東大卒弁護士が考える、「伸びる人」の条件——知的資本の蓄積を大切に

本記事は、こちらの記事の続編です。

今回は、重松さんに受験生へのメッセージを伺いました。

小さな差がどんどん積み重なり、最終的には大きな差として現れる受験勉強の中で、少しでも早い段階から意識しておくべきことは何か。貴重なお話を伺うことができました。

【知的資産を蓄積するということ】

私は、人間の能力にも、「差が差を生む」という資本主義的な側面があると考えています。

資本主義の仕組みでは、あらかじめ多くの資金を持っている人がさらに多くを獲得し、経済格差がどんどん広がっていくという性質があります。例えば同じ利回りの投資をしても、元本が大きい方が利益額も大きくなりますよね。

実は、同じことが人間の能力にも言えます。

能力資本を持っている人は、そうでない人に比べ、新しいものに触れたときに読み取れる情報量が増えます。同じ本を読んでも、同じ経験をしても、そこから吸収できるものが大きくなるんです。その結果、時間が経つほど差が広がっていきます。

ですから、人生の早い段階から、自分自身の能力資本を蓄積していくことが大切です。

最初は小さな積み上げに過ぎなくとも、それはいずれ大きな差となって現れるのです。

【「国語力」が、知的能力の土台である】

では、高校生や受験生にとって、特に意識的に伸ばすべき能力資本は何か。私は、それは「国語力」だと思っています。

ここで言う国語力は、単に「国語の試験で高得点を取る力」というだけではなく、もっと広い意味です。ある文章や文脈から、何を読み取れるか。ある発言の背景に、何があるのかを理解できるか。そして、自分の考えを適切な言葉で表現できるか。そうした力全体を指しています。

弁護士として仕事をしていると、この意味での国語力の高低が、その人の能力とかなり密接に関連していると感じます。そして、おそらくこれは弁護士に限った話ではありません。どんな仕事であっても、結局はコミュニケーションの連続だからです。

あらゆるサービスや仕事は、突き詰めれば「相手のニーズにどう応えるか」という話になります。そして、そのためにはまず、相手自身が認識できていないものも含めて相手のニーズを正しく読み取らなければなりません。相手が何を考えているのか、何に困っているのか、どんな感情を抱いているのかを理解する必要があります。

そのためには、まずは人の話を聞き、それを正しく理解する力が必要です。さらにそれだけではなく、「言われたこと」から「言われていないこと」を読み取る、すなわち文脈を理解して相手の意図を汲む力が欠かせません。

さらに言えば、これからの時代は「答えを出すこと」以上に「問いを立てること」が重要になっていくでしょう。

「答えを出すこと」、すなわち既存の知識や正解を探すことの価値は、AIの進歩によって相対的に下がっていきます。一方で、本当に価値があるのは、「何を問題として捉えるべきか」「どこに本質的な課題があるのか」を見抜く力です。

筋の良い問いを立てるためには、周囲と同じ情報を見ていても、そこからより多くを読み取らなければなりません。その力の根底にも、やはり国語力があるのです。

【「国語力」は受験にも通ずる】

いま、社会で活躍するための必須能力としての「国語力」についてお話ししてきました。そして実は、受験勉強で学ぶ国語においても、いまお話ししてきたような能力は問われているんです。

国語の試験で問われる内容も、学年が上がるにつれて高度になっていきますよね。小学校や中学校までの国語の試験は、「文章の中から答えを探すゲーム」のような側面があります。

しかし、東大のような難関大学の国語では、それでは通用しません。ただ字面を追うだけではなく、文脈の理解も加えて、筆者の主張を正しく解釈する力が問われます。この力は、私が今まで重要性を強調してきた「国語力」そのものです。

だからこそ、受験で使う国語を本当の意味でしっかり勉強すれば、その中で培った力を、自分の財産として実生活でも役立てることができます。逆に、高い国語力を日々の生活の中で身につけることができれば、それが受験にも役立つかもしれませんね。

【経験を資産に】

知的資産を築くという観点から考えたときに非常に重要なもの、それは「経験」です。実際に経験したことは腑に落ちますし、自分の血肉になります。また、自分の言葉で語れるようになるため、他人に対する説得力も増します。

だからこそ、若いうちにさまざまな経験をすることには大きな価値があります。

もっとも、一人の人間が経験できることには限界があります。そこで重要になるのが読書です。本を読むということは、他人の人生経験を借りることでもあります。自分では経験していない出来事や考え方に触れ、自分の視野を広げることができます。

