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東大過去問参考書の参考の書 ~駿台文庫『大学入試完全対策シリーズ 東京大学』~

 一般的な知名度では赤本に劣るかもしれませんが、難関大学の過去問としては赤本に並ぶ二大巨頭の片割れ・青本。過去問選びに迷うとしたら、多くの人が“赤本にするか青本にするか”というところになるでしょう。
 例年最新10年分の過去問が5年分ずつ上・下巻に分けて出版されていて、リス…
 東京大学は、言わずと知れた日本の最高学府です。そのために、書店に並ぶ“東大受験”向けの参考書の数が他の大学用のそれと比べ物にならないほど多いのは、少しでも東大受験に興味を持った皆さんもよくご存知のことと思います。とりわけ、東大の過去問を解説した本は本当に多い。東大対策という需要が高いのも勿論理由のひとつでしょうし、また月並みな表現になってしまうのが悔しいのですが、東大の問題は本当に良問ばかりなので、講師・ライターが解説の腕を見せるこの上ない晴れ舞台であるということもあるでしょう。とにかく、東大入試は受験業界に携わる皆が題材にしたいコンテンツなんですね。

 関連資料が多いのは、教える側にとっては研究がしやすくなりますから恵まれた環境と言えます。しかし受験生にとっては必ずしもそうではないでしょう。いざ東大の過去問を演習しようと思い立ち書店に足を運んだとき、どの参考書を相棒にすればいいのか、迷う時間は選択肢の数に比例します。時間の限られた受験生の皆さんには、“東大の過去問”というジャンルに絞ったとしても尚、一冊一冊吟味しているほどの余裕は無いと思います。

 そこで、この参考書別活用法のコーナーの第1弾としては、ここに足を運んでくれた人が気になっているであろう東大の前期試験の過去問を扱った参考書について、その特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価

の3つの観点から3週・9回にかけて、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介します! ただし紙幅の都合上ここで扱うものは、過去問を抜粋して紹介するのではなく数年度分以上まとめて掲載した参考書に限るとします。東大受験対策参考書としてはまだまだ氷山の一角に過ぎないでしょうが、少しでも皆さんの相棒選びの参考になればと思います。
 第1週目では、過去問界(?)の最大手、赤本・青本と25ヵ年シリーズについて詳しく見てみましょう。それぞれの本の間にどのような違いがあるのか? よく検討して、自分に合っていそうなものを探してみてください!


◆駿台文庫『大学入試完全対策シリーズ 東京大学』(青本) 全教科
 一般的な知名度では赤本に劣るかもしれませんが、難関大学の過去問としては赤本に並ぶ二大巨頭の片割れ・青本。過去問選びに迷うとしたら、多くの人が“赤本にするか青本にするか”というところになるでしょう。

 例年最新10年分の過去問が5年分ずつ上・下巻に分けて出版されていて、リスニングCDは上巻に収録された最新5年分の音源のみ付属。「入試ガイド」「出題分析と入試対策」「問題と解答・解説」の3章立てで構成されています。

 「入試ガイド」は東大入試の基本情報が並べられているだけなので、大学についての情報まで掲載されている赤本に比べると薄くなりますが、この程度の情報はインターネット等(勿論、当サイトでも)で最新の、しかもより詳しい情報まで簡単に調べられるので、駿台さんはむしろ本を少しでも薄くする選択をしているのかもしれません。そういう意味では、合格者からの声まで掲載し少しでも充実させようとする赤本と対照的です。

 「出題分析と入試対策」の充実度は科目によりますが、文系数学・物理・地学は例年あっさりめ。それ以外の科目についてはそれなりにまとまりのある文章が書かれていて、ここに綴られる東大入試の分析や執筆者の東大入試に対する思いの丈には駿台の先生方の個性がよく出ています。オーソドックス、それが故にやや事務的な赤本の文章に対し、青本の文章はひとつの講義を聞かされているような感覚の読み口です。章立てが「問題と解答・解説」となっている通り、本書は1年度分の全教科の問題と解答を交互に掲載するスタイルを取っています。赤本に比べ問題を解く前に解答が目に触れてしまうリスクはあるかもしれませんが、逆にパラパラと問題に目を通しすぐ解答を確認する分には見やすいとも言えます。

 解答・解説に関して。上と同じく青本の読み口の方が丁寧にかつ深い所まで“教えて”くれている印象は強いですが、ターゲット層の学力が赤本よりも高めに設定されていると感じます。例えば、英語では第1問が文章の解釈メインの問題ということで文法の解説を殆どしなかったり、物理では伝統的に入試問題そっちのけで受験レベルに収まらない解説・考察をしていたりなどです。赤本にするか青本にするかは、主に自分の実力に合わせて選ぶのが正解でしょう(勿論、個性的な講師陣の個性的な文章の読み口が肌に合わないという人もいるかもしれませんが)。ただ数学に関してだけは、赤本の解説が“発想の仕方”に大分寄って薄いため、数学が幾分苦手な人にも青本の内容を薦められます。


 難易度評価については、各教科とも「出題分析と入試対策」の項や解説中で少し触れることがある程度で、それほど重視はしていないようです。また赤本にあった“講評”のような、その年度のセットを全体的に見て感じることを述べる項目も基本的には設けられておらず、「出題分析と入試対策」で触れる先生も中にはいる、くらいのものです。しかもこの項目は基本的に毎年更新されてしまうので、各年度の講評を見ようと思ったら各年度版の青本を入手せねばならず、“普通”はできません。自分のように古本漁りをしてまで楽しもうという気概があるのなら話は別ですが。



 次回7月7日(日)には、教学社の25ヵ年シリーズを紹介予定です。ご期待ください!
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