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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2016/08/18
 生物の中でも、遺伝は他の分野に比べて毛色の異なる特殊な分野である、という見解は誰もが持っていることと思います。確かに、遺伝分野は他にはない独特な考え方をする考察問題が多く見られます。この理由から、「生物の中でも遺伝分野は一番苦手です」という人も多いのではないでしょうか。
 しかし、それではもったいない!なぜなら、遺伝分野の問題を解くうえで必要な考え方のパターンは限られており、それを修得すれば「遺伝分野は生物のなかで一番の得点源になりうる分野だから」です。しかも、東大生物では遺伝問題は頻出の範囲です。得意にしておくべき分野であると言えます。
 この参考書は、そんな遺伝分野を基礎から丁寧に学ぶことができるため、遺伝分野を苦手とする初学者向けの参考書となっています。

 本書は6つの章から成っており、基礎から応用まで幅広く対応しています。第1章は本当に基礎の基礎で、「遺伝ってなに?」「染色体の動き方とか正直よくわからない」という初学者に向けて、豊富な図を駆使してひとつひとつ丁寧に解説してあります。第2章~第5章では、二遺伝子雑種から始まり、アカパンカビの遺伝や胚乳の遺伝など、様々な遺伝様式についての各論が続きます。最後の第6章で、遺伝の総合問題を演習し、力試しをしながら定着を図るという構成になっています。

 各章にはポイントを絞った問題が随所に載っていますが、問題量としてはそこまで多くないため、お手軽に取り組める参考書だと思います。(頑張れば一日で終えられるでしょう!)遺伝が苦手だという人にはオススメの参考書です。しかしこの参考書のみでは演習量の確保は難しいため、一通り学習し終わったら別の問題集や過去問等で演習を積むとさらなる実力アップにつながると思います。
 最後にもう一度言いますが、遺伝分野は得意にすべき分野です!頑張ってください!



2016/8/18 宮崎悠介

2016/08/04
 10年以上前の文系専用問題を1問。解法は典型的ですが、理系でも出来ない人は少なくない印象です。2完を安定させたい人は、こういった問題を余裕で突破できるだけの力をつけておきたい。

<問題PDF>

 $0$ 以上の実数 $s , t$ が $s^2+t^2=1$ をみたしながら動くとき,方程式

$x^4-2(s+t)x^2+(s-t)^2=0$


の解のとる値の範囲を求めよ。
<略解PDF>
<略解>

2016/08/04 石橋雄毅

2016/07/21


 「英作文の問題なのにめっちゃ英文書いてある…」と思った人も多いのではないでしょうか。今回扱うのは前回に引き続き2016年の問題です。この記事をこれまで読んできてくれた人ならひと目見て分かるように、これまでに出題されたことのない新形式の問題です。英文を読み、それから導かれる結論を書かせるという問題です。単に文章の流れに合うような内容を書くのではなく、"導かれる結論" を明示することを求められている点に注意したいところです。

 新傾向の問題ですが、与えられている第一段落、第二段落の英文自体は平易であり、第三段落で書くべき内容を考えることも難しくないでしょう。見たことの無い形式の問題を見ると誰もが多少は慌ててしまうでしょうが、そんなときにこそ落ちついてじっくりと問題文を読むことから始めましょう。

 それでは問題文の内容を簡単に整理してみましょう。

■第一段落
・動物の知能を測る実験において、
・チンパンジーは道具(棒)を使って高所にある食べ物を獲ったのに対し、
・象は棒を使って食べ物を入手できなかったため、
・象はチンパンジーほど知能が高くないと結論付けられた。

■第二段落
・同様の実験において、
・道具として棒と四角い箱を与えれれたKandulaという象は、
・箱を使って食べ物を獲ることができた。

 これらのことから導かれる結論を考えてみましょう。本文の二段落目一文目に "~ has recently challenged that belief." と書かれている通り、Kandula の実験により、一段落目に書かれている「象はチンパンジーほど賢くない」という考え方が誤っていることが示唆されました。

 しかしこれらの実験結果から「象はチンパンジーと同じくらい賢い」という結論が出せるかといえば微妙なところで、「象がチンパンジーほど賢くないとは必ずしも言えない」という結論になるのが妥当なところでしょう。よりシンプルに「象も道具を使えるくらい利口だ」といった結論にしても良いかもしれません。

 それでは実際の東大生の答案を見てみましょう!今回は工学部のH君に答案を作ってもらいました!

