特集ブログ

特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

編集メンバー

企画リスト


追加・更新記事リスト

202件中  5件表示  <191195>
2013/08/01
 いよいよこの参考書別活用法のコーナーも3週目。東大の前期試験の過去問を扱った参考書についてまとめる最終週となる今回も、その特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価

の3つの観点から、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介していきます!
 本記事でレビュー対象となるための要件を満たした参考書(過去問を抜粋して紹介するのではなく数年度分以上まとめて掲載した参考書)は、書店ですぐに見つかるものは今回までで全て網羅することになります。そしてその今回は、なんと全て数学の参考書。問題文の長大な他科目に比べ扱いやすい短さの数学だからこそなのかもしれませんが、それでも他の大学に比べこれほど専門の参考書が出ているというのは、それだけ東大入試の数学が“解説するに足る”問題ばかりと言うことなのでしょう。しかしそんなことよりも、何より東大受験生にとって一番点数の振れ幅の大きい科目です。「数学さえ上手く行けば受かる!」なんて受験前日に叫ぶ人も相当数いますから、それだけ慎重に、自分にあった参考書を選びたいという人も多いはず。そんな科目に対してこれだけ専門の参考書があるのは願ったり叶ったりとも言えるでしょうし、迷走する可能性が高まるとも言えるのかもしれません。そんな東大数学の“専門書”について、最終回である今回もまた今まで通り、じっくりこってり丁寧に見ていきたいと思います!


◆東京出版『東大数学で1点でも多く取る方法』 数学
 『大学への数学』読者はお馴染み、安田亨先生の著書(と言っておきながら実は自分は元来大数読者ではなかったりします)。理系編と文系編の2種類が存在していて、かつては共に2000~2009年度入試までの10年分の問題を収録していましたが近年“増補版”として2012年度入試までの13年分の問題を掲載したものが出版されました。ただし2013年現在の受験生の学習指導要領から外れている複素数平面の問題は、1999年度以前に出題された現行課程範囲内の良問に差し替えられています。

 のっけから独特の安田節・独自の情報満載の「はじめに」「本書の利用法」の後、すぐに「問題編」「解答編」が続きます。問題の配列は単元ごとで、本書もまた日常的な演習を前提にした参考書であると考えられます。単元内の掲載順に特に規則性は見つかりません。“場合の数・確率”の項では概ね易→難の配置になっているのに対し、“数と式など”の項では東大入試史上最も簡単と言われた問題が先頭に来ていないことなどから、単元別に前から順に解くと解説などの面で読者が学習しやすいだろうと著者が判断した配列になっているのかと思います。ただし、「解答編」の解説は基本的に一問一問が独立した構成になっているので、基本的にはどこから手を付けても問題ありません。また各問題文には、出題年度とその年の問題番号が記されています。こうして章立てを一通り見ると、他の参考書に比べ学科の内容以上の情報がまとめられたページに乏しいように感じます。ただ、自分もそれほど多くの受験生がそんなところにまできちんと目を通しているとは思っていませんし、むしろ本書のようにそういった情報が各問の解説の中に分散して取り入れられている方がもしかしたら受験生の目に触れやすいのではないでしょうか。そういう意味で、これは“生徒の目線に合わせる”という本書の企画意図が正しく反映された結果なのかもしれません。

 「解答編」に関して。各問題とも、“考え方”“解答”“注意”から構成。このタイプの問題はまずどのように考えるべきか? といったことに始まり、模範的な答案を付した後細かいテクニックや別解の検討、高度な知識や東大の入試作問委員会への批判(!)で締めくくります。この“考え方”“注意”が安田節全開で、読む人によっては個性的な言い回しなどにイライラが抑えられないかもしれませんが他では見ない実戦的な情報の宝庫となっています。大数を買うほどの数学好きにはひとつの講義としても楽しめる事でしょうし、もっと根本的な話として“考え方”にあるような地に足着いた考え方さえ定着すれば、タイトルの通り試験中に“東大数学で1点でも多く取る”ための力を発揮することができるようになること請け合いでしょう。とは言え、無論基本操作ができることは前提です。当たり前ですが、難関大の入試ならどんな教科でも基本操作を身に着けて初めて土俵に上がれます。ひとつひとつの操作もおぼつかないのに、勘違いして“東大数学で1点でも多く取る方法”なんて言葉にすがっても、本書の解説はそのレベルにまでは対応してくれないのでご注意を。

