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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2016/06/09
 このセミナーシリーズ、理系なら一度は見たことある、あるいは学校でもらった、という人も多いのではないでしょうか?「東大受験生向けの参考書紹介でこの本を紹介するの?もっと他のすごそうなのを紹介してほしい」と思う人もいるかもしれません。しかし、侮ることなかれ。本書をしっかり活用できれば、東大入試にも対応できるだけの力をつけることができるのです。

 生物の参考書は、単元ごとに内容をわかりやすくまとめた「読んで勉強する教科書タイプ」と、単元ごとにさまざまな問題を掲載した「解いて演習を積む問題集タイプ」の二つに大別されます。本書は、その両方を合わせたハイブリッドタイプ、と言える参考書になっています。

 本書の構成として、単元ごとに概要が数ページにまとまっており、その後問題演習のページが展開される、という形になっています。

 まずこのまとめページがすごい。読んで勉強する教科書タイプの参考書であれば数10ページにわたって解説されるような内容が、数ページにまとまっています。その分詳細な記述は抜けてしまっていますが、単元の内容を俯瞰したり、重要ポイントをざっと整理したりするときに大活躍します。

 問題演習は穴埋めなどの簡単な問題から始まり、基本例題⇒基本問題⇒発展例題⇒発展問題、というように、だんだんレベルアップしていきます。最後の発展問題は大学の過去問から選定されており、単元の内容を完璧に理解したうえで臨むことで、どのような形で応用問題が出題されるのかを体感することができます。

 と、これだけでも生物の力をつけるのには十分だと思うのですが、本書にはさらに演習問題や論述問題が巻末に掲載されています。

 演習問題とは、発展問題よりもさらに応用的な力が求められる問題であり、ここに載っている問題ができれば十分に生物を得点源にできると言えるようになるでしょう。

 そして、個人的にはその後に掲載されている論述問題がとても良いと思っています。この論述問題には、さまざまな大学の過去問に見られるような頻出の論述だけでなく、ある生命現象についてその流れや仕組みを説明させるような問題も含まれています。生物の勉強としてはまさしくここを目標とするべきで、例えば「DNAが転写されてからタンパク質が合成されるまでの流れ」が完璧に説明できれば、この分野に関する知識問題に答えられなくなることはなくなりますし、実験考察問題にも臆することなく取り組めるようになるのです。本書掲載の論述問題をしっかりやりこめば、相当生物の力がつくと言えるでしょう。(ちなみに、生物の勉強法については特集ブログ『東大生物を知る』の「生物はこう勉強すべし!」という記事で紹介していますので、そちらもぜひご覧ください!)東大生物では毎年合計20~25行程度の記述問題が出題されますので、その対策にもなるでしょう。

 このように本書は東大生物の対策に大きな力を発揮してくれる一冊となっていますが、強いて言うなら、生物を一から勉強する初学者が使う場合は、教科書タイプの参考書と併用しないと効果は薄くなってしまうかもしれません。というのは、最初に述べた通り、本書では単元の内容は数ページにまとまっていて詳細な記述は省かれているため、初学者はいきなり本書を使うよりもまず教科書タイプの参考書で単元の内容をじっくり学習し、それから本書を使ってより単元の理解を深めるのが良いかと思うからです。

 さて、いかがでしたでしょうか?「セミナーって結構使えるな」と思ってもらえれば幸いです!


2016/6/9 宮崎悠介

2016/05/26
 生物を勉強する上で、参考書は欠かせないもののひとつです。生物の参考書を選ぶ際に重視する点としては、①図が多く視覚的に理解できるものであること②文章がわかりやすいこと、などが挙げられるでしょう。

 生物の参考書の多くは、①と②を十分満たしています。しかしここで、③読んでいて楽しいこと、という点を加えてみるとどうでしょう。確かにイラストが多く、また文章がわかりやすく書かれていても、結局教科書を少し噛み砕いて編集し直しただけ、という域を出ないものがほとんどです。こういった参考書は無機質な文章で書かれており、正直に言って読んでいて楽しくないです。おそらく、同じような感想を抱いている方も多いのではないでしょうか?そして、読んでいて楽しい方が勉強する意欲も高まるのではないでしょうか?

