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入試英語攻略のための参考書 ― 第一部 単語帳 ―

「単語の意味は文脈から判断できるので大丈夫!」とか「一回調べれば単語の意味は頭に入ってしまうので、単語帳は必要ない!」などという人がいます。後者ならまだしも前者は非常に危険思想です。例えば2001年度の第五問では…
初めまして! 英語を教えています、武井靖弥と言います。以後よろしくお願いします。
英語の参考書紹介ということでコラムを書かせていただくわけですが、そもそも英語の試験は皆様もご承知の通り、長文だけやっていても、また文法だけやっていても点数が取れるものではありません。そのため長文なら長文、文法なら文法として、それぞれの問題が解けるように問題集を選んでいく必要があります。そこで石橋先生とは少しタイプが異なりますが、問題のカテゴリーごとに参考書の使い方や選び方を中心に、おすすめの参考書について紹介していきたいと思います。
さて、今回は第一回ということで、単語帳について紹介していきたいと思います。


■そもそも単語は勉強するものなのか■
「単語の意味は文脈から判断できるので大丈夫!」とか「一回調べれば単語の意味は頭に入ってしまうので、単語帳は必要ない!」などという人がいます。後者ならまだしも前者は非常に危険思想です。例えば2001年度の第五問では

(4) 空所(5)を埋めるのに最も適当な語を次のうちから選び、その記号を記せ。
  (ア) recognized (イ) represented (ウ) resembled (エ) respected


という問題が出題されています。文脈がわかったところで、単語の意味がわからなくては正解できない問題です。(単語自体はかなり簡単なレベルではありますが……)

もう少し遡ると1998年度の第五問では、同じく空所補充問題で

  (ア) facts (イ) news (ウ) rumours (エ) stories


という問題が出題されています。
これも選択肢の名詞自体は基礎的なものですが、文脈がわかっても前の語とのイディオムがわからないと正解できません。
また長文読解だけならばよいのですが、東大には和訳、そして英作があります。和訳や英作は文法事項だけでなく、単語の語法のストックがないと、自分の頭でかみ砕いて訳したり、自由に英作したりすることができません。
そういった意味でも東大志望であれば、単語の対策はしっかりやっておくべき、と言えるでしょう。


■単語帳の使い方 ―まずは繰り返し― ■
単語学習の必要性はわかってもらえたかと思いますが、ではどのように学習したらよいのでしょうか。
一つ大事なことは、「同じ単語帳を使って、繰り返し覚える」ということです。たまに単語帳をとっかえひっかえして単語を覚えようとしている人がいます。新鮮さを求めて、あるいは覚えた単語の確認のためにそうしているのかもしれませんが、そもそもあまり単語が頭に入っていない人がやっても効果は高くありません。大事なことは浮気せず、繰り返し覚えることです。
また、ただインプットするだけでは、実際に使えるかどうかわからないことに加え、実は覚えた気になっているだけ、ということが多々あります。(このような人は本当に多いです。)そのため、覚えた単語をアウトプットすることが重要になります。アウトプットの仕方は書いたり、声に出したりと方法は様々ですが、テスト形式でできるとベストです。僕が現在使っている方法は、「口頭チェック」です。これは例えば僕が「follow」と言ったら、生徒が「後に続く、従う」と答えるといったような形式です。この方法の利点を挙げてみると、

①反応を速くしようとすることで、英文を読むスピードが速くなる。
⇒口頭チェックは速く終われば速いほどよいものです。速く終わる=答えるスピードが速い、ということだからです。答えるスピードが速くなれば、当然英文を読むスピードも速くなってきます。

②発音された(または発音した)単語を聞けるので、発音・アクセント問題などにも対応できる。
⇒発音・アクセント問題は文法問題としてはあまり時間をかけたくないところです。単語を覚えるついでに発音・アクセントも意識することで、自然と発音・アクセント問題に対応できるようになってきます。

③本当に覚えていないと答えられない。
⇒毎年、口頭チェックを初めてやる生徒の中には「頭が真っ白になる」という現象を経験する人がいます。これは当然緊張もあると思うのですが、「本当に記憶に残って」いないことが一因です。口頭チェックには、答えの選択肢は提示されません。自分の記憶しか頼れないので、必死で覚えるようになります。

まだまだ利点はありますが、もし家族や友人などで、一緒にやってくれそうな人がいたらぜひ活用してみてはいかがでしょうか?

