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特集ブログ ~自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分~

 東大生や東大卒業生が、自身の合格体験を基にアドバイスをしているブログや書籍は数多くある。もちろん、有益なものも多い。
 ただし、実際に生徒指導をしていると、自身の東大合格体験はあくまでも一例でしかないことに気づく。生徒を東大に受からせるには、学科知識、教材・模試・過去問の活用法、受験戦略、学習方法のすべてを見直し体系化する必要がある。

 情報が氾濫する時代だからこそ、自身の合格体験を吐き出すだけのブログでは不十分。自らが東大合格体験者でもあり、東大受験専門の塾・予備校の講師として毎年、生徒を東大合格に導いているメンバーのみが運営する『東大入試ドットコム』の特集ブログです。

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2014/03/21

 問題を解く上で必要な基本操作が一問一答的な形で演習できる、物理初心者が基本的な概念を学ぶのにも、ある程度物理の問題が解けるようになってきた生徒が細部を詰めるのにも適した教材。もっと難しいレベルの教材の問題が解けるのに、いざこのエッセンスを解いてみると正答率が低い、という人も少なくありませんが、これを完璧にこなせるのとそうでないのとでは安定感が全然違います。


 一番の特色として、物理の基本事項を“感覚的に”理解できるような説明を特に心がけているところが挙げられます。モットーとして掲げられる「1 2 & 8 9 10」――教科書に書かれていない『最も基本となること・感覚的な理解』から『試験問題を解くのに必要なこと』まで、ということですが、この看板に偽りなく、他の参考書に比べ飛び抜けて“物理を感覚的に分からせる”ことが徹底されている印象を受けるのです。くだけた感じの説明や、豊富な図による解説もその一端を表しています。とりわけエネルギー絡みの感覚的な説明が特徴的で、個人的にはこの本に影響を受けた部分も結構あると思います。
 その分物理数学的な要素は(紹介されているとはいえ)薄めなので、性に合わないという人もいるかもしれませんが、こういった感覚的な理解ができているかどうかは、目新しい問題にどう切り込むかを決める段階、すなわち状況設定の把握にかかる時間を大きく左右します。東大をはじめとする難関大入試の物理では問題を解くスピードにもかなりのものが求められますから、少なくとも高校物理においては、この部分は決して疎かにしてはならない要素だと自分は考えます(それでもどうしても数学的にキッチリした物理をやりたいという人は、主に駿台系の教材に頼ることになるでしょう)。

 ただ、以上のようなコンセプトの本なので、さすがにこの二冊だけでは東大合格は難しいかと思われます。次のステップとして、ここで学んだ基本的な操作とその使い方をどう活用していくか、という部分での問題演習が欠かせないからです。『物理のエッセンス』はいわば、物理科における“単語帳”のようなものだと捉えてください。そういうわけで物理の学習にはこの本に加え、もう少し難しめの、“エッセンスで学んだ基本事項を複数絡めて活用する”ことが練習できるような演習書を合わせる必要がありますが、その演習書として相性が良いものに、著者が同じである『良問の風』『名問の森』が挙げられます。これらの紹介はまた別の機会に。

 東大受験生と言えど――いや、むしろ東大受験生だからこそ、こういった根本的なことを疎かにしてはならないなあ、としみじみ感じる二冊です。


2014/03/21 石橋雄毅

2014/03/14
 昨夏の東大過去問参考書紹介の後すぐ、2013年秋頃に新たな東大過去問参考書が発売されました。これについて前回同様、その特色・特徴を

①構成
②解答・解説の充実度
③難易度評価


の3つの観点から、東大受験参考書愛好家のひとり、ワタクシ石橋雄毅が紹介していきます!