 そこでおすすめなのが本書です。本書は、①②の特徴をおさえつつ、授業をそのまま文字に起こしたような文章で書かれています。ですので、話し言葉で書かれていて非常に読みやすく、またイラストつきのたとえ話などが随所に出てきます。さらに、ところどころに単元の内容と関連した発展的な内容を扱ったコラムもあります。例えば、C4植物を扱う単元のコラムでは、C4植物がC3植物よりも光合成速度が高い理由が詳細に記載してあります。これは発展的な内容なので、大学受験に必須の知識というわけではないですが、勉強していれば多くの人がぶつかる疑問を解決してくれる大変面白いものになっています。

 また、単元ごとに「最強ポイント」と題してその単元の重要なポイントをまとめた欄があったり、頻出の論述問題や計算問題がちりばめられたりしています。生物という科目の中では、本当に聞かれやすいポイントがいくつもあります。つまり、知っていなければ答えられない問題がいくつも出題される可能性がある、ということです。しかし、上記の「最強ポイント」や論述、計算問題を網羅できれば、頻出のポイントはほぼすべておさえられます。

 このような要素で構成されているので、本書は頭から読み進めていくことで勉強にもなり、さらに生物学という学問への興味を大いに掻き立ててくれる、というなんとも嬉しい仕様になっているわけです。一言でいえば、「読んでいて楽しい!」のです。これが、本書をオススメする理由です。個人的に、これ以上の参考書はない、と思っています。

 強いて言うならば、この参考書は「調べものをするのにはあまり向いてない」かもしれません。というのも、わかりやすい表現を追求し、また読み物として読みやすいような構成を取っているがゆえにページ数が多くなってしまっているため(なんと800ページ!)、辞書的な使い方をするには少し大変なのです。「なにかわからないことについてパッと調べものをしたい」「ある単元について俯瞰したい」という場合には、図説や教科書のほうが適していると思います。

 ですので、本書は「頭から読んでいくことで生物という科目を網羅的に勉強する」という使い方をするのが最適かと思われます。

 生物の参考書で悩んでいる方は、ぜひ一度手に取って見てほしいです!


2016/5/26 宮崎悠介

2016/05/12

分野別過去問解説です。今回は複素数平面に関する問題を二問。一問はとても綺麗に解ける良問を,もう一問は旧課程の“一次変換”としての出題だったものの,複素数平面を用いても解ける問題を解説します。


問題1

まずは2016年理系第1問。


 $z$ を複素数とする。複素数平面上の3点 A($1$), B($z$), C($z^2$) が鋭角三角形をなすような $z$ の範囲を求め, 図示せよ。



問題1の解答

$z=1$ のときは三角形が成立しないので,以下では $z≠1$ とする。
平行移動は三角形の形を変えないので、-1 ずつ平行移動した3点 A’($0$), B’($z-1$), C’($z^2-1$) からなる△A’B’C’が鋭角三角形となればよい。

また,複素数の割り算は複素数平面上で相似拡大/縮小を伴う回転移動を表すから,
この3つの複素数を $z-1 (≠0)$ で割って3点 A’’ ($0$), B’’($1$), C’’($z+1$) をとったとき, △A’B’C’∽△A’’B’’C’’
(∵ A’B’:A’C’=A’’B’’:A’’C’’,∠B’A’C’=∠B’’A’’C’’より,二辺の比とその間の角が等しい)

さらに-1ずつ平行移動し,3点 D($-1$), E($0$), F ($z$) からなる△DEFが鋭角三角形となればよい。

  ∠D が鋭角となるための条件……( $z$ の実部)>-1
  ∠E が鋭角となるための条件……( $z$ の実部)<0
  ∠F が鋭角となるための条件……円周角を考えて,“点FがDEを直径とする円の外部にあること”

以上より,求める領域は下図の境界を含まない彩色部。


問題1のポイント,補足

・複素数の性質を活かした美しい解法を紹介しました。
・計算量は増えますが,普通に $z=x+yi$ とおき,内積を取るなどして鋭角であるための条件式を立てて整理していくことによっても解けます。むしろ,本番で点を取りに行く姿勢としてはそういう愚直なスタンスでいることを推奨します。



問題2

続いて2013年理系第1問です。


 実数 $a,b$ に対し平面上の点 $P_n$ ($x_n, y_n$) を

          ($x_0, y_0$)=($1, 0$)
          ($x_{n+1}, y_{n+1}$)=($ax_n-by_n, bx_n+ay_n$) ($n=0,1,2,⋯$)

