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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2013/07/01
 皆さん、こんにちは! 今回は数あるTEDのプレゼンの中でも有名なものの中の一つ、"How to start a movement"「社会運動はどうやって起こすか」の講演者である、デレク・シヴァーズのプレゼンを扱います。
"How to start a movement"は映像をふんだんに使ったプレゼンなのであまりリスニングには適さないですが、内容的にはとても面白いので興味があれば是非聞いてみてくださいね!⇒リンクはこちら

 "goal"すなわち目標。皆さんには東大合格という大きな目標があると思いますが、その目標に対して人はどう行動すべきなのか、聞いてみましょう。




⇒問題はこちら
2013/07/01
第1回 出典:東京大学前期 2006年 理系数学 第4問

 皆さん、はじめまして! このコーナー、難しいことを扱うとは言いつつも、勉強の合間の一息程度の気持ちで気軽に読んでみてほしいです。ただ、たまに出題する問題は、せっかくなので真剣に取り組む価値のあるものを目指して作っています。どうぞ、刺激的な理学を!

 さて初回の内容ですが、受験生にとって苦手意識が一番強いかもしれない、でも解けると一番楽しいかもしれない、そんな“整数”の分野からのトピックスです。
 タイトルにある「ディオファントス方程式」―― なにやらゴツい名前で身構えてしまうかもしれませんが、その実は結構皆さんにも馴染み深いものだと思います。例えばピタゴラスの方程式: だとか、教科書にも載っているような一次不定方程式: などの整数解を考える――これらがまさにディオファントス方程式の問題なんです。これに限らず、“整係数の多変数高次不定方程式の整数解”を考えるときは全てディオファントス方程式の文脈で語られるそうで、そうなると東大理系数学2006年第4問「 の整数解」 もディオファントス方程式の問題として括れることになりますね。

 ディオファントス方程式の研究に関わった有名な数学者の一人にフェルマーが挙げられますが、彼の残したフェルマーの最終定理は歴史上の難問としてあまりにも有名です。

フェルマーの最終定理:

方程式 を満たす自然数の組 は、n≧3の自然数では存在しない



 この定理の証明自体は1995年にワイルズ氏によって完成されていますが、去る2012年8月京都大学の望月新一氏が証明を発表した“ABC予想”を用いると、このフェルマーの最終定理ですら直ちに示されてしまうということでニュースにもなりました。その証明が正しいかどうかは現在議論されているところですが、少なくともABC予想は今世界で最もホットな整数問題だと言って過言ではないでしょう。
 そのABC予想を具体的に紹介する前に、まずはどんなものなのか実感として知ってもらうため、これをベースにちょっとした問題を作ってみました。是非じっくりと考えて取り組んでみてください。


 a < b であり,a+b=c となる3つの自然数 a,b,c の組のうち,a と b とが互いに素であるものを abc トリプルと呼び,2以上の自然数 n の互いに異なる素因数をすべてかけ合わせたものを と表す。
 たとえば, , , である。

(1) c=2013 のとき,abc トリプルとなる自然数 a,b の組の総数を求めよ。
(2) c=2500 である任意の abc トリプルについて,不等式 が成り立つことを示せ。



 では、解答を以下に示します。

⇒解答


 さて、以上の問題では簡単のため c を固定して考えましたが、本当のABC予想では任意の c を扱います。実際に手を動かしてみると、大抵の abc トリプルで が成り立つことが分かりますが、稀にそうならない場合も見つかります。例えば、 では、


となり確かに となっています。平たく言うと、このような例外的な abc トリプルが無限には存在しないことがABC予想です。

 ここで、そのABC予想からどうしてフェルマーの最終定理が直ちに導かれてしまうのか考えてみます。もし を満たす abc トリプルが存在しないことが示されたとしましょう。フェルマーの最終定理の方程式

・                      ……(*)


で a,b,c は全て互いに素として構いませんから(互いに素でない場合で成立していたとすると、その共通因数の n 乗で辺々割った式が互いに素の場合として成立しているはず)、 は abc トリプルの条件を満たします。よって、仮定より任意の の組について


が成り立ちますから、(*)が成り立つための必要条件は n<6 .
 n=3,4,5 のそれぞれの場合については(*)が成り立たないことが昔から、古典的な手法で証明されていますから、フェルマーの最終定理が正しいことが証明できました。

 受験数学で「整数問題」として扱われるものは、アカデミックには大抵「数論」というものの範疇になっていますが、数論は最先端の話題でも他の分野に比べ題意の理解だけなら簡単なことが多く、なのに解決は大変難しいというその深みから沢山の人を魅了しています。これが数論が“数学の女王”と呼ばれる所以であり、そう呼ばれるのも確かに無理はない気がします。
 また、数論なんてこんな数のパズルが一体何の役に立つのか、と思う人もいるかもしれませんが、有名どころでは情報数学の暗号理論に素因数分解が大変大事になってきたりだとかいう話を聞いたことがある人もいるかと思います。その他でも整数の持つ様々な性質が、情報科学で役に立っています。情報の分野なんてこれからもっと発展するでしょうから、整数の性質は現代でもますますその重要性を増していくでしょう。

 そんなわけで、深く広い整数問題の世界。東大入試の整数問題は確かに難しいことも多いですが、そこから得られる味わいもまた乙なもの。他の年度の整数問題でも、また興味深い内容に関連があれば取り上げてみたいと思いますが、今回はここまでということで、有難うございました。
 次回の公開は7月12日(金)を予定しています。ご期待ください。

2013/07/01 石橋雄毅

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