今回は大分古い問題を。現行課程でギリギリ数Ⅱ積分の発展くらいの内容ですが、実質数Ⅲの範囲の問題です。東大理系用の問題とするには軽すぎですが、数Ⅲの積分を習いたてのこの時期の高3生には丁度良い練習問題?
<問題PDF>
半径 1cm の半球形の器が水平から角 $θ$ だけ傾けて固定されている。ただし $0< \theta <\frac{\pi}{2}$ とする。この器に毎秒 $\frac{\pi}{18}$ ㎤ の割合で水を入れるとき,入れはじめてから $3+\cos^2{\theta}$ 秒後に器から水が流れ出した。このときの $\theta$ の値を求めよ。
<略解PDF>
<略解>
水が流れ出した瞬間の容器内の水の体積は,半径 1 の球を, 中心からの距離が $\sin{\theta}$ である平面で切ったときの,球の中心を含まない方の立体の体積に等しい.
半径 1 の球を単位円の回転体と考えれば,水の体積は,
$ \int_{\sin{\theta}}^1 \pi \left( \sqrt{1-x^2} \right)^2 dx = \frac{\pi}{3} \left( \sin^3{\theta} - 3 \sin{\theta} +2 \right)$
これが $\frac{\pi}{18} \left( 3+ \cos^2{\theta} \right) = \frac{\pi}{18} \left( 4 - \sin^2{\theta} \right)$ に等しいから,
$\frac{\pi}{3} \left( \sin^3{\theta} - 3 \sin{\theta}+2 \right) = \frac{\pi}{18} \left( 4-\sin^2{\theta} \right)$
⇔ $ \left( 2\sin{\theta}-1\right) \left( \sin{\theta}+2 \right) \left( 3 \sin{\theta}-4 \right)=0$
∴ $ \theta =\frac{\pi}{6}$
……(答)
球と平面、円と直線の位置関係は、中心からの距離のみで決まることを改めて強く意識しておきましょう。図が傾くとそれが見えなくなってしまう人がどうも少なくないようです。
また、三角関数についての3次方程式の解を求める場面も、地味ながら手を止めてしまいがち。見かけが若干いかついので、すぐに計算ミスばかり疑ってハマってしまうようなのですが、具体的な値を求める問題であれば、それが正しい式なら必ず因数分解できるはず。一般的な問題集ではなかなか出会わない場面かもしれませんが、東大理系数学では最近でも見かけました。留意しておきましょう。
2017/06/01 石橋雄毅