◆角川学芸出版『鉄緑会 東大化学問題集』 化学
 基本的なスタイルは既刊の数学・古典と変わらず、『資料・問題篇』と『解答篇』の2分冊。項目立ても基本的には今まで通りですが、今回はそのひとつひとつに対してよりこだわって作り込まれている印象を受けます。「資料篇」は“東大入試化学の分析” “合格点到達のための戦略” “答案作成の戦術と技法” “解答にあたっての注意点” から成りますが、ここに並んでいるのはこのテの詳しい分析にありがちな、受験生にとってうまく役立てるのが難しいような細かい話ではなくて、ともすれば卑近とも受け取れてしまうような、本当に実戦的な心構え・技術ばかり。とりわけ“答案作成の戦術と技法”は書く側が東大化学を本当に心から楽しんで書いているなというのがよく伝わってきて、自分は真面目にふざけると呼んでいますが、こういうことができるのってその分野を楽しんで研究し続けてきた人だけだと思うんですよね。本書で語られる“逆T字分割戦略”を見て、自分は本書への信頼をとても厚いものにしました。続く「問題篇」は直近10年分の過去問に加え、さらに過去のもので演習するに相応しいセットを4つ掲載し合計14回分から構成。実際の問題冊子と殆ど変わらないレイアウトを採用することで演習効果を高めようとする姿勢も市販の参考書ではなかなか見られない大きな特徴です。学習指導要領の変更に伴う単位系の違いにまで対応してくれていて、もう至れり尽くせりという感じ。「巻末付録」として“無機化学重要反応式集” “元素周期表” “解答用紙サンプル”が収録されていますが、この『資料・問題篇』だけでも満足感は相当なものでしょう。(一応、解答用紙はここにもありますよ、という宣伝はさせてくださいね……?笑)

 「解答篇」には「問題篇」の14回分の問題に対する解答・解説が掲載。各セットのトビラページにその年度の形式面・内容面における特徴を述べた講評と“出題テーマと難易度”“目標得点”が書いてあり、時間を計っての演習後はここで自分の感覚を一般的な東大合格者のものへと整えていくことになります。各問の解答は基本的に“配点” “指針” “解答” “解説” “参考” “類題” “手書き答案” などから構成。特筆すべきはまず濃厚な“解説”。設定の咀嚼、取り組む上での注意点から誤答・不十分な答案の指摘まで東大化学を隅々まで味わうことができるでしょうし、一般的な参考書では流されてしまうような細かい知識、“類題”も含め多数勉強になる所があると思います。ただし本文に散見される、東大本試問題文の作り込みの甘さの指摘から出題ミスの疑惑まで、ちょっとでも気になる所があれば積極的に考察して詰めていく姿勢は、東大に進むような切れ者にあるべき姿だと思いますし大好きなのですが、本書を使う受験生にとっては手取り足取りに過ぎる情報量に逆に振り回される要因となりかねないので、化学に無用に時間を遣い過ぎる事だけは無いように注意しましょう。それと“手書き答案”。方々で使いづらいと評される東大理科の解答用紙をどう使うのか――その一例を示した貴重な資料ですが、方法が“答案作成の戦術と技法”で語られているとはいえ時間の無い中答案をこれだけスマートにまとめ切るには相当の練度が必要になると感じます。受験生にとってこの部分にエネルギーをかけることがどれだけ価値あることなのかはやや疑問。自分はこの資料を、ひとつの作品として鑑賞するだけで終わってしまいそうです。『解答篇』の「巻末付録」としては“有機構造決定の重要手法”が収録されていますが、先の“無機化学重要反応式集”同様よくまとまっているという印象。

 難易度評価は本書ではそれほどには重要視されていないようですが、ひとまず試験場の受験生にとって十分妥当なラインを突いていると思います。ただし掲載されているのは予備校の解答速報同様大問ごと(ⅠⅡの単位まで)の難易度評価ですが、せっかく端々で「設問別にはア~ウよりも続くエ、オの方が簡単なこともある」のようなことを述べているので、欲を言えばそのレベルでの評価までしてほしかったところです。

 総じて、鉄緑会から出た他の科目の本同様、東大化学に対し他の追随を許さない圧倒的情報量を提供してくれていると言えます。化学の問題をこれほど一問一問じっくりと扱っている参考書はなかなか見ませんから、そういう意味では東大対策に限らず純粋に化学の参考書として重宝する一冊だと自分は感じました。しかしながら、一応丁寧にわかりやすい形で書かれてはいますが、その分だけ長文有り余談も有りですから、化学の実力がまだ全然足りていない人が読むと情報に溺れてしまうかもしれません。本を必要な部分だけ取捨選択して読んで役立てるといったことができる、知識は最低限あるけど化学の点が伸びない、という受験生になら、値段に見合った価値を提供してくれるであろう一冊です。むしろ、鉄緑会の本全てに言えることですが、受験が終わって時間があるときにじっくり読み込みたくなるような本ですね。



2014/03/14 石橋雄毅

2014/02/24
 皆さんこんにちは!
 いよいよ明日から二次試験が始まりますね。皆さんの今までの努力の成果を遺憾なく発揮してきて下さい。さて、今回のプレゼンテーションは東大で行われたものです。TEDには、年に一度行われているTED Conference以外にも、TEDxという、米国のTEDの公式なライセンスを受けて各地域で個別に運営されているコミュニティがあります。その中でも東大生によって運営されている、TEDxUTokyoという団体により行われたイベントでのスピーチを取り上げます。今回取り上げたもの以外にも、東大の学生や卒業生、教授による面白いスピーチが多々あるので是非チェックしてみて下さい。
 スピーチ自体が9分ほどあって長めですが、東大リスニングへの最後の仕上げとして聞いてみましょう!





