一流の基準を知り、成長を求めて挑戦する——弁護士としての基礎を築いた若手時代を振り返る
連載:「継続」「経験」「信頼」を資産に――重松英さんインタビュー
2026.07.24
本記事は、こちらの記事の続編です。
本記事と次の記事では、重松さんのこれまでのキャリアについてお伺いしていきます。
前編となる本記事では、弁護士としての初期のキャリアを振り返っていただき、そこで学んだことについて語っていただきました。
ファーストキャリアで学んだ、一流事務所の仕事の基準。そして、さらなる成長を求めての決断。
華やかな経歴の裏側には、自分なりの答えを探し続けた挑戦の連続がありました。
【東大法学部、そして弁護士を志望した理由】
私が東大法学部を志望した理由は、実は最初は、どうしても法律を学びたかったからというわけではなく、どちらかというと消極的なものでした。高校生の頃は、将来会社員になって大企業の一員として働くという選択肢が、あまり魅力的に思えなかったんです。
私が高校生だった当時は今よりも終身雇用の慣行が強く、一つの会社に長く勤め続けることが一般的でした。ただ、自分は一つの組織にずっと所属し続けるよりも、もっと自由度の高い、自分のキャリアを自分で選択して切り拓いていけるような働き方の方が向いているのではないかと思っていました。
そう考えたとき、高校生の私にとって仕事内容のイメージがつき、かつ魅力を感じた選択肢は医師や弁護士といった資格職でした。そしてその中でも、私がより惹かれたのは弁護士としての道でした。非常に素朴な理由ですが、それが法学部を目指した出発点だったと思います。
ただ、今振り返ると、高校生だった当時はかなり視野が狭かったと思います。当時は、世の中にどのような仕事があり、会社の中で人々がどのような役割を担っているのかについて、十分なイメージを持てていませんでした。
実際に社会に出てみると、企業の中には本当に多様な仕事があり、さまざまな能力や専門性を持つ人たちが活躍しています。高校生の頃には想像できなかったようなキャリアの選択肢も数多く存在することを知りました。
その意味では、もし高校時代に戻れるなら、社会の仕組みや仕事についてもっと幅広く知っておけばよかったと思います。必ずしも本格的なものでなくても、さまざまな業界や職種について調べたり、実際に働く人の話を聞いたりする機会を積極的に持ってみてもよかったかもしれません。
幸運にも私の場合は、結果として弁護士という仕事を選んだことに後悔はありません。ただ、高校生の段階ではどうしても見える世界が限られています。だからこそ、できるだけ多くの仕事や生き方に触れ、自分の選択肢を広げておくことには大きな意味があると思います。
【一流の仕事の基準を知った、社会人のスタート】
私の弁護士としてのファーストキャリアは、アンダーソン・毛利・友常法律事務所(以下「AMT」)でのものでした。
そして、私がそこで驚きとともに学んだのは、一流の仕事のレベル感です。「トップレベルの法律事務所では、これほどの水準で仕事が行われているのか」ということを社会人のスタート段階で知ることができたことは、非常に貴重な経験だったと思います。
特に印象的だったのは、仕事のスピード感と仕事に対する姿勢です。
AMTの弁護士の方々は非常にハードワークですし、レスポンスも驚くほど速い。しかも、それが若手だけではなく、経験を積んだ先生方でも変わらないんです。プロフェッショナルとして第一線で活躍し続けるためには、こうした姿勢が当たり前なのだということを実感しました。
また、入所して間もない頃、自分なりに契約書レビューやリサーチを行い、成果物を提出すると、先輩から返ってくる原稿は真っ赤でした。
最初は「ここまで修正されるのか」と驚きました。しかし、一つひとつの修正には必ず理由があります。なぜこの表現の方が適切なのか、なぜこの論理構成が分かりやすいのか。そうした指摘を丁寧に検証しながら学んでいった経験は、今の自分の基礎になっていると思います。
振り返ると、AMTで過ごした期間は、「プロフェッショナルとして求められる仕事の基準」を学ぶ場だったように思います。仕事のスピード、品質、責任感、そしてクライアントへの向き合い方。その後のキャリアの土台となるものを、この時期に徹底的に学ばせていただきました。
【より大きなオーナーシップを求めての挑戦】
AMTでの経験には非常に感謝していますし、最初のキャリアとしてあの環境で仕事ができたことは本当に良かったと思っています。
ただ、結果として私は、AMTから転職し、別の事務所へ移ることを決めました。その大きな理由は、求める「案件への関わり方」です。
AMTは大規模事務所なので、大人数で分担しながら進めるような案件が多いんです。しかしその中でも、比較的小規模な案件に、上司と二人三脚で取り組むような案件もありました。
そして、働く中でわかったのは、私自身は後者のような仕事により魅力を感じるということでした。少人数のチームで、自分自身がフロントに立ちながら仕事を進める経験は、責任が重い分、大きなやりがいや楽しさを感じることができました。
そう考えたとき、その経験をより多く積めるのは、AMTよりも中規模・小規模の法律事務所ではないかと考え、転職を決意しました。そうして入社したのが、桃尾・松尾・難波という法律事務所です。
この転職によって、自分が求めていた働き方に近づくことができたと思います。若手の段階からより大きな責任を持ち、クライアントとの接点も増えました。弁護士としての成長という意味でも、とても貴重な経験だったと感じています。
また、桃尾・松尾・難波の在籍中に、私はアメリカへ留学し、ニューヨーク州の弁護士資格も取得しました。
ある程度の規模の法律事務所の企業法務弁護士は、アメリカ等へ留学したり海外の弁護士資格を取得したりすることが比較的多いです。私も、留学やニューヨーク州の弁護士資格の取得を経験し、その過程で、海外生活や海外の法務事情等の知見を深めることができました。













