信頼を勝ち取り、築いた関係を財産に——「優秀さ」だけでない、本当に大切なこと

本記事は、こちらの記事の続編です。全6記事の完結編となる今回は、「他者との協働」に焦点を当てて、重松さんに受験生へのメッセージを伺いました。

他者との「弱い繋がり」を大切にする重要性、そして、その前提となる信頼構築の必要性。弁護士として、自らもネットワークを活かしてダイナミックに活躍されてきた重松さんが、体験談をもとに語ってくださりました。

【他者との「弱い繋がり」が、将来への思わぬ道を開く】

前回の記事で、「経験」を自分の資産として蓄積することの大切さについてお話ししてきました。そして実は、自分の視野を広げてくれるような新しい経験は、思いがけない他者からもたらされることが多いんです。

私は社会学者のマーク・グラノヴェッターが提唱した「弱い紐帯の強み(The Strength of Weak Ties)」という考え方が好きなのですが、実際に社会に出てみると、この理論は本当にその通りだと感じます。

一般的には、人の人生を変えるような重要な情報や機会は親しい友人からもたらされるように思われがちです。しかし実際には、そうした情報はむしろ「弱い繋がり」を持つ人からもたらされることが多いと言われています。親しい人同士は持っている情報が似ているため、意外と新しい情報は入ってこないからです。

私自身も、大学を卒業して20年近く経った今、そのことを強く実感しています。

大学時代に特別親しかったわけではない人、なんとなく顔は合わせていたくらいの関係性の人と、一緒に仕事をする機会が意外なほど多いんです。当時は顔見知り程度だった相手が、気が付けば企業の経営者になっていたり、専門家として活躍していたりする。そして、何かのきっかけで再び繋がり、仕事が始まることがあります。

だからこそ、皆さんにも、皆さんの周りにいる人と、小さな関係性であったとしても、良い関係を築いていくことを大切にしてほしいと思います。その場ですごく親密になることはなかったとしても、地道に関係性や信頼を蓄積していけば、その繋がりが将来思わぬ形で生きてくることがあります。

また、卒業後も緩やかに繋がり続けることは重要だと思います。

私はもともとSNSで発信することが好きで、LinkedinやXなどで自分の仕事や活動について発信してきました。特に戦略的にやっていたわけではありませんが、振り返ってみると、これも結果的に意味がありました。

発信を続けていると、「今どこで何をしているのか」が自然と周囲に伝わります。すると、長年会っていなかった人でも、「重松は今こういう仕事をしているらしい」と知っていてくれるんです。

さらに、そこには心理学でいう「単純接触効果」も働いていると思います。人は繰り返し目にする相手に親近感を抱きやすいと言われています。

卒業から20年近く経つと、普通であればなかなか連絡は取りづらいものです。しかし、SNSを通じてお互いの近況を見ていると、不思議と20年ぶりという感覚がなくなります。実際には長期間会っていなくても、近況を知っているので心理的な距離が近いんです。

その結果、「法律のことで少し相談したい」「新しい事業を始めるので話を聞いてほしい」といった連絡が突然来ることがあります。そして、そうしたご縁が新しい仕事や人との繋がりへと発展していくことも少なくありません。

もちろん、私は最初からそうした効果を狙っていたわけではありません。人との繋がりを大事にすることや、発信することが単純に好きだっただけです。

ただ、振り返ってみると、それらが結果として信頼の蓄積につながり、多くの機会を生み出してくれました。

学生時代に築いた繋がりは、卒業した時点で終わるものではありません。むしろ、その価値が本当に分かるのは社会に出てからなのだと思います。

【「一緒に仕事がしたい」と思われる人の共通点】

今、他者との繋がりの重要性についてお話ししてきました。

しかし、誰かと一緒に仕事をするには、まず、「一緒に仕事がしたい」と思われる人になる必要があります。逆に、「この人とは仕事をしたくない」「この人には任せられない」と思われてしまうのでは、良い関係性を発展させていくことは望めません。

