進路選択は「自分自身を知る」ことから——自分らしく成長し続けるためのキャリア設計

本記事は、こちらの記事の続編です。

本記事では、前記事に引き続き、重松さんのこれまでのキャリアについて振り返っていただきました。また、キャリア選択についてのお考えや、これからキャリアを考える方々へのアドバイスもお伺いしました。

現在進路選択に迷っている方にとっても、参考となる指針がつまった内容となっています。

【キャリアの幅を広げた転機】

法律事務所で働いていた頃、私は自分自身のキャリアに充実感を感じていましたし、事務所内でパートナー(自ら案件を獲得する上位職)になることも、現実的な選択肢として見えてきていました。

ただ、その一方で、働き方については課題に直面していました。

当時は、パートナーになるために自分の顧客を獲得して自分の顧客の仕事も行いつつ上のパートナーの仕事もこなすなど、忙しい日々を送っていました。仕事は好きなので、忙しいこと自体は苦ではありませんでしたが、家庭との両立という観点では大きな課題がありました。当時、子どもたちがまだ小さかったこともあり、私が家庭の戦力として十分に機能できていなかった中で、育児や家事の負担は妻に大きく偏っていました。

そのため、働き方を見直す必要性に迫られていたわけですが、法律事務所に所属したまま労働時間を削減することはなかなか難しいものがありました。周囲が100の力で働いている中で、自分だけが60とか70の力で働くのは、自分にとっても周囲にとってもプラスにならないと感じたのです。それならば、いったん環境そのものを変えた方がよいのではないか、と考えるようになりました。そこで私が​​最終的に入社を決定したのが、スタートアップ企業の株式会社ツクルバでした。

ツクルバは高校の同期が立ち上げた会社であり、顧問弁護士として以前から関わりがあったため、事業内容や社風についてある程度知っていました。また、スタートアップ・ベンチャー業界との接点も多い企業であったため、自分が望んでいたネットワーク形成の環境としても非常に魅力的に感じました。

弁護士としての将来の仕事にもつながるような関係性を育むという意味でも、スタートアップ企業との関係性を蓄積することは、大きな意義があるのではないかと感じたんです。

加えて当時のツクルバは上場準備の段階にあり、法務人材に対するニーズも強く、私の経験がそのまま活かせる状況でもありました。お互いのニーズが自然に一致していたことが、入社の決断に繋がったんです。

入社当初は法務を中心に担当していましたが、次第に法務以外の業務にも関わるようになりました。私としても、より幅広い仕事に挑戦したいという思いを持っていたところ、IR(投資家向け広報)を担当してみないかという話をいただいたんです。

IRとは、投資家に対して会社のビジネスモデルや成長戦略を説明し、企業価値を理解してもらう仕事であり、私にとってまったく新しい領域でした。新しい知識を学ぶことは非常に刺激的でしたし、投資家や経営陣など、これまでとは異なる立場の人々との接点も増えました。

振り返ると、ツクルバでの経験は、自分自身のキャリアの幅を大きく広げる機会になりました。法務の専門家としてのキャリアに加え、経営や事業、IRといった新しい領域に触れられた経験は非常に貴重なものでした。

培ってきた専門性を土台にしながらも、積極的に新しい分野に挑戦する。その面白さを実感できたのが、ツクルバでの経験だったと思います。

【Lawyer’s INFOへの参画―法曹人材の「適材適所」を実現したい】

以上のようなキャリアを経て、最終的に現在の私は、Lawyer’s INFOという会社のCOOを務めています。Lawyer’s INFOは、「弁護士による弁護士のための転職エージェント」であり、法曹人材のキャリア支援を行っています。

私が参画したきっかけは、Lawyer’s INFOを立ち上げた岩崎という友人から相談を受けたことでした。岩崎はもともと、法律事務所の口コミやキャリア情報を集めたサイトを個人で運営していたのですが、それを人材紹介事業として本格的に展開しようと考えていたようです。その構想を、一緒にランチに行ったときに相談されたんです。

その話を聞いた時に、私自身が貢献できることは多いのではないかと感じました。私はこれまで比較的幅広いキャリアを経験してきたので、弁護士や法務人材がキャリアについて悩んだ時に、自分の経験を踏まえて具体的なアドバイスができるのではないかと思ったんです。

もともと私は、キャリアについて考えること自体が好きでしたし、自分自身もその時々で新しい挑戦をしながらキャリアを築いてきました。だからこそ、人材紹介という形で他の方々のキャリア選択を支援する仕事には大きな魅力を感じました。

そこで、「それなら一緒にやってみよう」ということになり、Lawyer’s INFOへの参画を決めました。

私が自分自身のキャリアを通して感じたのは、「どのキャリアが正解か」ではなく、「その人に合ったキャリアを選べているか」が何より重要だということです。

同じ弁護士資格を持っていても、大規模事務所が向いている人もいれば、中規模事務所や企業内弁護士の方が活躍できる人もいます。あるいは法律の世界を飛び出して、新しい挑戦をした方が力を発揮できる人もいるかもしれません。

だからこそ、Lawyer’s INFOを通じて、法曹人材一人ひとりが自分に合った環境を見つけられるよう支援していきたいと考えています。

法曹人材の「適材適所」を実現すること。それが、今後この事業を通じて取り組んでいきたいことの一つです。

【「自分自身を知る」ことから始まるキャリア設計】

最後に、キャリアの築き方について、私が思うことを述べたいと思います。

皆さんが自分自身のキャリアを構想するとき、多くの人は、まず「自分がなりたい職業」から考えると思います。しかし、高校生や大学生の段階で、それぞれの仕事の実態を正確に理解することはなかなか難しいと思います。私も高校生の頃は、世の中にどんな仕事があるのかを十分に理解していたわけではありませんでした。