■ H 君の答案


 文法面では目立ったミスはないことは良いですね。本コーナーで繰り返しお伝えしてる通り、まずは文法ミスをなくすことが東大の英作文では最重要です。
 注意すべき文法のポイントとしては … may not be the exactly same. の部分でしょうか。not exactly...は部分否定の表現であり、「必ずしも〜ではない」という意味になります。他にも not all 「全てが〜ではない」, not always「いつも〜ではない」, not necessarily 「必ずしも〜ではない」といった表現は英作文でも使えるようにしておきましょう。

 内容面に目を向けてみましょう。まず一文目が本文の "繰り返し" になっていることが気になります。一文目を直訳してみると「Kandula が箱を使って食べ物を獲ったという事実は、象がチンパンジーほど賢くないという考えに異議を唱えた」となりますが、ここに書かれていることは本文中二段落目一文目に書かれている内容と同じであり、新情報は何も含まれていません。言ってしまえば、このセンテンスは本文で書かれていることの "繰り返し" であり、本文から導かれる結論ではありません。

 この "繰り返し" 、文字数を稼ぐための苦肉の策として使うならまだしも、積極的に使うべきものではありません。例えば2011-Bのような、ある命題に対して思うことを書くパターンの問題でも一文目は
I agree with this idea.
だけで十分であり、
I agree with this idea that it’s not possible to understand ….
のように、本文で既に書かれている内容を繰り返す必要はありません。

 最後の一文で使われている "controlled experiments" という表現は皆さんにあはあまり馴染みがないかもしれませんが、日本語では対照実験、あるいはそのままコントロール実験と呼ばれます。ある条件の差が結果に与える影響を見るために、その条件以外の条件を揃えて行う実験のことを言います。今回の例で言えば、チンパンジーと象の両方に棒と箱を与え、その他の条件も全く同じ状況で行う実験です。

 以上よりH君の答案をブラッシュアップしてみました!

These findings suggest that elephants are smart enough to use tools to get food. Although the tools used by chimpanzees and Kandula were different, the fact that they used “tools” to get food was the same. However, it’s still difficult to conclude that elephants are as smart as chimpanzees. Further controlled experiments would be necessary for further discussions.


その他の解答例

From these experiments, we can't simply conclude whether elephants are not as smart as chimpanzees. What we can learn from these examples is that we have to be very careful to conduct or discuss this kind of experiment. We should not make any conclusions based on a single experiment. Rather, we need to review the results from many perspectives and conduct the experiment again, if necessary.

2016/07/07 大澤英輝

2016/07/07
 第11回を迎えました。今回は、パズル要素の強い設問のある問題を選びました。一風変わった問題なので戸惑うかもしれませんが、東大生物では時々この手の問題は出題されますので、その練習のためにも「論理的に考えること」を意識して解いてみてほしいです。











A
 この問題は、絶対に得点できなければいけない知識問題です。

 葉緑体の起源はシアノバクテリアが原始的な真核生物に共生したものと言われています。共生説と呼ばれる考え方です。ちなみに、ミトコンドリアは好気性細菌が共生して生じたものと考えられていますね。

 植物において未分化な細胞はどこにいるかと言えば、もちろん分裂組織ですね。茎頂分裂組織と根端分裂組織という2つの分裂組織がありますから、これらを答えればよいです。

(解答)
(1)共生 
(2)茎頂分裂 
(3)根端分裂
(2と3は順不同)

B
 これも、Aと同様ぜひ答えたい、教科書レベルの知識問題です。

 原子の地球において、シアノバクテリアが酸素を作り出したことで、酸素を用いた呼吸によってエネルギーを得るという新しい代謝方法が生じました。この酸素が水中のみならず大気中に蓄積することで、生物が陸上に進出できるようになったのですね。

 ちなみに、酸素が大気中に蓄積したことが生物の陸上進出に果たした役割にはもうひとつあります。それは、オゾン層を形成することで陸上に降り注ぐ紫外線を遮断した、ということです。これも教科書の知識なので、必ずおさえておきましょう。

(解答例)
酸素を用いた呼吸によってエネルギーを得る陸上生物。(25字)

C
 これも知識問題ですが、AやBよりは少し答えるのが難しいかもしれません。

 植物には葉緑体のほかにアミロプラストや有色体、白色体などの色素体が存在します。これらからひとつを答えればよいでしょう。

(解答)
アミロプラスト、有色体、白色体などからひとつ

D
 シグマ因子という物質が登場しました。問題文には、PEPというRNAポリメラーゼを構成する因子のひとつ、という説明しかありませんので、問題を読みながらシグマ因子の果たす役割を推測して解答する必要があります。

