べればよいでしょう。よって(*)の両辺を2回微分して x=0 を代入し、
 ……と、このように「(*)の両辺を微分して x=0 を代入し比べる」という操作を繰り返し続けることで、


を得ることができ、無事に sin x という超越関数を x=0 の近傍において多項式で近似することができます。
 一応付け加えておくと、(*)が恒等式ならば両辺を微分しても恒等式となることを考えて、数列を求めるために x=0 の代入と両辺の微分を繰り返そうという流れがこの話題の紹介としては一般的ではあります。ただ、ここでは“近似”というイメージを持ち出すために接線の傾きやその変化の様子といったもので考えることにしました。
 また、このような方法で関数を近似していることからも分かる通り、この近似は接点の十分近くでのみよく成り立つもので、ある程度離れてしまうと意味を成しません。必要に応じて選ぶ接点を変えてやることが大事になります。

 以上のようにして関数を多項式で近似する方法を「テイラー展開」と言い、特に x=0 のまわりで行うテイラー展開を「マクローリン展開」とも呼びます。
 同様にして一般の関数 f(x) をマクローリン展開すると


となります。ここで、 は f(x) の n 階微分係数を表します。さらに一般化して x=a のまわりでテイラー展開すると、次のように書けます。


 何故このようになるかは、f(x) を x 軸方向に -a だけ平行移動し、マクローリン展開してから元に戻すと考えると分かりやすいでしょう。

 先の近似公式「 」も のマクローリン展開で微小となる2次以上の項を無視したものから来ていることや、これまたよく使う近似「 |x|≪1 のとき sin x ≒ x 」も上のマクローリン展開の結果からすれば当然であることを考えると、実際この多項式による近似は汎用性が高く、便利であることが分かります。東大に限らず様々な大学の入試数学でこのテイラー展開が題材となるのも、微分計算の力を測る丁度良い問題であることの他にこのような重要性・汎用性があるからかもしれません。

 以上、テイラー展開・マクローリン展開について理解を深めていただけたでしょうか。“振る舞いの分かりづらい関数を多項式で近似する”という方法には実はこれ以外のものもあるのですが、受験レベルではこれだけでも十分役に立つと思います。
 それでは最後に微分計算の練習ということで、いくつか問題を出して終わろうと思います。また次回も宜しくお願いします。


 次の関数をマクローリン展開せよ。
(1)    (2)    (3)    (4) 


《解答》

2013/09/27 石橋雄毅

2013/09/23
 皆さん、こんにちは!

 今回はApple社の創設者であり、iMacやiPod、iPhone等の革新的な製品を世に送り出したスティーブ・ジョブズのスピーチを扱います。彼はそのカリスマ性の高さや魅力的なプレゼンテーションで多くの人々を魅了してきました。2011年10月に亡くなったときに日本でも大きなニュースになったので皆さんの中にも彼を知っている人も多いでしょう。

 多くの印象的な言葉を残した彼ですが、その中でも非常に有名なものの一つが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったHow to live before you die.というスピーチです。3つのストーリーから成る14分ほどの少し長めのスピーチですので今回から3回に分けて扱っていきます。

 今回は始めのおよそ5分30秒分のConnecting the dots.という話を扱います。タイトルを直訳すれば「点と点を結ぶこと」。抽象的なタイトルですので一体点とは何のことなのか、そして点と点を結ぶとは結局どういうことなのか注意して聞いてみて下さい!



⇒問題はこちら
2013/09/16
これまで約1か月に渡って掲載してきた、英語参考書紹介も本日でついに最終回になりました。最終回はリスニングについて紹介していきたいと思います。


■30分間はリスニングに集中■
東大のリスニングは120分の試験の中で、30分間確実に時間が取られるうえ、配点も30点ほどあると思ってよいでしょう。帰国子女など、リスニングに絶対的な自信がある人は、1回目の放送でリスニングの解答を終了し、2回目が流れている間に英作などほかの問題を解く、という方法を使ったりもしていますが、大部分の人は30分間フルに使ってリスニングに取り組むことになるでしょう。リスニングはその30分の間でしか解くことができない上に、配点のこともあります。試験開始45分後からの30分間はリスニングに集中しておくべきだと思います。