 難易度評価は、本書では特に行われていません。解説にもよっぽどのことがなければ簡単とも難しいとも書かれていませんが、“一般的な評価がこうだからこの問題はできるべきだ”ではなく“試験場でこの問題を見た時に、どう点をかき集めるか”を大切にする本書のコンセプトからすれば当然のこととも言えます。



 次回8月4日(日)の最終回では、中経出版の“世界一わかりやすい”シリーズを紹介予定です。ご期待ください!
2013/07/29
 いよいよこの参考書別活用法のコーナーも3週目。東大の前期試験の過去問を扱った参考書についてまとめる最終週となる今回も、その特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価

の3つの観点から、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介していきます!
 本記事でレビュー対象となるための要件を満たした参考書(過去問を抜粋して紹介するのではなく数年度分以上まとめて掲載した参考書)は、書店ですぐに見つかるものは今回までで全て網羅することになります。そしてその今回は、なんと全て数学の参考書。問題文の長大な他科目に比べ扱いやすい短さの数学だからこそなのかもしれませんが、それでも他の大学に比べこれほど専門の参考書が出ているというのは、それだけ東大入試の数学が“解説するに足る”問題ばかりと言うことなのでしょう。しかしそんなことよりも、何より東大受験生にとって一番点数の振れ幅の大きい科目です。「数学さえ上手く行けば受かる!」なんて受験前日に叫ぶ人も相当数いますから、それだけ慎重に、自分にあった参考書を選びたいという人も多いはず。そんな科目に対してこれだけ専門の参考書があるのは願ったり叶ったりとも言えるでしょうし、迷走する可能性が高まるとも言えるのかもしれません。そんな東大数学の“専門書”について、最終回である今回もまた今まで通り、じっくりこってり丁寧に見ていきたいと思います!


◆東京出版『大学への数学 入試の軌跡/東大』 数学
 高校生向けの数学雑誌と言えばモチロン“大数”。高校数学の殿堂が東大数学を放っておくはずもなく、『入試の軌跡』として10年分の数学の過去問をまとめたものを毎年6月号の増刊として出版しています。ちなみに、東大の他には京大・センター試験・私大医学部の入試の軌跡が例年刊行されており、また今ではもうありませんがかつては東工大・阪大・阪府大・慶応大・早稲田大・理科大のものもありました。

 掲載されているのは、各年度についての問題、解答と「受験報告」「フォローノート」、最後のまとめとして「10年の総括」「私の受験生時代」「東大の学科紹介」「実力判定テスト」。元が雑誌であるため問題文はかなり詰められており、文理合わせて例年9問前後ある東大数学の問題が見開き1ページ半あるかないかのスペースに収まっています。答えが直後にあるのが嫌な人は嫌かもしれませんが、このコンパクトさが使いやすいという人もいるでしょう。解答も1年分に対し3~4ページ程度なので、後期試験の問題まで掲載されているにも関わらず他の過去問参考書に比べ圧倒的な薄さを誇ります。また、現行課程範囲外の問題にはそれと分かるように印がついています。本書一番の特色のひとつ「受験報告」について。毎年東大を受験した大数読者が編集部に送っている、“試験場でどのように感じどのように取り組んだか”の報告と出来具合が収録されているのですが、これが入試本番の臨場感・緊張感たっぷり。試験場では“いつも通りやる”ことがいかに難しいかよくわかります。書くのが皆さんと同じ受験生な訳ですから、プロが書くような講評より遥かに共感できる部分が多く、時間の使い方や試験場で必ず取るべき問題の取捨選択の面でもきっと参考になることでしょう。ただし、大数の読者には概して数学が得意な人が多いので、多くの受験生はこの欄に掲載されている人達よりも出来が悪いであろうことを覚えておいてください。以上までの内容は本誌に掲載されていた内容の再録となっていて、「フォローノート」でそのとき書き切れなかったことを補足。補足事項としては別解や各問題の図形的解釈、大学以降の内容に繋がる関連事項や高度な考察、例題の紹介などが主です。最後に“V作戦”という欄が設けられていて、その年のセットを総括しています。「10年の総括」では出題内容の傾向について詳しく分析。これに関しては赤本や青本よりも詳しいと言えますが、問題内容以外のことにはあまり触れられていないので試験の体裁といった基礎情報は予め他で仕入れておく必要があります。「私の受験生時代」「東大の学科紹介」は、現役東大生・大学院生に表題の内容について、1人につき丸々1ページを使ってインタビュー。最後に大数オリジナルの東大模試「実力判定テスト」1セットで締めくくります。