では、他者から信頼される人になるためには何が必要でしょうか。

私は、まずは「頑張ること」が一番重要だと思っています。

とてもシンプルな話ですが、頑張っている人を嫌いな人はほとんどいません。手を抜かずに取り組むこと。最後までやり切ること。そうした姿勢を持っている人は、自然と周囲から信頼されます。

そして、その「頑張る」の方向性が相手に向いていることが大切です。

本当に魅力的な人というのは、「相手のために自分は何ができるだろうか」をまっすぐに考えています。そして、そのために行動できる人です。

私はこれまで多くの優秀な方々とお会いしてきましたが、振り返ると、本当に人から支持される人には共通する特徴があります。それは、相手に対して真摯な関心を持っていることです。

私は以前、非常に印象的な弁護士の方とお会いしたことがあります。その方は華やかな経歴を持っているわけではありませんでしたし、いわゆるカリスマ的な雰囲気を持っているわけでもありませんでしたが、多くの依頼者や仲間から支持され、事業や組織を大きく成長させていました。

そして私がその方と実際にお話ししたとき、私はその理由を完全に理解しました。

その方は、とにかく相手の話を真剣に聞くのです。そして、「この人のために自分は何ができるだろうか」を本気で考えています。目の前の相手に価値を提供しようという姿勢が、言葉だけではなく行動にも表れていました。

私はその姿を見て、「この人が多くの人から信頼される理由が分かった」と感じました。

結局のところ、人は自分に興味を持ってくれる人を好きになります。そして、自分のために真剣に考え、行動してくれる人を信頼します。

だからこそ、学生のうちから意識してほしいのは、特別なテクニックを身につけることではありません。

目の前のことに真摯に向き合うこと。手を抜かずにやり切ること。そして、自分の利益だけではなく、相手のために何ができるかを考えること。

これは何か特別なことをしているわけではなく、「凡事徹底」に近いことですが、こうした姿勢は一朝一夕では身につきません。しかし、だからこそ、早いうちから意識して積み重ねることで自分自身の大きな強みになるんです。

​​【受験生の皆さんへ――後悔しない選択をしてほしい】

最後に、受験生の皆さんにお伝えしたいことがあります。

それは、「後悔しない選択をしてほしい」ということです。

受験生になると、偏差値や成績といった外部の評価がどうしても気になると思います。ただ、それらを気にするのは良いですが、それらに流されて決断をしてはいけません。

私は何よりも、自分自身が後悔しないことが大事だと思っています。

例えば、私が高校3年生の夏まで部活動に打ち込んだ結果として、仮に浪人していたとしても、きっと後悔はしなかったと思います。なぜなら、自分で納得して選んだ道だからです。

受験勉強に限らず、人生には「どちらが正解か分からない選択」がたくさんあります。そのときに大切なのは、周囲の評価や一般論だけで決めるのではなく、自分自身が本当に納得できるかどうかだと思います。

そして、その選択をしたのであれば、最後まで全力でやり切ることが大切です。中途半端なところで諦めてしまうと、「あのときもっとやっておけばよかった」という気持ちが残ってしまいます。

ぜひ、自分が納得できる選択をしてください。そして、「やれることは全部やった」と胸を張って言える受験生活を送ってほしいと思います。

皆さんが将来振り返ったときに、「あのとき精一杯頑張ってよかった」と思えることを願っています。

語り手

重松英 Lawyer’s INFO株式会社 取締役COO/日本・ニューヨーク州弁護士

東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。日本およびニューヨーク州の弁護士資格を有する。
開成高校では硬式野球部、東京大学ではボクシング部に所属。

2012年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所後、桃尾・松尾・難波法律事務所を経て、企業法務を中心に経験を積む。
2017年にはUniversity of Virginia School of Law(LL.M.)を修了し、2018年にニューヨーク州弁護士登録。2019年、株式会社ツクルバに入社。

