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東大生物2015年度第1問:ノックアウトマウスを用いた実験問題

今回は、最新年度である2015年度の第1問を題材にしようと思います。

前回の記事で説明したような概要を頭にいれつつ、早速問題を見てみましょう!






今回の問題は、ノックアウト動物を用いた実験でした。ノックアウト動物とは、ある特定の遺伝子の働きを欠損した動物のことです。その動物の生理作用などを観察することで、欠損した遺伝子の働きを知ることができるんですね。(たとえば、ある遺伝子を欠損するとインスリンという物質が分泌されなくなったとすると、その遺伝子はインスリンの分泌に必要な遺伝子であるということがわかりますね)

今回は、オキシトシンというホルモンの遺伝子をノックアウトしたマウスを用いた実験でした。「オキシトシンってなんだっけ??」という人、心配ご無用です。今回の問題は、オキシトシンの生理作用を知らなくても解けるようにできています。
では、実際に問題を解いていきます。

A

表1-2を見てみると、仔の遺伝子型と産仔数から、メンデルの法則に則った遺伝をしていることがまずわかります。そして問題の仔マウスの生存率ですが、100%か0%のどちらかです(96%とか98%とかもありますが、ここではこれらも100%とカウントしています。実は、正常な仔マウスでも産後すぐに死んでしまうというのは、珍しいことではないのです)。
そこで、仔マウスの24時間後の生存率が100%のときと0%のときの、父、母、仔それぞれの遺伝子型をまとめてみます。



こうしてみてみると、父と仔の遺伝子型は、仔の生存率にあまり関係なさそうということがわかります。(なぜなら、父や仔がOT遺伝子を持ってようと持ってなかろうと、仔の生存率が100%になることもあれば、0%になることもあるからです。)
しかし、母の遺伝子型を見ると、母がOT遺伝子を持ってるときは仔の生存率は100%に、OT遺伝子を持たずot遺伝子しか持っていないと仔の生存率は0%になっています。
このことから、仔の生存率には、父や仔の遺伝子型は無関係で、母の遺伝子型が関与していることがわかります。

それを踏まえて、以下のような解答例が書けますね。

(解答例)父と仔の遺伝子型は仔マウスの生存率に無関係だが、母の遺伝子型は仔マウスの生存率に影響し、OT/otだと仔マウスの生存率は100%に、ot/otだと0%になる。(67字)

この問題のポイントは、乱雑な表の情報を、いかに簡潔に整理できるかである、と言えるでしょう。表から情報を読み取る際、よくわからなければ上記のような簡単な表を作ってみるのもいいかもしれません。

ちなみに、この問題で聞かれているのは「遺伝子型が生存率に与える影響」だけなので、「なぜ母の遺伝子型がOT/otだと生存率100%で、ot/otだと0%なのか」は答える必要がありません。聞かれていないことですし、それを書き始めると2行程度という指定をオーバーしてしまいますし、なにより「遺伝子型が生存率に影響を与える理由」は次の問題で考えるからです。

B

Aの問題で、母親の遺伝子型が仔の生存率に影響することがわかりました。母親がOT遺伝子を持っている、つまりオキシトシンを作ることができると仔は生存し、OT遺伝子を持っていない、つまりオキシトシンを作ることができないと仔は死んでしまうようです。

実験2で「オキシトシンは子宮や乳腺、社会的行動や性行動に関わるニューロンに受容体が1種類存在すること」、実験3で「実験1で用いたすべての母親について、保育行動には問題がなかった」と書いてあることから、オキシトシンが分泌できないことによる生理的機能不全が、仔マウスの生存率低下の原因と考えられます。

よってまず(1)(2)(6)は除外できますし、オキシトシンは腎臓機能や体温維持には関係ないので、(3)(4)も違います(というより、(3)(4)のような母親はそもそも生存できないでしょう)。

よって、正解は(5)とわかります。オキシトシンの受容体が乳腺に存在している(実験2より)ことからも、この選択肢が妥当と言えます。また、理由の記述としては以下のような解答例が考えられます。

(解答例)仔マウスの生存率には母の遺伝子型が影響するため、母に生じた何らかの機能不全が原因である。オキシトシンの受容体が乳腺に存在することから、(5)が適切と考えられる。(78字)

C

A、Bの問題を通して考えたことを整理すると、「母がオキシトシンを分泌できないと、乳がでないため、仔マウスが生存できない」となります。この理由が正しいかを確かめるにはどうしたらいいでしょうか?・・・乳を与えて生存するか確かめればいいだけですね。よって、解答例は以下のようになります。

(解答例)遺伝子型がot/otの母の仔マウスに人為的に授乳すれば、仔マウスの生存率は上昇するはずである。(43字)

ちなみに、「遺伝子型がot/otの母の」という記述は必須です。なぜなら、ot/ot以外の遺伝子型の母から生まれた仔マウスに授乳して生存したとしても、「母親の遺伝子型がot/otではなかったから生存した」のか、「授乳したから生存した」のかがわからないからです。「人為的に授乳する」以外の実験条件は、完全に一緒でなければなりません。

このように、他の条件は変えずに、あるひとつの条件を変えてその影響を見る実験を対照実験といいます。



いかがでしたでしょうか?東大の生物といえども、論理的に考えればそこまで難しい問題ではない、ということを実感していただけたら嬉しいです。
今回の問題では、「本文中の乱雑な表を整理して必要な情報を抽出する力」、「導いた答えを次の問題のヒントにして有機的、論理的に考える力」が問われていたと言えます。

このような力をつけるには、やはり同じような問題を解くことが近道です。たとえば今回の問題をしっかり復習したうえで、1週間後にもう一回解き直して、(答えを覚えるのではなく)論理的な説明とともに正解を導けるかを確認するのはひとつの有効な手段だと思います。(生物を選択している友達に問題を見せて解説するというのもいいかもしれませんね)

(解答例まとめ)
A 父と仔の遺伝子型は仔マウスの生存率に無関係だが、母の遺伝子型は仔マウスの生存率に影響し、OT/otだと仔マウスの生存率は100%に、ot/otだと0%になる。
B 仔マウスの生存率には母の遺伝子型が影響するため、母に生じた何らかの機能不全が原因である。オキシトシンの受容体が乳腺に存在することから、(5)が適切と考えられる。
C 遺伝子型がot/otの母の仔マウスに人為的に授乳すれば、仔マウスの生存率は上昇するはずである。

2015/10/1 宮崎悠介

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