によって定める。このとき, 次の条件(ⅰ), (ⅱ)がともに成り立つような ($a, b$) をすべて求めよ。

 (ⅰ) $P_0=P_6$
 (ⅱ) $P_0, P_1, P_2, P_3, P_4, P_5$ は相異なる。



問題2の解答

複素数平面上で考え,$z_n=x_n+y_ni$ とおくと,

$z_{n+1}=(ax_n-by_n)+(bx_n+ay_n)i$
$=(a+bi)(x_n+y_ni)$   
$=(a+bi) z_n$       


∴ $z_6=(a+bi)^6z_0=z_0$ より,$(a+bi)^6=1$ となるので,$a+bi$ は 1 の 6 乗根

すなわち,$a+bi=\cos⁡{\dfrac{kπ}{3}}+i\sin⁡{\dfrac{kπ}{3}} (k=0,1,2,3,4,5)$

このうち,条件(ⅱ)を満たすものを考えて,$k=1,5$

∴ $(a,b)=(\dfrac{1}{2}, \dfrac{\sqrt{3}}{2}), (\dfrac{1}{2}, -\dfrac{\sqrt{3}}{2})$



問題2のポイント,補足

・2013年の出題当時は,複素数平面がまだ高校範囲でなく,旧課程の“一次変換”としての出題でした。
・“複素数平面”の問題としても解けるのですが,上の事情で“複素数平面”としての解答があまり見つからないということで,今回紹介しました。
・解答ではスマートに $z_{n+1}=(a+bi)z_n$ と式変形していますが,そこに至るまでには,

 まず $P_n$ の遷移の規則を考える
⇒原点からの距離を調べてみる…… $\sqrt{a^2+b^2}$ 倍になっている
⇒多分回転と拡大・縮小の話だな……複素数の積の形で表せるのかな?

といった思考のステップを踏んでいます。つまり,状況把握の段階である程度“どうせ $\dfrac{π}{3}$ 回転だろう”という見当がついているからこそ,このように論を進められるのです。



複素数平面の問題は,東大では新課程で復活してからまだ1問しか出ていないので,東大入試の傾向というほどのものもまだないのですが,かつては難問もよく出題されていました。 一般論として,“図形的に攻めるか計算主体で行くか”の判断は意識的に行いましょう。


2016/05/12 石橋雄毅

2016/04/28
 第10回を迎えました。今回は、2016年度の東大生物を見てみます(つまり2か月前に行われた東大入試の問題です!)。
 がっつり実験系の問題です。さまざまな情報が入り乱れているので、整理し理解しながら進むようにしましょう。

 なお、今回は問題数の関係で、知識問題であるABCEは省略しました。実験考察問題の考え方を、一緒に確認していければと思います。






















D
 まず、実験1の内容を簡単に整理してみます。

・Lgr5遺伝子の転写調節領域の直後に緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子をつないだDNAを組みこんだトランスジェニックマウスを準備。
・GFP遺伝子がLgr5遺伝子の直後に配列している→Lgr5遺伝子が発現している細胞ではGFP遺伝子も発現する。
・GFP遺伝子は緑色に蛍光するタンパク質である。
⇒このトランスジェニックマウスでは、Lgr5遺伝子が発現している細胞は緑色に光る。


ざっくりとこのように整理できます。
 次に図1-3を見てみます。生後2箇月、4箇月、14箇月の小腸上皮で、共通してCBC細胞で緑色の蛍光が確認されています。このことから、Lgr5遺伝子はCBC細胞にのみ発現していることがわかります。

 ここで、問題を見てみましょう。聞かれているのは、「絨毛部分の上皮細胞はどの細胞から作られているか」です。しかし、今確認したことからわかるように、実験1の結果から解釈できるのは「Lgr5遺伝子がCBC細胞にのみ発現している」ということだけです。つまり、実験1からは「絨毛部分の上皮細胞はどの細胞から作られているか」はわからないのです。よって答えは(4)です。

解答
(4)


F
 実験2ではいろいろな遺伝子などが登場し、話がややこしくなりました。内容をしっかりと整理しておきましょう。

・酵素Cをコードする遺伝子はLgr5遺伝子の直後にある→Lgr5遺伝子が発現する細胞でのみ酵素Cが発現する。
・酵素Cは化合物Tの存在下で領域Lのみを切り取る→R遺伝子の転写調節領域の直後にGFP遺伝子が配列する。
⇒化合物Tをマウスに投与すると、Lgr5遺伝子が発現する細胞でのみGFP遺伝子が発現し、緑色に光る。


