妥協の無い毎日で未来を変える:受験から東大での学びまで
2025.12.07
東大生たちが語る“東大を目指す理由”と“合格への道”――勉強法、受験での失敗談、そして合格後のリアルな学生生活まで。これから東大を目指すあなたに、合格までの道のりをリアルに伝えます。
東大に入って印象に残っている出来事を教えてください
外国人の多さにはとても驚きました。自分の高校には海外出身の生徒というのはいなかったので、外国人の子と同じ教室で同じ授業を日常的に受けるというのはとても新鮮でしたね。自分は帰国子女が多く集まる英語のクラスに参加していて、日本語を話せない学生と英語でやりとりする機会があります。そのたびに自分の英語力の無さを痛感していますね。自分は中学生の時にハーバード大学の学生たちと話すプログラムがあり、それに参加した経験もありスピーキングに関してはかなり自信があったのですが、、、。
実際に日本語が通じない相手と議論するとなると、かなり訓練が必要だと感じています。特に英語のディスカッションでは、積極的に話していかないとどんどん置いていかれて話についていけなくなるんです。だから何とか知ってる単語をひねり出して、何かを言うことが大切なんです。
でも普通に日本で生活していてもこうしたことを訓練する機会ってあまりないですよね。その点、東大にはこの「英語で話す」経験を積めるチャンスが非常に多くあります。英語の授業の多くはスピーキングに重点が置かれていて、そこでコミュニケーション能力も鍛えられますし、何より「使える英語」を身につけることができます。
東大に入ってみて周りにはどんなひとがいますか?
当然ですが、東大生はみんな賢く、非常に高い学力を持っています。コツコツ勉強してテストで確実に高得点を取るタイプの人もいれば、勉強量はそこまで多くなくても要点をつかむのがうまく、さらっと高得点を取ってしまうタイプの人もいます。
でも私が一番面白いと感じている点は、「行動力」だったり、何かの「スキル」であったり、秀でたものを持っているというところですね。
例えば僕の友達には、友達の寮の鍵の構造を専用のソフトウェアで解析して3Dプリンタで複製した人がいたりだとか(もちろん鍵の持ち主の許可は得たうえで)、夏休みの間に海外に行って、アフリカで何かプロジェクトを立ち上げようとしている人がいたり、渋谷でゴミ拾いをする団体を運営している人がいたり、、、。
みんなそれぞれ、結果を残してくれそうだと思わせるようなスキルや行動力を持っているんです。将来この人は有名になるんじゃないかという人に囲まれて過ごすことは本当にわくわくしますし、自分には無いものを彼らは持っているので、自分が新しいことを始めてみるきっかけにもなります。自分も鍵を複製した友達から影響を受けて、彼が構造を解析する時に使っていたCADというソフトウェアを今勉強しています。

受験という物が自分事になり、本気で勉強するようになった時を教えてください。
高校2年の夏に塾でのクラスを落ちてしまったときですね。自分はずっと、質はどうであれそれなりには勉強する人だったのでまあまあ上のクラスにいて適当に勉強する状態が続いていました。学校の順位的にも東大か京大にもなんだかんだ受かるだろうとどこか油断していたんです。
クラス替えのテストが近づき、いつものように勉強して迎えたテスト本番、何故か全然解くことができずにすごく焦りました。内容が高度になり、それまでのような勉強では到底太刀打ちできなかったのです。「なんとか耐えていないかな」と点数を皮算用しながら結果を待つこと1週間、がっつり悪い点を取ってクラスを落としてしまいました。「おまえはそんなに賢くないんだぞ」と言われたような気がして、人生で最も悔しかった瞬間の1つです。
しかもその3か月後には高3一年間のクラスが決まる、最後のテストが控えていました。最後のテスト範囲には数Ⅲも含まれていて、3か月で数Ⅲの積分を1から学ばなければならず、時間の無さ、量の多さに絶望しました。
でも二度と同じ思いはしないと強く思い、次のクラス替えのテストの日から逆算して自分なりに予定を立てて「主体的に」勉強するようになりました。ぎりぎりで範囲をやりきり、迎えた最後のテストでは、なんとかまた以前と同じレベルのクラスに戻ることができました。
それ以降は、この経験を通じて「正しい勉強習慣」が身についたのでしょう、そして何より「受験であんな悔しい気持ちになりたくない」という思いが原動力となって、受験に最後まで自分事として向き合い続けることができました。
一番成績が伸びた時期とその時にしていた勉強法を教えてください。
高3のゴールデンウィーク、1週間の間に物理を集中して勉強したときです。元々物理という教科は好きなのにテストで悪い点を取ってしまい「下手の横好き」みたいになっているのが嫌で、「この1週間で物理を得意にしてやろう」と思って始めました。
他の教科は必要最低限のことだけにとどめ、残りすべての時間を物理に捧げました。1日5~6時間、物理を勉強することを1週間続けた結果、駿台全国模試で34点だった物理の点数が77点に上がりました。それ以来、物理は自分の得意教科となり自信を持って本番の試験にも臨むことができました。ここまで短期間で伸びたのはまず第一に科目の特性というのも大きくあると思います。物理は少ない本質をしっかり理解して応用していけば、比較的成績を伸ばしやすい教科です。