その後、ルームクリップ株式会社、株式会社ミツモア、株式会社SaveExpats、藤和那須リゾート株式会社、那須興業株式会社、伊豆観光開発株式会社など複数企業の社外監査役を務める。
2023年よりLawyer’s INFO株式会社に参画し、2024年にはLawyer's FIRM法律事務所を開設、代表弁護士に就任。

取材・執筆

中川 天道

名前:中川 天道(なかがわ てんどう)
「天道」とは、「自然に定まっている物事の道理」を意味します。「物事の道理を理解し、王道に背かないように生きてほしい」と両親がつけてくれた名前です。

出身地:北海道札幌市
実は、札幌の地下鉄は東京の地下鉄のように鉄の車輪でレールの上を走るのではなく、自動車のようにゴム製のタイヤで走行します。これは非常に珍しい方式で、採用しているのは日本全国の中でも札幌市営地下鉄だけです。
この方式のメリットとしてよく挙げられるのが、「走行時の騒音が少ない」という点です。しかし、実際に利用していた私の感想としては、むしろ東京の地下鉄よりもうるさく感じました(笑)。
ぜひ、札幌を訪れた際には一度乗ってみて、この独特の地下鉄を体験してみてください。

出身高校:北嶺(ほくれい)高等学校
私は高校時代、学校附属の寮で生活していました。学校のすぐ横に寮があったため、中学・高校時代の毎日の通学時間はほぼ0分でした。

大学・学部:東京大学法学部
入学したのは文科三類でしたが、進振りで法学部に進みました。前期教養課程の2年間で学んだことを踏まえて進路に対する考えも変わるので、進振りで進学学部の幅が広いのは非常にありがたい制度だと感じます。実際、私の周囲にも、文科三類から農学部に進学した人や、理科二類から医学部に進学した人がいて、多様な進路選択が可能であることを実感しています。

部活等:法律相談団体
現在私は、法律相談を行う団体に所属し、地域の皆様が現実に直面する、法律に関する課題への対応に取り組んでいます。法的観点からより的確なアドバイスを提供できるようになることを目指し、主に民法の知識を深めるために学習を続けています。

この連載について

「継続」「経験」「信頼」を資産に――重松英さんインタビュー

連載の詳細

マイニュース

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 全6記事の完結編となる今回は、「他者との協働」に焦点を当てて、重松さんに受験生へのメッセージを伺いました。 他者との「弱い繋がり」を大切にする重要性、そして、その前提となる信頼構築の必要性。弁護士として、自らもネットワークを活かしてダイナミックに活躍されてきた重松さんが、体験談をもとに語ってくださりました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 今回は、知的資産の蓄積という観点から、「伸びる人」の特徴や条件について語っていただきました。 小さな差がどんどん積み重なり、最終的には大きな差として現れる受験勉強の中で、少しでも早い段階から意識しておくべきことは何か。貴重なお話を伺うことができました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、前記事に引き続き、重松さんのこれまでのキャリアについて振り返っていただきました。また、キャリア選択についてのお考えや、これからキャリアを考える方々へのアドバイスもお伺いしました。 現在進路選択に迷っている方にとっても、参考となる指針がつまった内容となっています。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、弁護士としての初期のキャリアを振り返っていただき、そこで学んだことについて語っていただきました。 ファーストキャリアで学んだ、一流事務所の仕事の基準。そして、さらなる成長を求めての決断。 華やかな経歴の裏側には、自分なりの答えを探し続けた挑戦の連続がありました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、重松さんの東大生活を振り返っていただきました。 ボクシングから学んだ「勝つための考え方」から、今振り返ってわかる「東大を目指す本当の意味」まで。貴重なお話を伺うことができました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本インタビューは、全6回の連載としてお届けします。第1回となる本記事では、重松さんの東大受験について振り返っていただきました。 ゴールから逆算して計画した上で、「全力で努力」より「淡々と継続」 ーー実体験に基づく重松さんのお話は、受験勉強に励む方に多くの示唆を与えてくれるはずです。

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