 さて、ここまでよろしいでしょうか?  次に、問題を見てみましょう。マウスに化合物Tを投与したときに、(1)~(4)の細胞がGFPの蛍光を発するかどうか、という問題です。先ほど確認したように、Lgr5遺伝子が発現している細胞では、化合物TがあるとGFPの蛍光を発します。つまり、「Lgr5遺伝子を発現しているかどうか」で判断すればよいことになります。
 さらに言うと、問題文に「化合物Tの酵素Cに対する作用は投与と同時に、かつ、その時点でのみ及ぼされ」とあるので、化合物Tが投与された瞬間にLgr5遺伝子を発現していればGFPの蛍光を発することになります。よって、「化合物Tの投与の瞬間にLgr5遺伝子を発現しているかどうか」で考えればよいとわかりますね。

解答
(1)発する (2)発しない (3)発する (4)発しない


G
 Fで確認した通り、化合物Tを投与した瞬間にLgr5遺伝子が発現していれば、GFP遺伝子が発現して蛍光を発します。これは酵素Cの働きによりR遺伝子の転写調節領域の直後にGFP遺伝子が配列するからです。また、問題文に「R遺伝子の転写調節領域は、その後ろにつないだ遺伝子をマウスの体内のあらゆる細胞で常に発現させるはたらきをもつ」とあります。
ここで問題を見てみます。化合物T投与後にLgr5遺伝子に変異が生じてはたらきが失われても、R遺伝子の転写調節領域の直後にGFP遺伝子が配列しているという状況に変わりはありません。つまり、GFP遺伝子は変わらず発現し、蛍光を発しているはずですね。

(解答例)
維持される
化合物Tの投与によりR遺伝子の転写調節領域の直後にGFP遺伝子が配列しており、Lgr5遺伝子に変異が生じてもその配列は変わらないから。(62字)


H
 図1-5を見てみます。化合物T投与後ではCBC細胞のみにGFPの蛍光が見られますが、その後段々と蛍光が見られる上皮細胞が絨毛側に増えていき、5日目では絨毛上のほとんどの上皮細胞で蛍光が見られるようになります。そして60日を過ぎると、絨毛上のすべての上皮細胞で蛍光が見られるようになり、それは1年経過しても続いています。
 これは、上皮細胞はCBC細胞から生まれていることを示しています。つまり、CBC細胞が分裂・分化して上皮細胞になり、そうして生まれた上皮細胞がどんどん絨毛側へ押し上げられていくため、日が経つごとにGFPの蛍光が見られる細胞が図1-5のように増えていったのですね。
 さらに、60日後、1年後も蛍光が見られるということは、CBC細胞はずっとくぼみの部分に残り続けていることになります。なぜなら、問題文に「分化した上皮細胞は分裂することはなく、やがて寿命を迎えて死んだ細胞は絨毛の頂上部分から剥がれ落ちていく」とあり、CBC細胞がすべて上皮細胞になってしまっていたら、蛍光を発する上皮細胞は死んでしまい、60日後や1年後まで蛍光を発する細胞が見られることはありえないからです。

 これらのことから、CBC細胞が分裂すると、一部は上皮細胞に分化していきますが、一部はCBC細胞として残り、上皮細胞を作り続けている、ということがわかりました。これは、いわゆる幹細胞の定義にも当てはまります。CBC細胞は、小腸の上皮細胞を生み出す組織幹細胞だったのですね。

(解答例)
CBC細胞が分裂すると、一部は上皮細胞に分化するが、残りはCBC細胞として残留し、分裂を続けている。(46字)






 いかがでしたでしょうか?今回は「いかに情報を整理し理解できるか」を問われている問題だったと言えます。難易度としては易しめだったと思います。東大の生物は、今回のように問題文や実験系から得られる情報を整理する力が求められており、今回はその典型例とも言える問題でした。
 「難しかったな」と感じた人は、もう一度じっくり問題文を読んで、時間をかけて自分なりに整理してみることをオススメします。

 ちなみに、問題文の情報を整理する際は、「図を書く」ことをオススメします。私も受験生時代には、問題文の情報を図にまとめて整理していました。
 今回は問題文に図が載っていますので、ここに書き込んでいく形で整理するといいかもしれません。
 みなさんもぜひ実践してみてください!


