慶應義塾大学
早稲田大学
対戦結果
慶應義塾大学
慶應理工学部の理科は2科目120分で、化学として大問は3題出題されます。各大問はさらに数個の節(基本的には2つまたは3つ)に分けられており、それぞれの節が関連する内容で出題されることもありますし、関係のない問題が出題されることもあります。空欄に入る語句、数値や化学式などを答えていく形式で、東大のような1問1答形式ではありません。
出題傾向としては、おおまかに第1問と第2問が理論化学と無機物質から、第3問が有機化合物と高分子化合物からの出題になっています。東大との比較という観点からは、見慣れない反応や現象を読み解いて解答していく問題は少なく、題材としては問題集で見たことのあるような問題が多いです。ただ、要求される計算力や思考力の水準は高く、入試化学としての難易度は高くなっています。特に、計算問題は東大と比べても遜色ないくらい煩雑なものが多く、正確に素早く計算を行っていくことが重要になります。その点で慶應理工の問題は、東大入試に向けた十分な腕試しとなると思います。
また思考力について東大と慶應理工の相違点をあげると、慶應理工は持っている知識をストレートに用いて合理的に考えていく力を試しているのに対し、東大はそれに加えて、持っている知識をリード文に与えられた情報もヒントに加えて類推していく力も重要視しているといえます。そのため、東大化学で高得点を目指すうえで慶應理工の問題はやや物足りない部分もありますが、それでも慶應理工で要求される思考力は確実に東大入試でも生きてきます。
分量は、時間内に完答するのは厳しい量となっていますが、東大入試との比較という観点では少なくなっています。とはいえ、正解するべき問題を正解し、捨てるべき問題を捨てる判断は、東大・慶應理工に共通して重要になるので、演習の際にはそういった戦略も意識することが大事になります。
知識については、東大入試よりも高水準のものが問われます。受験生の手がなかなか回りにくい高分子化合物の分野からは、チロシンやシステインなどのアミノ酸や、ガラクトースなどの糖類の構造を知識として問う問題が出題されたことがあります。また、アセタール化についてリード文に説明なく出題したこともありました。極端な例では、大学範囲の電子軌道の知識(s軌道、p軌道、d軌道…)を要求されたこともあります。
十分に勉強したうえで、それでも知らない知識を問う問題が出題された場合もあるかもしれません。よく考えても分からない場合は、焦らずに、取れる問題を確実に得点していくことが重要になります。また、基本的な内容を含めて知識問題の分量は多めなので、センター試験後も知識の確認を行っていくことは忘れないようにしてください。
サンプル問題 ~2014年 大問3(1)~
形式:★★☆☆☆(空欄補充の記述式)
傾向:★★★★☆(計算が煩雑、思考力を問う)
分量:★★★★☆(東大よりやや少なめ)
知識:★★☆☆☆(コアな知識を問う問題あり)
慶應義塾大学
早稲田大学
対戦結果
早稲田大学
早稲田理工学部の入試理科は2科目120分で、化学からは大問3題の出題になっています。第1問がマークシート方式で、第2問と第3問が答えのみの記述解答方式です。2013年度や2014年度では実験に関する描画問題が出題されています。
出題傾向を見ていくと、第1問からは10問出題されており、それぞれがさらに3つの小問からなっています。出題分野は化学全範囲で、知識・計算問題ともに含まれており、難易度は高くありませんが解答にはなかなか時間がかかる問題です。
第2問は基本的に理論化学と無機物質からの出題になっています。第3問は有機化合物や高分子化合物からの出題です。第2問と第3問は、リード文が与えられてそれに関連する出題がある形式となっており、東大との類似点になるでしょう。また前述の描画問題では、慶應理工ではなかなか見られない、化学に関連する現象に関して本質的な理解ができているかを問う問題が出題され、受験生の思考力を試していました。過去には、見慣れない実験に関する問題を出題して実験操作の意図を説明させる問題もあり、東大との類似点を感じます。とはいえ、特に近年の出題内容は問題集で見たことのあるような問題が多く、見慣れない現象について問う問題の出題は少なくなっています。
分量は、東大よりは少ないですが、やはり時間内の完答には厳しい分量です。第1問については後述しますが、特に問題の取捨選択を正しく行うことが重要で、あまり時間をかけすぎないように注意する必要があるでしょう。当たり前ですが、満点を取ることよりも合格点を取ることがまずは重要です。時間配分のミスはないように気を付けてください。