 上でも書いた通り、解答・解説は東大数学文理合わせた1年分につき大体3~4ページ。他に類を見ないほどコンパクトかつスマートに書かれていて、こういうものの方が良いという人もいれば早い論理展開に着いていけない人もいるでしょう。「フォローノート」の補足には青本以上に突っ込んだ内容が書いてあることもしばしば。

 難易度評価は、各問についてまずA(基本)からD(難問)までの4段階。その上でその解答目安時間も設定されています。1セットについての講評としては110字程度の“寸評”と先の“V作戦”を掲載。個人的にはこの大数の評価を一番信頼していて、試験場で受験生が当該のセットを目の当たりにした時に感じる感覚として最も妥当な判定だと思います。大数ではDと評価されている問題が25ヵ年でBと評価されていることもザラにありますがこれはやはり方針の違いによるもので、例えば1998年の理系数学第5問は計算がなかなか重い問題なので、試験場で解き切るには努力を要するので大数はDと評価、でも普段の学習の中ではこれくらい完遂してほしいという意味で25ヵ年はBと評価したのだと考えられます。



 次回8月1日(木)は『大学への数学』でおなじみ・安田亨先生の『東大数学で1点でも多く取る方法』を紹介予定です。ご期待ください!
2013/07/21
 やってきました参考書別活用法のコーナー2週目。今回もまた前回に引き続き、東大の前期試験の過去問を扱った参考書について、その特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価

の3つの観点から、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介していきます!
 東大に合格するためなら、参考書への投資くらい安いもんだ! なんて方もいらっしゃるかもしれません。ただ、少なくとも参考書に関しては、高いものが何でも良いものだとは限りません。前回言ったのと本質的に同じことですが、一番大事なのは自分が求めることがその本に書いてあるかどうかということであって、高いお金を出して買った分厚い本の大半のページが実は自分にとって不必要な情報で構成されていたなんてこともあり得るのです。これでは、お小遣いどころか貴重な時間までもが無駄になってしまいかねませんね。しかし高くて厚い本は、本屋での立ち読みでその特徴を掴むのもなかなか大変なもの……。そこでこの2週目では、受験参考書としてはちょっとお高い3種類の過去問参考書について、詳しく見てみようと思います!


