書店で化学の参考書を探すと、まず目につくのが本書かもしれません。何しろ分厚い。圧倒的な存在感を放っていますよね。手に取ってみると、文字は小さく、専門書を手に取っているような気分になるかもしれません。今回は、そんな化学の新研究の構成や、おすすめの用途をお伝えしたいと思います。
本書は問題集ではありません。「教科書本文の一字一句を徹底的に詳しく研究・解説(序文より)」した参考書になります。そのため、総ページ数は800ページ近くとかなりのボリュームになっています。内容は、高校化学で扱う事項が教科書より詳しく書かれた説明文と、それを補足するやや高度な内容、また発展的な内容をトピック的に扱ったSCIENCE BOXからなっています。
本書の全てを読破したり、理解したりする必要は必ずしもないでしょう。学校の勉強や、入試対策の中で、「この現象はどうして起こるのだろう?」とか「この化学反応はどういう仕組みで起こっているのだろう?」といった疑問の解決の際に、辞書のように役立つはずです。
例えば、氷が水に変化するとき、体積が小さくなるのはなぜでしょうか? 水以外のほとんどの物質は固体から液体に変化すると、粒子の運動範囲が大きくなり、それに伴って体積も増加します。それなのに、水はどうして……。
実は、この問題は2008年に東大で実際に出題された問題です。そして、仕組みはそこまで難しいものというわけでもありません。(自分で予想してみて、それから新研究などで答え合わせするのもいいかもしれません。)
「化学のなぜ?になんか興味ない!」…そんな声も聞こえてきそうですが…。教科書は、できるだけ分かりやすくするために、反応の仕組みなどの「根本」が抜け落ちていることがあります。入試では、先程の例のように、その「根本」を知っているかどうかで難問が解けるかどうかの分かれ目になることもあります。それに、様々な化学の現象がなぜそのように発生するのか知っておくことは、無意味な暗記事項を減らすことにもつながるはずです。
また、化学に限らず、日常の勉強の中でも、ふとしたことに疑問を持つことは大切です。疑問の答えを自分で予想したり、調べて解決したりすることで、その知識は深く定着するはずだからです。化学の新研究はそのような学習の供として役立つでしょう。
注意されたいのは、この本は内容がかなり豊富で、一部に高校化学の範囲を逸脱した内容も含まれているということです。化学が苦手だからといって、この本を最初から最後まで読破し、理解しようとしても、その膨大な量と難易度の前に挫折してしまうでしょう。化学を苦手に思っている人は、まずは教科書レベルを理解し、教科書傍用問題集などで演習を重ね、基礎・基本を身につけることを優先するべきです。基礎・基本が定着した上で、本書を供にして入試レベルの演習に取り組むという使い方が良いと思います。
化学は他の理科の科目と比べても、最も身近な学問といわれています。大学入試にとどまらず、広い視野で物事を捉えて、好奇心を持って学習していただければと思います。
2014/03/28 川瀬響