理系のための東大文系数学 2005年 第3問(方程式の解の範囲)
連載:理系のための東大文系数学
2021.11.18
今回は,15 年以上前の文系専用問題を 1 問。
解法は典型的ですが,理系でも出来ない人は少なくない印象です。
2 完を安定させたい人は,こういった問題を余裕で突破できるだけの力をつけておきたいところですね。
問 題
$0$ 以上の実数 $s , t$ が $s^2+t^2=1$ をみたしながら動くとき,方程式
$x^4-2(s+t)x^2+(s-t)^2=0$
の解のとる値の範囲を求めよ。
2005年 東京大学 前期二次試験 数学(文科) 第3問
以下解答を示しますので,自身でよく考え,答案を書いてからご覧ください。
解 答
$s + t = k$ とおき,$(s, t) = ( \cos \theta, \sin \theta ) \, \left( 0 \leqq \theta \leqq \displaystyle\frac{\pi}{2} \right)$ とすると,
$k = \sqrt{2} \sin \left( \theta + \displaystyle\frac{\pi}{4} \right)$
であるため $k$ のとりうる値の範囲は $1 \leqq k \leqq \sqrt{2}$ となる。また $s^2 + t^2 = 1$ より $2st = k^2 - 1$ となるから,与えられた方程式は
$k^2 + 2 x^2 k - (x^4 + 2) = 0$
と書ける。これを $k$ についての 2 次方程式とみて,これが $1 \leqq k \leqq \sqrt{2}$ の範囲に実数解をもつような $x$ の範囲を考えればよい。
上の方程式の左辺を $k$ の関数とみて $f(k)$ とすると,$k$ の 2 次方程式 $f(k) = 0$ の判別式は $1 \leqq k \leqq \sqrt{2}$ でつねに正となる。また $f(k) = (k - x^2)^2 - (2x^4 + 2)$ であるため,$1 \leqq k \leqq \sqrt{2}$ において $f(k)$ は単調に増加する。よって求める条件は
$f(1) \leqq 0 \leqq f(\sqrt{2})$
であり,これを解くことで $( 0 \leqq ) \, x^2 \leqq 2\sqrt{2}$ を得る。これより,与えられた方程式の解のとりうる値の範囲は
$- 2^{\frac{3}{4}} \leqq x \leqq 2^{\frac{3}{4}} \quad \cdots 答$
とわかる。
コ メ ン ト
対称式をうまく使って逆像法の議論に持ち込む手法は,苦手とする受験生が多いこともあり,差がつきやすい内容です。
とはいえ,難しい理論や計算を理解する必要はないため,こうした手法は必ず使えるようにしておきましょう!
また,$s + t = k, \, st = l$ とおいて $kl$ 平面におけるグラフの交点の話に言い換える解法もあります。
こちらもさほど難しくないので,興味のある人は考えてみてください。