でもそれ以上に「一定期間それだけ集中して勉強する」という経験自体にもっと大きな意味があると感じました。それは「あんなに勉強したのだから、この部分は他の人よりできる」という自信につながることです。実際、短期間集中して勉強した経験がある教科はそうでないものに比べると、より自信をもってテストに挑めます。
実は同じ勉強法を英語のリスニングでやったことがあり、一日3時間くらい英語を聞く、これを1週間続けました。こちらはすぐには成績は上がらなかったのですが、この1週間を経験した後はリスニングを冷静に聞くことができるようになり、最終的に東大の本番の試験ではリスニングで9割近い点数を取ることができました。
これも「あんなに勉強したのだから大丈夫」という自信を持っていたからこそできたことだと思いますね。この「自信」の積み重ねこそが結果的に実力を大きく飛躍させることにつながるのだと感じています。
本番の試験を受けたという経験から、普段の勉強で大切だと思うことを教えてください
実力はそう簡単には変わらないので、普段解けない問題は本試験でも解けません。だからこそ、勉強不足の分野をなくしてテストに挑むことが大切です。しかし、十分に勉強していても、解けるはずの問題を本番で解けないことがあります。なぜかというと、本番はやはり緊張して、不安を感じやすいからです。目の前の問題を解けるかどうかに自分の人生がかかっていると考えると、つい過剰にミスを探して時間を浪費してしまったり、隣の人がペンを動かしているのを見て「自分は全然できていないんじゃないか」と焦ってしまったりします。
こうした不安への対処法として、自分が意識していたのは「あらかじめ不安を感じやすい状況に慣れておく」ことです。
過去問演習をするときには、同じくらいの成績の友達と勝負するようにしていました。友達と競うと、「もう相手はこの問題を解けているんじゃないか」などと不安を感じることが多く、本番に近い良い練習になります。
そのおかげで、実際の試験会場で感じた不安はほとんど経験済みでした。「まあ、不安に感じるのはしょうがないよね」と思いながら、落ち着いて問題に向き合うことができました。幸い、自分もその友達も無事に合格することができました。
1人で東大を目指していて一緒に勉強できる友達がいないような人も、工夫次第で「状況への慣れ」は可能です。例えば「時間を計りながら問題を解く」、「本番の解答用紙と同じ形の紙を使って問題を解く」ことがおすすめです。実際に僕もやっていたのですが「もうこんなかかってしまったのか」、「この解答用紙使いにくいな」などと不安、不満を感じることが多く、本番の感覚を掴む練習になりました。

受験生時代について後悔していること、また何故後悔しているのかを教えてください
「なんとなく勉強してしまっていた時間」が多かったことです。例えば、音楽を聴きながら勉強するだとか、友達とおしゃべりしながら勉強するといったことです。まずそういう勉強の仕方をしていると実際の試験に影響が出てしまいます。定期テスト期間に勉強中に聞いていた音楽がテスト中に頭に流れてしまったことはありませんか?テスト中に勉強したことじゃなくて、勉強しながら友達と話したことばかり思い出して、問題が解けなかったなんてことはありませんか?
実際、入試本番はとても緊張すること以外は普段のテストとあまり変わりません。だから普段の勉強の習慣というのが直に影響してきます。定期試験だけならまだなんとかなっても、入試の本番で頭の中に音楽が流れたり、友達との会話を思い出したらいやですよね。時間だけが過ぎていくような勉強は、慣れてしまうとそこから抜け出しづらくなります。自分も合格はしたもののまだ完全に抜け出せてはおらず、大学でも時間だけが過ぎちゃんと学べていない勉強をしてしまうことがあり、今もなお後悔している点です。
対策としては問題を解くときに時間を計ってみることをおすすめします。自分がこの問題をどれだけスラスラ解けたのか、また詰まってしまったのかが可視化されますし、何より緊張感が生まれます。
受験生時代に後悔していることは、もう一つあります。 それは、なんとなく「最後やりきれなかった部分がある」と感じている点です。特に共通テストが終わってから二次試験までの約1か月間は、もう少し長い時間をかけて、もう少し詰めた勉強ができたように思います。
なんとなく「ここまで積み重ねてきたのだから、最後にやってもやらなくてもあまり変わらないだろう」と考えていたところがありました。実際、その頃は過去問を解いて見直しを終えたら帰る、という生活になっていたんです。でも、過去問で出てきた範囲の復習を別の教科書でやってみるとか、そもそも二年分しか解けなかった現代文の過去問をもっとこなすとか、そういったことができたのではないかと思います。
この「やりきれなかった感」というのが今も自分の中に残っています。合格したときは勿論嬉しかったのですが、思っていたよりも達成感を感じることができなかったんです。達成感というのは苦労して頑張ったからこそ得られるものです。最後少し気を抜いてしまったばかりに、あまり達成感を感じられずモヤモヤした感じが残ってしまっています。
