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二次得点の常識 第4回:理系数学

 点が取れるときとそうでない時の差が激しい教科の筆頭・数学。受かるかどうかは数学次第と嘆く受験生も例年多く見受けられます。…
 点が取れるときとそうでない時の差が激しい教科の筆頭・数学。受かるかどうかは数学次第と嘆く受験生も例年多く見受けられます。


■出題内容■
 形式はずっと大問6題・試験時間150分・120点満点で、おそらく今後も変わることは無いでしょう。第何問にどの単元の問題が出る、といった傾向は無く、難易度も含め概ね問題番号にこだわりは無いようなので、配点は単純に1問当たり20点で間違いないと思われます。
 “概ね”と言ったのは、例えば解答用紙を見てもらうと分かるのですが、第3問・第6問の解答スペースはそれ以外の問題の2倍になっており、それゆえかここに計算量が多いなどちょっと重めの問題が配置されることが比較的多かったり、一方で第1問は気持ちの良いスタートを切ってもらおうとの配慮なのか気持ち軽めの問題であることが多かったりするからです。しかしその例に漏れる年もあるので、盲信は禁物です。
 各大問は0~3の小問に分かれており(2014年度には(4)まである問題が出題されましたが、これはかなり珍しい)、それを単純計算で1問当たり25分ずつで解いていくことになるわけですが、この25分という時間は重めの問題を解くにはかなり短く、試験時間をどう使っていくか戦略を練ることは東大入試突破のための重要な要素になっています。

 前述の通り東大数学では大問ごとの出題内容が決まっていないのですが、東大が好んで出題する単元というものは存在していて、ここではその東大頻出の単元について簡単に紹介しておきたいと思います。

場合の数・確率
 毎年まず間違いなく出題されます。数え上げや確率の積の法則を使うことになる問題も勿論出題されますが、東大数学というと確率漸化式の印象が強いですね。着手したら解き始めの早い段階で、どの解法を選ぶのが最適なのかを見極められる眼を養っておきたいです。また、偶奇などの場合分けに気付くことが必須・もしくは気付けるととても簡単になる問題も少なくなく、普段の演習から「どうしてこの解法だと間違いになるのか」と考えるなど、分析する力を軽んじない姿勢が大事になると言えます。
 問題によっては、わかりづらい文章が長ったらしく書いてある場合もあります。世の中の文書とは得てしてそんなもので、“わかりやすさ”と“正確さ”は必ずしも共存しないのです。その正確な問題文に対しては、自分の言葉でイメージをつけて分かりやすく状況を把握して、答えを導くに至れる力強い読解力が求められます。何にせよ、“場数を踏む”というのは最良の対策になるでしょう。

整数
 こちらもかなりの高頻度で出題されています。2000年代は“定石”を正しく運用した上で、さらにひとつまみの発想力・着眼がポイントになって完答できるような問題が多かったのですが、最近は割と本格的な難しい問題が増えてきたように感じます。問題の性質上パターンだけではどうしようもないものでもあるので、基本的な処理さえ施したら、あとは試験時間のかけ方を間違えないよう気を付けることが肝要です。

図形と方程式
 東大数学では軌跡や領域といった形での出題が印象的ですが、微分・積分や三角関数等、他の範囲との融合が出題の殆どを占めます。つまり、解析的な処理を最後には求めるけれど、その題材として図形と方程式を使うことが多い、ということです。正確な計算力がものをいうところですが、時にはベクトルの導入や幾何的考察が功を奏することもあり、人によって向き合い方が違う単元かもしれません。しかしまずは、愚直な計算でも正しい答えが出せるようになるということを姿勢として最優先してください。

空間図形
 とりわけ目立つのはやはり体積を求める問題です。積分を使って求めることが殆どですが、断面の把握が難しかったり計算量が膨大だったりして、東大形式のセットに含まれているとどうしても背筋が伸びてしまいます。高校数学全般に渡って大事なことが凝縮している範囲でもあり、この単元に安定感を持てるということは数学全体への安定感に繋がると言っても過言ではないかもしれません。一般の問題集だけでなく、過去問や東大模試の問題なども積極的に使って、存分に感覚を養ってほしい範囲になります。