■やればやるほどできるようになる■
リスニングは、苦手な人でもまずは20/30の得点を目指しましょう。得意な人は26/30を安定して取れるようになると、戦略として計算がしやすくなると思います。これは決して不可能な数字ではありません。リスニングはやればやるほど力がついてくるものだからです。僕自身、本番は推定26/30の得点でした。僕の友人で満点を取った人もいます。ちなみに彼は生まれも育ちも広島で、生粋の広島弁話者です。(笑)
海外生活の経験があって、あらかじめ耳が慣れている人には、確かにアドバンテージがありますが、それがない人でも太刀打ちできないことはありません。8割の得点率を目指して、やるだけやっていきましょう。


■毎日聴くこと■
リスニングの学習で重要なことは、「毎日聴くこと」です。量は問いません。30分でも10分でも構いません。毎日なんらかの形で英語を聴くことで、確実にリスニング力がついてきます。
一方でリスニング試験はただ英語を聴けるようになればよい、というわけではありません。リスニング試験は最終的には読解を要します。選択肢の吟味や問題ごとの切り換えなど、解き方の面でも練習しなければいけません。したがって、ただ英語を聴くだけではなく、実際に「問題を解く」ことが重要です。シャドーイングなど、耳を作るための練習法はいくつかありますが、耳が慣れてきたらできるだけ問題を解くようにすると、試験の対策として効果的になると思います。


■参考書■
学習の仕方を説明したところで、参考書を紹介していきます。

「キムタツの東大英語リスニング BASIC」アルク
おなじみキムタツシリーズになります。ここではあえてBASICを初めに紹介させていただきました。BASICは、ディクテーションを練習できるところが一番の魅力だと思っています。
BASICはExerciseとTrial Testに分かれています。前者がディクテーションメイン、後者が本番に倣った問題になっています。まだ耳が慣れていない人は、Exerciseをじっくりやることをおすすめします。何度もCDを聴くことになると思うので、英語に耳を慣れさせるという意味ではまたとない教材でしょう。


「灘高キムタツの東大英語リスニング」「キムタツの東大英語リスニング SUPER」アルク
耳が慣れてきたら上の2冊を進めていくとよいと思います。SUPERは上級者向けなので、最終的には「キムタツの東大英語リスニング」を解けるようになっておければ大丈夫だと思います。
「キムタツの東大英語リスニング」は、各セクションでパートが3つにわかれ、各パートに設問が5題ずつという、実際の東大の問題形式に合わせた構成になっています。僕は1日1パートを目標に学習していました。本番同様3パートで30分、すなわち1パートは10分あれば解ききることができます。解いた後20分復習に使うとすれば、一日30分の時間で1パート分を学習することができます。これを毎日続けていけば、耳もできてきます。参考にしてみてください。


「マーク式基礎問題集⑪英語[リスニング]」河合出版
センター試験向けの参考書になります。東大は、センターのリスニングは後期試験のみ必要とされますが、本番で26/30を目指す人がセンターで40/50を切るようでは話になりません。まだ長い英文を聴くことになれていない人は、まずはセンターのリスニングの勉強から始めると効果が高いです。
この問題集を終えてしまったら、駿台や河合から出ているセンター試験リスニング問題集をやるのもよいでしょう。


■最後に ―英語参考書の選び方― ■
この1ヶ月間、参考書を紹介してきましたが、一番よい参考書は自分に合った参考書だと思っています。もちろん志望校のレベルは考えなければいけませんし、各分野で王道と呼ばれる参考書もあります。しかしレベルが同じならば、どの参考書も書かれているポイントにあまり差はありません。そうなると選んだ参考書から、自分がどれほどのものを得たり、身につけられたりするかが勝負になってきます。それならば、自分の頭に入ってきやすかったり、勉強しやすかったりする参考書を使った方がいいと思いませんか?「自分で実際に参考書を見て、選ぶ」ということを大切にしてください。受験が終わったあとも、飾っておきたくなるくらいの参考書に出会えるといいですね^^





2週間後の9/30(月)からは、根本先生が社会の参考書について紹介してくれます。これからも勉強がんばってください!

