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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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追加・更新記事リスト

202件中  5件表示  <610>
2017/04/27
 見る人が見れば「数Ⅲ?」と感じるかもしれませんが、今回もあくまで文系数学の過去問です。できる人にとっては何でもないのですが、数学が苦手な人にとってはちょっと発想力が要る、という立ち位置にある問題のようです。東大数学に必要な最低限の思考力が備わっているかどうか、確かめてみてください。


<問題PDF>

 座標平面上の3点

P$(0,-\sqrt{2})$, Q$(0,\sqrt{2})$, A$(a,\sqrt{a^2+1})$  $(0 \leqq a \leqq 1)$

を考える。
(1) 2つの線分の長さの差 $PA - AQ$ は $a$ によらない定数であることを示し,その値を求めよ。
(2) Q を端点とし A を通る半直線と放物線 $y=\frac{\sqrt{2}}{8} x^2$ との交点を B とする。点 B から直線 $y=2$ へ下ろした垂線と直線 $y=2$ との交点を C とする。このとき,線分の長さの和

$PA+AB+BC$

は $a$ によらない定数であることを示し,その値を求めよ。

<略解PDF>
<略解>

2017/04/27 石橋雄毅

2017/02/23
 第14回を迎えました。今回は、与えられた情報から実験結果を考察し、教科書の知識と併せて解答する問題を選定しました。大変面白い問題だと思うので、ぜひ取り組んでみてください!
 なお、AとBは知識問題なので、今回は外しました。








C
 問題文によると、変異体xおよびyは通常の培地では生育できないのに対し、ショ糖を添加した培地では正常に生育できたようです。これは、変異体xおよびyはショ糖を与えられると、それをエネルギー源として利用して生育できる、と解釈できます。では、野生株はショ糖を加えていない培地でも正常に生育できるのはなぜでしょうか?

 リード文によると、シロイヌナズナの種子には糖新生経路が備わっているようです。これは、同様にリード文に説明がありますが、解糖系を逆に動かして有機酸から糖を合成する経路です。光合成ができなくても糖を生成することができるということは、これをエネルギー源として利用して生育することができる、ということです。つまり野生株は、子葉に貯蔵されている脂肪を代謝し、糖新生経路を経て糖を生成することで、これをエネルギー源として生育できる、と考えられます。すると、変異体xおよびyは脂肪から糖を生成する過程のどこかに異常があり、ショ糖を添加されないと生育できない、と説明できますね。

(解答例)
野生株は子葉に存在する脂肪を炭素源として糖新生経路を介して糖を生成できるため、これをエネルギー源として利用できるから。(59字)


D
 これは化学の知識ですが、脂肪は脂肪酸3分子がグリセリンに結合してできたものです。また、リード文から、β酸化経路により脂肪酸から炭素2個が切り出されてアセチルCoAが合成されることがわかります。

 ここまでの情報が拾えれば、あとは簡単です。炭素数16のパルミチン酸1分子から合成されるアセチルCoAは16÷2=8分子なので、パルミチン酸だけを脂肪酸として結合している脂肪から合成されるアセチルCoAの総分子数は8×3=24分子です。

(解答)
24


E
 まず、実験内容を整理します。実験4では、ショ糖が添加してある培地にインド―ルブタン酸(IBA)を添加した場合としていない場合における、野生株、変異体xおよびyの根の伸長を調べています。IBAがないとすべての株で根は正常に伸長しますが、IBAがあると変異体xのみ根が正常に伸長し、野生株および変異体yは根の伸長に異常が見られるようです。

 また問題文より、IBAがβ酸化経路により代謝されると、アセチルCoAだけでなくインドール酢酸(IAA)も生じる、とあります。IAAは生物受験者なら知っての通り、オーキシンと呼ばれる植物ホルモンです。

 ここで、問題に一度戻りましょう。聞かれていることは、「変異体xとyで、β酸化経路が正常に機能しているかどうか」です。これはどう判断できるでしょう?IBAがβ酸化経路によって代謝されることによってIAAが生じる、というヒントがありますから、「β酸化経路が正常に機能している」=「β酸化経路によってIAAが生じている」=「IAAがなんらかの影響を及ぼしている」と考えられます。つまりIBAを添加した培地において、IAAの影響が見られる場合はβ酸化経路が正常に機能しており、逆にIAAの影響が見られない場合はβ酸化経路が正常に機能していない、と判断できそうです。

 実験4の結果に戻ると、IBAを添加した培地において、野生株は根の伸長に異常が見られます。野生株はβ酸化経路が正常に機能しているとすると(野生株は変異体ではないですから、備わっているべきものはすべて備わっているとして考えます)、IBAを添加した培地において根の伸長に異常が見られる場合、β酸化経路が正常に機能していると判断できます。

