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駿台文庫『いますぐ覚える 古文単語300』

 大学受験用古文単語帳の中でもかなりシンプルな印象を受ける一冊。オーソドックスな単語帳だと、一語一語のイメージをしっかり植え付けるべく語源やその単語の使いどころを紙面一杯に解説しているものを、本書では…
 大学受験用古文単語帳の中でもかなりシンプルな印象を受ける一冊。オーソドックスな単語帳だと、一語一語のイメージをしっかり植え付けるべく語源やその単語の使いどころを紙面一杯に解説しているものを、本書ではそういった情報は最小限。他の単語帳を見慣れた人には不安に感じられるレベルかもしれません。

 もう少し詳しく見てみます。各ページに単語が1つ2つ割り当てられていて、上段1/3程度のスペースを贅沢に使ってその単語の意味と、あれば類義語・対義語・関連語等を掲載。下段に「例文」と「確認(例文と大差の無い使用例)」、時々――というかまれに補足事項が書いてある感じです。月の異名や十二支等の古典常識は章と章の間にほんのいくつかある程度ですが、見出し語以外の細々とした単語を180語程度、助動詞や古文における難読後も付録として掲載しています。

 収録されている単語自体に関しては、300語レベルの単語帳としては標準的。過去問をそれなりに解けば、センター試験・東大2次試験の現代語訳問題でポイントとなった重要単語が本書に掲載されていない場面にも出くわすことでしょう。また、先述の“見出し語以外の単語”については、本書の中での扱いも小さので脳への定着はなかなか期待しづらい所です。

 本書の特徴を強いて挙げれば、本書の単語の掲載順。第一章:動詞、第二章:形容詞、第三章:形容動詞、……と品詞ごとに分類、その中で入試での出題頻度を考慮しA・B・Cランクの三段階評価した上で五十音順、といった形にソートされています。完全な五十音順や重要度で分類してから品詞別等よりは、暗記する上で合理的なのかなと個人的には思います。

 それでも特徴としては弱いので、以上見ただけでは情報量で圧倒的に他に劣ってしまうばかりの本書なのですが、こういうものは使いようであって、裏を返せば自分で自由に書き込める余地が沢山ある本だとも言えます。駿台文庫の本なので、もともと授業で聞いた内容をメモしやすいように作られているのかもしれません。

 これらを踏まえ、本書は次の項目のどれかに当てはまる受験生にオススメします。

・自分の受験戦略上、古文単語は最低限の量で十分だ
・学校や塾の古文の先生が、普段の授業で古文単語について詳しく解説している
・自分自身でいろいろ調べることで“自分だけの単語帳”を作りたい
・ゴチャゴチャとした沢山の情報を読むよりは、スパッと割り切って効率よく丸暗記してしまいたい



2016/06/23 石橋雄毅

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