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二次得点の常識 第11回:英語

 英語は二次試験の中で唯一理系と文系の出題内容が同じであり、文理問わず東大受験で非常に重要な科目です。天下の東大だからといって超難解なことを聞いてくるわけではなく、むしろ国語的な読解力を問うことに重きを置いて…
 英語は二次試験の中で唯一理系と文系の出題内容が同じであり、文理問わず東大受験で非常に重要な科目です。天下の東大だからといって超難解なことを聞いてくるわけではなく、むしろ国語的な読解力を問うことに重きを置いている印象です。


■出題内容■
 大まかな出題形式と配点は以下の通り。制限時間120分で120点満点です。リーディング、リスニング、ライティングの三要素が満遍なく問われますが、特にリーディング分野では、英語を読んで解釈できることを前提とし、それを日本語でまとめさせたり説明させたりと表現力が必要な問題が多い印象です。

大問

出題内容

配点(推定)

1-(A)

要約

8〜12点

1-(B)

パラグラフ読解・整序                

12点

2-(A)

自由英作文

8〜12点

2-(B)

自由英作文

8〜12点

3

リスニング

30点

4-(A)

文法

5〜10点

4-(B)

英文和訳

12〜15点

5

長文読解

20〜30点


 それにしても、120分という時間の中でこれだけの問題数を満足いくまで解ききるのはなかなか大変。だから、時間配分や解答順序を戦略的に考えておく必要があります。そのために、まずは各大問の出題内容を見ていきましょう。

要約、パラグラフ読解
 問題冊子をめくると最初に目に入るのが英文要約です。「本文中で挙げられた例に触れながら…」といった感じで何らかの指示が入ることがまれにありますが、与えられた英文を60字〜120字程度の語数で要約させる形式は毎年ほぼ同一です。要約にかけられる時間は大体10~13分ぐらい、長くとも15分ぐらいまででしょうか。
 英文の内容は様々ですが、要約のパターンとしては「要点一つをビシッと抜き出す」パターンと「英文の流れを追ってまとめる」の2パターンに大別される印象です。どちらかといえば前者を目にすることが多く、その場合は英文中の “However” や “The point is~”、”It is true ~, but …” といったキーフレーズ、キーセンテンスを外さないことが重要です。生徒指導をしていて感じるのは「なんとなく正解っぽいことが書いてあるんだけど、結局何を言いたいのか分からないor結論がズレてる」答案が多いこと。キーセンテンスを見つけるまでは良いものの、それらを上手く組み合わせられず、点数が取れない答案をよく目にします。問われていることはあくまでも要約です。作った答案を自分で今一度読み返してみて、日本語としてちゃんと理解できますか?論理的つながりを意識して、採点者に伝わる答案作りを心がけましょう。

 第1問(B)はパラグラフ整序。文脈や指示代名詞等々に気をつけながら解いていく、落ち着いてやればパズルのようで楽しい問題ですが、実際の試験場の雰囲気と刻一刻とすぎる試験時間の中ではそんな悠長なことは言っていられません。解答は記号選択式であることもあり、ここを最後に余った時間で解くようにしている人も多いです。確かに英文の分量も多く、かけた時間に対して得られる見返りはそれほど高くないかもしれません。試験終了1分前に適当に書いた記号が当たっている、そんなことを期待して初めから捨て問にするのはどうかと思いますが、ここに時間を割かずに他でじっくり点数を取る、それも一つの戦略です。
 高得点を狙っていく人は、◯×がはっきりするこの問題は落とせません。問題数をこなして出題形式に慣れるとともに、速読力を鍛えたいところです。


自由英作文
 大問2は自由英作文。(A)、(B)の二題に分かれています。2009年度、2010年度の入試では(B)が与えられた英単語を英文中で適した形に変形させたり、2~5語程度の空欄補充問題になったりといった出題形式になりましたが、それ以外では基本的に(A)、(B)ともに自由英作文が課されています。
 ただしその出題内容は特定の形に決まっている訳ではなく、ある命題に対する賛成・反対を問うもの、自分の考えを述べるもの、会話の流れに合うように人物の発言を考えるもの、イラストを英語で説明するもの、といった感じで多種多用です。指定語数も毎年変動しますが、だいたい50~60語程度のものが多いです。2013年、2014年は写真に写る二人の人物の会話を創作せよ、といった形式でしたが、これが今後も続くかどうかは未知数。多くの過去問に触れ、どんな出題形式になっても動じない心構えでいたいところです。
 「どれだけ内容・表現にこだわるべきなのか」は多くの受験生が気になるポイントかと思います。これは英作文の採点でどれだけ内容に着目されるのか、と言い換えられるかもしれません。もちろん英文の内容、表現が素晴らしいものであればあるほど良いのでしょうが、内容の構想に時間をかけすぎてしまったり、気の利いた言い回しをしようとして減点を食らったりしてしまえば本末転倒です。
 実際の東大の英作文の採点方法に関しては、内容点と文法点で分かれているのか、あるいは減点法なのか、推測に基づく多くの議論がありますが、本当のところは東大の教授にしかわかりません。しかし、実際に試験を受けてみると、”思ったよりも点数が良かった”という人も多く、あくまでも感覚的にですが、英作文の採点はそれほど厳しくない印象です。いずれにせよ、確実に減点されるであろう文法のミスを減らすために「書ける内容を書ける英文で書く」ことを心がけるのは大切なことです。

 英作文については東大英作でも扱っています。東大に合格した人たちがどんな英作文を書いていたのか、そのリアルな答案を紹介していますので見てみて下さいね!


