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英作文(2016-B)

「英作文の問題なのにめっちゃ英文書いてある…」と思った人も多いのではないでしょうか。今回扱うのは前回に引き続き2016年の問題です。ひと目見て分かるようにこれまでに出題されたことのない新形式の問題です。英文を読み、それから導かれる結論を書かせるという問題です。単に文章の流れに合うような...


 「英作文の問題なのにめっちゃ英文書いてある…」と思った人も多いのではないでしょうか。今回扱うのは前回に引き続き2016年の問題です。この記事をこれまで読んできてくれた人ならひと目見て分かるように、これまでに出題されたことのない新形式の問題です。英文を読み、それから導かれる結論を書かせるという問題です。単に文章の流れに合うような内容を書くのではなく、"導かれる結論" を明示することを求められている点に注意したいところです。

 新傾向の問題ですが、与えられている第一段落、第二段落の英文自体は平易であり、第三段落で書くべき内容を考えることも難しくないでしょう。見たことの無い形式の問題を見ると誰もが多少は慌ててしまうでしょうが、そんなときにこそ落ちついてじっくりと問題文を読むことから始めましょう。

 それでは問題文の内容を簡単に整理してみましょう。

■第一段落
・動物の知能を測る実験において、
・チンパンジーは道具(棒)を使って高所にある食べ物を獲ったのに対し、
・象は棒を使って食べ物を入手できなかったため、
・象はチンパンジーほど知能が高くないと結論付けられた。

■第二段落
・同様の実験において、
・道具として棒と四角い箱を与えれれたKandulaという象は、
・箱を使って食べ物を獲ることができた。

 これらのことから導かれる結論を考えてみましょう。本文の二段落目一文目に "~ has recently challenged that belief." と書かれている通り、Kandula の実験により、一段落目に書かれている「象はチンパンジーほど賢くない」という考え方が誤っていることが示唆されました。

 しかしこれらの実験結果から「象はチンパンジーと同じくらい賢い」という結論が出せるかといえば微妙なところで、「象がチンパンジーほど賢くないとは必ずしも言えない」という結論になるのが妥当なところでしょう。よりシンプルに「象も道具を使えるくらい利口だ」といった結論にしても良いかもしれません。

 それでは実際の東大生の答案を見てみましょう!今回は工学部のH君に答案を作ってもらいました!

■ H 君の答案


 文法面では目立ったミスはないことは良いですね。本コーナーで繰り返しお伝えしてる通り、まずは文法ミスをなくすことが東大の英作文では最重要です。
 注意すべき文法のポイントとしては … may not be the exactly same. の部分でしょうか。not exactly...は部分否定の表現であり、「必ずしも〜ではない」という意味になります。他にも not all 「全てが〜ではない」, not always「いつも〜ではない」, not necessarily 「必ずしも〜ではない」といった表現は英作文でも使えるようにしておきましょう。

 内容面に目を向けてみましょう。まず一文目が本文の "繰り返し" になっていることが気になります。一文目を直訳してみると「Kandula が箱を使って食べ物を獲ったという事実は、象がチンパンジーほど賢くないという考えに異議を唱えた」となりますが、ここに書かれていることは本文中二段落目一文目に書かれている内容と同じであり、新情報は何も含まれていません。言ってしまえば、このセンテンスは本文で書かれていることの "繰り返し" であり、本文から導かれる結論ではありません。

 この "繰り返し" 、文字数を稼ぐための苦肉の策として使うならまだしも、積極的に使うべきものではありません。例えば2011-Bのような、ある命題に対して思うことを書くパターンの問題でも一文目は
I agree with this idea.
だけで十分であり、
I agree with this idea that it’s not possible to understand ….
のように、本文で既に書かれている内容を繰り返す必要はありません。

 最後の一文で使われている "controlled experiments" という表現は皆さんにあはあまり馴染みがないかもしれませんが、日本語では対照実験、あるいはそのままコントロール実験と呼ばれます。ある条件の差が結果に与える影響を見るために、その条件以外の条件を揃えて行う実験のことを言います。今回の例で言えば、チンパンジーと象の両方に棒と箱を与え、その他の条件も全く同じ状況で行う実験です。

 以上よりH君の答案をブラッシュアップしてみました!

These findings suggest that elephants are smart enough to use tools to get food. Although the tools used by chimpanzees and Kandula were different, the fact that they used “tools” to get food was the same. However, it’s still difficult to conclude that elephants are as smart as chimpanzees. Further controlled experiments would be necessary for further discussions.


その他の解答例

From these experiments, we can't simply conclude whether elephants are not as smart as chimpanzees. What we can learn from these examples is that we have to be very careful to conduct or discuss this kind of experiment. We should not make any conclusions based on a single experiment. Rather, we need to review the results from many perspectives and conduct the experiment again, if necessary.

2016/07/07 大澤英輝

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