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東大過去問参考書の参考の書 ~教学社『東大の○○ 25ヵ年』~

 東大入試の過去問を1科目につき25年分ずつ集めた、これまた有名な25ヵ年シリーズ。2013年現在、「英語」「英語リスニング」「理系数学」「文系数学」「現代文」「古典」と、地学を除いた理科・社会各教科の全12種類がラインナップされています。章立ては科目によって異なっていますが、文系科目ほど問題…
 東京大学は、言わずと知れた日本の最高学府です。そのために、書店に並ぶ“東大受験”向けの参考書の数が他の大学用のそれと比べ物にならないほど多いのは、少しでも東大受験に興味を持った皆さんもよくご存知のことと思います。とりわけ、東大の過去問を解説した本は本当に多い。東大対策という需要が高いのも勿論理由のひとつでしょうし、また月並みな表現になってしまうのが悔しいのですが、東大の問題は本当に良問ばかりなので、講師・ライターが解説の腕を見せるこの上ない晴れ舞台であるということもあるでしょう。とにかく、東大入試は受験業界に携わる皆が題材にしたいコンテンツなんですね。

 関連資料が多いのは、教える側にとっては研究がしやすくなりますから恵まれた環境と言えます。しかし受験生にとっては必ずしもそうではないでしょう。いざ東大の過去問を演習しようと思い立ち書店に足を運んだとき、どの参考書を相棒にすればいいのか、迷う時間は選択肢の数に比例します。時間の限られた受験生の皆さんには、“東大の過去問”というジャンルに絞ったとしても尚、一冊一冊吟味しているほどの余裕は無いと思います。

 そこで、この参考書別活用法のコーナーの第1弾としては、ここに足を運んでくれた人が気になっているであろう東大の前期試験の過去問を扱った参考書について、その特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価

の3つの観点から3週・9回にかけて、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介します! ただし紙幅の都合上ここで扱うものは、過去問を抜粋して紹介するのではなく数年度分以上まとめて掲載した参考書に限るとします。東大受験対策参考書としてはまだまだ氷山の一角に過ぎないでしょうが、少しでも皆さんの相棒選びの参考になればと思います。
 第1週目では、過去問界(?)の最大手、赤本・青本と25ヵ年シリーズについて詳しく見てみましょう。それぞれの本の間にどのような違いがあるのか? よく検討して、自分に合っていそうなものを探してみてください!


◆教学社『東大の○○ 25ヵ年』 各教科
 東大入試の過去問を1科目につき25年分ずつ集めた、これまた有名な25ヵ年シリーズ。2013年現在、「英語」「英語リスニング」「理系数学」「文系数学」「現代文」「古典」と、地学を除いた理科・社会各教科の全12種類がラインナップされています。


 章立ては科目によって異なっていますが、文系科目ほど問題・解答以外の項目、例えば「本書の活用法」だとか分析だとか言った部分が充実しています。社会各教科は特に凝っていますね。逆に数学は文理共に1ページの「本書の構成」があるだけとかなり淡白ですが、唯一各問題について難易度評価をしています。

 問題の掲載の仕方は国語を除いた各教科とも、過去問を大問ごとに単元別に配列するというスタイルを取っていて、基本的に索引を見れば一応どのようなセットとして出題されたのかを俯瞰することができるようになってはいますが、“1セットを時間を計って解く”という演習の仕方は本書では明らかに想定されていません。25ヵ年シリーズは“実際の入試を使って普段の問題演習をする”ためのものだと思ってください。そのため直前期に過去問を時間を計って解こうと思っている人が本書を使う際には直近の問題に触れないよう注意する必要がありますし、むしろ東大を受験しない人にこそ積極的に使ってほしい問題集であるとすら個人的には思っています。また25年前まで遡ると問題の傾向や形式も国語や英語をはじめとして大きく変わっており、そんなに昔の問題を解いても仕方がないのでは? と思っている人もいるようですが、このように演習問題として扱うのであれば解く価値はあるのではないでしょうか。さらにこのような構成は他大学の25ヵ年シリーズにも踏襲されていますから、余力があってもっと問題演習をしたいのならそちらに手を出してみるのも悪くないかと思います(普通それほどの余力は無いでしょうが)。

 数学のみ問題編と解答編が章として分けられていますが、それ以外の科目は問題とその解答を交互に並べて掲載。この形式、特に英語に関しては問題の全訳がその問題文自体と改ページさえされず載っていたりするほどで、解いている最中に答えが目に入るのが嫌な人は嫌かもしれません。ちなみに、理科・社会には実際の解答用紙の第1問の解答欄の縮小コピーが掲載されています。


 解答・解説に関して。数学や理科は、赤本に掲載されていたものの再構成であることが殆どですが(あまり昔のものは自分にも確認できていませんが、少なくとも2000年代のものは概ねそうなっています)唯一生物に関してはその限りではなく、解答・解説の最後に当該問題についてさらに詳しい情報を述べた“研究”の欄が充実していたり、問題の末尾=解答の前にその問題を解くに当たってのヒントとなり得る“ポイント”欄が設けられていたりと日常的な演習用の問題集としての色をより濃くしているように感じられます。逆に英語を含むその他の文系科目を見ると赤本の文章を殆ど流用していない事が多いです。赤本では解説を、“その年度のその科目の問題単体”を解く上でどう考えていくか? ということで書かざるを得ないところを、25ヵ年ではその科目の問題だけを何問も解説するので、執筆者が一冊を通して独自の考え方・解答の書き方を一貫させて書くことができ、また書こうとしているようなのです。この傾向も問題演習の書としては妥当でしょう。


 先にも述べた通り、難易度評価は数学にのみ施されています。A(易)からD(難)までの4段階評価で、やや厳しめ(AかBばかりつく)。繰り返しになりますが本書は問題演習のための本なので難易度評価もそれを基準にしており、入試本番に本書のBレベルの問題で解けないものがあったとしても理Ⅲでなければ一般的には大きな問題にはならないでしょう。


 いかがだったでしょうか? 同じ過去問を取り扱った参考書でも、長所・短所は勿論実は使い方まで様々に違うのです。自分が本に求める機能は何なのか、また今過去問に手を出すその目的は何なのか、一度落ち着いて考えてみてください。それさえ決まれば、どの参考書を手に取るべきかは本記事から自ずと見えてくるでしょう。時間も参考書も、どうか効率的に使っていってくださいね! それではまた次回、1週飛んで7月15日(月)にお会いしましょう!
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