東大生物では、毎年約20行~30行程度の記述問題が出題されています。配点としてはかなりの割合を占めており、ゆえに記述問題の対策は必須です。しかし、記述の練習はやろうと思ってもなかなかできないものです。理由として、書いた答案の添削をしてくれる人が身の周りにいない、そもそも記述問題に特化した参考書が少ない、などが挙げられるでしょう。そんな人たちは、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
「生物 記述・論述問題の完全対策」は、その名の通り記述や論述問題に特化した参考書で、出題頻度の問題が多く収録されています。問題と解答例だけでなく、解答を作製するにあたって必要となる重要事項のまとめや、解答に至るまでのプロセスの詳細な記載、配点と採点基準、誤りやすいポイントのまとめなどがコンパクトに盛り込まれた内容になっています。
これらの内容は、
記述・論述問題に特化した参考書ならではのものと言えるでしょう(たとえばセミナー生物・生物基礎という参考書には記述問題の特集ページが存在しますが、内容は問題と解答、ちょっとした解説のみです)。重要事項のまとめを参照することで周辺知識を体系的に整理ができるので、記述力がつくだけでなく知識問題への対策にもなります。配点や採点基準と自らの解答を照らし合わせることで、足りなかったもの(または余分だったもの)はなにかを判別できます。誤りやすいポイントのまとめは、日本語の表現なども含めて注意すべきことを明確にしてくれます。これらの長所は、受験生の力を飛躍的に高めてくれるでしょう。
ひとつ注意点として、本書には実験考察の記述・論述問題が一切載っておらず、知識問題の記述・論述に一貫していることが挙げられます。しかし、「実験考察の記述が苦手だ」という人は、たいていはそもそも「
文章力不足・論理的で明快な文章を書けない」ことが多く、対策としては結局まず文章を書く練習をしていく他ありません。
以上から、教科書的な知識はあらかた身についており、かつ文章力にもある程度自信があるという人は、本書ではなく他の参考書や過去問で実験考察の記述対策をすることが望ましいですが、逆にそれ以外の人たちにとっては、本書は大変力になります。本書で出題されているような問題が、実際に東大生物で出題されている例もありますし、やって損はないでしょう。
2016/10/13 宮崎悠介