2013/09/16 武井靖弥
2013/09/13
第6回 出典:東京大学前期 1985年 物理 第4問


 皆さん、こんにちは。夏に生活が乱れていた分、学校が始まってリズムを戻すのが大変だ、なんてことになってはいませんか? 入試本番までに、生活リズムを含めた体のコンディションを調整していくのも大事な受験の要素です。規則正しい生活を。

 さて、物理選択の皆さんの中にはもう教学社『東大の物理25ヵ年』で東大入試物理の演習を重ねている人もいるかもしれませんが、第2版以前のものを使っている人は、頭から順に解いていると「何だこれは?」と思う言葉に出くわしたことでしょう。それは1985年第4問(当時は理科に第4問が存在していました)の力学の問題に出てくる“慣性モーメント I ”。この問題を解く上で慣性モーメントの使い方に関する知識は欠かせないので、この問題は現行課程の受験生には解けないことになります(『東大の物理25ヵ年』の解説の欄にも「現行の学習指導要領の範囲外の問題である」と書かれています)。
 慣性モーメントは、東大だと1学期の力学の授業でおそらく出てくることになると思いますが、さすがにかつては高校物理の学習指導要領に含まれていただけあって、その導入部分は高校生でも十分理解可能なものになっています。そのこともあってか最近の過去問や模試などにも、予備知識として慣性モーメントを知っていると役に立つであろう問題がそこそこあります。そこで慣性モーメントに関する物理の問題を、現行範囲の高校物理・数学で解けるよう作ってみました。さすがにこの問題だけでは当時の受験生が学んでいた全ての事柄はカバーし切れませんが、解答・解説の後により深く踏み込みたいと思いますので、まずは慣性モーメントがどのようなものなのか、自分のペンで確かめてみてください。

⇒問題(PDF)

 解答はしっかり自分で考えてから見てほしいと思います。

⇒解答


 高校物理の問題では「棒は十分に軽いとし、質量は無視できる」と問題文に但し書きのあることが多いですが、以上の例題のようにこの“慣性モーメント”という概念を導入することで、棒の重さが無視できない場合の計算も可能になるのです。

 例題で、慣性モーメントは“回転の運動エネルギーの比例定数”として定義しました。そして回転運動のエネルギーが剛体棒で確かに の形になっていることを問Ⅰで計算して確かめてもらいましたが、実はこの慣性モーメントの有用性はエネルギー計算に留まりません。今回は慣性モーメントを使った、“回転の運動方程式”について見てみましょう。

 物理を始めてまず目にする、皆さんご存知の運動方程式は

・               ……(1)


・                  ……(1')



ですが、物体が回転半径 r の円運動をしているときは回転角速度 を用いて と表されるので、r を時間変化しない定数とすれば(1’)は

・                ……(2)


と書き換えることができます。
 さて、ここで今考えているのは“回転”という概念だったはずですが、高校物理では回転する/しないの議論をするときに「力のモーメント」というものを考えました。(2) 式の辺々に r を掛け、モーメント N=rF を導入すると、

・              ……(3)


となり、いわゆる“回転の運動方程式”の完成です。こんな形にしたからと言って何の意味があるのかと思うことでしょうが、ホラ、よく見てください。r が定数の場合を考えていますから、 も定数。すると、実はこの回転の運動方程式、普通の運動方程式である(1)式にそっくりですよね? 実際、 の部分は例題の問Ⅰ(1)で見たように回転運動のエネルギーにおける比例定数となりますが、これを I とおけば

・                ……(3')



となり、普通の運動方程式を表す(1)式で F → N 、m → I 、x → θ 、v → ω としただけで、数学的な形は全く変わりません。ということは、(1)式に対して数学的な操作を行って成り立った公式は全て(3)式でも文字を置き換えて成り立つはず。エネルギー保存則は、今まで皆さんが学習していた範囲の力学で数学的な式変形のみによって示されていたものなので、対応関係から回転に対する運動エネルギーは と表せることになりますね。勘の良い方は運動量保存則も問題なさそうだということに気付くかもしれませんがまさにその通りで、“運動量”『mv』に対応する“角運動量” 『Iω』も実際に保存します。