⇒問題はこちら
2014/02/21
第15回 出典:東京大学前期 2013年 理系数学 第6問

 皆さん、こんにちは。私立大学の入学試験もぼちぼち収束してきて、東大入試もいよいよといった感じになってきました。最終調整は是非とも念入りにしてほしいですが、体調管理は何よりも大事にしてくださいね。

 受験生の石橋君は、辺りが真っ暗になる時間まで学校で勉強していました。自分の場合学校が家から近かったものですから、登下校は基本的に自転車でした。自転車を漕ぎながらボンヤリと前を眺めていた石橋君は、ふと自転車のライトが夜道を照らす様子に目を留めます。

撮影協力:弟


 ……なんか、とっても放物線っぽいですよね。これを放物線であると示すことはできるのか――焦点とか準線とか、石橋君はいろいろ考えました。そして、「そういえば円錐を切った断面は二次曲線になるって聞いたぞ」ということに思い至ります。


 教科書や参考書のコラムによく載っているこの事実。ちゃんと知っていれば、多くの人が苦戦したであろう東大2013年理系数学第6問・円錐面の断面の式を求めた後に、“円錐を母線と平行な面で切った断面なんだからそりゃ当然放物線だ”と納得することもできたはず。試験場で難しい問題に囲まれてしまった時、こういう小さな安心感の積み重ねは本当に精神状態を左右しますから、やっぱり頻出事項でなくても興味深いことには積極的に首を突っ込んでおくものだなあとしみじみ感じる今日この頃です。

 さて、幸運にもこのことを思い出せた石橋君は、次にどうしてここでこの話が出てくるのか、状況の言い換えを試みました。

「自転車のライトの中身を点光源だと見なせば、円形のカバーに覆われたその光源から放射状に出てくる光はほぼ円錐状。この光が地面に当たった時の模様は、この円錐が地面によって斬られた時の断面そのものだから、確かに放物線とかって二次曲線の議論ができそうだ!」


 疑問が解消できて、石橋君は清々しい気持ちで帰路を急ぎましたとさ。

 いやはや、数年前の自分のなんと浅はかな事か。せっかく日常生活の中のオイシイ題材に出会うことができたと言うのに、これだけで済ませてしまうなんて勿体ない。こういう一つ一つのことを大切にすればこそ、試験場で急に円錐面の方程式が必要になった時にも対応し得る応用力が養われるというものですし、ある方向性が見えた事だけに満足せず、その細部を吟味したり状況に改めて注目してみたりする中で初めて気づかされることも、世の中には沢山あります(入試問題なら“場合分け”にも通ずる部分でしょうか)。

 そういう訳でここからは、先の甘ちゃんな議論に、かつての自分を泣かせるぐらいの勢いでガンガン突っ込みを入れていこうと思います。空間座標の演習は手薄になりがちですから、是非練習がてら以下の問題を解いて、ついでに石橋君も助けてあげてください。


第1問
 光は曲がらないものとして、まずは円形カバーに覆われた点光源から出てくる光が確かに地面で二次曲線となることを確かめよう。いま、xyz 座標空間における“円形カバー”を、“円形の穴が空いた板”を表す次の不等式で扱う。


 この領域が光を通さないとしたとき、x<0 の領域にある点 A(-X, 0, 2) から球状に出た光が x>0 の領域でどうなるか、また地面となる xy 平面にどう映るかを考えればよい。

(1) 地面を考えない時、x>0 の範囲で光が存在する領域が、ある円錐の内部となることを示し、その円錐面の方程式を求めよ。

(2) 上の円錐の xy 平面による断面が二次曲線となっていることを示せ。
<解答>


第2問
 第1問では、円形カバーの円に垂直でその中心を通る直線状に点光源があるとして計算した。今度はこれがズレていた場合どうなるのかについて考える。すなわち、自転車のライトの光の模様は平らな地面で“厳密な”二次曲線であると言えるのか、それとも“近似的に”二次曲線と見なせるだけなのかを検討する。円形カバーを第1問と同様