そう考えると、「何をしたいか」から考えるのは意外と難しいんです。

そこで、「何をしたいか」がまだ決まっていない人に私がお勧めしたいのは、「どんな人生を送りたいのか」「自分はどうありたいのか」からキャリアを考えてみる、ということです。

自分は何に幸せを感じるのか。逆に、何はしたくないのか。

このこと、つまりwhat to doよりもhow to beを考えた上で、その価値観に合う職業やキャリアを探していくんです。

例えば私の場合は、「自由に生きたい」という気持ちが強くありました。組織の中で決められたレールを歩むよりも、自分で選択しながら生きていきたいという思いがあったんです。だからこそ、弁護士という資格職に魅力を感じましたし、その後も法律事務所、事業会社、人材紹介事業と、自分でその時々で自由に道を選んできました。

まずは自分自身を知ること。その上で、本当に大切にしたいものは何かを考えるということ。私はそれが何より大切だと思っています。

結局、キャリアの目的は「幸せになること」だと思うんですけど、何が幸せかっていうことに絶対的な正解があるわけじゃなくて、それは人によって違う。だからこそ、自分が何に幸せを感じるのかを見極めて、自分自身でキャリアを設計することが大切ですよね。

その過程で誰かにアドバイスを求めたりするのは良いですが、他者の評価軸に「正解」を求めて流されるのではなく、自分が心から納得のいく選択をすること。そしてその選択を自ら正解にしていくことが大切だと思っています。

語り手

重松英 Lawyer’s INFO株式会社 取締役COO/日本・ニューヨーク州弁護士

東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。日本およびニューヨーク州の弁護士資格を有する。
開成高校では硬式野球部、東京大学ではボクシング部に所属。

2012年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所後、桃尾・松尾・難波法律事務所を経て、企業法務を中心に経験を積む。
2017年にはUniversity of Virginia School of Law(LL.M.)を修了し、2018年にニューヨーク州弁護士登録。2019年、株式会社ツクルバに入社。

その後、ルームクリップ株式会社、株式会社ミツモア、株式会社SaveExpats、藤和那須リゾート株式会社、那須興業株式会社、伊豆観光開発株式会社など複数企業の社外監査役を務める。
2023年よりLawyer’s INFO株式会社に参画し、2024年にはLawyer's FIRM法律事務所を開設、代表弁護士に就任。

取材・執筆

中川 天道

名前:中川 天道(なかがわ てんどう)
「天道」とは、「自然に定まっている物事の道理」を意味します。「物事の道理を理解し、王道に背かないように生きてほしい」と両親がつけてくれた名前です。

出身地:北海道札幌市
実は、札幌の地下鉄は東京の地下鉄のように鉄の車輪でレールの上を走るのではなく、自動車のようにゴム製のタイヤで走行します。これは非常に珍しい方式で、採用しているのは日本全国の中でも札幌市営地下鉄だけです。
この方式のメリットとしてよく挙げられるのが、「走行時の騒音が少ない」という点です。しかし、実際に利用していた私の感想としては、むしろ東京の地下鉄よりもうるさく感じました(笑)。
ぜひ、札幌を訪れた際には一度乗ってみて、この独特の地下鉄を体験してみてください。

出身高校:北嶺(ほくれい)高等学校
私は高校時代、学校附属の寮で生活していました。学校のすぐ横に寮があったため、中学・高校時代の毎日の通学時間はほぼ0分でした。

大学・学部:東京大学法学部
入学したのは文科三類でしたが、進振りで法学部に進みました。前期教養課程の2年間で学んだことを踏まえて進路に対する考えも変わるので、進振りで進学学部の幅が広いのは非常にありがたい制度だと感じます。実際、私の周囲にも、文科三類から農学部に進学した人や、理科二類から医学部に進学した人がいて、多様な進路選択が可能であることを実感しています。

部活等:法律相談団体
現在私は、法律相談を行う団体に所属し、地域の皆様が現実に直面する、法律に関する課題への対応に取り組んでいます。法的観点からより的確なアドバイスを提供できるようになることを目指し、主に民法の知識を深めるために学習を続けています。

この連載について

「継続」「経験」「信頼」を資産に――重松英さんインタビュー

連載の詳細

マイニュース

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、前記事に引き続き、重松さんのこれまでのキャリアについて振り返っていただきました。また、キャリア選択についてのお考えや、これからキャリアを考える方々へのアドバイスもお伺いしました。 現在進路選択に迷っている方にとっても、参考となる指針がつまった内容となっています。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、弁護士としての初期のキャリアを振り返っていただき、そこで学んだことについて語っていただきました。 ファーストキャリアで学んだ、一流事務所の仕事の基準。そして、さらなる成長を求めての決断。 華やかな経歴の裏側には、自分なりの答えを探し続けた挑戦の連続がありました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本記事では、重松さんの東大生活を振り返っていただきました。 ボクシングから学んだ「勝つための考え方」から、今振り返ってわかる「東大を目指す本当の意味」まで。貴重なお話を伺うことができました。

今回お話を伺ったのは、日本およびニューヨーク州の弁護士として活躍し、現在はLawyer's INFO株式会社のCOOを務める重松英さんです。 本インタビューは、全6回の連載としてお届けします。第1回となる本記事では、重松さんの東大受験について振り返っていただきました。 ゴールから逆算して計画した上で、「全力で努力」より「淡々と継続」 ーー実体験に基づく重松さんのお話は、受験勉強に励む方に多くの示唆を与えてくれるはずです。

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