 さらに、ここまで質点について考えてきたこの話は剛体についてまで拡張することができます。(1)式の運動方程式のときも、力が2つ以上だったり2つ以上の質点が同じ加速度で移動したりする場合には、すべての運動方程式の外力や質量をそのまま足すことができました。これと同じように考えて、(3)式の回転の運動方程式も2つ以上の質点が同じ角速度で回転する場合には I をそのまま足して良いと言えます。剛体の回転運動は沢山の質点が同じ角速度で回転しているものと捉えることができますから、例題のように微小部分について足し合わせることで剛体の慣性モーメントは求められますね。
 では、剛体の慣性モーメントを一般的な形で表してみましょう。剛体の密度を ρ とすると、微小体積 ∆r の質量は ρ∆r .これが回転軸から距離 r だけ離れていたとすれば、その微小体積が持つ慣性モーメントは と表せますから、これをその剛体全体について足し合わせて、


となります(A級紙第4回で扱ったことを用いました)。
 さて、この見かけこそ違う式を用いて例題の問Ⅲ(1)で考えた慣性モーメントを計算してみると、

(ⅰ) 点Oで固定した場合



(ⅱ) で固定した場合



となり、確かに例題で解いたときと一致します。この定式化を用いると、棒に限らず円柱や球など、様々な形をした剛体の慣性モーメントが求められ、その回転運動の様子を計算することができるのです。

 以上の話は、本来であればベクトルや体積分を使ってもっとしっかり議論すべきことであり、わかる人からすれば実はツッコミどころ満載で、なかなか強引な展開になっています(その強引さを見つけ、理由まで突き止められたとすれば、物理についてかなり理解していると言えると思います)。ただ、ベクトルの外積やら積分やらといった見慣れない道具を使って真新しいものを議論していくのは受験生にはなかなか敷居の高いことですし、ここでは何より皆さんの興味・教養を深められればという目的がメインですので、雰囲気だけでも掴んでもらえるよう今回はこのくらいに収めました。数学的にもっとしっかりやりたいと言う人は、嫌でも大学1年生でやることになりますのでそれまで楽しみにしていてください。
 また、今回は慣性モーメントがどのようにして出てくるのかをメインに解説しました。実際にこれを導入することでどういった問題が解けるようになるのかが気になるところでしょうが、そういう人はそれこそ改めて東大物理1985年第4問にトライしてみてください。ここまでの話を理解し切れていなくても、回転運動のエネルギーが であることと、角運動量 Iω が保存することさえ認められたあなたならばもう解けるはずです。それではまた次回。

2013/09/13 石橋雄毅

2013/09/06
今回は記述問題の代表ともいえる、英作・和訳の参考書についての紹介です。


■コストパフォーマンスを考える■
英作と和訳といえば、書くのに時間がかかる割にそこまで配点が高いわけでもない、という印象が強いかもしれません。東大の英語は「時間のやりくり」が難しさの一つだと思うのですが、そういった意味でも英作と和訳は、「なるべく時間をかけず、点を落とさない」、というのが戦略になると思います。不要語句削除問題も含めれば、第2問と第4問は合わせて30~40分ほどで切り抜けられるとベストです。


■書く!書く!書く!■
英作と和訳のトレーニングでなによりも重要なのは、「実際に書く」ということです。自分のわかる所や書ける所まで書いて、解説を読むだけで終わっている人がよくいます。もっと極端な例だと、問題と解説をただ眺めて終了、という人もいます。もしそのような勉強をしてきた人がいたら、今からでも遅くありません。ぜひ改めて、実際に書く癖をつけてみましょう。実際に書いてみることで、自分が実はわかっていない所、わかったつもりになっていた所が見えてくるはずです。まったくわからなければ、解説を写すだけでも違ってくるはずです。腱鞘炎になるくらい書きまくってください!


■英作の参考書■
さて、まずは英作の参考書からです。
東大の英作は基本的に自由英作の形になりますが、考えていることがあってもそれが文法的に正しく書けなければ点はもらえません。文法力がない、あるいは表現を知らなければ、せっかく書く内容が思いついてもそれを書くことができない、すなわち「思想の自由」が脅かされるわけです(笑) そこでまずは「和文英訳をできるようにする」という目標をたて、それをクリアするための参考書を紹介したいと思います。

「大矢英作文講義の実況中継」語学春秋社
おなじみ実況中継シリーズのひとつになります。文法の基礎~自由英作まで幅広く問題が扱われており、自由英作だけでなく文法の復習も兼ねることができます。実況中継シリーズの長所でもあるのですが、講義を聞きながら解くような形式になっているので、進めやすいのも利点です。ある程度文法が固まっている人におすすめです。