そしてここで重要になるのが、先ほど述べた「国語力」です。同じ経験をしても、同じ本を読んでも、その全員が同じだけ成長できるわけではありません。高い国語力によって、同じ本や経験からでもより多くの示唆を引き出し、それを「自分ごと」として捉えられる人が大きく成長します。

経験から学び、本から他人の経験を借り、人との対話によって考えを深める。知的資産とは、突き詰めればそうした経験の蓄積なのだと思います。

語り手

重松英 Lawyer’s INFO株式会社 取締役COO/日本・ニューヨーク州弁護士

東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。日本およびニューヨーク州の弁護士資格を有する。
開成高校では硬式野球部、東京大学ではボクシング部に所属。

2012年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所後、桃尾・松尾・難波法律事務所を経て、企業法務を中心に経験を積む。
2017年にはUniversity of Virginia School of Law(LL.M.)を修了し、2018年にニューヨーク州弁護士登録。2019年、株式会社ツクルバに入社。

その後、ルームクリップ株式会社、株式会社ミツモア、株式会社SaveExpats、藤和那須リゾート株式会社、那須興業株式会社、伊豆観光開発株式会社など複数企業の社外監査役を務める。
2023年よりLawyer’s INFO株式会社に参画し、2024年にはLawyer's FIRM法律事務所を開設、代表弁護士に就任。

取材・執筆

中川 天道

名前:中川 天道(なかがわ てんどう)
「天道」とは、「自然に定まっている物事の道理」を意味します。「物事の道理を理解し、王道に背かないように生きてほしい」と両親がつけてくれた名前です。

出身地:北海道札幌市
実は、札幌の地下鉄は東京の地下鉄のように鉄の車輪でレールの上を走るのではなく、自動車のようにゴム製のタイヤで走行します。これは非常に珍しい方式で、採用しているのは日本全国の中でも札幌市営地下鉄だけです。
この方式のメリットとしてよく挙げられるのが、「走行時の騒音が少ない」という点です。しかし、実際に利用していた私の感想としては、むしろ東京の地下鉄よりもうるさく感じました(笑)。
ぜひ、札幌を訪れた際には一度乗ってみて、この独特の地下鉄を体験してみてください。

出身高校:北嶺(ほくれい)高等学校
私は高校時代、学校附属の寮で生活していました。学校のすぐ横に寮があったため、中学・高校時代の毎日の通学時間はほぼ0分でした。

大学・学部:東京大学法学部
入学したのは文科三類でしたが、進振りで法学部に進みました。前期教養課程の2年間で学んだことを踏まえて進路に対する考えも変わるので、進振りで進学学部の幅が広いのは非常にありがたい制度だと感じます。実際、私の周囲にも、文科三類から農学部に進学した人や、理科二類から医学部に進学した人がいて、多様な進路選択が可能であることを実感しています。

部活等:法律相談団体
現在私は、法律相談を行う団体に所属し、地域の皆様が現実に直面する、法律に関する課題への対応に取り組んでいます。法的観点からより的確なアドバイスを提供できるようになることを目指し、主に民法の知識を深めるために学習を続けています。

この連載について

「継続」「経験」「信頼」を資産に――重松英さんインタビュー

連載の詳細

マイニュース

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 今回は、知的資産の蓄積という観点から、「伸びる人」の特徴や条件について語っていただきました。 小さな差がどんどん積み重なり、最終的には大きな差として現れる受験勉強の中で、少しでも早い段階から意識しておくべきことは何か。貴重なお話を伺うことができました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、前記事に引き続き、重松さんのこれまでのキャリアについて振り返っていただきました。また、キャリア選択についてのお考えや、これからキャリアを考える方々へのアドバイスもお伺いしました。 現在進路選択に迷っている方にとっても、参考となる指針がつまった内容となっています。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、弁護士としての初期のキャリアを振り返っていただき、そこで学んだことについて語っていただきました。 ファーストキャリアで学んだ、一流事務所の仕事の基準。そして、さらなる成長を求めての決断。 華やかな経歴の裏側には、自分なりの答えを探し続けた挑戦の連続がありました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、重松さんの東大生活を振り返っていただきました。 ボクシングから学んだ「勝つための考え方」から、今振り返ってわかる「東大を目指す本当の意味」まで。貴重なお話を伺うことができました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本インタビューは、全6回の連載としてお届けします。第1回となる本記事では、重松さんの東大受験について振り返っていただきました。 ゴールから逆算して計画した上で、「全力で努力」より「淡々と継続」 ーー実体験に基づく重松さんのお話は、受験勉強に励む方に多くの示唆を与えてくれるはずです。

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