◆聖文新社『東京大学数学入試問題50年』 数学
 毎年『全国大学数学入試問題詳解』を発刊している聖文新社が、その創刊50年を記念して主要大学の数学入試問題50年分を大学ごとに次々と本にしました。本書は勿論そのトップバッター。大きめの書店でしか見ませんが、50年分ともなるとさすがに貫禄の佇まいです。構成の様子に入る前にまず言っておきたいことがひとつ。それは、本書のユーザーは主に高校・予備校教師だということです。そりゃあ、東大の数学を50年分も解くだけの時間的余裕なんて殆どの受験生が持ち合わせていないでしょう。個人的には25年分だって全部は必要ないだろうと思っているくらいです。それよりは、講師が生徒指導の為に、この669題の良問の中からどの問題を演習用に使うか選ぶための“図鑑”的な使い方の方がよっぽど実用的でしょうし、編集部側もおそらくはそのような想定でいるようで、「はしがき」には“私たち高校・予備校教師が~~”と書いてあります(読者を含まない、筆者たちとの意味での“私たち”とも取れましたが、自分は文脈から読者を含んだ“私たち”だと考えます)。それでもここに本書について述べるのは、実際に自分の周りに本書を全て解いて入試に臨んだ同級生がいたこと(かなり稀な例ですが)、余所で本書の特徴について述べたレビューを自分はあまり見たことが無いこと(大半が、「東大入試ってやっぱりスゲー!」というものばかり)の2点から。本書を改めて“受験参考書”として見るとどのような特徴が浮き彫りになるのか、まとめてみます。

 「はしがき」1ページで東大入試数学50年の雑感を述べ、次ページで本書の構成についてまとめた後は基本的に問題と解答のみ収録。特徴的なのはそのまとめ方で、まず「年度別問題編」として50年分の入試問題を全て年度順に掲載。ここで言う“全て”とは、前期試験の文系数学・理系数学、後期試験は勿論のことセンター試験の前身の共通一次試験が始まるよりももっと前に行われていた大学個別の一次試験の問題も含めての“全て”です(が、一次試験の中には一部省略されているものもあります)。また試験時間といった細かな体裁は書かれていません。問題文はびっちり詰められていて見渡しやすく、コピーもしやすそうです。1956年から2005年までの50年分の問題の後には、「項目別解答編」が続きます。ここでは、その50年分の問題が単元ごと・難易度順に解答と共に再配置。学習指導要領が50年の間に何度も変わっていますので、ここの単元は聖文新社独自の分類になっています。それぞれで掲載順が違うと扱いが面倒なのではと思うかもしれませんが、一応双方向の行き来がすぐにできるような記載は施されています。この構成から、本書は過去問をセットとして解くことも、また25ヵ年のように純粋に演習問題として使うことも、いずれにも対応しているということが言えます。残念ながら、昔の問題の制限時間は本書からはわかりませんが。

 解答は、略解とまでは言わないまでもかなり淡泊で解説の類はほぼ皆無。50年分もの問題を2度も掲載してこの厚さなのですから、解答の充実度はお察しください。勿論最低限必要なことは端的に書かれていますので、数学の得意な人にはこれで良いのかもしれません。

 先にも述べた通り「項目別解答編」で問題を単元ごと・難易度順に配置していますが、これはなんとも珍しい配列で、少なくとも東大数学を1セット解く上で、単元ごとの難易度の情報はあまり役に立ちません。1セットの中に同じ単元の問題が含まれることは、2012年度入試のような例外でもなければ滅多にありませんから、一通り解いて振り返ってみたところで結局どの問題は取るべきでどの問題は取れなくても良かったのか、ということがなんとなくしか分からないためです。しかし通常の問題演習をするという観点からした場合には、苦手な単元を頭から解いていけば少しずつレベルアップしていけるというメリットがありますので、単元ごと・出題年度順の配列を取っている25ヵ年に比べればよっぽど効果的に思われます。

 以上全ての性質を鑑みても、やはり本書は数学講師が東大入試を研究・生徒指導に活用するための1冊としての利便性が特に際立っている印象を受けますね。本書を全て解いたと豪語する私の友人は、理Ⅲを目指して高1からずっと受験勉強をしてきたという人物で、他の科目の過去問も25ヵ年全て解いたという猛者です。制限時間の切羽詰まった通常の受験生にとっては、本書を全部解くだけの時間を他の科目の勉強時間に充てた方が利益が大きい可能性が高いことを改めて強調しておきます。


