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二次曲線と円錐面 ~とりあえずで済まさない視覚の問題~

 受験生の石橋君は、辺りが真っ暗になる時間まで学校で勉強していました。自分の場合学校が家から近かったものですから、登下校は基本的に自転車でした。自転車を漕ぎながらボンヤリと前を眺めていた石橋君は、ふと自転車のライトが夜道を照らす様子に目を…
第15回 出典:東京大学前期 2013年 理系数学 第6問

 皆さん、こんにちは。私立大学の入学試験もぼちぼち収束してきて、東大入試もいよいよといった感じになってきました。最終調整は是非とも念入りにしてほしいですが、体調管理は何よりも大事にしてくださいね。

 受験生の石橋君は、辺りが真っ暗になる時間まで学校で勉強していました。自分の場合学校が家から近かったものですから、登下校は基本的に自転車でした。自転車を漕ぎながらボンヤリと前を眺めていた石橋君は、ふと自転車のライトが夜道を照らす様子に目を留めます。

撮影協力:弟


 ……なんか、とっても放物線っぽいですよね。これを放物線であると示すことはできるのか――焦点とか準線とか、石橋君はいろいろ考えました。そして、「そういえば円錐を切った断面は二次曲線になるって聞いたぞ」ということに思い至ります。


 教科書や参考書のコラムによく載っているこの事実。ちゃんと知っていれば、多くの人が苦戦したであろう東大2013年理系数学第6問・円錐面の断面の式を求めた後に、“円錐を母線と平行な面で切った断面なんだからそりゃ当然放物線だ”と納得することもできたはず。試験場で難しい問題に囲まれてしまった時、こういう小さな安心感の積み重ねは本当に精神状態を左右しますから、やっぱり頻出事項でなくても興味深いことには積極的に首を突っ込んでおくものだなあとしみじみ感じる今日この頃です。

 さて、幸運にもこのことを思い出せた石橋君は、次にどうしてここでこの話が出てくるのか、状況の言い換えを試みました。

「自転車のライトの中身を点光源だと見なせば、円形のカバーに覆われたその光源から放射状に出てくる光はほぼ円錐状。この光が地面に当たった時の模様は、この円錐が地面によって斬られた時の断面そのものだから、確かに放物線とかって二次曲線の議論ができそうだ!」


 疑問が解消できて、石橋君は清々しい気持ちで帰路を急ぎましたとさ。

 いやはや、数年前の自分のなんと浅はかな事か。せっかく日常生活の中のオイシイ題材に出会うことができたと言うのに、これだけで済ませてしまうなんて勿体ない。こういう一つ一つのことを大切にすればこそ、試験場で急に円錐面の方程式が必要になった時にも対応し得る応用力が養われるというものですし、ある方向性が見えた事だけに満足せず、その細部を吟味したり状況に改めて注目してみたりする中で初めて気づかされることも、世の中には沢山あります(入試問題なら“場合分け”にも通ずる部分でしょうか)。

 そういう訳でここからは、先の甘ちゃんな議論に、かつての自分を泣かせるぐらいの勢いでガンガン突っ込みを入れていこうと思います。空間座標の演習は手薄になりがちですから、是非練習がてら以下の問題を解いて、ついでに石橋君も助けてあげてください。


第1問
 光は曲がらないものとして、まずは円形カバーに覆われた点光源から出てくる光が確かに地面で二次曲線となることを確かめよう。いま、xyz 座標空間における“円形カバー”を、“円形の穴が空いた板”を表す次の不等式で扱う。


 この領域が光を通さないとしたとき、x<0 の領域にある点 A(-X, 0, 2) から球状に出た光が x>0 の領域でどうなるか、また地面となる xy 平面にどう映るかを考えればよい。

(1) 地面を考えない時、x>0 の範囲で光が存在する領域が、ある円錐の内部となることを示し、その円錐面の方程式を求めよ。

(2) 上の円錐の xy 平面による断面が二次曲線となっていることを示せ。
<解答>


第2問
 第1問では、円形カバーの円に垂直でその中心を通る直線状に点光源があるとして計算した。今度はこれがズレていた場合どうなるのかについて考える。すなわち、自転車のライトの光の模様は平らな地面で“厳密な”二次曲線であると言えるのか、それとも“近似的に”二次曲線と見なせるだけなのかを検討する。円形カバーを第1問と同様