で扱うことにして、x<0 の領域にある点光源の座標を B(-X, Y, Z) とおく。ここから球状に出た光が地面となる xy 平面に映ったときの模様は二次曲線かどうか判定せよ。
 ただし、一般に x と y の二次式は、xy 平面で二次曲線を表すことを用いてよい。
<解答>


第3問
 今までは、ライトからは球状に出てきた光のうち円形カバーに遮られなかったものだけが出てくるとして議論を進めてきた。しかしながら自転車のライトをよく見れば、中が鏡の曲面でできていることに気付く。実はこの曲面は“回転放物面(放物線を、その軸のまわりに一回転してできる面)”となっており、その焦点に点光源が設置されている。

(1) この回転放物面があることにより、反射光はライトから真っ直ぐ(すなわち、円形カバーの円に垂直に)出ていくことになる。これを確かめよう。鏡でできた曲面に光が入射すると、光は入射した点での接平面に対して反射の法則を満たし進んでいく。ただし今回は軸に関する対称性があるので、2次元で考えれば十分である。
 放物線 の焦点から出た光は、放物線で反射したのち軸と平行に進んでいくことを示せ。


(2) (1)を考えれば、円形カバーからは円柱状の強い光が出てくることになる。この光が地面に入射した時の断面の形を求めたい。点 Q(0, 0, 2) を通り、x 軸となす鋭角が θ である、xz 平面内の直線がある。ただし、この直線は x>0 の領域で x 軸と交わる。この直線を中心軸とする半径 1 の円柱面の、xy 平面による断面の図形を求めよ。

(3) 結局、出てくる光が円錐としたときの計算は無駄だったのか、議論せよ。
<ヒント>


<解答>

 いかがだったでしょうか。こんな身近な題材ではありましたが、“ちゃんと突き詰める”ことの奥深さ、味わってもらえたんじゃないかなと思います。加えて、“なんとなく”分かった気になっただけで満足しては見えなかったであろうものまで、突き詰めて細部を検討する中で見えてきました。勿論自転車の手前だけじゃなくて遠くにも光があることに気づいていた人はいるでしょうが、石橋君は目の前にある放物線だけで頭が一杯で、これをそれっぽく説明できただけで考えるのをやめ、2種類の光があることに気付かなくなってしまっていたんですね。思い込みというのは本当に人間の目を曇らせます。

 今年の入試に関係の無い皆さんへ。身の回りに、頭を使えるチャンスって実は沢山隠れています。自分で問題提起して、それに対し適当な設定を自分で作って、それを自分で解決する――これが学問の道に進もうという人間に求められる賢さのひとつではある筈です。自転車に乗っているときはキチンと周りに気を付けて運転してほしいと思いますが(笑)、是非身の回りの色んなことに、興味を持ってトライしてみてください。

 入試を受ける皆さんへ。前回と前々回とで、視覚化して状況を大まかに把握することが大事だ、という話をしました。これを本当に大事だと思っているのは変わりません。ただ、入試前最後にこの記事を通して言いたいことがあるとすれば、「何となくで把握した思い込みで目を曇らせるな!」ってことです。数学、変なところで詰まって全然解けない、なんてことになった時、焦りますよね。落ち着いて、もう一度ゼロから問題を把握し直しましょう、何か大切なことを見逃しているかもしれません。問題の全体像が“なんとなく”わかっちゃった時に限って、こういうことが起こるものです。また、解けたと思った最後の最後に、細かい見逃しが無いか慎重に検討することもお忘れなく。
 ……と、普段から頑張ってきたはずの皆さんに最後にかける言葉なんてこんなもんです。あとは本番で悔いの無いようやり切るだけしかできないはずですからね。一生にそう何度も経験できない東大受験、せっかくの機会です、是非思い切り楽しんできてください!

2014/02/21 石橋雄毅

2014/02/10
 皆さんこんにちは!
 二次試験の出願期間も終わり、いよいよ東大入試が2週間後に迫ってきましたね。この2週間の中でも学力は伸びます。最後の最後までやり抜きましょう。
 さて、今回のプレゼンテーションは内容自体はとてもあっさりしたものです。普段何気なく結んでいる靴ひも、あなたも実は間違った方法で結んでいるかもしれませんよ...?




⇒問題はこちら
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