 いかがだったでしょうか? どれも個性的な参考書で値段に見合うだけの価値をそれぞれに有しているといったところでしたが、逆にその厚さの分だけ増える不必要な情報量はクセと呼ぶべきデメリットでもあり、結局その参考書の長所を活かし切れるかどうかは実際に使用する皆さんにかかっています。以上の記事を読んで、これなら自分はうまく使えそうだ! というものがあったなら、是非書店へ足を運んでみてください。ただ繰り返しますがお忘れなく、実際に大事になるのはやはり、その本に本当に自分の求めることが書いてあるかどうか? ということです。どんなに情報が豊富でも、どんなに値段が高くても、そこに必要性が無いならばその本は合格に近づく1冊ではないのですから。それではまた来週。
2013/07/18
 やってきました参考書別活用法のコーナー2週目。今回もまた前回に引き続き、東大の前期試験の過去問を扱った参考書について、その特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価

の3つの観点から、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介していきます!
 東大に合格するためなら、参考書への投資くらい安いもんだ! なんて方もいらっしゃるかもしれません。ただ、少なくとも参考書に関しては、高いものが何でも良いものだとは限りません。前回言ったのと本質的に同じことですが、一番大事なのは自分が求めることがその本に書いてあるかどうかということであって、高いお金を出して買った分厚い本の大半のページが実は自分にとって不必要な情報で構成されていたなんてこともあり得るのです。これでは、お小遣いどころか貴重な時間までもが無駄になってしまいかねませんね。しかし高くて厚い本は、本屋での立ち読みでその特徴を掴むのもなかなか大変なもの……。そこでこの2週目では、受験参考書としてはちょっとお高い3種類の過去問参考書について、詳しく見てみようと思います!


◆角川学芸出版『鉄緑会 東大古典問題集』 古典
 こちらも数学と同じく『資料・問題篇』と『解答篇』に分冊。ただしこちらは2013年現在10年分のものしか出版されていないようです。まずは「資料篇」から。“東大入試古典の出題形式・出典傾向”“答案の書き方”など、序盤の大局的な構成は数学と同じです。それに続いてまとめられているデータの詳しさが尋常でなく、かつて出題された問題が“現代語訳”“条件付訳”“内容説明”“心情説明”“理由説明”“その他”のどれに分類されるものなのかを小問単位で総覧。また出典をジャンルごと・時代ごとに整理したりなどちょっとやり過ぎなのではと思うくらいで、ここまで来ると一体どれほどの受験生が活用できる資料なのでしょうか。この辺は正直講師向きです。一方、続く“古文作品ジャンル別読解法”では出典作品が説話なのか随筆なのかといったことを知ったら持つべき、問題を解く上での先入観が書いてあるのですが、例えば数学であれば“東大の整数問題は頭を捻る必要のある難しい問題であることが多い”“東大文系数学の微積分の方程式の問題は本当に単純な計算問題であることが多く、出たらまず落とせない”などの各頻出単元に対する先入観をよく目にしますし、自分で過去問に当たっていくと実感としても湧いてきますよね。その古典版がまとめられているのはあまり見ませんし、しかし実際に受験生にとって役立ち得る情報ではあると思うので、一見の価値はあるかもしれません。最後に“古文単語集成”“漢文基本句法”が収録されていて、前書きの通り本当に本書と辞書さえあれば、完全に自習が出来るよう構成されています。“古文篇”と“漢文篇”に分けられた「問題篇」について。こちらも数学と同じく、出来る限り1題が見開きに収まるよう配慮されていて使いやすいです。東大古典では重要な、解答欄の長さも問題にきちんと記されています。惜しむらくは、後述する難易度評価が古文篇・漢文篇のトビラページの裏に一覧として掲載されていることで、個人的に問題を解く前にはその難易度をあまり知るべきではないと思っているため、寧ろこれは解答篇に掲載した方が良かったのではないかと思っています。

