特集ブログ

駿台文庫『大学入試完全対策シリーズ 東京大学』(青本)

 一般的な知名度では赤本に劣るかもしれませんが、難関大学の過去問としては赤本に並ぶ二大巨頭の片割れ・青本。過去問選びに迷うとしたら、多くの人が“赤本にするか青本にするか”というところになるでしょう。
 例年最新10年分の過去問が5年分ずつ上・下巻に分けて出版されていて、リス…
 一般的な知名度では赤本に劣るかもしれませんが、難関大学の過去問としては赤本に並ぶ二大巨頭の片割れ・青本。過去問選びに迷うとしたら、多くの人が“赤本にするか青本にするか”というところになるでしょう。

 例年最新10年分の過去問が5年分ずつ上・下巻に分けて出版されていて、リスニングCDは上巻に収録された最新5年分の音源のみ付属。「入試ガイド」「出題分析と入試対策」「問題と解答・解説」の3章立てで構成されています。

 「入試ガイド」は東大入試の基本情報が並べられているだけなので、大学についての情報まで掲載されている赤本に比べると内容は薄くなりますが、この程度の情報はインターネット等(勿論、当サイトでも)で最新の、しかもより詳しい情報まで簡単に調べられるので、駿台さんはむしろ本を少しでも薄くする選択をしているのかもしれません。そういう意味では、合格者からの声まで掲載し少しでも充実させようとする赤本と対照的です。

 「出題分析と入試対策」の充実度は科目によりますが、文系数学・物理・地学は例年あっさりめ。それ以外の科目についてはそれなりにまとまりのある文章が書かれていて、ここに綴られる東大入試の分析や執筆者の東大入試に対する思いの丈には駿台の先生方の個性がよく出ています。オーソドックス、それが故にやや事務的な赤本の文章に対し、青本の文章はひとつの講義を聞かされているような感覚の読み口です。章立てが「問題と解答・解説」となっている通り、本書は1年度分の全教科の問題と解答を交互に掲載するスタイルを取っています。赤本に比べ問題を解く前に解答が目に触れてしまうリスクはあるかもしれませんが、逆にパラパラと問題に目を通しすぐ解答を確認する分には見やすいとも言えます。

 解答・解説に関して。上と同じく青本の読み口の方が丁寧にかつ深い所まで“教えて”くれている印象は強いですが、ターゲット層の学力が赤本よりも高めに設定されていると感じます。例えば、英語では第1問が文章の解釈メインの問題ということで文法の解説を殆どしなかったり、物理では伝統的に入試問題そっちのけで受験レベルに収まらない解説・考察をしていたりなどです。赤本にするか青本にするかは、主に自分の実力に合わせて選ぶのが正解でしょう(勿論、個性的な講師陣の個性的な文章の読み口が肌に合わないという人もいるかもしれませんが)。ただ数学に関してだけは、赤本の解説が“発想の仕方”に薄いため、数学が幾分苦手な人にも青本の内容を薦められます。


 難易度評価については、各教科とも「出題分析と入試対策」の項や解説中で少し触れることがある程度で、それほど重視はしていないようです。また赤本にあった“講評”のような、その年度のセットを全体的に見て感じることを述べる項目も基本的には設けられておらず、「出題分析と入試対策」で触れる執筆者も中にはいる、くらいのものです。しかもこの項目は基本的に毎年更新されてしまうので、あったとしてもせいぜい最新数年分の講評しか見られません。



list page 

ソーシャルボタン

公式Twitterアカウント