リスニング
 試験開始45分後から始まるのがリスニング。120分の試験時間のうちの30分を占めるリスニングは配点も30点と高く、英語の試験の中でも非常に高いウェイトを占めています。
 択一式の小問が15問という出題形式もあり、リスニングは英語の試験の中で最も“出来る人”と“出来ない人”の差が顕著に現れる大問かもしれません。そのリスニングで高得点を取るためにはもちろん英語を正しく聞き取る力は不可欠ですが、それ以前に「如何にリスニング向けて準備ができるか」が重要になってきます。というのもリスニングでは(2011年度入試(B)のように例外はありますが)問題冊子に問題文とそれに対する選択肢が書かれており、「何が問われているか」はリスニングを聞く前から分かる形になっています。

 「何が問われているか」が分かっていれば、その答えを言っていそうな箇所を集中的に聞けば良い訳ですから負担は一気に軽減されます。が、問題は如何にその準備のための時間を取るかです。リスニングの準備のために5分ほど時間を割き、試験開始40分ごろからリスニングの問題文を読み始める人が多いようですが、5分という時間は全ての問題文と選択肢に目を通すのには決して十分な時間ではないと思います。しかしそれ以上時間を取ってしまうのと他の大問にしわ寄せが来てしまうのも事実です。どうしても時間が足りない場合はまずは問題文に目を通し、その中の人名や年代、固有名詞等のキーフレーズをピックアップしておくと良いでしょう。最悪選択肢は読めなかったとしても、「何が問われているのか」は最低限把握した上で放送開始時間を迎えられるように準備しておくべきです。

 余談になりますが、実際に試験を受けた者の感想としてリスニングは試験会場に当たり外れがあるように思います。私の試験教室は法文一号館25教室という2階もある大教室だったのですが、放送機材があまりよくないのか、広い教室で音が反響してしまうのか、それまでに受けたあらゆる模試のリスニングよりも聞き取りづらかった思い出があります。(単に当日の緊張からそのように感じてしまっただけかもしれませんが(笑))。とは言え東大の放送機材にはそれほど期待しない方が当日焦らずにすむかもしれません。


文法、英文和訳
 第4問の(A)は文法問題です。ここ最近は整序か誤文訂正のどちらかの問題が出題されています。整序はイディオムと絡めて出題されることが多く、そのイディオムを知っていればサクッと解けてしまうことも。ただし否定の副詞による倒置のような引っ掛けには要注意です。

 誤文訂正は「文法上あるいは文脈上、取り除かれなければならない語が一語ずつある」というリード文で出題されること多く、文脈を把握するために下線部以外も読まなければなりません。とは言え“文脈上”取り除かれなければならない語は never, not, hardly といった否定語であることがほとんどですので、そこに注意する意識を持っておくと良いでしょう。特に hardly「ほとんど〜ない」 なんて単語は、hard との混同の引っ掛けを狙う意図もあるのか、文中に含まれている場合はこれが答えになる場合がほとんどです。

 このように誤文訂正の問題は“よく出るパターン”がいくつかあり、たくさん問題を解いていると自然に“怪しそうな箇所”が分かるようになってくるはずです。代表的な例としては先述した否定語、it, that のような指示代名詞、to や of のような前置詞等でしょうか。あくまでも「取り除かれなければならない語」であり、「何かと交換しなければいけない語」ではないため、動詞や固有名詞のようなそれ自体が大きな意味を持つ単語が答えになることは滅多にありません。
 第4問(A)は他の問題と比べて一題にかかる時間が少ないため、私はリスニングで一回目の放送で解き終わって2回目を聞く必要がないときなんかに解いたりしていました。ここはじっくり考え過ぎてしまうと時間がもったいない問題です。

 第4問(B)は英文和訳問題。長文の中の3箇所に下線が引いてあり、そこを訳させる形式がほとんどです。it や that 等の指示代名詞の意味を明らかにして訳せ、と指示がつく場合もありますが、その場合に限らず文脈を理解しないと上手く訳せないケースが多々あり、時間短縮のために下線部だけを見て訳出するのは危険です。
 他の大問と同様単語レベルは決して高くありませんが、下線部内に知らない単語があったら要注意です。「知らない単語だから無理だ!」と諦めてはいけません。東大も何十年も入試問題を作ってきているわけで、普通の受験生が知っている単語と知らない単語の区別はできています。それでもなお知らない単語を敢えて下線部に入れているぐらいですから、「この単語の意味を想像できますか?」と問うている訳ですね。その単語の派生語が下線部の前後に使われていることもあり、地の文にヒントが散りばめられていることも多いです。