極限・微分・積分
 様々な単元の設定からある関数・グラフを導いて、その最大・最小を議論させたり極限値や面積を求めさせたり……と問題のトリを飾ることの多い単元です。ただし勿論、始めから微分や積分の問題としての出題もしっかりあります。前者では、関数を導くところまでが大変であれば後の値を求めるのはオマケであることも多いですが、そうでなければ結局後者と大差ありません。その場合、最後に正しい値を得るために必要なのは言うまでもなく確固たる計算力です。試験問題から察するに、東大はこの点もたいそう大きく評価しているようです。「方針だけ確認できたからオッケ~」といった普段の学習態度はとても褒められたものではありません。

新課程について
 新課程になり動向が気になるのが、“複素数平面”の単元です。旧旧課程での出題も決して数が多い方ではありませんでしたが、東大の好きな“図形と方程式”的要素を多分に含むところです。『東大の理系数学25ヵ年』などを使って、ある程度古い過去問まで遡って見ておけると安心でしょう。
 “データの分析”も一応新しく追加された範囲ですが、これが東大入試に組み込まれる様子はなかなかイメージしづらい所です。どのように出題されるかは未知数と言わざるを得ません。

 最後に、単元という“縦割り”のことだけでなく、“横割り”のことにも目を向けておいてほしいということも伝えておきます。例えば上にも少し書きましたが、図形問題を見たら、座標の導入・ベクトルの活用・幾何的性質の利用のうちどれが使えそうかを考える癖はついているでしょうか。問題文が座標で書いてあるからといって、いつも方程式を使って解くことが最善とは限らないのです。他にも、最大・最小の議論なんかは解法のデパートですよね。一通りの教科書的学習を終えたら、問題に応じて解法を選べるだけの“引き出し”を作ることを心がけてください。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……100点
・標準的な目標……(理Ⅰ・理Ⅱ)60点/(理Ⅲ)80点
・苦手でもここまでは……(理Ⅰ・理Ⅱ)40~50点/(理Ⅲ)60~70点
・本番で大失敗……10~30点

(理Ⅰ・理Ⅱ)
 東大入試において、数学は最も安定しにくい教科であるのと同時に最も差のつきやすい教科になっています。出来る人は100点近くの高得点を平然と叩き出してくる一方で、苦手な人は40点行けばいい方……しかしながら、実はこの点数差に惑わされないことが理Ⅰ・理Ⅱ合格のためには超重要です。なぜならば、数学で100点取る人が他教科でも合格者の標準的な点数を取るならば、その人は合格ラインすれすれのボーダー争いに参加することなく余裕で合格するから――逆に言えば、数学が40点しか取れなくても他がキッチリと標準レベルまで出来ているならば、十分合格争いに加わることができるからです。この辺りの話は最終回の総括で改めて考えますが、とにかく数学40~50点くらいまでなら一般的に他教科で何とかカバーし切れます。100点取れる人もいる中で自分が40点しか取れないという事実は焦るかもしれませんが、だからと言って無闇に数学ばかり勉強するのではなく、冷静に自分の全科目のターゲット得点を確認することです。
 数学が取り立てて苦手というわけでは無い人は、とりあえず“2完(2問完答)”を目指してみてください。2完できていれば、他の大問の部分点も合計して大体60点くらいになってくるはずですが、この点数を安定して取ることができるようなら、十分な数学の力がついていると言えるでしょう。

(理Ⅲ)
 理Ⅲ志望となると事情は大きく変わってきて、数学60点でも他教科でカバーし切れるかどうかは例年ギリギリの戦いになるでしょう。東大数学60点は、人によっては並の努力をしても難しい点数となりますが、理Ⅲを目指すというからにはそこで甘えてはいられません。並以上の努力でその壁を突破してください。

2014/12/12 石橋雄毅

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