東大世界史といえば、論述問題が特徴的です。特に第1問の大論述は最大600字の文章を書くことが要求されます。私自身も高校2年生のときに赤本を手に取って、初めて問題を目にしたときは呆然としたのを覚えています。
どうすれば、東大の世界史の論述問題に対応できるようになるのでしょうか。「まずはセンターレベルの知識を固めて、あとは論述で要求される俯瞰的な流れをつかむために教科書を読む」、というのが王道と言えるかもしれません。しかし東大世界史の問題を解けるようになるためには、実際の過去問かそれに準ずる問題を解くのが近道です。今までにもさまざまな論述問題集を目にしてきましたが、一橋や筑波といった、論述を課される大学全体を対象にしたものがほとんどでした。
今回紹介する本は、東大世界史のみに焦点を当てた論述問題集です。東大志望者が利用しない手はないでしょう。
本書の第一の特徴は、
東大世界史の今までの問題形式、要求字数、出題範囲などがひとつにまとめられているところです。約7ページにわたり1989~2012まで24年分の出題範囲や時代がまとめられています。世界史は覚える範囲が広く、必然的に勉強の負担も増えてしまいます。全範囲をくまなくマスターすることが基本ですが、それが済んだ後、最後にはこれを活用し、ヤマを張って勉強するのもいいでしょう。
第二の特徴は、
テーマ別に大論述と小論述の問題がまとめられているところです。本書によれば、東大世界史の論述は、経済史、国家論、異文化間の交流、特定地域の通史の4つのテーマにわけられるようです。私自身、受験生の時に過去問は10年分以上解き、テーマがいくつかに分類される、という感覚はなんとなくつかんでいたのですが、本書はそれを整理するのに非常に役に立つと思います。小論述はもちろんですが、特に大論述の対策に苦労している人は活用してみるとよいのではないでしょうか。日頃どのような意識で勉強すればよいのか、という勉強の指針を立てるうえで非常に有効です。
第三の特徴は
加点ポイントと採点基準が明確にされているところです。これにより自分でも学習が進められます。東大世界史の論述の採点方法は、印象採点などと言われており、その実態がいまいちつかめていないのが現状です。そのため、東大模試などの採点方法を頼りにするか、他人に添削してもらうか、くらいしか効率的な勉強方法がありませんでした。しかし本書ではなにを書けば加点されるのか、採点対象になるのかが明記されていて、独力で勉強することが可能です。また加点対象になる部分について、解説が細かく書かれているので、それを読むだけでもよい復習になるでしょう。
私自身、受験生時代に本書の著者である渡辺先生と茂木先生の授業を受けたことがあります。お二方とも授業がわかりやすいというのはもちろんですが、当時渡辺先生が採点した再現答案の得点と開示された実際の得点との誤差は、平均して2点ほどだったとのことです。そういう意味ではこの本に書かれている加点ポイント、採点基準は大きな目安になり、それこそが本書を活用する上で最大のメリットと言えるでしょう。
皆さんの健闘を祈ります。
2015/02/13 武井靖弥