 まず、「PEPのサブユニットであるシグマ因子は、特定の遺伝子の(6)を認識し、これによってPEPは遺伝子の(6)に結合する。」とあります。RNAポリメラーゼは遺伝子のプロモ―ターに結合しますので、(6)はプロモーターが入るでしょう。

 また、「PEPが転写を開始するときには、シグマ因子はPEPから解離し、コアは遺伝子DNAの配列をもとに4種の(7)を基質としてRNAを合成する。」とあります。RNAポリメラーゼは4種類の塩基を持ったヌクレオチドを結合させていき、RNAを合成します。よって(7)はヌクレオチドが入るでしょう。

(解答)
(6)プロモーター
(7)ヌクレオチド

E
 実験1の結果を見てみましょう。タンパク質PはⅠ、Ⅱ、Ⅲという3つの領域から構成されており、細胞内では葉緑体に局在しています。領域Ⅰを削除したタンパク質Pは、細胞質に局在します。一方、領域ⅡまたはⅢを削除したタンパク質Pは、正常なタンパク質Pと同様葉緑体に局在します。このことから、領域Ⅰはタンパク質Pが葉緑体に局在するのに必要な領域であることがわかりますね。

 もっと詳しく言えば、タンパク質Pは核遺伝子にコードされているので、合成された段階ですでに細胞質にいるはずです。よってタンパク質Pが葉緑体に局在するためには、細胞質から葉緑体に移動する必要があるわけです。つまり、領域Ⅰはタンパク質Pが細胞質から葉緑体に移動するのに必要な領域である、と言えます。

(解答例)
タンパク質Pを細胞質から葉緑体へ移動させる機能。(24字)

F
 実験2において、リンコマイシンという原核生物の翻訳のみを阻害する物質を添加した培地で植物を発芽させています。植物は真核生物なのでなんの影響もないだろう、と思われますが、実際には子葉の緑化と子葉細胞での葉緑体形成を抑制するようです。

 一見ありそうもない現象ですが、Fの問題文に「色素体のリボソームは、シアノバクテリア由来の原核生物型のものである」とあることで謎が解けます。つまり、葉緑体内のリボソームにはリンコマイシンが作用する、ということです。これは、リンコマイシンの作用によって色素体遺伝子の発現が抑制された、と考えることができます。

 そこで再度実験2の結果を見てみると、リンコマイシンを添加した培地で発芽させた種子では子葉の緑化と子葉細胞での葉緑体形成が抑制されています。通常、植物の葉が緑いろをしているのは葉緑体が原因なので、子葉の緑化が抑制されているのは葉緑体形成が抑制されたことが原因と考えられます。つまり、実験2の結果からは、リンコマイシンの作用によって子葉での葉緑体形成が抑制されたと考えられます。これは、色素体遺伝子が葉緑体形成を促進する働きをもつことを示していますね。

(解答例)
色素体遺伝子は葉緑体の形成を促進する働きを持つ。(24字)

G
(a)
 rpoAの破壊株ではタイプAの遺伝子の転写産物が検出されていません。rpoAはPEPのコアサブユニットの1つなので、rpoAの破壊株ではPEPが正常に機能していないと考えられます。このことから、PEPはタイプAno遺伝子を転写する働きを持つことが推測できます。また、破壊株ではNEPは正常に機能していると考えられるので、破壊株でも転写が確認できるタイプBの遺伝子はNEPによって転写されたと考えるのが妥当でしょう。

(解答)
(8)B
(9)A

(b)
 さて、この問題が今回の肝です。冒頭で言った通り、パズル的要素の強い問題です。

 この問題のアプローチの方法として、「選択肢を見ずにまずは考えられる事象を想定し、そのあとでそれに沿うように選択肢を選ぶ」やり方と、「最初から選択肢を見て、結果に合うように選択肢を並び替える」やり方があります。どちらでもできますが、前者では思考するのにかなりの時間を要してしまいます。東大の理科は時間との勝負ですので、今回は後者のやり方を採用します。