「竹岡広信の英作文[原則編]が面白いほど書ける本」中経出版
「よくばり英作文」駿台文庫
両者とも駿台講師の竹岡広信先生が書いている本になります。印象としては上が「頻出表現」をメインに、下が「文法事項」をメインに書かれた本といった感じでしょうか。どちらも文法、表現などの英作の土台を固めたい人におすすめです。全問題数や構成が大きく異なっているので、書店で自分に合いそうな本を選んでみましょう。


英作の勉強の仕方に軽く触れておくと、英文を書いた後に模範解答と比べて、改善点などでてきた場合に、そのポイントをまとめておくとよいでしょう。そこで出てきた表現や文法事項は、まだ身についていない可能性もあるし、あとに残しておけば英作対策としても文法対策としても使えます。「ポイントをまとめておく」、ぜひ実践してみてください。
また自由英作といえど、東大の英作の採点は文法重視のようです。文法ミスがなく、内容があまりにもずれているということがなければ、ほぼ点がくるとみてよいでしょう。まずは「穴のない英文」を書くことを目標にしましょう。


■和訳の参考書■
次に和訳の参考書を紹介します。

「基礎英文解釈の技術100」ピアソン桐原
平均4~5文の英文を訳していく参考書になります。この参考書のいいところは分量の少ない英文を多く読めるところだと思います。本のタイトルにある通り100題(類題を合わせれば200題)の英文が読めます。構造把握がまだうまくできない人や、コツコツ進めていける人に向いています。
他にもシリーズで「入門英文解釈の技術70」、「英文解釈の技術100」という参考書もあります。前者が少しやさしめ、「基礎」のついていない後者はいくぶん難しめ、といった感じでしょうか。東大を目指すのであっても、「基礎英文解釈の技術100」を一通りやれば十分だと思いますが、初級からやりたい人、またはさらに英文解釈を極めたい人は、参考にしてみてください。

「基礎英文問題精講」旺文社
1パラグラフ程度の英文(80題ほど)を訳していく参考書になります。僕は高校1~2年でこの参考書を使っていましたが、かなり体力を要する参考書、という印象です。英文の難易度も易しくはないので、馬力がある人、または時間のある高校1~2年生におすすめです。やりきれば確実に力はつきます。

「ビジュアル英文解釈[PARTⅠ]」駿台文庫
英文解釈の参考書としては有名だと思います。3~4パラグラフの文章(35題)を訳していく参考書になります。これも初めの方は英文も短くやりやすいのですが、後半に行くにつれ、文の量も増え、難易度も上がるのでなかなか辛抱が必要です。これについてもおすすめの対象は、馬力のある人、または時間に余裕のある人といったところでしょうか。こちらもやりきれば確実に力はつきます。
姉妹本で「ビジュアル英文解釈[PARTⅡ]」もありますが、難易度などを見るにPARTⅠを仕上げておけば問題ないと思います。さらに極めたい人は参考にしてください。


ここで和訳の練習の仕方を紹介しておきます。学校の先生も同じことを言うかもしれませんが、「参考書をコピーしてノートの左側に貼り付け、右側に訳を書いていく」というものです。英文解釈は、最終的には英文の構造把握ができているかどうかという点につきるので、英文に直接書き込めるよう工夫しておけるとよいと思います。コピーしておけば復習として繰り返し解けるのでおすすめです。
和訳の採点基準は不明なところが多いですが、まずは「正確な構造把握」と「内容の理解」を心がけましょう。受験生が多いこともあり、日本語の枝葉末節は気にしないでしょうから、正確に構造把握をしたうえで、直訳から逸脱しすぎない程度にわかりやすく日本語を書けば大丈夫でしょう。まずは直訳ができるようになっておくと無難です。


■模範解答を先生に……■
さて英作と和訳は、実際書いたうえで、他人に添削してもらうのが一番よいのですが、それが難しい人は模範解答をそのまま覚えてしまうというのも手です。英作については出てきた表現や文法事項を、和訳についてはうまい訳し方や、訳し順などを学んで実践で試してみると上達がはやくなると思います。





次回は9/16(月)、最終回となります。リスニングの参考書について紹介予定です。ご期待ください。

2013/09/06 武井靖弥
202件中  5件表示  <176180>

ソーシャルボタン

公式Twitterアカウント