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角川学芸出版『鉄緑会 東大物理問題集』

 遂に鉄緑会から物理問題集が発刊。基本的なスタイルは既刊の数学・古典・化学と変わらず、『資料・問題篇』と『解答篇』の2分冊。項目立て・クオリティも基本的には今まで通りで、安心して頼りにできます。…
 遂に鉄緑会から物理問題集が発刊。基本的なスタイルは既刊の数学・古典・化学と変わらず、『資料・問題篇』と『解答篇』の2分冊。項目立て・クオリティも基本的には今まで通りで、安心して頼りにできます。


 「資料篇」は“東大入試物理の分析”“解答にあたっての注意点”から成ります。わずか見開き計3ページですが、特に後者では私自身も生徒指導で強くこだわる「1点でも多く取りに行くための手の動かし方」がかなり具体的に述べられており、受験生にとって侮れない内容に違いないでしょう。前者は割とどんな東大過去問参考書にも書いてあるような内容を少し詳しめにといった感じでした。

 続く「問題篇」は直近10年分の過去問に加え、もっと過去のもので演習するに相応しいセットを5回分も掲載。『東大化学問題集』同様、実際の問題冊子に似せたレイアウトが採用されていて演習の際の臨場感はタップリ。

 本書はさらにその後のオマケの「巻末付録」がとても充実していて、“テーマ講義”として「入試問題を解く上で知っていると有利になるものの,多くの参考書,問題集で取り上げられていない事柄14」(“本篇の構成”より引用)が144ページにもわたって解説されており(「問題篇」は141ページ!)、これだけでも相当の参考書であると言えます。ちなみに、その14個のテーマは次の通り。

微分方程式/仕事とエネルギー/円運動・惑星運動/重心運動と相対運動/気体分子運動論/熱力学第一法則/ドップラー効果/単スリット/コヒーレンス/静電場の性質/ガウスの法則とコンデンサー/コンデンサー・コイルを含む直流回路/電磁誘導/荷電粒子の運動

見る人が見れば、先の文句も納得の濃ゆい項目立てとなっていますが、一部単元はかなりハイレベルであり、人によっては深入りし過ぎぬよう注意が必要です。また、このテーマ講義でも随所に“確認問題”として「問題篇」未収録の東大の古い過去問や他大の問題が用意されていて、いよいよ単なる東大過去問参考書の域を超えてきたように思われます。最後に、化学に続き物理にも“解答用紙サンプル”が収録。(一応、解答用紙はここにもありますよ、という宣伝はさせてくださいね……?笑)

 「解答篇」には「問題篇」の15回分の問題に対する解答・解説が掲載。各セットのトビラページにその年度の“出題テーマと難易度”“目標得点”が書いてありますが、この物理問題集ではⅠ・Ⅱ類とⅢ類のそれぞれに大問ごとにまで目標点数が用意されています。この点数は、合格する上で必要な点数としては妥当でしょう。

 各問の解答・解説は“解答例”“配点”“採点基準”“指針”“解説”から構成されています。解説は詳細かつ丁寧、図も豊富で、誰にとっても理解できるように書かれていると感じますし、一方で“参考”といった形で付された踏み込んだ内容が知的好奇心を刺激してくれることもしばしば。圧巻なのは豊富に用意された“参考問題”。解説されている問題の類題としてまた別の東大の過去問が引用されたり、解説されている問題をより深く理解するために、その問題設定を活かして作ったオリジナル問題が置かれたりしています。この問題群は、直前期に物理を鍛え抜こうと思った時役に立つであろう良問ばかりだと思います(レイアウトの都合上少し扱いづらいのが玉に瑕)。

 難易度評価については、トビラページでの大問ごとの目標得点に加え、解説ページの“配点”で、小問ごとに☆~☆☆☆の3段階で実施されています。絶対評価というよりは、その問題の小問の中での相対評価で決められているようなので、どの設問が壁になるか・どこまで解けていれば及第点なのかは一目で分かります。

 総じて、鉄緑会から出た他の科目の本同様、東大物理に対し他の追随を許さない圧倒的情報量を提供してくれていると言えます(収録されている東大の過去問なんて、参考問題を含めたら3問×15セットどころではない!)。一方で他の科目にあった冗長な印象もなく、値段の高さにさえ目をつぶれば、東大合格に向けあと一歩というところ以上の物理の学力を持つ人になら誰にでも(東大志望でなくても)薦められる一冊であると思いました。



石橋雄毅

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