 まず選択肢を俯瞰すると、(オ)「NEP遺伝子が発現する」→(イ)「NEPの働きで、タイプBの遺伝子が転写される」と続きそうだと推測できます。
 NEPの働きでタイプBの遺伝子の1つであるrpoB遺伝子が転写されます。rpoBはrpoAと同様にPEPのコアサブユニットの1つをコードした遺伝子ですので、 (イ)→(ア)「PEPのサブユニット遺伝子が発現し、核遺伝子にコードされたシグマ因子と複合体を形成する」と続きそうですね。
 問題文の下線部(ウ)より、PEPはサブユニットとシグマ因子が複合体を形成することでRNAポリメラーゼとして機能する、とありますから、(ア)のあとにはPEPが正常に働くようになった、という旨の文が続くのが妥当と考えられます。よって、(ア)→(エ)「PEPの働きで、タイプAの遺伝子が転写される」となります。
 タイプAの遺伝子は光合成に関わる機能を持つことが表2-4からわかりますから、(エ)→(ウ)「光合成に関わっている遺伝子の発現が起こり、核遺伝子にコードされたタンパク質と協調して光合成機能を発揮する」と続くことが分かりますね。

 以上のように考えていけば、正解へたどり着くでしょう。

(解答)
(オ)→(イ)→(ア)→(エ)→(ウ)



 いかがでしたでしょうか?最後の問題は考え方が独特で少し難しかったかもしれません。しかし、「与えられた情報から考えられる答えを論理的に導く」という考え方を習得するにはとても良い練習になると思います。ぜひ、自身でもじっくり考えてみてください。

解答例まとめ
A (1)共生 (2)茎頂分裂 (3)根端分裂 (2と3は順不同)
B 酸素を用いた呼吸によってエネルギーを得る陸上生物。(25字)
C アミロプラスト、有色体、白色体などからひとつ
D (6)プロモーター (7)ヌクレオチド
E タンパク質Pを細胞質から葉緑体へ移動させる機能。(24字)
F 色素体遺伝子は葉緑体の形成を促進する働きを持つ。(24字)
G (a) (8)B (9)A (b) (オ)→(イ)→(ア)→(エ)→(ウ)

2016/7/7 宮崎悠介

2016/06/23
 大学受験用古文単語帳の中でもかなりシンプルな印象を受ける一冊。オーソドックスな単語帳だと、一語一語のイメージをしっかり植え付けるべく語源やその単語の使いどころを紙面一杯に解説しているものを、本書ではそういった情報は最小限。他の単語帳を見慣れた人には不安に感じられるレベルかもしれません。

 もう少し詳しく見てみます。各ページに単語が1つ2つ割り当てられていて、上段1/3程度のスペースを贅沢に使ってその単語の意味と、あれば類義語・対義語・関連語等を掲載。下段に「例文」と「確認(例文と大差の無い使用例)」、時々――というかまれに補足事項が書いてある感じです。月の異名や十二支等の古典常識は章と章の間にほんのいくつかある程度ですが、見出し語以外の細々とした単語を180語程度、助動詞や古文における難読後も付録として掲載しています。

 収録されている単語自体に関しては、300語レベルの単語帳としては標準的。過去問をそれなりに解けば、センター試験・東大2次試験の現代語訳問題でポイントとなった重要単語が本書に掲載されていない場面にも出くわすことでしょう。また、先述の“見出し語以外の単語”については、本書の中での扱いも小さので脳への定着はなかなか期待しづらい所です。

 本書の特徴を強いて挙げれば、本書の単語の掲載順。第一章:動詞、第二章:形容詞、第三章:形容動詞、……と品詞ごとに分類、その中で入試での出題頻度を考慮しA・B・Cランクの三段階評価した上で五十音順、といった形にソートされています。完全な五十音順や重要度で分類してから品詞別等よりは、暗記する上で合理的なのかなと個人的には思います。

 それでも特徴としては弱いので、以上見ただけでは情報量で圧倒的に他に劣ってしまうばかりの本書なのですが、こういうものは使いようであって、裏を返せば自分で自由に書き込める余地が沢山ある本だとも言えます。駿台文庫の本なので、もともと授業で聞いた内容をメモしやすいように作られているのかもしれません。

 これらを踏まえ、本書は次の項目のどれかに当てはまる受験生にオススメします。

・自分の受験戦略上、古文単語は最低限の量で十分だ
・学校や塾の古文の先生が、普段の授業で古文単語について詳しく解説している
・自分自身でいろいろ調べることで“自分だけの単語帳”を作りたい
・ゴチャゴチャとした沢山の情報を読むよりは、スパッと割り切って効率よく丸暗記してしまいたい



2016/06/23 石橋雄毅

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