知識の要求水準は東大と同レベル程度になっています。特に早稲田理工に向けた対策は必要ないでしょう。ただし慶應同様、知識問題の出題数が東大より多いので、知識問題の失点を計算問題でカバーしようとするのは賢明ではありません。センター試験後も定期的に知識のメンテナンスを行うことが大切です。
やや本題から外れますが、最後に早稲田理工で化学を受験するうえでの戦略について書き記しておこうと思います。それは、毎年受験生を不安にさせるもの ― 早稲田理工化学の第1問の配点についてです。
大学から正式に公表されている情報では、化学の配点は60点(ただし、先進理工学部では学科によって重みづけがあり、この限りではありません)。そして大問数が3つ。順当に考えると、第1問の配点は20点となり、第1問を構成する10題の各問題の配点は2点となります。しかし、上述のように各問題は3つの小問からなっているわけですから、これでは部分点がつけられません。そのため、『各問題は完答しないと2点がつかない』というように言われているわけです。実際には配点は公表されていないため、確かなことは分かりません。ただ、事実である可能性がある限り、これは受験生にとっては大事になります。一方で、部分点がつく可能性も捨てることはできません。
それでは、どのように早稲田理工の化学に立ち向かっていけばいいのでしょうか。第1問に関していえば、当たり前のことになってしまいますが、
『可能な限り小問3つセットで確実に正解できるものを解答する』
『小問3つセットで解答できないものも、分かる部分は解答してマークする』
『分からない問題、時間が足りない問題は空欄にせず、勘でもいいのでマークする』
という戦法が、得点をより確実にする手段だと考えています。そして何より、時間をかけすぎないことが重要です。まずは第2問や第3問で確実に得点し、第1問は解ける問題だけ確実に解くというのが、最も安心できる戦法になるでしょう。このことを念頭において、ぜひ過去問を数年分は解いて、自分にとって最も得点効率の良い解答順序、解答時間を探してみてください。もちろん今後傾向が変わることもありえるので、問題を解き始める前には全体を見渡すことも忘れないようにしてください。
サンプル問題 ~2014年 大問Ⅱ~
形式:★☆☆☆☆(答えのみの記述式、一部マーク式)
傾向:★★☆☆☆(東大より素直な問題)
分量:★★★★☆(東大よりやや少なめ)
知識:★★★★☆(やや東大より知識問題が多め)
慶應義塾大学
早稲田大学
対戦結果
理工学部 化学対決 結果
|
形式 |
傾向 |
分量 |
知識 |
計 |
KEIO |
2 |
4 |
4 |
2 |
12 |
WASEDA |
1 |
2 |
4 |
4 |
11 |
戦評
慶應が接戦を制して2勝目を挙げ、後半戦に望みをつないだ
化学の入試問題については、慶應理工も早稲田理工も、形式や傾向の観点で東大との相違点が大きくなっています。東大では入試問題を通して論理的に他人に説明する力も重要視しており、記述形式の問題が多いというのが特徴です。また、長いリード文を読み込み、理解して、自分の持っている知識と組み合わせる力も重視されています。その点で慶應理工も早稲田理工も、東大よりは素直な問題が多いという結論になってしまうでしょう。
一方で、慶應では思考力の問う問題を、早稲田では実験に関する問題を出題する傾向があり、いずれも表面的な学習だけでは得点の難しいものになっています。これらの問題に太刀打ちするためには、普段の学習から『なぜこのような現象が起こるのか』『この実験操作の意味は何だろう』と考え、調べていくことが重要になります。このような学習は、東大化学の問題で得点するうえでも非常に価値のあるものになるでしょう。今回の早慶戦は、東大入試との親和性という観点では低い得点争いになってしまいましたが、普段の勉強法という観点まで掘り下げて考えてみれば、本質的で重要なことを教えてくれる戦いになったかもしれません。
2016/12/26 川瀬 響
ここまでの対戦結果
|
理工 数 学 |
法 英 語 |
理工 物 理 |
法 世界史 |
理工 化 学 |
法 日本史 |
理工 生 物 |
法 国 語 |
理工 英 語 |
勝 |
敗 |
分 |
KEIO |
● |
● |
○ |
● |
○ |
|
|
|
|
2 |
3 |
0 |
WASEDA |
○ |
○ |
● |
○ |
● |
|
|
|
|
3 |
2 |
0 |
次回予告
12月29日(木) 6回戦 法学部 日本史対決
入試問題早慶戦
<開会式>序
<法学部>英語/
世界史/
日本史/
国語
<理工学部>数学/
物理/
化学/
生物/
英語
<閉会式>総括