それに達成感は「自分はこれだけのものを成し遂げたんだぞ」という自信にもなるはずです。この「自信」を受験という大きな経験で得ることは後の人生における大きな財産となるでしょう。だからこそ皆さんには最後まで気を抜かず、「やりきった」と言える勉強をしてほしいです。
受験勉強という経験は今のあなたにどのような影響を与えていますか
自分は受験勉強を通して、長い目で物事を見る力が身についたように感じます。受験はよくマラソンに例えられるように、1年や2年とかかる長期戦です。その中で、遠くにある目標から逆算して「今やるべきこと」と「後回しにすべきこと」を考え、一つ一つ課題を見つけて向き合い続ける必要があります。
具体的には、自分の成績と合格点との差を認識し、それを埋めるために課題を設定して消化していく。「自分は英文法が苦手だからこの英文法の教科書を終わらせて、その次に長文読解を勉強しよう」といった感じです。この繰り返しを通して、計画的に努力を積み上げる姿勢が身についたと思います。こうした姿勢は、勉強をはじめ、スポーツなどどんなことにも通じる大切な力だと感じます。
また、受験勉強は社会で起きているさまざまな物事に、より専門的な興味を持つための架け橋にもなります。自分の場合、大学で力学を学んだとき、法則が現象を説明してくれることに感動しました。たとえば、回転する駒の軸が円を描くように動く「歳差運動」が数式で表せると知ったとき、かなり感動しましたね。これも高校時代に学んだ力学が基礎になっており、受験勉強がその理解への架け橋になっていると実感しています。
受験生活において最も苦しかったこと、どう乗り越えたかを教えてください。
自分の印象に残っていることは2つあります。
ひとつは高校3年の春から夏にかけて数学の成績がどうしても伸び悩んだ時期です。いくら勉強してもミスを連発したりして悪い点ばかり。軽いスランプのようになっていました。当時の自分は勉強するときに難しい問題を長々と考え、結局分からずに答えを見て、「こういった問題ではこうするのがいい」というパターンを覚えるということばかりをしていたんです。でもテストになると頭が混乱してしまって、「この方法で良いのかな、別の方が良いんじゃないかな」とか考えてしまって結局できない、さらには基礎的な問題も落とすということが多かったのです。
スランプを脱せたきっかけは信頼できる先生からいただいた一言です。「宿題をちゃんとやろう」。ありきたりな言葉でしたが、いざ自分の勉強を見直してみたところ、最も大切な「授業内容の復習」という宿題をちゃんとしていなかったことに気がつきました。
そこでその日から「基礎的な問題」というのを重視するようにしました。具体的には塾で進めているテキストを復習することをより念入りに繰り返しするようにしました。基礎的な問題というのはおそらく簡単な問題というのではなく、「どうしてこういう解き方をするのかという道筋が明確な問題」だと思います。
これを重視してしっかり勉強することによって、いろいろな問題――特に見たことのない問題――を解くときに、より理路整然と考えることができ、迷うことが少なくなりました。劇的な瞬間があった訳ではないのですが、同じ方法で続けて勉強していると気付いたときにはスランプを抜け出せていたような感じでした。

もう一つはさっきも話したのですが、高校2年の夏に塾でのクラスが落ちてしまったときです。自分はなんだかんだ良い成績をとってきていて、それに甘んじて身の入った勉強を全くしておらず、当然のように落ちたわけですが、何故かとにかく悔しくて苦しかった記憶があります。多分変なプライドがあったのでしょうね。でもこの時初めてそんなプライドを持っている自分と向き合えたんです。自分の弱さを自覚できたんです。
3ヶ月後には高3の1年間のクラスを決める最も大事なテストが迫っている状況でしたが、その時初めて自分で主体的に勉強する、すなわち「勉強、そして受験を自分事とする」ことができたような気がします。次のテストまでにすべきことをリストアップして、いつまでに達成するかを決めて、それをこなしていく。文字にすると簡単だけれども、実際にやってみると自分がいかにできていなかったかを実感することとなりました。
当然その当時は次も同じような結果になってしまったらどうしようとか考えて辛く感じることはあったのですが、自分のやっている勉強は絶対間違っていないと胸を張って言えるような自信もありました。そんな自信があったからあの時期を乗り越えられたんじゃないかと思います。実際3ヶ月後の試験は不安よりも、これだけやったのだから大丈夫という自信の方が強かったです。この自信があったからこそ辛い時期も乗り越えられたのだと思います。
受験において、ひいては全てのことにおいてこの自信が大事なように思います。自分の今していることに自信を持つ、これは意外と難しいことです。なぜなら自分には嘘がつけないから。もし今日はこのくらいでいいやと妥協してしまったらそれは周りの人には分からないけれど、自分だけは妥協したことを知っています。そういう行為を続けていても自信にはなりません。自信をつけるためには「地に足着けてしっかりやりきる」という基本的な行為を積み上げなければならないのです。
どうか皆さんには毎日「今日はやるべきことをやりきれたか」と聞かれたとき自信を持って「はい」と答えられる日々を過ごしてほしいです。そうした日々の積み重ねがきっと大きな自信と力を育んでくれるはずです。









