“チャート式”シリーズと言えば大学受験界でもかなり名の知れた参考書群ですが、今回はそんなチャート式数学シリーズ最難の書、“黒チャート”とも呼ばれる『数学難問集100』をご紹介。
構成は大きく分けて「入門の部」と「試錬の部」の2部。入門の部の解答が別冊になっている一方、試錬の部の解答は本編の巻末に付されているというちょっと不思議な作りになっています。別冊解答は本編とこまめに見比べるから便利なのであって、じっくり考え抜いてから見ることになる試錬の部の問題には必要のない措置である、ということなのでしょうかね?
入門の部の基本コンセプトは“苦手分野を克服しよう!”“1次変換を完璧に!(旧課程)”“高級な手段で攻めよう!”。一般的な数学参考書では取り扱いが浅いものの、難関大ではよく出題される整数、比較、幾何(空間図形重視)、1次変換と像(旧課程)、空間の直線・平面――といった単元(これが“苦手分野”ということらしい)について、基本事項の整理と対応する標準問題が並べられています。東大数学を考えてもこれらの単元は重要なものであり、剰余系(合同式)や空間の方程式など高校数学をちょっぴり逸脱した飛び道具(“高級な手段”ということらしい)も含め、こういったことがきちんとまとめられている一冊としては重宝するのですが、一通りの学習を済ませた上で改めて手薄になりがちな部分を固めるという使い方が想定されているようで、“標準問題”と書いてあるもののいきなり特攻するにはちょっと難しいでしょう。
試錬の部はとにかく難問揃い! 東大前期数学からは、試験場では捨て問必至と名高い1988年第2問、1988年第3問、1990年第3問、1996年第3問、1998年第3問、2001年第6問……といった顔ぶれが漏れなく選ばれており、その他も確固たる計算力を必要とする東工大の問題、巧妙な論証力が要求される京大の問題、果ては東大後期数学の問題まで収録。生半可な実力で挑むと心が折れてしまいそう。「本書の構成と使用法」に『1ページに3題ずつ分野はバラバラで載せてあるので、1ページの3題を1回の試験問題と考えて、時間を決めて解くと実践力がつく。』と書いてありますが、実践力以前に時間を決めて解かないと時間ばかり空費してしまう恐れがあります。
解答の詳しさに関しては、他のチャートシリーズをご存知ならそれを思い浮かべていただければ十分。シンプルな模範解答に多少の着想・検討・補足が付されている程度ですが、答えの数値が太字になっていたり、重要な式変形・ちょっとした計算の説明が赤字になっていたりするのが見やすくて便利。
確かに『
最高峰の数学へチャレンジ』よりはしっかり受験生向けですが、特に「試錬の部」は、よほど数学での一点突破を狙うのでなければ東大合格のための必要条件にはならないはずです。他科目との兼ね合いを考えてから手を出しましょうね。
2014/06/20 石橋雄毅