で扱うことにして、x<0 の領域にある点光源の座標を B(-X, Y, Z) とおく。ここから球状に出た光が地面となる xy 平面に映ったときの模様は二次曲線かどうか判定せよ。
 ただし、一般に x と y の二次式は、xy 平面で二次曲線を表すことを用いてよい。
<解答>


第3問
 今までは、ライトからは球状に出てきた光のうち円形カバーに遮られなかったものだけが出てくるとして議論を進めてきた。しかしながら自転車のライトをよく見れば、中が鏡の曲面でできていることに気付く。実はこの曲面は“回転放物面(放物線を、その軸のまわりに一回転してできる面)”となっており、その焦点に点光源が設置されている。

(1) この回転放物面があることにより、反射光はライトから真っ直ぐ(すなわち、円形カバーの円に垂直に)出ていくことになる。これを確かめよう。鏡でできた曲面に光が入射すると、光は入射した点での接平面に対して反射の法則を満たし進んでいく。ただし今回は軸に関する対称性があるので、2次元で考えれば十分である。
 放物線 の焦点から出た光は、放物線で反射したのち軸と平行に進んでいくことを示せ。


(2) (1)を考えれば、円形カバーからは円柱状の強い光が出てくることになる。この光が地面に入射した時の断面の形を求めたい。点 Q(0, 0, 2) を通り、x 軸となす鋭角が θ である、xz 平面内の直線がある。ただし、この直線は x>0 の領域で x 軸と交わる。この直線を中心軸とする半径 1 の円柱面の、xy 平面による断面の図形を求めよ。

(3) 結局、出てくる光が円錐としたときの計算は無駄だったのか、議論せよ。
<ヒント>


<解答>

 いかがだったでしょうか。こんな身近な題材ではありましたが、“ちゃんと突き詰める”ことの奥深さ、味わってもらえたんじゃないかなと思います。加えて、“なんとなく”分かった気になっただけで満足しては見えなかったであろうものまで、突き詰めて細部を検討する中で見えてきました。勿論自転車の手前だけじゃなくて遠くにも光があることに気づいていた人はいるでしょうが、石橋君は目の前にある放物線だけで頭が一杯で、これをそれっぽく説明できただけで考えるのをやめ、2種類の光があることに気付かなくなってしまっていたんですね。思い込みというのは本当に人間の目を曇らせます。

 今年の入試に関係の無い皆さんへ。身の回りに、頭を使えるチャンスって実は沢山隠れています。自分で問題提起して、それに対し適当な設定を自分で作って、それを自分で解決する――これが学問の道に進もうという人間に求められる賢さのひとつではある筈です。自転車に乗っているときはキチンと周りに気を付けて運転してほしいと思いますが(笑)、是非身の回りの色んなことに、興味を持ってトライしてみてください。

 入試を受ける皆さんへ。前回と前々回とで、視覚化して状況を大まかに把握することが大事だ、という話をしました。これを本当に大事だと思っているのは変わりません。ただ、入試前最後にこの記事を通して言いたいことがあるとすれば、「何となくで把握した思い込みで目を曇らせるな!」ってことです。数学、変なところで詰まって全然解けない、なんてことになった時、焦りますよね。落ち着いて、もう一度ゼロから問題を把握し直しましょう、何か大切なことを見逃しているかもしれません。問題の全体像が“なんとなく”わかっちゃった時に限って、こういうことが起こるものです。また、解けたと思った最後の最後に、細かい見逃しが無いか慎重に検討することもお忘れなく。
 ……と、普段から頑張ってきたはずの皆さんに最後にかける言葉なんてこんなもんです。あとは本番で悔いの無いようやり切るだけしかできないはずですからね。一生にそう何度も経験できない東大受験、せっかくの機会です、是非思い切り楽しんできてください!

2014/02/21 石橋雄毅

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