 このように考えれば、変異体xはβ酸化経路が正常に機能しておらず、変異体yは正常に機能しているとわかります。よって正解は(3)です。

 ここで問題なのが、理由の記述です。変異体yではなぜIBAの添加によって根の伸長に異常が見られるのでしょうか?今までの議論から、この異常がIAAによるものであることは明白です。「IAA(オーキシン)」と「根」といえば、生物受験者ならピンとくるでしょう。そう、「根、芽、茎におけるオーキシンの感受性の違い」です。植物体を構成する根、芽、茎は、この順にオーキシンの感受性が高いです。オーキシンは本来植物の成長促進に働く植物ホルモンで、根は薄い濃度のオーキシンでその効果が現れます。しかし、オーキシンの濃度が濃すぎると逆に根は成長が阻害されてしまう、ということが知られています(これは教科書の知識ですので、みなさんご存知ですね)。

 つまり、変異体yでIBAの添加により根の伸長が阻害されたのは、β酸化経路が正常に機能してIAAが生じたことにより、高濃度のIAAが根に作用したから、と考えるとしっくりきますね。

(解答例)
(3)
根は高濃度のIAAにより伸長が阻害される性質をもつ。変異体yの根においてβ酸化経路が正常に機能したことにより高濃度のIAAが生じたから。(64字)





 いかがでしたでしょうか?Eでは教科書の知識と併せて考察してみました。このような、与えられた情報と教科書の知識を組み合わせて正答を導く気持ちよさは、東大生物の特徴のひとつです。みなさんはどこまでできたでしょうか?

解答例まとめ
C 野生株は子葉に存在する脂肪を炭素源として糖新生経路を介して糖を生成できるため、これをエネルギー源として利用できるから。(59字)
D 24
E (3)、根は高濃度のIAAにより伸長が阻害される性質をもつ。変異体yの根においてβ酸化経路が正常に機能したことにより高濃度のIAAが生じたから。(64字)

2017/2/23 宮崎悠介

2017/02/09
 今回は昨年の文系専用問題を紹介。文系数学としては“やや難”の評価を受けている問題ですが、理系の皆さんにはサクッと解いてほしい……解けますよね?

<問題PDF>

 以下の問いに答えよ。ただし, (1)については, 結論のみを書けばよい。
(1) $n$ を正の整数とし, $3^n$ を $10$ で割った余りを $a_n$ とする。$a_n$ を求めよ。
(2) $n$ を正の整数とし, $3^n$ を $4$ で割った余りを $b_n$ とする。$b_n$ を求めよ。
(3) 数列 $\{x_n \}$ を次のように定める。

$x_1=1, \quad x_{n+1}=3^{x_n} (n=1,2,3,⋯)$

 $x_{10}$ を $10$ で割った余りを求めよ。

<略解PDF>
<略解>

2017/02/09 石橋雄毅

2017/01/26
 第13回となりました。今回は、免疫に関する問題です。問題文はモノクローナル抗体に関するもので、読むだけでも勉強になりますので、ぜひ取り組んでみてください。
 なお、今回扱う問題は文2に関するものですが、文1の情報も必要なため、併せて掲載しています。








A
 B細胞は、骨髄中の造血幹細胞から分化した細胞が、脾臓で成熟して誕生します。また、B細胞やT細胞などのリンパ球はリンパ節などのリンパ組織に多く常在しています。このことから、正解は容易に選べます。

 胸腺はT細胞の成熟に関わる組織ですので、今回は選んではいけません。これはひっかからないようにしたいですね。

(解答)
(1)、(2)


B
 遺伝的に胸腺の形成不全を示すヌードマウスでは、どのような異常が起きているのでしょうか? Aでも確認した通り、胸腺はT細胞の成熟に関わる組織です。この胸腺が欠如したヌードマウスには、成熟したT細胞が存在しません。つまり、T細胞を起点とした免疫系が機能しない、ということになります。

 さて、ここで問題文に戻ります。「がん細胞が抗原の場合、抗体のFab部分で抗原と結合した抗体のFc部分がマクロファージの受容体と結合することで、マクロファージの食作用が容易になり、細胞が排除される」とあります。つまり、がん細胞を排除するには、そのがん細胞に対する抗体が作られ、抗体ががん細胞に結合することが必要となります。

 ヌードマウスではT細胞が存在しないため、T細胞のひとつであるヘルパーT細胞を起点とする体液性免疫が成立しません。つまり、ヌードマウスにヒトのがん細胞Xを注射しても、Xに対する抗体を作ることができず、結果としてXの排除に至らなかった、と考えられます。

