人生を一つの作品として面白いものに―新しいことに挑戦し続ける行動力の源泉とは
2026.04.07
※本記事は、こちらの記事の続編となります。
渋谷での自発的なゴミ拾い企画から、思い立ってのベトナム弾丸一人旅まで——。大学生という環境を使い倒し、圧倒的な行動力を見せる和田さんですが、その力強い歩みの裏側には、意外にも「どん底の挫折」経験がありました。 「自分の人生をひとつの作品として面白くしたい」。そう力強く語る和田さんに、合格というゴールの先にある景色と、今の彼を形作った原体験、そしてこれからの未来に描くビジョンについて迫りました。
地方から東京に来てご自身の生活はどのように変化しましたか。
今は親元を離れて東大生が集まる寮で暮らしています。もともと環境への適応力には自信があって、地元がすごく恋しいだとか、家族と離ればなれになって悲しいといった、いわゆる「ホームシック」になることなく暮らせていますね。
寮の仲間と他愛のない話をしたり、都会でしかできない経験をしたりと、充実した毎日です。
特に自分のなかで衝撃的だった変化は、「外食」という習慣です。
都会の人には信じられないかもしれませんが、田舎にある僕の家の周りには飲食店が1つもありませんでした。外食といえば、2か月に1回、両親の休みが重なった日に車で町まで出て、家族全員で食べに行く特別なイベントだったんです。
それが今では、寮を出ればすぐにご飯屋さんがある。「松屋の牛丼が食べたい」と思ったら、その瞬間に食べに行ける。この「選択の自由」がある生活は、田舎出身の僕にとっては革命的な変化でした。
東大に入ってよかったと思うことは何ですか?
一番は「人との出会い」です。
もちろん、想像通り賢い人はたくさんいます。話していて、「あ、この人と自分ではそもそも頭の構造が違うな」と圧倒されることもあります。
そういった優秀な人に囲まれていると、その頭の良さに委縮してしまうというよりも、そういう人たちの中で「自分らしさって何だろう」、「自分はどんな強みを生かせるだろう」と考えるきっかけにもなり、刺激をもらっています。
でも、それ以上に面白いのは、東大生一人ひとりが持つ独自の「人生観」です。なんとなく流されて生きている人が少なく、それぞれが自分の人生に対して確固たる価値観を持っています。
例えば、僕の友人に「この世界は虚構なんだから、わざわざ全力で頑張る必要なんてない」と言い切るやつがいます。僕は「何事も全力投球!」というタイプなので、真逆の価値観です。でも、彼の言葉を聞いていると、正しいかどうかは別として妙に納得させられる部分がある。
そうやって、自分とは全く違う視点を持つ人と出会い、「そんな考え方もあるのか」と新しい気付きを得られる。この「価値観のシャワー」を浴びられる環境こそが、東大に入って得られた最大の財産だと思います。
彼らのおかげで、「自分の知らない世界がまだ無数にある」と気づくことができました。もっと多くの景色を見たい、多様な経験を積みたい。その強い思いこそが、いまの僕を前に進める原動力です。
今、大学生活で力を入れていることは何ですか?
抽象的かもしれませんが、「直感に従い自分がやりたいことにチャレンジする」ということに力を入れています。自分は今、東京といういろんな「ヒト」と「モノ」が集まる場所で、時間がたくさんある大学生として過ごしています。つまり「やりたいことができる」環境はそろっている。この恵まれた環境を使い倒さないのはもったいないと感じます。そこで僕は自分が「やりたい」と思ったことにとにかくチャレンジするようにしています。自分用の「やりたいことリスト」を作っていて、「これおもしろいな!」、「これやってみたいな!」と思った時に直感的にそのリストに追加し実行しています。今年実行した特に印象深いものを2つ紹介してみたいと思います。
1つは渋谷ゴミ拾い企画です。田舎から出てきて有名な渋谷を初めて見たとき「汚!」と衝撃を受けました(笑)。そこで、YouTuberがよくやっているような清掃企画を実行してみることにしました。「やりたいことにチャレンジする」ことをモットーにしている自分にとって、YouTuberたちの「面白そうだと感じたことを企画、実行し動画にする」という活動には、強く共感できるものがありました。それにいつもスマホの画面越しに受動的に見ているだけでは面白くない、主体的に自分の力でも実践してみたいと思い立ち、サークルで環境活動をしている友人と一緒に渋谷でゴミ拾いイベントを主催しました。リーダーとして参加者全体を見渡し、全員が充実感を持って過ごせているか心を配るという経験で、自分のリーダーシップが磨かれ大きな成長になったと思います。
2つ目は「ベトナム弾丸旅行」です。駒場祭(東大の学祭)で僕のクラスだけ出店予定がなく、この休みの期間に「周りの皆が楽しんでいるのに自分だけ何もしていないのはつまらないな」と思い一人で海外に行ってみることにしたんです。行き先を決める際はAIをうまく活用しました。ChatGPTに学生でも行きやすい国の候補地を出してもらい、そこの国で「どんな体験が出来そうか」、「どんな学びが得られるか」などを具体的に想定しながら、最終的には「ベトナムにしよう!」と直感的に決定しました。全然慣れない海外での生活を自分の力だけで乗り越えることができ、「一人でも人生なんとかなる」「迷ったらまず動く。その行動に後悔することはない。」と、自分への信頼をより強固なものにすることができた旅でした。
