約一ヶ月に渡ってお送りしてきた本企画ですが、いかがだったでしょうか。各科目の得点について大体妥当なイメージを作れたところで、最終回となる今回は、それを踏まえどのように自分のターゲット得点を各自設定していくかを考えていきたいと思います。
まずは、第0回にも載せた各科目の参考得点一覧を改めて見てみましょう。
|
教科 |
参考得点A |
参考得点B |
参考得点C |
参考得点D |
理系
| 理系国語 |
55 |
40 |
35 |
30 |
理系数学 |
100 |
理Ⅰ・理Ⅱ:60
理Ⅲ:80 |
理Ⅰ・理Ⅱ:40~50
理Ⅲ:60~70 |
10~30 |
物理 |
54 |
42 |
36 |
24 |
化学 |
50 |
40 |
30 |
20 |
生物 |
48 |
36 |
30 |
25 |
英語 |
100 |
84 |
72 |
50 |
文系
| 文系国語 |
70 |
60 |
55 |
50 |
文系数学 |
70 |
56 |
40 |
20 |
日本史 |
48 |
40 |
38 |
30 |
世界史 |
52 |
42 |
36 |
30 |
地理 |
50 |
45 |
35 |
30 |
英語 |
100 |
84 |
72 |
50 |
※参考得点A…得意なら目指してみよう 参考得点B…標準的な目標
参考得点C…苦手でもここまでは 参考得点D…本番で大失敗
詳しくは「二次得点の常識 第0回:序」をどうぞ
この点数は、東大入試ドットコムのメンバーが持つ共通見解としてのイメージを各科目それぞれ別々に反映させていった結果のものなのですが、面白いことに合計点として見てみても意味のある値になっています。一例として、例えば“理系国語・理系数学・物理・化学・英語”というオーソドックスな理Ⅰ受験者の科目の合計点を計算し、センターが約9割できるとして100/110を足してみると、
全部参考得点A(得意)の場合:359/440 + 100/110 = 459/550(≒例年の理Ⅰ合格者最高点)
全部参考得点B(標準)の場合:262/440 + 100/110 = 362/550(≒例年の理Ⅰ合格者平均点+α)
全部参考得点C(苦手)の場合:213/440 + 100/110 = 313/550(≒例年の理Ⅰ合格者最低点)
となり、この得点感覚が概ね間違っていないことの裏付けと言えるでしょう(合格者の点数については
こちら)。“合格者平均点+α”となっているのは、おそらく標準的な理系合格者にもひとつくらい苦手科目があるということを表しているのだと考えられます。
また“文系国語・文系数学・世界史・地理・英語”という文系セットでは
全部参考得点A(得意)の場合:342/440 + 100/110 = 442/550(≒例年の文系合格者最高点)
全部参考得点B(標準)の場合:282/440 + 100/110 = 382/550(≒例年の文系合格者平均点+α)
全部参考得点C(苦手)の場合:238/440 + 100/110 = 338/550(≒例年の文系合格者最低点-α)
となりますが、参考得点Cが最低点に少し届かないのには、よく言われる“文系で社会があまり稼ぎにならないのなら英語は少し頑張る必要がある”が反映されているのでしょう。
とにかく、ここで参考にした各科目の得点の合計は、大雑把には総合点の出来としてよく現れてくることが分かりました。つまり、この通りに“東大受験生なら普通に目指したい点数”を全科目で取ったら、合計は“東大合格者として平均的な点数”になるということです。これを踏まえて自分の実力と相談しながら、本番では失敗し得ることにも注意して、自分のターゲット得点を組み立てていけば良いのです。
※ただし理Ⅲはやはり簡単にはいかず、全科目参考得点Bでやっと合格者最低点に乗る計算になります。数学で参考得点Cならば、その分は他で取り返さねばならないので、注意して下さい。
具体的な事例について考えてみます。例えば、先と同様“理系国語・理系数学・物理・化学・英語”を受験する、やや文系科目に自信の無い理Ⅰ受験生S君の場合。参考得点をもとにすれば、ターゲット得点は
理系国語 |
理系数学 |
物理 |
化学 |
英語 |
センター |
合計 |
35 |
60 |
42 |
40 |
72 |
100 |
349/550 |
となり、このままの点数が予定通り取れれば安泰です。しかしこの目標点の高さに油断し、この点数をただ目標にするだけで過去問を解き、本番に臨んでしまうと、緊張感漂う空気に飲まれて数学で大失敗――参考得点Dの通り30点台なんか叩き出してしまったら
理系国語 |
理系数学 |
物理 |
化学 |
英語 |
センター |
合計 |
35 |
30 |
42 |
40 |
72 |
100 |
319/550 |
となって、もしさらに理科が低くなってしまった場合一気に合格が際どくなってきます。
そういった不測の事態にも対応できるよう、ターゲット得点を設定する上でとても大事なことをひとつ付け加えます。それが、
昨年の企画でも述べた事ですが、
ターゲット得点は1人につき2つ想定せよ!!