 ちなみに、完全に余談ですが、ヌードマウスは体毛がないためにその名前が付けられました。実は胸腺の形成に関わる遺伝子と発毛に関わる遺伝子の遺伝子座が近く、このふたつに同時に異常が起きているため、胸腺を失い、かつ体毛がないという表現型になっているそうです。なんとも面白い(?)実験動物ですね。

(解答例)
 ヌードマウスは胸腺の形成不全を示すため、成熟したT細胞が存在しない。このため、体液性免疫が機能しないので、がん細胞Xに対する抗体を作ることができないから。(77字)


C
 Bで確認したように、抗体によってがん細胞が排除されるためには、①抗体のFab部分が抗原と結合すること、②抗体のFc部分がマクロファージの受容体と結合すること、の2つが必要です。mab1-Fabやmab1-Fc、およびそれらが等量混合されているものでは、①と②を同時に達成することができません。よって、精製したmab1を注射した場合のみ、最も強くXの増殖を抑制すると考えられます。

(解答例)
(4)
 がん細胞Xを排除するには、抗体が抗原に結合し、かつマクロファージの受容体にも結合することが必要だから。(51字)






 いかがでしたでしょうか? 今回は問題数は少なかったですが、免疫分野のオーソドックスな問題だったと思います。正攻法で解ける良問でした。東大生物は例年イジワルな問題は少なく、与えられた情報を正しく処理する方法を身につけていれば案外すんなり解答にたどり着けます。今回の問題は東大生物の中では簡単な部類になりますが、しっかり正解できたでしょうか?


解答まとめ
A (1)、(2)
B ヌードマウスは胸腺の形成不全を示すため、成熟したT細胞が存在しない。このため、体液性免疫が機能しないので、がん細胞Xに対する抗体を作ることができないから。(77字)
C (4) がん細胞Xを排除するには、抗体が抗原に結合し、かつマクロファージの受容体にも結合することが必要だから。(51字)

2017/01/12

 1ヶ月に渡ってお送りしてきたこの入試問題早慶戦も、全試合が終了しました。改めて、戦績を振り返ってみましょう。



優勝:早稲田大学(6勝3敗)

理工学部
慶應義塾大学 教科 早稲田大学
勝敗 得点 得点 勝敗
14 数学 18
17 物理 15
12 化学 11
◆(不戦敗) 0 生物 18 ◇(不戦勝)
14 英語 13
3勝 57/100 75/100 2勝
法学部
慶應義塾大学 教科 早稲田大学
勝敗 得点 得点 勝敗
10 英語 16
9 世界史 11
8 日本史 9
4 国語 15
0勝 31/80 51/80 4勝


総 評

 主に文系科目のせいで早稲田の圧勝のように見えていましたが、実は理工学部だけで見ればむしろ慶應側が勝っていました。理工学部の合計点数も、不戦勝の生物を除けば両校57/80点の同点! かなりアツい勝負だったようです。

 結果を詳しく分析してみましょう。全体として、早稲田大学の入試問題は、東大を形式面でかなり意識しているように見受けられました。勝利を収めた全問記述式の数学、中論述のある世界史、現代文ラスト100字超の記述のある国語はもちろん、負けてしまった理工学部英語にも、ほとんど東大特有と言っていい出題形式である段落整序問題が出題されているなど、顕著に特徴が表れていたように思います。

 一方の慶應はと言うと、東大入試には無頓着、我関せずといった調子で自分のスタイルを貫いていました。その分なのか、問題に王道を行く良問が多く(特に理系科目)、勝利を収めた物理・化学・理工学部英語は形式面の違いを補って余りある問題の質が勝因となっていたようです。どの学部の入試にも「国語」という科目は設けず徹底して小論文を課しているところも踏まえ、慶應が出題内容自体に強いこだわりを持っていることが見て取れます。

 こうして見ると、早稲田大学には、受験生が東大と併願しやすいよう配慮して少しでも優秀な人材を確保しようという意図があるのではないかと考えられます。だとすれば、そのような出題をする早稲田と、陸の王者として我が道をゆく慶應とのこの勝負、前者の勝利は至極当然の結果だったようです。純粋に問題の質だけで見ればまた違った結果になるのかもしれませんが、今回はあくまで「入試問題の東大入試との親和性」での勝負ということで、この企画が東大受験生の皆さんの何らかの参考になれば幸いです。

2017/01/12 石橋雄毅

入試問題早慶戦
<開会式>
<法学部>英語世界史日本史国語
<理工学部>数学物理化学生物英語
<閉会式>総括


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