また今後の大学生活でも、この「やりたいことにチャレンジする」スタンスをさらに大きなスケールで実行したいと考えています。具体的に挑戦したいのは、「海外に住むこと」です。働く責任や家族を支える義務がなく、自分のためだけに時間を使える今だからこそ、留学や休学制度を活用し、ヨーロッパ(特に地中海沿岸の国)での生活に飛び込んでみたいです。

サークルをたちあげられたり、1人で海外に行かれたりしていますが、そんな和田さんの圧倒的行動力の源泉は何ですか。
実は、東大受験に失敗したときよりもよっぽど苦しく、僕の人生の最大の転換点となった出来事があります。それは、中学3年の時に経験した「イップス」です。
幼い頃から野球が生きがいで、マウンドに立つことが僕の全てでした。しかし中学3年のある日、突然思い通りにボールを投げられなくなってしまったんです。自分のしたいプレーが全くできず、ただただ苦しくて、何よりそんな自分が情けなかった。生きがいを、なんなら「生きる意味」そのものを失ったような感覚に陥り、人生のどん底を味わいました。
でも、絶望の中で自分の人生について深く考える時間があったんです。「何のために生きればいいか分からない。でも、ここで終わるわけにはいかない」。そこから湧き上がってきたのは、「こんな情けない自分をどうにかしたい」「イップスなんかに負けてたまるか」という強烈な反骨心でした。何か別のことで、行けるところまで行ってみたい。これからの人生を「一つの作品として、最高に面白いものにしてやる」。そう決意しました。僕が勉強をするようになったのもここからです。この決意が東大受験や、今の多様な活動に繋がっています。
実は、高校に入ってからもイップスを抱えたまま野球部を続けていました。治して元の自分に戻りたかったからです。でも、中学時代のようなプレーは二度とできず、冬には症状がさらに悪化してしまいました。途中で辞めたくなる瞬間は何度もありました。それでも「ここで逃げるのは絶対に嫌だ」と歯を食いしばってやり抜いたんです。結局イップスが治ることはありませんでしたが、「全く上手くいかない暗闇の中でも、自分は踏ん張って努力し続けることができる」という確かな自信を得ました。この経験が、後の受験勉強でも大きな支えになったんです。
今の僕が、迷う前にまず動けるのは、「あの時の絶望に比べれば、どんな失敗も大したことはない」と心から思えるからです。一度どん底を見たからこそ、今はどんな挑戦も「人生という作品」を彩る大切なプロセスとして楽しめるようになりました。

今後の将来像について聞かせてください。
これからどんな道に進むにせよ、僕の行動の軸には常に「人とのつながりの温かさ」があります。
僕の地元は田舎ですが、そのぶん地域のつながりが強く、両親だけでなく近所の血の繋がっていないおじいちゃんやおばあちゃんにも育ててもらいました。地域の人たち全員に見守られて育ったこの環境こそが、僕の価値観の土台です。
だからこそ「自分がもらった温かさを、今度は別の誰かに手渡したい」という思いが強くあります。大学では心理学のような「人間と関わりが深い領域の学問」を学びたいと思っています。またかつての僕のように情報格差の中で戦う地方の受験生をサポートしたいという気持ちや、さらに視野を広げて世界の貧困や格差で苦しむ人々の力になりたいという目標も持っています。具体的な進路はまだ決まっていませんが、これらはすべて、根底にある「もらった温かさの恩返し」からきているのだと思います。
そうした社会への思いを抱きつつも、最終的に行き着くのは「良い父親になりたい」というごくシンプルな目標です。僕を支えてくれた人たちが教えてくれた、人を思いやる温かさやつながりの大切さを、自分の子どもにもしっかりと伝えていけるような、そんな人間でありたいと思っています。
これから東大を目指す高校生に向けて、メッセージをお願いします!
東大を目指す理由は人それぞれだと思いますが、僕がぜひとも伝えたいのは「人という環境の素晴らしさ」です。東大には全国から、驚くほど多様な価値観を持った「面白い奴ら」が集まってきます。彼らと出会い、自分のやりたいことで切磋琢磨することのできる時間は、10代から20代という貴重な時期において、何物にも代えがたい財産になります。
そしてもう一つ。かつての僕にとっては、東大は「得体の知れない怪物」のような、あまりに遠い存在でした。でも、実際に戦って分かったのは、東大は決して手が届かない場所ではないということです。
暗闇の中でも、正しい方法で努力を積み上げていけば、必ず光は見えてきます。
「自分のした行動が結果をもたらす」
この言葉を信じて、最後まで諦めずに挑戦してほしいと思います。その先には、今の想像を遥かに超える、面白くて温かい世界が待っています。
(編集部より)和田さんには、受験生時代の学習法や、
自分のした行動が結果をもたらす―受験という経験を通して得られたものとは









