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二次得点の常識 第5回:物理

 序盤での誤答を大問終盤まで引きずり倒して大量失点する怖さはありますが、高得点の安定しやすさが受験科目として魅力的な物理。東大入試理科4科目の中では化学に次いで多い選択者を誇ります。…
 序盤での誤答を大問終盤まで引きずり倒して大量失点する怖さはありますが、高得点の安定しやすさが受験科目として魅力的な物理。東大入試理科4科目の中では化学に次いで多い選択者を誇ります。
 そもそも物理単体の試験時間が規格外の東工大や、長文・穴埋め形式の京大の問題の壮大さに比べ、東大の問題は形式の都合上小粒とならざるを得ないはずなのですが、そこに今までの観点を覆す一捻り二捻りがあるなんてのはザラ。そんな試験で十分に実力を発揮するために、まずは相手をよく見てみましょう。


■出題内容■
 試験時間・配点も他の理科科目と同様2科目150分・60点満点。大問3題構成なので1問当たり20点と見るのが妥当でしょう。構成はここ20年以上変わりなく以下のようになっています。

番号

出題内容

配点(推定)

第1問

力学

20点

第2問

電磁気                  

20点

第3問

波動/熱力学/原子

20点


第1問
 分厚い理科の問題冊子をめくって一番初めに現れるのは、物理の力学の問題です。東大入試の力学と言えば、保存則を駆使して解く二体問題と単振動が頻出中の頻出。究めれば物理力向上間違いナシの良質な二体問題を最も多く収録している物理の問題集は『東大の物理25ヵ年』であると言っても過言ではないでしょうし、単振動の内容を含む問題は2005~2014の10年間になんと6回も出題されています。当然ここの学習には万全を期して本番に臨むべきなのですが、そもそもこれらは“物理”そのものが正しく理解できてはじめてきちんと解ける単元。「二体問題と単振動の対策を厚く」というよりは、高校物理の枠組みを完璧に理解することを心がけてほしいです。
 では「その枠組みとはなんぞや」という話になるでしょうが、自分は“公式の適用範囲を押さえる”ことかなと思っています。物体系にかかる外力に水平成分が無いから運動量及び重心速度の水平成分が保存する、弾性衝突なので初期状態からエネルギーの総和は変わらない、非等速円運動では基本的に運動方程式が解けないからエネルギー保存を使う、振動中心が変化する単振動でのエネルギーの取り扱いについて……などなど。こういった理解を支える土台が磐石でさえあれば、逆に二体問題や単振動の解法なんてのは枝葉でしかありません。

第2問
 お次は決まって電磁気からの出題。ここ最近の東大の傾向としては、ネオンランプや太陽電池といった特殊な性質を示す素子が組み込まれているなどする一捻りある回路の問題や、磁場中のコイル・荷電粒子の挙動を論じる電磁誘導の問題が目立ちます。後者はつまるところ単純な力学と直流回路の話であることもあり、比較的オーソドックスな問題構成となっていることが多いですが、前者は十分な下地を構えた上でなおその場の応用的思考が必要になる、差が開きやすい問題だと言えるでしょう。沢山経験を積めるような問題でもないので対策が難しいですが、近道は無いと思ってまず標準的な問題を確実に解く練習をしてください。過去問演習の中で理解を深められれば十分です。

第3問
 最後の大問は波動、熱力学、そして原子のうちのどれか(もしくはそれらの融合)。一時期は波動と熱とが交互に出題されていたのですが、ここ数年は謎の波動推しが続き、さらに2015年度入試から原子物理が復活するものだからもう大混乱。どれかにヤマを張って本番に臨むようなスタイルは見込めません。
 波動のときは設定の凝った見慣れない問題になることが多く、その傾向も手伝ってか応用しやすい干渉の単元からの出題が目立ちます。受験生には嫌われやすい単元であるものの、苦手なまま放置しておくことの無いように。
 熱力学の問題もかつてはピストン付きシリンダーに閉じ込められた気体の状態について論じるオーソドックスなものが多かったのですが、ここ最近の出題には少々特殊な状況設定が目立ちます。とは言え、熱力学の問題で頭を使う部分は力学にちょっと毛が生えた程度のものであり、そもそも物理自体苦手という人以外、取り立てて厄介な存在にはならないのではないでしょうか。
 原子の問題は、そもそも出題範囲内だった昔ですら10年に1度あるかどうかという程度であり、どんな問題が“東大らしい原子物理”であるかは何とも言えません。最後に出題された2005年の問題ですら、原子物理の知識は“ド・ブロイ波長”についてのみで後は全部波動の問題だったほどです。勉強が間に合わなくなりやすい分野であり、学力を測る試験には相応しくないとの大学側の判断なのでしょうが、受験生としてはだからと言って捨てられるようなものでもないでしょう。まずは“この分野で難しい問題が出たら誰も解けないからむしろ差がつかない”と割り切って、基本的な内容だけ完璧な状態にすることから目指してください。もし本番で原子の問題が出題された時には、それで本当に差がつくことと予想されます。


■参考得点■
・得意なら目指してみよう……54点
・標準的な目標……42点
・苦手でもここまでは……36点
・本番で大失敗……24点

 ネックになるのはやはり試験時間の短さです。使える公式・使うべき公式が何か一回一回詰まってしまうようでは、時間はあっという間に過ぎ去っていくことでしょう。まず標準的な問題集を一通りノンストップで解けるよう実力を付けた上で、過去問や模試の問題など東大形式の問題を1セット、限られた時間の中で解き、スピードの感覚を養っていく――これが入試までにやっておきたい最低限の対策になります(ちなみに、併願する人も多いであろう早稲田や慶應の物理も同じ調子です)。これだけで6割は十分射程圏内に入ってくるものの、大問序盤の設問で間違えると目も当てられなくなりますので、どうか慎重に……。
 東大物理でさらに高みを目指すなら、これに加えて思考力と定性的な直観力が必要になるのですが、ここを重点的に鍛えることができる丁度良い教材は、残念ながら過去問くらいしか見当たりません。上記“最低限の対策”で解くものが粗方消費されてしまうでしょうから、そのようなときには早慶や東工大の過去問も選択肢に入れてみてください。どんな問題にも楽しんで挑めるようになる頃には、東大物理50点台も目前です!

2014/12/15 石橋雄毅

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