解答例まとめ
D (4)
F (1)発する (2)発しない (3)発する (4)発しない
G 維持される
化合物Tの投与によりR遺伝子の転写調節領域の直後にGFP遺伝子が配列しており、Lgr5遺伝子に変異が生じてもその配列は変わらないから。(62字)
H CBC細胞が分裂すると、一部は上皮細胞に分化するが、残りはCBC細胞として残留し、分裂を続けている。(46字)



2016/4/28 宮崎悠介

2016/04/14


今回取り上げるのは2016年の問題。2の(B)での英作の形式に驚いた人もいるとは思いますが、まずは2015年度に引き続き絵の説明の問題になった2の(A)について見ていきましょう。

今年も思ったことを述べる問題ですね。思ったことを述べる問題は状況設定が自由です。自分の思い描いた状況をうまく説明しつつ絵の内容に触れながら自分の思ったことを表現していくと良いでしょう。

<状況について>
遠近法を使ったトリック写真であると考えるのが一般的でしょうか。撮影者がカメラに指を近づけることであたかも猫が指より小さい幻覚を抱かせた、と書くのが正攻法でしょう。しかし遠近法をうまく説明する自信がない人もいるのではないでしょうか。そのような人は別の発想をすることも出来ます。例えば河合塾は猫がミニチュアのフィギュアであり、本当に指よりも猫が小さいと解釈した模範解答を出しています。


<思ったことについて>
遠近法だと捉えれば、この遠近法という手法の面白さについて触れると良いです。自分もこのような写真を撮ったことがある、だまされたことがある等々、遠近法についてであれば構わないでしょう。さらにそこを深めて幻覚や感覚の不完全性に踏み込むと東大英作らしさが出てきますが、字数との相談ですね。猫がフィギュア等だとした場合は例えばフィギュアを動かすことになった経緯を想像する等すると良いでしょう。

<表現について>
遠近法:perspectiveを知っていると書きやすくなります。単語帳は隅々まで見ておくとこのような時に困らないと思いますよ。とは言えこの単語を知っている人は多くはないはず。そんな時に他の表現を使って言い換えたいところ。a kind of visual illusion with distance や a illusion which makes thing appear too big or too small from its real size など。やはり言い換えるとと字数の制約がより厳しくはなるのでなるべく的確な表現を知っておきたいところ。

それでは実際の東大生は何を思ったのでしょうか。今回は工学部S君の答案を見てみましょう。


■ S 君の答案


2行目のhuman’sはhumans’に、3行目のcatもcats、またはthe cat、a cat等に直すべきですね。このように名詞を使うときは必ず加算か不可算の確認をし、加算ならば単数形か複数形かの確認はしましょう。
加算名詞に勘違いしやすい不可算名詞としては、furniture(家具) luggage(荷物) advice(助言) あたりが有名どころです。
 但し、同じ単語であっても加算名詞か不可算名詞かはその単語をどのように捉えているかによって変わります。以下の例文のように同じshame であってもそれを恥という感情でとらえればこれは不可算名詞ですが、これを恥ずかしい出来事として捉えると加算名詞になります。

I feel shame when I make a mistake.
(私は間違えた時に恥ずかしさを感じる。)
It was a shame not to come in time.
(時間通りにこられなかったのは残念だ。)

明確な境界を持っていないものは基本的に不可算名詞になります。自分の感覚と照らし合わせてあわなかったものを重点的に覚えていくと良いでしょう。

5行目のaroungは aroundのスペルミスですね。the other way around(あべこべに、逆に)やvice versa(逆もまた然り、逆のこともなりたつ)は伝えたいことをスマートに伝える上、字数を減らせる表現なのでぜひマスターしておきましょう。 また3行目のsense of distanceですが、写真で実際に感じられるのは猫や手の大きさなのでここはsense of size とするのが良いでしょう。

文法以外の点については良い答案です。東大英作らしい深い考察をシンプルな表現でまとめられているので、英作文で文法のミスがほとんどなくなった人は内容面でより深みを出せるように考えを日頃巡らせるといいですね。このときなるべくシンプルな表現にこだわるのも減点されないうえで大切です。


以上を踏まえてS君の答案をブラッシュアップしてみました!

I think what is interesting about this picture is that this picture shows how uncertain humans’ sense of size is. Though we know that cats are bigger than our fingers in real world, we can’t help feeling the other way around through this picture. Therefore, we should take care of what we see and always doubt that what we see is true.


その他の解答例

This photo appears strange. The cat seems smaller than fingers. But I know that this strange situation is caused by perspective. It is a technic in taking photos. To make the cat appear smaller than his fingers, the man intentionally leaves the cat away and puts his fingers near his camera. This technic is simple but can make a deep impression. I want to take pictures like this.

2016/4/14 桜庭一啓

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