 英文和訳問題でもう一つ注意したいのが「逐語訳」をすることです。古文の現代語訳の問題にも通ずるものがあると思いますが、下線部中の一語一語を忠実に訳出しなければ減点されてしまうでしょう。so や almost のような副詞や比較級等の意味が抜けることなく日本語訳に反映されているか必ず確認しましょう。


長文読解
 東大の長文読解では私大の入試問題で目にするようなアカデミックでガチガチな英文が出題されることは少なく、むしろ小説やエッセイの柔らかい英文が出題されることが多いです。出題内容も本文に書かれている情報を細かく処理させるのではなく、大雑把な文脈を理解した上で登場人物の発言の意図を想像させるといった、小説的な読解力が問われます。意図的に何かが隠された上で話が進み、最後でネタばらし…といった展開の小説が出題されることもあり、英語が得意な人にとっては楽しい英文でも、苦手な人は全然理解できず、迫る制限時間も相まってパニックに…なんてこともあります。

 長文読解は英語の得意・不得意により所要時間がかなり違ってきます。他の大問に時間をかけすぎて長文が壊滅してしまったり、逆に先に長文を解こうとするも気づいたらリスニングが始まる直前になってしまったりしないためにも、自分が長文にどれだけ時間を使うのかを予め決めておき、普段からその時間内で解ききる訓練をしておくべきです。一般的には20~25分程度、どんなに長くても30分で長文は切り上げないと他がツラくなってくるでしょう。


■解答順と時間配分■
 繰り返しになりますが東大英語は時間との闘いの色が濃く、戦略的に解答順序を考えるのが重要であると言えます。参考までに私は以下のような順番で解くことにしていました。

1-(A)要約(12分) → 2 自由英作文(20分) → 4-(B) 英文和訳(15分)→3 リスニング(30分)→
4-(A) 文法(5分) → 5 長文(25分)→ 1-(B) パラグラフ読解・整序(15分)

 時間配分は大まかなもので、リスニング開始5分前になったら和訳が途中でもリスニングの準備をしたり、リスニングで聞かなくてもよい部分は聞き流しながら文法に目を通したりといった感じでした。

 私は要約や英作文といった解答量が多いものを最後に残して焦りたくなかったので、それらを先に片付けて1-(B)は時間が残っていれば解く、最悪当てずっぽうになっても仕方ないぐらいの気持ちでした。もちろんこの解答順が全員にとってベストではなく、演習を通じて自分にとってベストの解答順を考えてみてください。時間配分に関しても一題一題に厳密に時間配分を決めてもよいですし、少なくとも「リスニング開始5分前までにここまで解き終わっておく」という目安ぐらいは決めておいた方が本番で大コケしないで済むでしょう。
 ただしいくら事前に時間配分の戦略を立てていたとしても出題形式が変わる場合はあります。奇しくも私が受験した2011年度入試では大問2に(C)が新たに出現した年でした。1-(C)の出現により英文が一つ増えている問題を見た私は焦ってしまい、結果解き終えることができず1-(B), (C)はともに壊滅状態になってしまいました。その経験から言えることとしては、傾向が変わっていた場合は焦らず冷静に戦略を立て直すべきです。「問題が一個増えているから普段よりとにかく英語を速く読まなきゃ!」なんてことをしてしまえば更に焦ってしまいかねません。傾向変化によってどれだけ読む量・書く量が増えたのか、それによってプラスでどのくらい時間が必要になるのか、その時間は他のどの問題で相殺できるのか(おそらく英作文、和訳あたりに割く時間を普段より短縮すべきでしょう)を考えた上で落ち着いて問題に取り組んで欲しいと思います。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……100点
・標準的な目標……84点
・苦手でもここまでは……72点
・本番で大失敗……50点

 東大英語は数学のように、問題に全く手がつけられず壊滅...といったことはまずありませんが、時間配分を間違えてしまうと壊滅寸前の状態になってしまう可能性もありません。特に入試本番は模試とは比べものにならない緊張感に包まれています。時間には普段以上に気をつけて解き進めてくださいね。
 東大英語では100点近い点数を取ってくる人(帰国子女を含む)は決して少なくありません。そこまで目指すのは難しいとしても、まず80点台あれば十分英語がアドバンテージになりますし、一方でこれは誰にでも十分到達可能な目標です。では、その80点に達する人とそうではない人の違いは何なのでしょうか。経験上、それはリスニングであることが多いです。30点の配点があるリスニングでは、満点近く取ってくる人と半分しか取れない人の間には大きな差が生まれます。リスニングで24~26点ぐらいを安定して取れるようになれば80点台がグッと近づいてくるはずです。リスニングの上達には英語を聞く量を増やすことが一番です。TEDリスニング等も活用し、とにかく英語に触れる量を増やして欲しいと思います。

 文理問わず重要科目である英語。大学に入ってからも英語の論文を読んだり書いたり、英語に触れる機会はたくさんあります。大学院まで進めば日本語よりも英語に触れる機会が多いコミュニティーに入るなんてことも多々あります。今の英語の勉強が大学入学後にも役立つものだと信じて頑張ってください!

2014/12/29 大澤英輝

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