 「解答篇」について。数学同様やはり充実度は随一。課題文の一節一節について、これほど詳しい解説を添える参考書は本書をおいて他に無いでしょう。ただ古文はあまりにも国文を好き過ぎる人が書いているきらいがあるので、“出典解説”に並ぶ日本古典文学の刊行事情、その作品への東大教員の関わり方、過去の出題の系譜との考察……などなどのマニアックな知識から感じられる熱い情熱は、大の国文好き・及び入試好き以外のどれほどの受験生に届くのか少々心配になります。また本文に関して本当に一節単位で解説をするので、“本文解説”の項目は必然的に長大になり、受験生、特に理系学生にとってはこれを全て読破するのにはそれなりの苦痛も伴うと思います。数学でもそうですが、この手の解説書は必要な部分だけしっかり読もうとすればそれで充分だと言えるでしょう。その長い“本文解説”の後、“解答例”“採点基準”“設問解説”と続きますが、これも数学同様きちんと参考配点を掲げている点はかなり重要かつ貴重です。25ヵ年の国語などでは与えられた解答と自分の答案とを見較べて違いを自分で判断し正確な自己採点を行うことを良しとしているようですが、そんなことが最初からできる受験生はおらず、そもそもそれができるような力を養うために問題演習をしているのです。自分で自己採点ができるようになるための指針たる採点基準をあえて用意しない姿勢は、参考書にとって決して美点とはなりえないと自分は考えます。そういう意味で、本書の持つ意義はこの部分だけでも非常に大きいでしょう。さらに最近では“答案例”も付いてきて、実際このくらいの答案を書くとこういう減点を食らうよ、ということまでわかるようになっています。古文も漢文も、最後は“現代語訳例”(漢文はさらに“書き下し文”も)で締めくくられます。

 難易度評価に関しては、各大問について、古文9軸、漢文8軸で評価。内訳は、古文は“問題の評価”として≪難易度≫≪記述力≫≪時間≫≪完成度≫の4軸、“学習の効果”として≪語彙≫≪文法≫≪敬語≫≪常識≫≪主体≫の5軸。漢文は“問題の評価”の4軸は同じで、“学習の効果”として≪語彙≫≪句法≫≪常識≫≪主体≫の4軸となっています。ここからさらに各々の軸について5段階で評価とかなり細かくなっている上に、このような評価を行っている他の参考書が無いため比較が出来ないので妥当性の判断が難しいのですが、だからこそやはりこれを参考となるひとつの目安として受け入れるべきではあるでしょう。≪(問題の)完成度≫なんて評価を聞かされてもどうすりゃいいんだよ、という話ではありますが。

 全体として、本書は数学よりも少々マニアック過ぎるところがあります。そのため、高いお金(5000円強)を払って買ったはいいものの受験までに読むのはこの分厚い本の半分程度、なんてことが十分に考えられる一冊ではあるのですが、それでも他にはない有益な情報が詰まっていることもまた確かです。そこは、受験生であるあなた自身の、入試における古典の位置づけの重要度から財布の重みと相談して判断してください。



 次回7月21日(日)は、現在市販されているものの中で最も東大入試を古くまで遡ることができる参考書・聖文新社『東京大学数学入試問題50年』を紹介予定です。ご期待ください!
2013/07/15
 皆さん、こんにちは!

 2回目である今回も前回に引き続きデレクシヴァーズのプレゼンテーションを扱います。前回のおさらいを少ししておくと、Keep your goals to yourself.というタイトルの通り、目標を他人に打ち明けるとその達成率が低下してしまうということを科学的な実験結果を示しつつ紹介してくれました。

 さて今回のタイトルは‘Weird, or just different?’ということですが、どういった意味なのでしょうか?このweirdという単語、皆さんには少し馴染みが薄いかもしれません。辞書を引いてみると次のような意味があることが分かります。

weird 【形容詞】
1.(幽霊などの超自然的なものを思わせて)異様な, 気味の悪い, この世の物でない
2.<口語>変な, 奇妙な.

 これを踏まえてタイトルを直訳してみると「変、あるいは単に違うだけ?」となりますね。一体何が“weird”、あるいは“different”なのか注意して聞いてみてください。2分ほどの非常に短いプレゼンテーションですが興味深いアイデアを伝えてくれるはずです!



⇒問題はこちら
202件中  5件表示  <191195>

ソーシャルボタン

公式Twitterアカウント