文系も理系も、東大入試はまず国語から始まります。点数の乱高下の起きにくい科目ゆえ、ここで入試の雰囲気に身を馴染ませ、できるなら後続の科目に向けて勢い付けていきたいところですね。
■出題内容■
試験時間100分・80点満点は長らく変更なし。100分は受験生にとっては丁度良いくらいの時間なのではないでしょうか(むしろ、国語の先生などの方がもっと時間が欲しくなる)。出題形式は2000年以降、次のような形になっています。
番号 |
出題内容 |
配点(推定) |
第一問 |
現代文 |
40点~45点 |
第二問 |
古文 ・ |
20点 |
第三問 |
漢文 |
15点~20点 |
※1999年以前は形式が大きく違うので、演習の際は注意してください。
第1問
抽象的で硬めなイメージの強い東大入試国語第一問の現代文。設問は6つで、例年問題の体裁はほぼ決まり切っています。まず(一)~(四)がそれぞれ本文中の傍線部について「どういうことか」もしくは「なぜか」、
解答用紙2行(一般に60~70字程度)で説明させる問題。問の立てられ方は非常に教育的で、傍線が引かれるのは概ね本文の要所ばかり。受験生は嫌でもこれを説明しようと本文の部分的理解を深めていくことになりますが、要所の理解を一つ一つ積み重ねれば最終的には本文全体が理解できてしまう、という寸です。このように作問のコンセプトが素直なので、ある問の解答要素が他の問の解答の要素と全く被っているとか、解答の根拠が前後の傍線部より遠くにあるとかいったことは稀なのですが、これを単にテクニックと思ってしまうと多分良い事がありません。これは本文を読み進めていくうちに“そうあるべき構成の問題になっている”と思い至れる人にこそ、意識するポイントの候補の一つとして効果を示すものです(そういう人には既に言うまでもないことなのだと思いますが)。
(五)は傍線の引かれた、本文のクライマックスを飾る一文について「本文全体の論旨を踏まえた上で」100字以上120字以内で説明させる問題。それまでに部分的理解を助ける誘導が4問もあったわけですが、それらを踏まえて最後にどっしりと本文全体をまとめようということです。年度によっては、問題文に「本文全体の論旨を踏まえた上で」と陽には書かれていないこともあるのですが、その場合でも本文全体を踏まえてほしいことは設問内容から明らかです。
最後の(六)は漢字の書き取り。例年4問か5問で、二字熟語が基本です。東大国語で毎年出る唯一の知識問題ということになりましょうが、漢字の程度は至って日常的なレベル――私の入試の後日、夕方くらいのニュースで“今年の東大入試の問題”のようなのが紹介されることがあって、フリップボードに書かれた“今年の東大の漢字”を見たキャスターに「東大なのに意外と簡単なんですね」と言われてしまうようなレベルです(笑) だからこそ、絶対落とせない問題だと思ってください。
本文として選ばれるジャンルの傾向として哲学や文化論、文明論など、いくつか“東大国語に出てきそうなもの”というものは挙げられるのですが、国語の場合はそれを気にすることこそテクニックのようなものだと私は思っています。勿論、受験生でない高2以下の時点で普段からそういった文章に慣れておくことは良い事だと思いますが、受験生には演習で目の前にする文章一つ一つに対し真摯に向き合うことを大切にしてほしいです。
設問ごとの予想配点は各予備校でもバラバラで、漢字が1個1点なのか2点なのかすら意見が割れていますが、いずれにせよ20/40は安定して取れるようになっておきたいですね。
第二問
第二問は古文。センター古文よりはちょっと短いかなというくらいの課題文に対し、設問が3つ程度用意されています。例年(一)は古典文法や古文単語を覚えているか見ることをメインにした現代語訳が2、3問といったところで、以降はもう少し文章そのものへの理解が求められる現代語訳や内容説明の問題が並びます。
課題文に用いられるのは、ベーシックには物語か説話。しかし最近では歌論や史書、浮世草子が出題されて、バリエーション豊かになってきました。文章は基本的に文理共通、設問も一部文理共通ですが、文系には文系用に設問が追加されていて、そういうものが大体難しかったりするので、全体として理系の標準的なレベルの問題になっています。
注は十分に付されていて、物語ではリード文に文章の背景が詳しく説明されているので、古典知識の有無で点差がつくようなことはまずありません。古典常識もあるに越したことはないのですが、実効的な東大対策としてはまず単語や文法を正しく運用し本文を読解する力・設問に対し必要な要素をわかりやすくはっきりと表現する力を養っていくことが第一です。その過程の中で周辺知識もある程度は入ってくるでしょうし、それだけで十分な点数には到達するでしょうから、特別古文が好きでない限り、単語と文法以外のことを嫌々暗記する必要はありません(“教授達は理系学生に古典の読解力なぞ全く期待していない”という話があるくらいですからね笑)。まずは半分を、欲を言えば15/20近くまで安定して取れるようになっていると心強いでしょう。
第三問
東大漢文における課題文はセンター試験のものよりもう少しボリューミーですが、難易度的には似たようなもの。まあ選択式でなく記述式であるというのが大きなネックではあるのですが、東大古典で求められるものは総じて標準的なのです。
設問は4問程度で、お馴染みの現代語訳や内容説明に加え、平仮名のみでの書き下しや本文中の空欄に当てはまる漢字を推測して埋めることが要求されるときもあります。近年では課題文が文理共通なので、難易度の特徴としては古文で述べたのと概ね同じことが言えます。
また漢文の設問全体でも、“漢文を読むことができる”以上の能力が求められているようには思いません。それさえ身に着けてしまえば、古文も漢文も間違いなく高得点を安定して狙える領域になってくるということです。漠然と「国語が苦手だ……」という人は、まず古典にのびしろが無いかを考えてみてください。ただ+αで付け加えると、東大の漢文では「“高校で学ぶ漢文”の知識としては知らないけれど、この文脈でこの漢字が使われたらそれはおそらくこういう意味だろう」と推測する必要のある場面が比較的よくあるように感じます。センター漢文にも似た設問がありますが、こればかりはなかなか専用の対策を立てるのが難しく、それこそ高2までにどれだけ豊かな言語的活動を営んでいたかが影響してくるところであると言えるでしょう。受験直前期はこういった設問が取れないのを嘆く前に、もっと他に重要な文法事項が抜けていたことによる失点が無いかを点検することをお薦めします。こちらも、10~15/20(配点については諸説ありますが)を目指してみてください。
■参考得点■
・得意なら目指してみよう……55点
・標準的な目標……40~45点
・苦手でもここまでは……35点
・本番で大失敗……30点
近年の傾向としては、問題文自体はどんどん易しくなっているものの、採点が少しずつ厳しくなってきているという印象です。想像以上に点数は出にくいと思っていた方が無難ですし、“今までの常識”のこの参考得点も最近ではもう少し低くすべきものかもしれません。ただ普段からの目標としては、一般的な受験生にとって45点弱を取れさえすれば国語が足を引っ張るということはまずないと思いますから、まずはこれを目安としてみることをお薦めします。例えば、大問順に15-10-10と取れればそれで35点に到達できます。とりわけ国語が苦手だというわけでさえなければ、全体的にもう少し上を目指すことは可能でしょうから、それで40点台が狙えるとなればかなり現実的な得点としてイメージできるのではないでしょうか。一般的な東大受験生の目標も大体こんなところになっています。
2014/12/5 石橋雄毅
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