これ以外にも単語帳の姉妹問題集を使うという方法もあります。例えば「システム英単語」には「システム英単語チェック問題集」という姉妹問題集があります。これを使い、書いて覚える、という方法もアリです。


■選び方とおすすめ単語帳■
以上のように、勉強の仕方を間違えなければ、どの単語帳を選んでも問題ないと思います。もちろん簡単すぎるものを選んでも仕方ありません。東大など難関大を目指すのであれば2000語程度あるものが望ましいと思います。書店などで自分で見てみて、一番合いそうなものを探してください。学校で進められているものがあればそれでもかまわないと思います。
その中でも、以下に僕のおすすめの単語帳を紹介しておきます。

「システム英単語」駿台文庫
受験生時代から、そして今教えているときも基本的には「シス単」を使っています。シス単のいいところは単語の出題頻度が挙げられていること、フレーズで覚えられるところなどいろいろありますが、最後に多義語がまとめられているところが特によいと思います。多義語は入試での出題頻度も高いし、英作でも使いやすかったりもします。単語数も2021語+多義語と、量も確保できるのでおすすめです。

「英単語ターゲット1900」旺文社
単語帳の見やすさでいえば、一番だと思っています。ただその反面単調で、飽きやすいかもしれませんが……。見開きの右側に例文も載っており、派生語も含めれば2000語は軽く突破しています。コンパクトでポケットにも入るので、通学時に活用しやすいのも利点です。

「単語王2202」オー・メソッド出版
収録されている単語の多さでいえば一番かもしれません。東大だけでなく私大文系志望者が使っているのをよく見ます。また大学生になってからもTOEICの勉強のために活用している人もいます。

「速読英単語」Z会
速読英単語は、文章の流れで覚えていけるのが特徴でしょう。単語を一つ一つ暗記していくというよりは、文章の流れの中で覚えたいという人にはおすすめです。
また速読英単語には必修編と上級編があります。東大志望者であれば上級編をおすすめしたいところですが、時間がない、あるいは高校1、2年生など非受験生にとってということならば標準編から始めるのがよいかもしれません。

他にも「キクタン」「DUO」「Data Base」など有名どころはありますが、まずは書店で自分で見てみてください。きっと自分に合ったものが見つかるはずです。

■熟語は?■
熟語についても、単語と同じ要領で学習していくのが効率的です。熟語は「すべての熟語が多義語である」、といってもいいくらい意味が多岐にわたります。全部の意味を覚えていってもきりがないので、代表的なものを覚えていきましょう。
ちなみに熟語に関する問題は東大の第五問でも出題歴がありますし、第四問(A)の語句削除問題でも解答のポイントになっていたりします。軽視されがちですが、こちらもしっかり覚えておきたいところです。
しかし単語帳に比べ、熟語帳は出版されている量が少ない印象があります。そこでおすすめの参考書を紹介しておきます。

「英語頻出問題総演習」桐原書店
文法問題集として知名度が高い、この本ですが、第2章はすべてイディオムが扱われています。そこで第2章を活用して熟語をマスターしてしまおうという戦法です。ほかの章では重要構文や文法語法の問題も扱われているので、文法学習の一環としても効率よく勉強できます。

「英熟語ターゲット1000」旺文社
こちらは英単語ターゲット1900の姉妹本となっています。レイアウトも1900の方と同じなので、1900が合う人にはおすすめできます。数も1000語以上あるので、十分入試に対応できます。

その他「Data Base」など単語と一緒に収録してある参考書もあります。

■ペースと覚え方■
単語を始めて学習する人にとっては、単語を覚えるペースや、効率よく覚えられる方法が気になるかもしれません。僕から提案したいのは、まずは「1週間に50語覚える」という方法です。そこから50語である程度ペースがつかめるようになったら70語、100語、200語とペースを上げていきましょう。(※ちなみに僕が担当している受験生には、1週間200語ペースを目安に覚えてもらっています。) そしてその覚え方は「毎日50語を1週間続ける」というものです。1週間に50語と言われると、「まず今日は1~10を覚えて、明日は11~20を覚えて…」とやる人がいますが、このやり方だと一週間後に1~10の単語を覚えている人はほとんどいないでしょう。人間の脳は記憶したものを忘れていきます。忘れないようにするためには、ある程度継続した刺激が必要です。1~50を毎日覚えることで、1週間後のパフォーマンスは確実に上がってくるでしょう。
また、初めのうちは「(英語に対応する)日本語を覚える」ことを提案します。2周目、3周目になったら「(日本語に対応する)英語を覚える」ようにすると、違う刺激が得られ、単語の定着も高まってくるはずです。


■1に「繰り返し」、2に「繰り返し」■
しかし1週間がんばって覚えた50語も、2週目に51~100を覚えているうちにいずれは忘れてしまいます。だから「繰り返し」が重要なのです。前述しましたが、一番重要なことは「1冊の単語帳を完璧に覚えること」です。例えば1~600を覚え終わったら601以降の進出単語と同時に、1~600の範囲を並行して覚えると、記憶に残りやすくなります。
単語がわかっていれば速読も達成されてきます。東大英語の難しさの一つである「時間」もクリアできるかもしれません。地味で退屈な勉強ですが、繰り返し身体で覚え、使いこなせるようになれるといいですね。




次回8/23(金)は文法書について紹介予定です。ご期待ください。

2013/08/19 武井靖弥
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