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東大数学の過去問と解説(数列)

分野別過去問解説です。今回は数列に関する問題を二問。最後に東大数学の数列の問題の特徴,傾向についても述べます。


問題1

まずは2005年理系第一問。




問題1の解答

(1)まず,$f(x)$を微分すると,$\frac{1-\log x}{x^2}$となるので$a_1=1,b_1=-1$とすることで問題の主張が成立する。次に,$n=k$のときに$f^{(k)}(x)=\frac{a_k+b_k\log x}{x^{k+1}}$と表せると仮定すると,もう一度微分することで,


$f^{(k+1)}(x)=\dfrac{\frac{b_k}{x}x^{k+1}-(k+1)x^{k}(a_k+b_k\log x)}{x^{2k+2}}\\ =\dfrac{b_k-(k+1)a_k-(k+1)b_k\log x}{x^{k+2}}$


となる。よって,


$a_{k+1}=-(k+1)a_k+b_k,b_{k+1}=-(k+1)b_k$


とすると,$n=k+1$のときも問題の主張が成立する。よって,数学的帰納法により題意は示された。そして,求める漸化式は$a_{n+1}=-(n+1)a_n+b_n,b_{n+1}=-(n+1)b_n$である。


(2)まず$b_{n+1}=-(n+1)b_n$を繰り返し用いると,


$b_n=-nb_{n-1}\\=(-1)^2n(n-1)b_{n-2}\\=\cdots \\=(-1)^{n-1}n!b_1\\=(-1)^nn!$


となり$b_n$が求まった。あとは,


$a_{n+1}=-(n+1)a_n+b_n=-(n+1)a_n+(-1)^nn!$


を用いて$a_n$を求めればよい。漸化式の両辺を$(-1)^{n+1}(n+1)!$で割ると,


$\dfrac{a_{n+1}}{(-1)^{n+1}(n+1)!}=\dfrac{a_n}{(-1)^nn!}-\dfrac{1}{n+1}$


よって,$\dfrac{a_n}{(-1)^nn!}=c_n$とおくと$c_{n+1}=c_n-\dfrac{1}{n+1}$となる。

この式を繰り返し使うと,


$c_n=-\dfrac{1}{n}+c_{n-1}\\ =\cdots \\=-(\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\cdots +\dfrac{1}{n})+c_1\\ =-h_n$


となる。よって,$a_n=(-1)^nn!c_n=(-1)^{n+1}n!h_n$



問題1のポイント,補足

・(1)は微分するだけの簡単な問題です。(2)は漸化式を解くだけの問題です。$a_n$を求める部分で一工夫必要ですが難しくはありません。
・(2)で「$h_n$を用いて」とあるので,漸化式を解いたときに$h_n$が登場することで安心できます。(1)の計算の検算にもなります。このように出てきた答えに自信が持てる問題は見直しに時間をかけずに別の問題に時間を使いましょう。
・数列(漸化式)がメインの問題というのは東大ではあまり出題されません。メインは整数,確率で,道具として数列(漸化式)を用いる,という問題は多いです。この問題は珍しく数列がメインの問題です。



問題2

続いて2011年理系第二問の(3)です。




問題2の解答

$p$を$q$で割った商を$A_1$,余りを$B_1$とすると,


$p=A_1q+B_1\:(0\leq B_1 < q)$


よって,$a_1$は$\dfrac{p}{q}=A_1+\dfrac{B_1}{q}$の小数部分,つまり$\dfrac{B_1}{q}$である。

以下このような操作を繰り返す。すなわち,$B_i=0$になるまで「$B_{i-2}$を$B_{i-1}$で割った商を$A_i$,余りを$B_i$とする」という操作を$i=2$から繰り返す。ただし,$B_0=q$とした。割り算の定義より


$B_{i-2}=A_{i}B_{i-1}+B_{i}\:(0\leq B_i < B_{i-1})$


となる。$a_1$の場合と同様に(帰納的に)$a_k=\dfrac{B_k}{B_{k-1}}\:(k=1,2,\cdots)$であることが分かる。

さて,$q=B_0 > B_1 > \cdots > B_i$なので,上記の操作は遅くとも$i=q$で終了する($q$以下の正の整数は$q$個しかない)。つまり,$q$以下の正の整数$N$が存在して$B_N=0$となる。よって$a_N=0$。したがって,$a_{N+1},a_{N+2},\cdots$も$0$になる(数列の定め方により一度$0$になるとそれ以降も全て$0$になる)ので題意は示された。



問題2のポイント,補足

・有理数の連分数展開が有限回で終わるという有名な定理を証明させる問題です。ユークリッドの互除法になじみがあれば解きやすいでしょう。東大の問題はこのように深遠な数学(今回は連分数展開)が背景にあることも多いです。
・数列メインの問題というより,数列は道具でメインは整数,論証の問題です。解答をきちんと書くのがけっこう大変な問題です。



まとめ〜東大数列の傾向〜

・問題1の補足でも述べたように,数列をメインとする問題は東大ではあまり出題されません(ただし,2015年には数列をメインとする問題が出題されています)。整数,確率の問題を解く際の道具として使うことが多いです。
・道具としての数列を使いこなすにあたって「漸化式を立てる,そしてそれをきちんと解く」というのが非常に重要になります。また,シグマ計算を素早くできることも重要です。
・「数列に関連する道具」としては数学的帰納法も非常に重要です(様々な分野の問題で頻出)。
・漸化式を解く問題では答えに$n=1,2$を代入して検算しましょう。つまらない計算ミスを防ぐことができます。


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