受験対策

平成26年度東大入試講評

今年の東大入試(前期)が実施されました。
受験生の方はお疲れ様でした。


 さて、かく言うワタクシ石橋雄毅も例年東大入試は自分の解ける科目全部――文系国語・理系数学・文系数学・物理・化学・英語の6つだけですが――を解くのですが、来年以降受験する方の役にも立つかもしれませんし、せっかくなのでこれらについて軽く、最近の傾向との比較をしてみようと思います。あっという間に古くなってしまいがちな書籍の情報を意識して、本当にここ数年との関係について注目していきます。


■国語■

現代文第1問はここ数年と変わらず、比較的読みやすい文に答えやすい設問が並びました。漢字『ジョウショ』にピンとこなかった人は意外と多い……?
古文は東大に珍しく町人物の浮世草子。話の大筋を掴むだけならかなりわかりやすかったと思いますが、設問に答えるとなるとどうでしょう。
漢文も例年通り。東大模試を経験してきた人はきっといつも通り取り組めたという印象を受けるでしょう。当然ではありますが、文系国語では理系国語よりも高いレベルの語彙を的確に問うてきますね。
現代文第4問は難しかった。答えるべきことがフワッとしているのが例年ですが、今年はそういう意味ではまだ、何を明確にしたらいいのかは分かりやすい。ただ今回は独特の詩的な表現にどれだけ喰らいつけたか……(特にウ)。


■理系数学■

処理力の面でも発想力の面でも、大変だった昨年よりは楽になりました。ただこういうセットほど差がよくつくもので、定型的な問題が多かった分数学が苦手な人の挽回が厳しくなったと思われます。
分野別にも少し言及しておきます。最近難しいことが多かった整数問題は、今年はまだ標準的と言えるレベルに落ち着きました。また、ヘビーな空間図形に関する求積問題はここ数年出題される/されないが交互に続いていて、今年はありませんでした。確率と数列の融合問題はこの5年中4回も出題されていますので、来年までにしっかり習熟しておくこと。あとは最後の年なのに行列が出なかったのが意外。


■文系数学■

2012年第1問を彷彿とさせる“絶対に落とせない”第1問から始まり、残り3問が理系とほぼ共通のちょっぴり重めな問題というセット。こちらも全体的に大変だった昨年よりは点差が開くようになったでしょう。文系数学では最近積分の存在感が無いですね……?


■物理■

物理的にはかなり楽しい大満足なセットでした。昨年の問題が普段高校で学ぶ物理から大分離れていて、その場で読んで考える要素が強かった分、今年は結構自力で仕組みを汲み取る必要があったため、歯ごたえが結構あったことと思います。数式を定性的に捉えて処理する力も例年以上に問われていた印象を受けました。第3問は3年連続の波動メイン。


■化学■

相変わらず分量が多い事も出題傾向も例年通り。第2問に至っては配点20点のくせに単純な解答数が22個もありますからね……(完答1点、とかで調整するんでしょうが)。その分、最近計算量の合計は減ってきたような……? いずれにせよ、その場で考える必要が無いことをどれだけ瞬時に繰り出せるかがカギです。また、かつては東大化学の稼ぎどころとまで言われた有機化学の構造決定がここ数年どんどん存在感をなくしていることには注意。


■英語■

昨年と大差無い形式で、やっぱり英作は2題。“段落”整序も無いし対話形式の方の英作も比較的書きやすいとは言え、1つ減ったら時間の面でどれだけ有難い事か……これで定着してしまうんでしょうかね。また第4問(A)はいくつかの形式のローテーションという感じなので、試験場で焦りたくない人は必ず数年分の過去問を解いておくこと。



……とまあこんな感じでしょうか。より詳しくは大手予備校4社が続々と分析していますのでそちらを見てみると良いでしょう。
 ただ、こう言ったところで何なのですが、この手の情報を受験生本人が上手く活用することはなかなか難しいです。形式を知るのにちょっと読むくらいはいいでしょうが、ガッツリ読んだからと言ってどれだけ役に立つかというと普通はスズメの涙ほどのような気がしています。
 そこで自分はどう考えているかと言いますと、これらの情報は“自分で過去問を解いた後”に読めばより有益だと思っています。難易度評価は東大受験生としてどの程度が標準なのかを示す指標になりますし、問題のポイントも端的にまとめられていて考え方の筋道を掴むには丁度良い事も。全社読み比べることまではオタクでなければしなくてよいので、自身の過去問演習の際思い出してみてください。(ちなみに現在、河合塾では2004年以降からの、東進ハイスクールでは2007年以降の分析が公開されています。)


 最後に、自分はオタクなので(笑)、予備校各社の分析は勿論解答速報も全部読み比べています。その解答速報の中で、数学と物理に関しとりわけ光っていた解答をピックアップして紹介します!

(※国語と英語は評価が割れるため、化学はほぼ答えだけの掲載のため除外しました。ご了承ください。)



◆理系数学第4問……河合塾
豊富な別解を紹介しているのはここだけでした。中でも、(1)の【解答3】はあまりに素朴かつ明快で目からウロコでした。

◆理系数学第5問・文系数学第4問……駿台予備校
この問題の本質が合同式にある、ということでこれを明確に使っていたのは駿台だけでした。整数が本格的に扱われるようになる新課程の高校生を意識した解答と言えます。

◆物理第1問(4)……代々木ゼミナール
どこも定性的な取り扱いに工夫を見せる中、設問から判断できる東大本来の出題意図通りに記述をしているであろうと思われたのは、代ゼミのこの解答でした。物理的にも一番しっくりくる解答です。

◆物理第2問Ⅱ(3)……代々木ゼミナール
グラフを活用してサクッと答えを述べる視覚化の妙を推薦。ただ、こういうことはなかなか真似できないでしょうから、平凡には東進の解答あたりのように考えられれば十分です。

◆物理第2問Ⅲ(3)……東進ハイスクール
特性曲線を合成した代ゼミも素敵ですが、この問題に関しては東進が一番スマートに解答していたと言えるでしょう。


時間が無い中作られる解答速報からは各予備校講師陣の底力が垣間見えます。解説が無いのでこれだけで勉強する人はいないでしょうが、細かい部分での工夫が参考書に載っているものよりも尖っていたりしますから、学習の中何かしらの形でこの記事を参考にしていただけたら幸いです。それでは。

2014/02/28 石橋雄毅

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