ということです。すなわち、“目指すべき点数”という意味での「目標点」と、“どんなにしくじってもこの点数は割らない”と言う意味での「目標点」を設定しなさいということなんです。試験ですから、そりゃあ点は取れるだけ取るに越したことはありませんが、上ばかり見ていたけれど蓋を開けてみたら全然だった、なんてことも実はありがち。「この点数を目指してやろう」という野心を持つと同時に、「この科目で最低限ここさえ割らなければ大変なことにはならないな」ということも把握しておいて、盤石の態勢を敷く人ほど点数が安定するものだと思ってください。本稿でも便宜上、前者の目標点を“目標ライン”、後者を“最低ライン”と呼ぶことにします。
これを踏まえ、S君は次のようにターゲット得点を設定しました。
|
理系国語 |
理系数学 |
物理 |
化学 |
英語 |
センター |
合計 |
目標ライン
| 40 |
60 |
42 |
40 |
80 |
100 |
362/550 |
最低ライン
| 35 |
45 |
36 |
30 |
72 |
100 |
318/550 |
この点数を頭に入れて受験勉強に取り組むことで、例えば数学の過去問を解く際中に“45点を割らない戦略”に切り替える(具体的には、完答狙いから部分点稼ぎ狙いに変えるなど)ことを目的とした練習ができるでしょうし、頑張れば80点狙えるかもしれない英語を不必要に過小評価したまま勉強し続けるようなこともなくなります。入試当日だって、数学で失敗してしまったとしても、物理や化学でどれだけそれをリカバーできるのかが計算しやすくなります。
参考までに、数学のできない文Ⅲ志望のLさんなら例えばこんなターゲット得点が考えられます。
|
文系国語 |
文系数学 |
世界史 |
地理 |
英語 |
センター |
合計 |
目標ライン
| 60 |
45 |
45 |
45 |
90 |
100 |
385/550 |
最低ライン
| 55 |
40 |
40 |
40 |
80 |
100 |
355/550 |
数学にあまり期待はできないけれど何があっても確実に40点は取る、その上で、社会が少し稼げたら御の字、稼げなくとも絶対に足は引っ張らない――というこの戦略なら、想定の範囲のミスなら何とかリカバーできそうですよね。
ターゲット得点は、合格できるかどうかのライン上にいる人にほど有効な概念です。「学力がギリギリなんだから、そんなもの考えている時間があったら勉強した方が良いじゃん」と言う人ほど、自分の勉強時間を最適化できず、痛い目を見ることになるでしょう。そうならないよう、過去問を解き、採点をしたら、その度に自分のターゲット得点を調整する癖を是非つけてください。科目ごとに、もっと点を伸ばすための勉強をしなければならないのか、それともその点数を安定させることを考えなければならないのかは、自分のターゲット得点を正確に立てられてさえいればそこからすぐ判断できるからです。正確なターゲット得点を自力で立てるために必要な判断材料は、この企画を通して概ね全て伝えてきたつもりです。皆様の入試当日までの全力の勉強が、少しでも合理的で効果的なものになりますよう。
2014/12/31 石橋雄毅
二次得点の常識
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